5 MM 授業実践力向上netより
今年も、島原 洋 先生のすばらしいまとめを紹介します。
◇ 平成27年度 第57回 指導と評価大学講座 受講記録
◇ 第1回 「教育評価概説」 応用教育研究所所長・文教大学学園長 石田恒好先生
◆教育評価の歴史
1 主観的評価の時代
・科挙面接法や論文体テスト・・・・評定者の主観に左右される。
2 客観的測定の時代 → 誰が評価しても同じ結果
(1) 教育測定運動・・・・ソーンダイクらの測定技術(客観テスト),標準化されたテスト
・標準テストの開発・・・・結果の解釈も客観的に行えるよう。
(2) 教育測定Educational Measurementとは
・観察,テスト等によって児童生徒の状態(能力,特性等)を明らかにし,できるだけ数量 的に表す。 → 「学力」は測定の対象であり,評価の対象ではない。
3 測定から評価への時代 ─教育評価の成立─
(1) 八年研究
・測定結果に基づいて教育がその目標実現に機能しているかを評価(Evaluation),点検, 反省し,改善するようになった。
(2) 教育評価Educational Evaluationの定義
・教育による目標の実現状況を測定し,それに基づいて教育(教師の指導,児童生徒の学数, 管理職の教育環境整備・管理運営)が目標実現のために機能しているかどうかを値踏みす ること。その後,不十分であれば点検,反省し,機能するように改善して,教育をし直し,
目標の実現を目指す。
(3) 評価(値踏み,点検,反省,改善)の目的とその対象・・・・どこがよくてどこがよくなかっ たか?
・指導目的 教師の指導
・学習目的 児童生徒の学習
・管理目的 管理職が行う教育環境,学級編制などの管理運営
・研究目的 行政・研究者のカリキュラム・指導方法等の研究・開発
(4) 教育のし直し─目標実現を果たすため─ → 低い値踏みの場合
・教師・・・・指導のし直し
・児童生徒・・・・学習のし直し
・管理職・・・・教育環境の整備・運営
・行政,研究者・・・・新しいカリキュラム,指導法等の開発・実施
(5) 教育サイクルでの位置
・P→D→S
・P→D→C→A
・O→P→D→E→O
P:Plan D:Do S:See C:Check A:Action O:Object E:Evaluation
(6) 評定あって評価なし ─評価が失われている状況─
・評価学者続有恒の評価の実情を嘆いたことば
・用語の不適切さ‥‥教育における「評価」と社会での「評価」との乖離
例:絶対評価→絶対評定 評価基準→評定基準 評価技術→評定技術
・憂うべき状況‥‥テストを実施して「評価」したと勘違い。「評価」をしないで次へ進 む教師が多いという実態。
→ 測定の結果70点となった。これを教育が機能しているかどうか値踏みする。
4 教育評価の消失(現在)・回復(これから)の時代
(1) 測定あって評価なし → 評価が失われている状況
1)世間一般の「評価」‥‥一語多義の典型
×彼を評価している。
2)教育における「評価」‥‥2種類
・評定valuation → 値踏みした結果を数値等で表すこと。
・評価evaluation → 機能しているかどうか値踏みすること。それに基づいて改善する。
数値のみを見て「評価」と誤解しないこと。
3)用語の正確化 → 絶対評価は「絶対評定」,相対評価は「相対評定」
(2) Assessmentの登場
1)Assessmentの定義
・測定,測定結果の表示,資料の収集・作成のこと。
2)AssessmentあってEvaluationなし
・Assessment の登場・・・・「評価」と訳されているが,PIAS が「調査」と訳しているように, 「評価」ではない。アセスメントをもとにしてその学習を評価する。
・必要な資料を集めて,教育的決定を適切に行えるように処理して示すこと。
・これを「評価」として扱うと,学力を測定して評価の資料を収集したのに,評価したと勘 違いし,本来の指導,学習を評価するという「評価」をしないことになる。
(3) 教育評価への回帰
1)用語の正確化‥‥一語一義,同語同義が絶対条件
・測定,調査,評価,評定などの用語を適切に使用する。
→本来の「評価」へ戻すことが大切。アセスメントは評価ではない。
(例)パフォーマンスアセスメントは,やらせて(行動)みて測る(測定)。
就学指導はアセスメントをしてそのこの進学先を決める。その結果がどうであったか→これが「評価」
・観点は評価の対象ではなく「評定」の対象。
・例 相対評価は相対評定,評価技術は測定技術,評価目標は測定目標,観点別評価は観点 別評定
2)訳語の適正化
・例 ルーブリックは評定の基準
◆評価の手順 ─適正な用語・訳語による─
