[遙かなる爺ヶ岳5]('15/6.20)
 
 ついに夜が明けてしまった父ちゃんは、ショウゴと二人で
意気揚々と爺ヶ岳に向かった。(タカは、今回もお休み・・)
父ちゃんには、ハッキリと昇る朝日が見える。
(沈みゆく夕日じゃないの?by母ちゃん)

というのも、
父ちゃんがなぜFreeRide250(通称フリラちゃん)を選んだかというと、
この爺ヶ岳に焦点を絞っていたからだ。
正確には、爺ヶ岳とエンデューロクロスのために買ったと言っても過言ではない。

パワーで劣ることが分かっていても、それ以上に生かせる場所が、
この爺ヶ岳とエンデューロクロスにあることが分かっていたんだな。
ゲレンデで多少離されたって、ガレクライムでミスさえしなければ、
総合的な速さでは、フリラちゃんの方が上なのは言うまでもない。
そこに夜明けを迎えてしまった父ちゃん。(夕日だって!by母ちゃん)
もう、行ける気しかしないぜ!

そんなウキウキな父ちゃんに比べ、浮かない顔のショウゴ。
時は、一週間前の土曜日にさかのぼる。

父ちゃんとショウゴは、爺ヶ岳に向けてバイクの整備をしていた。
といってもやることはオイル&リアタイヤの交換とエアクリーナーの掃除だけ。
レース当日が、晴れでも雨でもゲコタでいくことに決めていたので、
さっそく、タイヤ交換に取りかかる。

まずは、ショウゴのリアタイヤからだ。
第1戦(プラザ)、第2戦(テージャスランチ)とチューブタイヤできたショウゴ。
この爺ヶ岳は、グリップを上げるためにフニャフニャムースとゲコタで勝負を掛ける。

しかし、チューブと違ってムースタイヤは、組むのが難しい。
それも、久々にやったものだからすっかりやり方も忘れている。
最後は、力ずくでビート部分を入れる。
その時、ピッシッと嫌な音が響いた。

見ればビート部分が少し裂けている。
じぃさん、これはまずいぞ、やり直そう!」とショウゴ。
試行錯誤を繰り返し、やっと組み上がったタイヤを前に
「大丈夫さ、ビートストッパーもあるし、何よりムースなんでパンクの心配もないはずだ!
と父ちゃん。
リアタイヤが爆発したらどうするんだ?」とショウゴ。

これだから素人は困る。
「チューブじゃないんだから爆発するはずないだろ!」
そんなやりとりを繰り返しながら爺ヶ岳に出発したんだな。

そして、やってきました爺ヶ岳。
昨年の最終戦と打って変わってカラカラ天気だぞ。
砂煙が心配なくらいだ。

【JNCC 第3戦】 渡辺学、開幕から破竹の3連勝[Response.15より]

日本最大のクロスカントリーシリーズJNCC。
第3戦は581台のエントリーを集めた爺が岳で開催。
COMP GPのAA1クラスは渡辺学が優勝を飾り、2位に矢野和都が入った。
鈴木健二はマシントラブルでリタイア、今季未勝利と苦しい展開が続く。
FUN GPは「これでFUN GP卒業。次からCOMPに専念」
と宣言した田中弘行が勝利し、有終の美を飾った。

(爺ヶ岳から見える山並み。雪が見えます)

まずは、FUNクラス。
今回のFUN-Aクラスは、13台といつもの爺ヶ岳と比べるとエントリー数が少ない。
といってもオールスターは揃っているので、厳しい戦いに違いはない。
しかし、夜明けを迎えた父ちゃんを止めることは出来ないぞ。
第1コーナーの真ん中に石が浮いているので、スタート位置をイン側に取って勝負に出る。


(スタート位置に集合するFUNクラス:スゴイ台数です・・)

そして、スタート!
第1コーナーまでで少し遅れるが、無理矢理イン側に飛び込み、
クルッと回ってイン側で立ち上がっていくと4位くらいに上がる。
上出来だぜ。

そのまま、ゲレンデを駆け上がるところまで順位を守る。
しかし、この登りの砂煙がスゴイ!
もうほとんど前が見えない。

思わず、アクセルを閉じる父ちゃん。
その横を何台ものバイクが抜いていく。
こいつらは、砂煙の中でも前が見えるゴーグルでもしているのか?
単なるバカか??
案の定、数台が転倒したり、吹っ飛びかけているが、抜かれた数の方が遙かに多い。


  (今回の一番の敵は、この砂煙!マジで見えません。怖いです!!)

