[太ももだ〜]('08/2)


 あ〜忘れもしない’07年中部モトクロス選手権第5戦いなべ大会(6/3)。
今でもいなべのテーブルトップを見ると太ももが痛み出す〜。

悪い予感はあった。
5月6日の未明、第4戦のコスモスポーツランド(富山)から帰ってきた時、
「犬が繋ぎっぱなしだったので散歩に行く」と母ちゃんが犬とテラスを歩いていたら床が抜けて2m下のドブに転落。
(床の木が腐っていたんだ:母ちゃんの体重を支えきれなかったという説もあり)
ヘドロだらけの母ちゃんを持ち上げようとしたが重くて持ち上がらず、引きずっていって風呂場で洗ったのは父ちゃんだった。
夜中の2時の出来事だった。(5時間後には、保育園が始まるのに!)

「お姫様抱っこをしてくれると思ったのに!」と苦しそうに言う母ちゃんに「もう15kg痩せたらな!」と答える父ちゃん。
見れば、左足首がずいぶんと腫れている。
「折れたか!」と思ったが、動くようなのでひとまず安心して、そのまま一晩中冷やしていた。
朝一でレントゲンを取ってもらったが、骨には異常がないということだった。
しかし、一週間経っても腫れが引かないので違う医者でCTスキャンを取ってもらったら、
骨の先端が細かくひび割れているのが見つかった。
結構、重症で松葉杖が取れるまで2ヶ月、その後リハビリが3ヶ月という事だった。
一緒に落ちた犬は、母ちゃんの頭に落ちて無事だった。

ちなみに、その半年後には、同じテラスで羊(保育園で飼っているムフランちゃん)が落ちた。
こいつは、泥だらけになりながらも草を食べて「めぇ〜」と鳴いていた。
動物は強いものだと改めて思ったぞ。

母ちゃんが松葉杖なので、いなべのレースには、父ちゃんと息子達二人で土曜日の朝早くに出かけた。
やはり、レース前日に練習出来るかどうかは大きい。
保育園の行事や何やらで父ちゃん一家は、なかなか土曜日の前日練習が出来ていなかった。
だから、思うような結果は残せていなかった。(ということになっていた)
ここでいっきに’07シーズンの波に乗る!
お気楽な親子三人は、またまた燃えていたのだった。

いつもはグズグズとしているショウゴとタカもさっさとストレッチをして父ちゃんより早く練習を始めていた。
受付をしているとショウゴが「どうもエンジンがついてこない!」と言ってきた。
すぐに自分の練習をしたかったが、子ども思いの良い父親なので
「そのくらい自分で調節しろよ、オレの練習時間がなくなるじゃんか!」
ブツブツブツブツブツブツブツブツブツと文句を言いながらもやってしまうお人好しの父ちゃんであった。

さぁ、やっと自分の練習が出来る。
早く走りたいので、いつも通りにストレッチもせずにコースに飛び出す父ちゃん。
2周目には、大きなテーブルトップを華麗に飛んだ。
一番高く飛び上がったところで着地点を見れば、すぐ隣の抜け道に赤いバイクが1台。
危ない野郎だな?と思った瞬間にタカだと分かった。

「何をやっているんだ?」と思う間もなく、こちらのコースに急に入ってきた。
「危ない!」
父ちゃんが着地した時には、3mほど前のライン上まで来ていた。
この時、父ちゃんは思った。
フロントとリアタイヤをロックさせれば、転びながらも避けられる。
しかし、こんな所にノコノコと入ってきたタカに腹が立った。
こうなったらぶつけて少し痛い目をした方が子どものためだ!と子ども思いの父ちゃんはまた考えた。

そのまま父ちゃんのフロントタイヤがタカのリアタイヤに当たった。
前のめりになってよろけるタカ。
「このバカタレが、お仕置きだ〜!」と思った瞬間、父ちゃんの左足がラジエターのどこかに引っかかった。

「あれれれれ???」
足が抜けない!
「いててててててて!!!!」太ももが引っ張られるのが分かった。
父ちゃんの体がゆっくりとバイクから落ちていく。
しかし、足が抜けない。
父ちゃんは、そのまま股裂のようになって転んでしまった。
「グギ!!!!」
モモが裂ける音がした。
「ウゴゴゴゴゴゴ・・・」とのたうち回る父ちゃん。

すぐにタカが気が付いて引き返してきた。
「アキ、大丈夫か?」
「まず、後ろを止めろ・・」と呻く父ちゃん。
一台の赤いバイクが綺麗にテーブルトップを飛んできたが、素早くよけて、
そのままブレーキターンでくるりと回るのが見えた。


何とかコース脇に這っていきテーブルトップを見上げれば、ショウゴが後ろのバイクを止めてくれていた。
「何でこんな所から入ってきた!」とタカに言うと
「この先のコーナーで接触した人が転んでしまったので見に行くところだった」と答えた。
「オレだったからこの程度で済んだが、他の人だったら大変なことになっていたぞ!」と言えば
「オレが悪かった」といつになく素直なタカだった。

そうこうするうちに激痛が襲ってきた。
これは思ったよりの重症だ。
他のライダーが「中島さん、大丈夫ですか?」と見に来てくれる。
「タンカ持ってきましょうか?」と言ってくれた子もいた。

ショウゴのバイクに乗せて貰ってパドックまで帰ってきた頃には、起きあがることさえ出来ない有様だった。
ショウゴとタカがテキパキとモトクロスパンツを脱がしてくれパンパンに張れた真っ青の太ももを冷やしてくれた。
その後も練習の合間に顔を出して様子を見に来てくれた。

練習が終われば、テントをたたんだり、バイクを積んだりと自分たちだけでやっている。
痛む太ももを押さえながら「お前ら、大きくなったな〜」と一人感慨にふけってしまったぞ。

しかし、父ちゃんは、子ども思いのよき父親
ここはひとつ、タカの行いを反省させなければならない。

タカとショウゴを呼ぶと「いくら人を転ばせてしまってもジャンプの着地に入ってきてはいけない」と説教を始めた。
「オレだったからこの程度で良かったが、他の人だったらもっともっと大変なことになっていたぞ!」
と言うとすかさずショウゴが言った。
「あれは、アキ以外の人だったら簡単によけていたぜ!」

このバカ息子が!
と父ちゃんが反論しようとした時、ショウゴが続けて言った。
「アキのすぐ裏は、オレだったんだぞ」
「アキが倒れる時に横に着地してきたバイクがいただろ」
そうか、あの上手くよけていった赤いバイクがショウゴだったのか!
大きくなったな〜、上手くなったな〜!父ちゃん嬉しいぞ。

こういう時にこそ、オヤジの偉大さを見せつけようと思ったのに、
子どもたちの成長を見せつけられてしまった父ちゃんだったのだ。

その後、「バイクに乗る前にちゃんとストレッチをやっていれば、こんなにひどくはならなかったはず」と
子どもたちにお説教までされる有様だった。
トホホ・・

PS
その後、二週間は、父ちゃんも松葉杖の生活だった。
(一日も休まずに仕事だけは何とか行けたのはせめてものすくいだった・・)
主任(母ちゃん)と園長二人とも松葉杖。
豊橋の保育園では、お馬鹿な夫婦として有名になってしまったぞ。

ちなみに父ちゃん一家には、今では松葉杖と鎖骨バンドが常備してある。