1 評価目標の設定(共有,ユニバーサルデザイン)
(1) 指導目標(O)の全体を具体化し,それを母集団として抽出,設定する。
・完全習得学習の前提は,目標を可能な限り具体化・・・・指導の仕方が見えてくる。
(2) 具体化とは,すべての教師に指導の仕方が見え,測定の仕方が見えてくる状態。
・(例)7の段の九九を唱えることができる。
2 教育測定・・・・資料の収集(共有)・目標の実現状況の把握
(1) 測定技術の選択
(2) 測定技術の作成
(3) 実施・・・・妥当性・信頼性・客観性など
・Performance Assessment(パフォーマンス評価→実行・測定)
→生活課題解決場面で測定する方が「確かな学力」「活用できる学力」「生きる力」を測定
3 測定結果の表示と活用(共有)
(1) 評定
・評定基準…評定のよりどころ
・規準→目標(あり方)というよりどころ
・基準→評定(現実)のためのよりどころ
・ルーブリック→評価指標ではなく評定基準。事例で精確化。
(2) 評価Evaluation の核心
・教師……指導の値踏み→点検・反省・改善と指導のやり直し
・児童生徒……学習の値踏み→点検・反省・改善と学習のやり直し
・管理職……管理・運営の値踏み→点検・反省・改善
・行政・研究者・・・・カリキュラム,指導法等の値踏み→点検・反省・改善
◆測定技術(評価技術)
1 観察法─ 技能,行動,関心・意欲・態度の測定
(1) 行動描写法
(2) 逸話記録法
(3) チェックリスト法
(4) 図示法
(5) 評定法・・・・点数式評定,図式評定,記述評定
(6) 作品法・・・・思考・判断・表現の測定も
2 面接法─ ていねいで心がつながる測定─
・個人面接,集団面接など。カウンセリングの中心技法
3 質問紙法─ 行動・道徳,関心・意欲・態度の測定─
・自己診断形式・他人診断形式,自由回答法・制限回答法
4 教師自作テスト─ 知識,思考・判断・表現の測定─
(1) 論文体テスト
(2) 客観テスト・・・・真偽法(○か×か),多肢選択法,組み合わせ法(右と左を線でつなぐ), 単純再生法(答を書く・クイズ的),完成法(穴埋め)
(3) 問題場面テスト(実行場面テスト)
5 教育・心理検査・・・・知能検査,標準学力検査,性格検査,適性検査
(1) 非標準化検査との違い
・標準化(内容,実施,採点,解釈)
・内容 偏りがない
・解釈 学級・学校を超えて全国基準で。標準尺度で客観的に。
・妥当性,信頼性,客観性検証・保証されている。
◆教育資料簿・・・・補助簿
1 資料の個別化と蓄積
2 手帳よりファイル形式で ・ポートフォリオ
◆通信簿・・・・教育評価情報
1 学校と家庭が協力するための情報
2 本人・家庭にも記入させる。
◆指導要録
1 法定簿
2 様式と内容
3 用語の訂正
・例:評価を評定へ。公式文書のすべてを改訂する必要有り。
* その他(雑談の仲から)
○ 学力は「測定」の対象であり,「評価」の対象ではない。テストも「評価」ではなく「測定」
○ 通知表と通知票のちがい
票‥‥短冊,紙切れ,箋。進級,合格できたどうかを通知した紙切れ。回数多く出していた。
表‥‥表形式で結果を知らせる。
・写真は昭和18年の「通信箋」
◇ 第2回 「学習意欲の育て方とその評価」 筑波大学教授 櫻井茂男先生
◆ 学習意欲の育て方とその評価 ─「関心・意欲・態度」にも注目して─
1 学習意欲のとらえ方について
(1)「意欲」とは
「〜がしたい」 → 心理学の「動機」に近い概念 = 「学習がしたい」という気持ち
(2)学習意欲の分類
○自律的な学習意欲
→自ら学ぶ意欲,知的好奇心に基づく。おもしろいから学ぼうとする。
・内発的な学習意欲
・自己実現のための学習意欲(将来の目標を達成するため。意識的に学ぼうとする)
○他律的な学習意欲
・他者からのプレッシャー。仕方なく学ぼうとする。
(3)学習意欲を具体的な学習動機(理由)からとらえる
1)内発的な学習意欲
ア.興味・関心があるから イ.教材や本がおもしろいから ウ.内容を理解できる
ようになるのがうれしいから エ.好きだから
→ これら4点はいずれも授業づくりの際,とても役立ちそう。(筆者)
2)自己実現のための学習意欲
ア.志望する仕事に就きたいから イ.自分の将来に役立つから ウ.就職試験に必
要だから エ.充実した将来のために必要だから
3)他律的な学習意欲
ア.まわりの人から「やりなさい」と言われるから イ.しないと先生や親がうるさ
いから ウ.恥をかきたくないから エ.友だちにバカにされたくないから
*理解が難しい学習動機‥‥よい成績をとりたいから(学習意欲の階層性)
なぜよい成績をとりたいのか?2)なのか3)なのか?