ガレクライムに来る頃には、10位ぐらいか?
ここのためにフリラちゃんを買ったので、転ぶわけにはいかない。
ここでフリラちゃんは頑張った。
昨年よりもガレクライムが簡単に思えた。
そう言えば、この頃はエンデューロクロスの練習ばかりしていたので、
このぐらいの石だったら怖くないぞ。

(今回のガレクライムはこんな感じです)

ここで数台を抜きウッズに突入。
しかし、このウッズが難しかった。
まず、ラインが分からない。
迷うこと数回、転倒も数回。
ガレクライムの頑張りをあっという間に使い果たす。

その後に続くのが、ロックンロールリバー下り。
いける、いけるぜ!
ロックンロールリバーが平らに見えるぜ。
昨年は、ライン上しか走れなかったが、今回は右に左にラインを変えながら進んでいける。
いける、いけるぜ!

ゲレンデ部分にきて、スピードを上げると怖い!
石が浮いていたり、ギャップにハイスピードで突っ込むとマジ怖い。
1周目は、9位。

2周目のガレクライムもスイスイ。
ウッズで、転びまくり、ロックンロールリバーで挽回。
ゲレンデで、吹っ飛びかけてヒヤヒヤ。


  (ガレを登る父ちゃん) (ロックンロールリバーをスイスイ)

2周目は、10位。
ガレクライムスイスイ、ウッズで転倒。
ロックンロールリバーでヤッホー!
ゲレンデは、おっかなびっくり。

こんな感じであっという間にラスト1周(8位)
7位は目の前だ。
よし、いくで〜〜〜!とガレクライムに勝負を掛ける。
今日は、このガレクライムで1回も失敗していない。
いつもにもましてスピードを上げて登っていく。

とその時、ガレクライムの中間ぐらいで左側から真横に走ってくるバイクが一台。
「あぶない、あぶな・・!」と声が出た瞬間に真横から突っ込まれる。
そのまま2台とも転倒。

左足に激痛が走る。
突っ込んできたライダーが手を上げて謝ってくれる。
父ちゃんも手を上げて応える。

何とかバイクを立てて復帰。
しかし、あまりの痛みにまた転倒。
ラスト1周だ!と気合いを入れてバイクにまたがる。
でも、左足に力が入らないので、ちょっとした轍で転倒。
ウッズでも転倒。
ゲレンデでも転倒。

そして、ヘロヘロでゴール。
順位こそ変わらない8位だったが、足の痛みが尋常じゃない。
パドックに帰ってブーツも脱がずに横になる。

「どうした、じぃさん?」とショウゴ。
「ガレクライムで真横に走ってきたバイクにぶつけられた。
真横になんか走ってくる?
「じぃさん、前に進めないときは、俺もいったん横に進んでそのまま登ることがあるぞ。
それもひとつのテクニックだぞ。
まぁ、俺は、しっかりと登ってくるバイクを見てやるがな・・」
脂汗を流す父親にバカに冷静に説教をたれるショウゴ。
「だいたい、見通しが悪い訳じゃないんだから、ぶつかる前に何とかしろよ!」

夜が明けるはずだった爺ヶ岳。
母ちゃんが言うように朝日じゃなくて夕日だったのか?
このまま沈んでしまうのか・・。


(優勝した爺ヶ岳マスターのタナカさん、スゴイの一言です!)

COMPクラスの集合時間まで30分もない。
ショウゴは、さっさと準備をして行ってしまう。
ブーツを脱いでコールドスプレーで患部を冷やす。
左の足首が腫れているが、何とか歩けそうだ。
椅子とガソリンを持ってヒョコヒョコとピットまで行く。


(今回も現れましたショウゴ応援団!)

まずは、AAクラスのスタート。
リョウスケはすぐに砂煙の中に消えてしまった。

そして、ショウゴのAクラスもスタート。
ショウゴは、5位くらいだろうか?
まずまずのスタートだ。
ショウゴもすぐに砂煙の中に吸い込まれてしまう。

ゴール地点で椅子に座って還ってくるライダーを見る。
AA2クラス1位は、リョウスケだ。
リョウスケ、頑張れ〜!

Aクラスが還ってくるが、なかなかショウゴが現れない。
やっと現れたが24位。どこかで転倒したな?
後で聞いた話では、砂煙で前が見えないので、アクセル緩めたらみんなに抜かれた。

その後、ウッズからロックンロールリバーに降りるところで
フロントタイヤが木の根っこに当たって前転。
上から降ってきたバイクのステップが左足の甲に当たって
骨が折れた!」ってくらい痛かったそう。


(COMP-Aクラスのスタート。ショウゴは、スタートで出遅れたが、第1コーナーで挽回!)

   (苦しめられた砂煙!今回の魔物は、これだ!!)

