[広島の小方くん]('07/11)

’07年ゴールデンウィーク。
父ちゃん達は、広島の弘楽園にいた。もちろん、全日本第4戦中国大会の練習のためだ。
第2戦近畿、第3戦関東と玉砕し続けているショウゴと父ちゃんは、すっかり意気消沈していた。
父ちゃんに至っては、もともと大嫌いな弘楽園なのでエントリーさえ止めるつもりでいたが、
成り行きで出場することになってしまった。

夜通し走って7時頃に弘楽園に着いたのだが、すでに何日も泊まり込んで練習している車がたくさんあった。
さすがに全日本は、みんな気合いが入っている。
ショウゴも今回こそは、ラムソンジャンプを飛ぶと気合いが入っている。
タカは寝ていて準備を始めても起きてこない。

寝るのが生き甲斐のタカはこれで何回も失敗をしている。
そんな一方でこんな事もあった。
中部戦でもレースの合間にも寝てしまい、30秒前のボードが出ている頃にあわててすっ飛んでいった。
それでも何事もなかったようにスタート位置に着き、いつもより良いスタートが切れて、
いつもより良い成績を残してしまうのだから不思議な男だ。
多度のレースでは、起きたのがスタート30秒前、
急いでヘルメットを被って5秒前にスタート位置に着いたのにもかかわらずフォールショットを取ったこともある。
何事に置いても神経質なショウゴとは大違いだ。よほどの大物かバカのどちらかだ。(たぶん後者だろうが・・)

タカを叩き起こし、みんなで準備をしている頃、近くに止めてあった古いハイエースから小方くんが出てきた。
あの小方くんも車を運転出来るようになったのか!(大きくなったな〜)
いつも大きなチームの中で輝いていた姿を見慣れていたので少しビックリしたぞ。

小方くんに会うのも久々だった。
ここ1,2年は、ケガで満足なレースが出来ていなかったので心配していた。
今年は、チームも替わり心機一転と言ったところか。
着替えている後ろ姿を見れば、ずいぶんと逞しくなった背中が見えた
そして、いろいろな傷跡も・・

日本最高峰のIA1でレースをし続けることは並大抵なことではない。
あの逞しくなった体つきと傷跡を見れば、きっと、いろいろな苦労もあったと思う。
チームも替わり、親元からも遠く離れて再起を決して頑張っている小方くん。
「がんばれよ!」と父ちゃんは、心の中で叫んだのだった。

そんなウルウルしている変なオヤジの瞳に気づいたのか、小方くんが爽やかな笑顔で会釈した。
環境は、変わってもその笑顔は昔のままだ。
逞しくなった体つきとその爽やかな笑顔を見ていたら今年こそは、「いけるんじゃないか?」と思ったぞ。

今はまだ楽しいだけでバイクに乗っている我が家の息子達よ。
小方くんとは比べものにならないくらいに才能はないが、いつかは独り立ちしていかなくてはならないのだぞ。
モトクロスだって、自分で車を運転し、自分で整備しながら練習することは生やしいものではない。
お金の問題だって大きい。
分かっているのか息子達よ?

隣を見れば、ショウゴとタカは、ニコニコしながらパンを食べている。
「いよいよラムソンを飛ぶ時が来た」とショウゴが言えば、「オレも飛んじゃおうかな〜」とタカが答える。
隣では、IBクラスでトップ争いをしている子が、オヤジと二人で朝からピリピリした空気の中でバイクの整備を始めていた。
あまったパンを取り合ってジャンケンで盛り上がっている息子達を見ながら、
「こいつらにはまだまだ分からないだろうな〜」と一人あきらめる父ちゃんであった。


PS

もちろん、ショウゴは、今回もラムソンジャンプを飛ぶことが出来ず、タカもヘラヘラしているだけだったのは言うまでもない。