(4)自律的な学習意欲の大まかなプロセス‥‥安心して学べる環境が大切
欲 求(知的好奇心・自己実現の欲求・向社会的欲求〈社会の役に立ちたい,
役に立ってうれしい〉)‥‥誰しももともともっている。
↓
自律的な学習意欲
↓
学習行動(情報収集・自発学習・挑戦・深い思慮・独立達成〈自分でやり遂げ
よう〉・共同学習・いわゆるアクティブラーニングなど)
↓
結果の認知及び感情(学ぶおもしろさ,自律感や有能感〈主に成功の場合〉・充実感)
↓
欲求や自律的な学習意欲へフィードバック
(5)自律的な学習意欲の特徴
1)発達的な特徴
・幼少期‥‥内発的な学習意欲 興味・関心に基づいておもしろい〜という理由で学習する。
・小学校高学年‥‥自己実現のためという気持ち 興味・関心や将来目標達成のため。嫌なことでも。
2)成果としての特徴
・思考力や創造力が高まり,学業成績(特に質的な面)がよくなり,精神的にも健康
・学業→仕事へとスムーズにつながるのではないか(健全なキャリア発達)
2 自律的な学習意欲の育て方について
(1)発達的な視点から
〈幼児期〉
ア.安定したアタッチメント(愛着)の形成
・主たる養育者との間に心の絆を形成 → 子どもが安心して生活できる環境を用意する
・母との絆は他者への関係へと発展する。
・友だち関係の構築・維持のスキル → 幼児期における獲得が基本 親が教える
(公園デビュー)
イ.旺盛な知的好奇心の充足‥‥2つの知的好奇心(一つのこと,いろんなこと)
・応答的環境を用意 → 会話による子どもの疑問への回答
・基本的に興味・関心のあることしかしない → できたらほめる(×アタッチメントがな いのにほめる)
ウ.基本的生活習慣の自律のサポート
・一人で食事ができる,衣服の着脱ができる,トイレに行けるなど基本的生活習慣の自律 → 自信
・これを背景に第1次反抗期がおとずれる。→できることを自己主張 できるようになっ たことを認める
〈児童期(小学校時代)〉
ア.体系的な教育(授業など)の開始
・授業が理解できれば学ぶことが楽しくおもしろくなる(機能的自律)。
・テストでいい点が取れれば有能感が高まり,意欲は高まっていく。
→ 興味・関心を喚起する授業,深い思考を促す授業が大切
イ.安心して学べる環境の形成
・級友との良好な関係の形成と維持をサポートする。
ウ.優越欲求のうまい充足
・級友と競争し勝とうとする気持ち(優越欲求)が強い。
・不得意な教科では自分の成長(個人内評価)を認めることも大事。
・敗者の気持ちが分かるという意味で,他者理解や共感が培われる。
・勝ち続けると優しくなれない。
エ.等身大の有能感の形成
・高学年では,「何でもやればできる」という万能感ではなく,「これはできるが,これ はできない」という客観的な自己理解
→ 等身大の有能感を形成することが大事
〈青年期初期・中期(中学校・高校時代)〉
ア.各学校段階における安心して学べる環境の形成
・安心して学べる環境は学習の基盤
イ.優越欲求と成長欲求のバランスのよい充足
・得意,不得意がはっきりしてくる。
・級友に勝つこと,自分が成長すること,それぞれのよさを理解することが重要
ウ.自己理解に基づく将来目標の設定
・二次性徴の発現により,自己に注目するようになる。思考能力は大人並み
・高い能力により自己分析が進み,自己理解が深まる。
・主たる興味・関心をベースに将来どうなりたいのか(職業)という将来目標が形成さ れる。
・達成のため,嫌な教科でも自律的に学べるようになる。
・この過程をサポートすることが大事。学業→仕事へのスムーズなつながりに寄与する。
エ.自学自習を支える能力の発達
・自己評価能力やメタ認知能力が発達
→自分で失敗を反省・激励するようになる,自分で成功を喜び,ほめるようになる
・生涯学習の基礎が形成されるようになる。
(2)対人関係の観点から
・安心して学べる環境として,良好な対人関係が重要。
・基本認識(内的作業モデル)の形成が大事
→幼少期において安定したアタッチメントを形成し,「自分が愛される存在であり, 他者は信頼できる存在である」
・教師が子どもにとって信頼できる存在であること
・教師が子どもの友達関係の形成・維持を援助する。
(3)報酬と評価の観点から
1)ほめることは大事であるが,ときには叱ることも必要
・小学校高学年くらいからは客観的な自己理解を促すためにネガティブな情報も与える 必要がある。 →信頼関係があれば,これもうまく機能する。