ショウゴ、ここから挽回だ!まだまだ時間はあるぞ!!
しかし、みんなが還ってきた2周目。
ショウゴがなかなか還ってこない。
ゲレンデを一生懸命になって探していると
「おっと、1台のバイクがパンクして還ってくるぞ。
こりゃ、パンクと言うよりリヤタイヤが爆発しているぞ!」と実況放送が入る。

あ〜あ、2周目でパンク?かわいそうなヤツがいるもんだ。
だいたい、パンクを爆発!なんて大げさすぎるぜ・・

と思いながらショウゴを探す。

「じぃさん!じぃさん!!」急に後ろからショウゴの声がする。
パンクした、だから何回も行ったじゃないか!
リアタイヤを見れば、パンクと言うよりムースが飛び出して爆発している!

「こりゃダメだ。スペアタイヤに代えよう!」とヒョコヒョコとパドックに走る父ちゃん。
パドックに着く頃には、ショウゴがすでにリヤタイヤを外していた。
だから、あれほど言ったじゃないか!」とショウゴ。
聞こえないふりをする父ちゃん。

ここでひとつ不安がよぎった。
あれほどムースが吹き飛び、タイヤも外れ掛かっているのなら
ブレーキホースも傷ついているかもしれない?

恐る恐るリヤブレーキペダルを手で押してみるとスカッと入り込む。
あちゃ〜、こりゃダメだ。
ショウゴ、リタイアしよう、4サイクルなら広島のリョウスケのように
何とかエンジンブレーキを使って走ることが出来るが、2サイクルでは無理だ。」

だからあれほど言ったじゃないか〜!とにかく、スペアタイヤを付けてくれ!!
聞こえないふりをして父ちゃんが続ける。
「あの石が浮いた下りをリアブレーキなしで降りるのは難しい。
怪我をするよりリタイヤした方が良いぞ!」
このタイヤは止めようって何回も言ったじゃないか〜!

聞こえないふりをして、渋々スペアタイヤを組む。
でも、持ってきたスペアタイヤは、タカのバイクに付いていた使い込んでいたタイヤ。
1周走れば、ショウゴもあきらめが付くだろう。
怪我だけはしませんように・・と祈って送り出す。

もう、レースの成績どころではなかった。
とにかく、無事で還ってきてくれ!

AA2クラスは、リョウスケがトップを独走!
それどころか、総合でもまちゃを追いかけながらの4位だ。すごいぞ。
心配していたが、ショウゴは何とか走っている。

1時間35分で給油。順位は、44位くらいか?
「まだ走れそうか」と父ちゃん。
「下りが怖い。1速で降りていってもスピードが出て、
そこでフロントブレーキを掛けると吹っ飛びそうになる。
ゆっくり降りていくとフロントが弾かれる・・、それに左足も痛い!」
「とにかく無理をせずに行こう!」
だからあのタイヤは止めようと何回も言ったじゃないか!
聞こえないふりをして給油する父ちゃん。

結局、そのまま最後まで走りきって40位でゴール。
みんなが抜くときに
おいおい」とか「どうした、どうした?」とか嬉しそうに声を掛けていったそうだ。(笑)
それでも、無事に完走できただけでも良かった、良かった!

リョウスケは、ラスト1周の時点で総合3位!
こりゃ、AA2優勝どころか、大金星だ!
4位まちゃとの差は30秒。いけ〜、リョウスケ!!

しかし、何とラストラップのガレクライムで転倒。
その間にまちゃに抜かれて総合4位でゴール。(AA2クラス1位)
「苦手な爺ヶ岳でよくやったな!」とリョウスケに言えば、
「この頃は、いなべでエンデューロクロスの練習ばかりやっていたので、
コースが平らに見えた!」と笑う。

そんなリョウスケと対照的に
「左足の甲がズキズキする、折れたかもしれん」とショウゴ。
じぃさんが履かせたタイヤが爆発して足を怪我してしまった!」と説明し出す。
「おい!お前が足を怪我したのは、タイヤが爆発する前の1周目だろうが、
バイクには、まだ何も起こってないぞ!」

その後もショウゴは、みんなに
じぃさんが俺の言うことを聞かずに履かせたタイヤで怪我をした!」と触れ回る。
情けない・・こんな息子に育ては覚えはないぞ!

二人とも左足の怪我だったので、車を運転することに支障はなく、
沈みゆく夕日に向かって帰っていきましたとさ。
めでたし・めでたし?


  (今までは苦手な爺ヶ岳だったが、今回のリョウスケは、乗れていた!)

   (全然ダメだったショウゴ、夜明けはいつだ?)
(ご存じ、スタッフのナイトウさん、
スタッフの皆さん、いつもありがとうございます!)
(COMPのガレクライム。FUNより数倍難しいようです)

(AA2優勝のリョウスケ、エンデューロクロスの練習が良かった?)

   (ゴールするショウゴと爆発してムースが吹き飛んだリヤタイヤ!)