子どもたちへ

父ちゃんには、長男(10歳)と次男(8歳)長女(5歳)の3人の子どもがいる。

母ちゃんのおなかの中にいるときからレース場にいるので、みんなバイクが大好きだ。

だから、人間は、みなオートバイに乗ってジャンプするものだと思っている。

そして、長男と次男はレースに出るようになった。長女も「なほちゃん、バイク乗る」と言ってくれている。


子どもと同じ趣味というのはありがたい。好きなことを子どもたちと一緒に楽しめるのだから、これ以上のしあわせはないと思っている。

昔、モトクロスをやっていたときは(14,5年前だ)、練習をしなくては速くなれない、練習をしなくては勝てないと焦ってばかりいた。

好きで始めたモトクロスだったが、成績ばかりが気になってしまい、いつも追い立てられているようだった。

しかし、今は練習が楽しくて仕方がない。子どもと一緒に走れることがこんなに楽しいこととは思わなかった。

あいつらの嬉しそうにバイクに乗っている姿を見ると、忘れていたものを思い出させてくれる。


この頃、長男は、母ちゃんのために中古で買ったKX80を乗り回している。

せっかく、60のレースで4,5位を走れるようになってきたのに、80の方が気に入ってしまい、ほとんど乗らなくなってしまった。

そして、親の心配をよそにどんどん速くなっていく。

父ちゃんは、自分が速くなったと感じるためには、どのくらい時間がかかるか分からない。

下手をすると年を取って、遅くなっているかもしれない。

でも、子どもたちは、昨日出来なかったことが今日出来るようになってしまう。羨ましい限りだ。


きっと、もっと練習すればもっと速くなるだろう。

今は、好きなときだけバイクに乗っているが、無理に練習させれば乗せただけ速くなるだろう。

テクニックも教えれば教えただけ身に付くだろう。それが子どもというものなのだ。

でも、父ちゃんが教えたのは、止まるときにはリヤブレーキを踏むことだけだ。 (最初は,JR50だった)

一度、「コーナーに入る前にはブレーキをかけてスピードを落としてからから曲がるんだぞ」って言ったら、

「ブレーキを踏むと遅くなる!」と言って聞かなかったな。おかげで、いつもオーバーランして突っ込んでいた。

そんな姿を見ながら「まあいいかと」と思っていた。


父ちゃんが始めてバイクに乗ったのは20の頃だ。おまえらは、3歳からバイクに乗っているのだから、焦る必要はないのだ。

少しくらい遠回りをしてもいいと思っている。 16でIAに上がり、20で引退なんて、急いでバイク人生を歩むことはないのだ。

父ちゃんのように、年を取ってもバイクが好きで、レースが好きでいて欲しいのだ。


しかし、日に日に速くなっていく子どもたちを見ていると心配なことがある。

もちろん怪我も心配だが、ここで一言、言っておく。

「父ちゃんより速くなってはいかん」

父ちゃんはまだまだ現役ライダーだ。

負けるわけにはいかないのだ。