・ご褒美で学習意欲を喚起するのは無気力なときや他律的な学習意欲が強いときのみ
2)評価の面
・相対評価より絶対評価や個人内評価を
・自己評価が望ましいと言われるが,教師による評価は教育評価の基本→信頼関係が大事(4)教育の観点から
1)教師が子どもの手本となる
・自律的な生き方をしたり,子どもの自律性を支援する指導を
2)子どもそれぞれに適度な期待をする
・期待‥‥その子の能力と努力を認めること。
3)将来目標が持てるように自己理解を助け,インターンシップの利用を促す
*学業や仕事だけでなく,生活全般にわたり自律的であること(数多くのことを好んで自 分で決めること)が望ましい。すなわち,自律的なパーソナリティの持主になることが 理想と言える。
3 自律的な学習意欲の評価方法について
(1)動機(理由)から → 質問紙や面接など(1の(3)を参照)
・言われたからやっているのか,自分からやっているのか行動からだけではとらえられ ない。
(2)学ぶおもしろさや楽しさから → 質問紙や観察など(4の(2)の2)を参照)
・内発的‥‥表情や態度に表れやすい。
(3)将来目標から → 質問紙や面接など
1)自律的な将来目標 → 志望する仕事に就く,よりよい社会の実現,自己成長など。
2)他律的な将来目標 → お金持ちになる,有名になる,身体的に魅力的になるなど。
・見返してやりたい(小さい頃の体験の裏返し)
→ 他者にコントロールされている → 自分らしく生きていない → 幸せか?
4 観点別評価の「関心・意欲・態度」のとらえ方と評価方法について
(1)「関心・意欲・態度」とは
1)関心:学習内容に対して興味・関心を持つこと
2)意欲:自ら進んで学ぼうとする気持ち(狭義),あるいは動機(狭義)→ 学習→ 結果の 認知と感情というプロセス(広義)
3)態度:自ら学ぶプロセスが安定してみられること→関心・意欲があってのこと
(2)「関心・意欲・態度」の評価方法について
1)観察法 → 授業での発現,挙手の回数,私語の少なさなど
2)質問紙法 →(自己評価,ノミネート法)
ア.授業後の質問紙‥‥授業がおもしろかった,楽しかった,わくわくすることがあった, 積極的に取り組んだ →「思い」が中心
イ.学習意欲関連要因を問う質問紙‥‥よく考えた,問題はできるだけ一人で解こうと努力 した,友だちが分からないところは積極的に教えてあげた,どうしても分からない問題 は先生や友だちに質問した) →「学習行動」が生じたか?
ウ.ノミネート法による質問紙→数学の授業で意欲的に取り組んでいる人は誰ですか(数名 あげてもらう),授業の予習をよくしてくる人は誰ですか
→ 教師の知らない場面,客観的 要保護者の了解
3)面接法(本人・親・友だち)
4)その他 → ノートやワークシートの記述,宿題の提出
*大事なことは多面的にとらえること。さらに行動の意味は多様であることを知っていること。
◇講義3 学級集団づくりと学級リーダーの育成
早稲田大学大学院・総合科学学術院教授 河村茂雄
1 学級リーダー育成の考え方
○学級のリーダーの育成は,その児童生徒の人格・社会性の育成を目指してなされるもの
・教師が学級集団をまとめて教育活動を行うのに役に立つ「助教」のような児童生徒
○学級集団づくりを基にした学級経営は,
・自己管理力を自己教育力のある集団の形成に関与することを通して,すべての児童生徒に 自己管理力と 自己教育力を育てることが究極の目標
↓
・学級集団での活動や生活を通して,すべての児童生徒のリーダー性,フォロアー性を育てる。
1)すべての児童生徒にリーダー性,フォロアー性を学習させる。
2)支え合い,学び合い,そして高め合う学級集団の状態をつくる。
2 学級内のリーダーとフォロアーとは
○リーダーはリーダーシップを中心となって発揮する人‥‥仕切る子
・リーダーシップ → 集団に目標達成を促すよう影響を与える人
○フォロアーとはリーダーを補佐する人々
・フォロアーシップ → 集団の目的達成に向けて,リーダーを補佐していく機能
・単にリーダーの指示に従うというイメージではなく,意図を理解し主体的に自分の考えを 伝え,目的達成によりコミットする姿勢が求められる。
○学級集団が徐々に発達していく中で,特定の児童生徒たちをずっとリーダーとして固定し て学級集団づくりをしていくのか?
○多くの児童生徒たちにリーダーシップをとれる機会を設定していくのか?
3 目標となる学級内のリーダーとフォロアーの在り方
○学級集団が満足型学級集団の状況のとき
・すべての児童生徒が主体的に行動できるようになり,状況に応じて最もふさわしい児童生 徒がリーダーとなり,リーダーシップを発揮する。→ 適材適所
○リーダーは固定されておらず,すべての児童生徒が担当する機会があるとき
・そのときのリーダーを他のすべての児童生徒がフォロアーとして能動的に支えている。
→ リーダー経験者がアシストする。
○すべてのメンバーが学級集団の目標を理解し,集団の目的を達成するという意欲,当事者 意識と責任感が必要となる。
○リーダーとフォロアー,フォロアー同士の信頼関係が不可欠
○学級集団づくりと学級内の望ましい人間関係づくりは同義
4 学級集団づくり・学級リーダーの育成段階
・満足型学級集団は最初から存在するのではなく,段階をおって形成される。
・リーダー役割の体験は,最初からすべての児童生徒に同時に割り振られるわけではない。
・学級集団の発達段階に即して,集団としてまとまり,より良好な相互作用が生じるように, それにふさわしい児童生徒から徐々に展開されていく。,
・最終的に,すべての児童生徒が満足型の学級集団にコミットすることで,体験学習できる 機会を提供していく。
*どのようなタイプの児童生徒がリーダーか,どのような形でリーダーシップを発揮してい るのかを見れば,その学級集団の状態,学級集団発達の段階は自ずと分かってくる。
5 学級のリーダー育成のゼロ段階
○最低限の前提条件
1)学級集団全体で一斉授業や活動が,一応成立している。
2)学級集団の雰囲気や状況が,児童生徒個人の人権,学習意欲・行動にマイナスの影響を与 えていない。
→ ◎非建設的な児童生徒たちが学級のリーダーとして自己中心的な行動をし,集団 生活・活動を脅かしていない。
○ゼロ段階が達成されていない学級‥‥「荒れ始め型」「崩壊型」
○ゼロ段階を何とか維持している学級‥‥「かたさの見られる型」「ゆるみの見られる型」「拡 散型」
6 満足型学級集団を形成する教師のリーダー像,リーダーシップのとり方
○サーバントリーダーシップ(召使い)
・その組織の目標を明確にして,その達成を目指してメンバーたちを支援し,目標達成に導 く奉仕型のリーダーシップ
・リーダーは指示・命令を出してメンバーたちにやらせるのではなく,対話を通したリーダ ーとメンバー,メンバ同士の信頼関係に基づく良質なコミュニケーションを通してメンバ ーたちの力や意欲を引き出し,目標達成に向けた主体的な行動を促進する。
cf:トップダウン式の管理型リーダーシップ
○リーダーシップのとり方
・満足型学級集団を形成している教師はサーバントリーダーのスタイルで,共通するリーダ ーシップ行動を,学級集団の発達過程の各段階の特徴に応じて重点的にとっている。
7 学級集団づくりのゆらぎ
○学級経営について,教師たちのパラダイム(筆者:支配的規範となる「物の見方や捉え方」) が全生研の学級づくり以降乏しい。
・管理型学級にグループアプローチを部分的に取り入れる形で対処してきた。1990〜2000年代
・なれ合い型の学級集団も出現してこのスキーム(筆者:「枠組みを伴った計画」や「計画を伴う枠組み」)も限界に
○学級経営が混沌とした中で,教師たちは自信をなくしている。
・できない→意識から薄れている→重要視しない
・できている→個人的自信,名人芸→教員間で共有されない
8 学級経営の理論・方法論の混沌さに方向性を見いだす時期にきた
○うまくいっている学級集団にはどのような相互作用が働いているのか
○良好な学級集団はどのように形成されるているのか
○教師はどのような対応をしているのか
↓↑
○大規模な実態調査で2010年前後の学校現場の実態を整理して方向性を提言(科研女性研究)
・「日本の学級集団と学級経営」「学級集団づくりのゼロ段階」「授業づくりのゼロ段階」「学級 リーダー育成のゼロ段階」
○学級経営の力量の高い教員の,学級集団づくりの方法論は似ている! → モデルとする
9 Q-U 標準化された心理テストバッテリー Question(質問紙) Utilities(活用する)
○活用することが前提
1)居心地のよいクラスにするために
2)やる気のあるクラスにするために
3)日常の行動をふり返るアンケート,ソーシャルスキル
10 Q-Uの取り組みが目指すもの
○個の自律 → 集団生活・活動体験(できているのか?) → 社会人
↑ ↑
個人のAssessment 集団のAssessment
○児童生徒個人と学級集団のAssessmentが同時にできるのがQ-U
・学校教育の基盤の学級集団育成の支援 → 不登校・いじめ予防,学力向上,特別支
援教育の推進
○教員たちが同じ座標で子ども,学級集団をとらえることにより,具体的なチーム連携をす る第一歩としたい。
11 学級集団の状態のAssessment‥‥理想の学級集団の構造
○学習指導要領,学級経営に関する先行研究の整理から教師が望ましいと考える学級集団の 最大公約数
・必要条件
1)集団内の規律,共有された行動様式(ルールの確立)
2)集団内の子ども同士の良好な人間関係,役割交流だけではなく,感情交流の含まれた内面 的なかかわりを含む親和的な人間関係(リレーションの確立)
↓
・十分条件
3)一人ひとりの子どもが学習や学級生活に積極的に取り組もうとする意欲と行動する習慣
同時に子ども同士で学び合う姿勢と行動する習慣
4)集団内に,子どもたちの中から自主的に活動しようとする意欲,行動するシステム
12 学級集団を見る視点‥‥ルールとリレーション
○ルール → 集団で安心して生活するための基本的なルール
⇔ ‥‥このバランスがとれていると集団は安定する。
○リレーション → 安心して本音を言い合えるような人間関係
13 集団の発達段階による対応の変化 14 学級集団の発達段階‥‥省略
15 集団の発達段階による対応の変化‥‥省略
16 満足型の学級集団の教育的作用
・意欲の喚起 ・意欲の維持 ・モデル学習 ・活動する習慣
→アクティブラーニングが成立する学習集団の環境
→自ら考え,判断し,表現する力の育成や学習に取り組む意欲を養うことが教育理念
小・中・高等学校でも学習者主体の授業の展開が求められる。
17 アクティブラーニングの実質化
○学習者の主体的な学習参加があること
○学習者同士の能動的な相互作用による学習が生起されること
○学習者が安心して自分の考えや意見を発現できること
○学習者同士が率直に交流できる一定のルールの共有と人間関係がある環境が不可決
18 学習集団づくりとともに展開する学級リーダーの育成 その1
1)混沌・緊張期‥‥児童生徒たちの意識性を高め,方法を共有させる段階
教師がモデルとなる行動をとりながら児童生徒たちにそのような行動の意義を説明し,そ の方法を教えていく段階
2)混沌・緊張期〜小集団成立期‥‥コアメンバーを形成する段階
学級内の相対的に意識性の高い児童生徒たちが,教師の説明と行動をモデルにして行動し, リーダーシップをとるようになる段階
3)小集団成立期〜中集団成立期‥‥リーダーシップをとる児童生徒がローテーションしてい く段階
教師や意識性の高い児童生徒たちの行動が他の児童生徒たちに広がり,新たに意識性が高 まった児童生徒がリーダーシップをとれるようになる段階
4)中集団成立期〜全体集団成立期‥‥おとなしい児童生徒もリーダーシップをとれるようになる段階
まわりの児童生徒たちが能動的にフォロアーシップを発揮することができ,その中でおと なしい児童生徒もリーダーシップをとれるようになる段階
5)全体集団成立期〜自治的集団成立期‥‥すべての児童生徒がリーダーシップをとれるようになる段階
活動の内容に応じていろいろな児童生徒たちがリーダーシップやフォロアーシップを柔軟 にとれるようになる段階