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報告者  土 井

 2023年11月9日(木)社楽の会を布袋北学習等供用施設で開催しました 。

参加者(勤務校)は、土井(名古屋芸術大)、髙木先生(犬山北小)、木下先生(犬山西小、)、勝村先生(犬山中)、水野先生(犬東中)、田中先生(布袋中)の6名です。

 江南市立藤里小学校研究発表会を参観して
2 犬山市立東部中学校研究発表会を参観して
3 フェイクニュースというフェイクニュースを検証する
次回は 11月30日(木)18時から 布袋北学供です。
 
       

1 藤里小学校研究発表会を参観して

 10月27日に行われた藤里小学校の研究発表会。
 私も関わった宮田小学校・宮田中学校との小中連携は、これで10年経過しました。その間途切れることなく、研究が維持されていたことに対して賛辞を贈りたいと思います。
 今回のテーマは「未来を拓く藤里小の学び」、サブテーマが-1人1台 端末の活用を通して-というものです。
  まず目を引いたのは、 研究の仮説として「全ての児童」を主語にしているところです。 よく手を挙げる、発言して授業をリードする子を相手にした研究はいくらもありますが、誰一人取り残すことのない、全員を伸ばす研究に取り組むことは、これからの公立学校としての必要条件だと私は思っています。そのために1人1台端末を有効に活用することで、より実現に近づくと思っています。
 8月の現職教育で伺った時にノウハウをいくつか紹介しましたが、今日の授業で多くの教室でそれを見ることができました。
 教室には話し方・聞き方が示されていました。多くの学校で貼ってあるのですが、できているのは3割ほど。文部科学省も授業規律としているこれらの実現が、教師として、学校としての課題です。
 3年生の社会科では、前回の復習としてKahoot!が使われていました。単純に楽しめるほか 間違えても気にならないクイズアプリです。復習としての工夫とはとても有効だと感じました。終了後の切り替えも見事でした。
 教科係の指示で、前日までの復習を行っていました。これもとても有効だと思います。「振り返って次につなげる」ことは、ラーニングコンパス2030にも書かれている、主体的な学びの要素です。
 今回の課題であるガラス製品を作る工場が安全で快適な製品を作るために必要なものを、「原料、 工夫や努力、地域とのつながり」という見方で、どれが一番大切かをGoogleスプレッドシートに記入していきました。こうした形式はよくありますが、結論としては全部大切です。それを資料を使って論理的に説明できれば、社会科の授業として成立しています。
 教室の背面には 農業を学習した時に「工夫や努力がすごい」とか「地域との繋がりがすごい」など、各自がポスターの形でアウトプットしていました。この学びが今回の工場の学習でも生きていたと思います。
 教室前面には「振り返りシート」が貼られていました。今回の講師である磯部先生も講演の中で「語彙を与える必要性」を述べてみました まさにその通りだと思います。さらに、このシートは、振り返りの見方を教えるシートでもあります。初めはこうして型を教え、そして徐々にシートから離れ、自分本来の振り返りができるようになればと思います。今年の県社研で、私が発案したこのシートが理論に組み込まれていたそうです。お役に立てていれば幸いです。
 5年生は道徳の授業でした。友情について結構レベルの高い話し合いが行われていたと思います。その秘密として、背面にこれまで行った道徳の学びの足跡が大きく関係しているのではないかと感じました。45分通して見たかったと思いました。
 いくつかのクラスで、Classroomscreenで指名する場面を見ました。終了後、石井元教育長が、「大人しく、普段手を挙げないような子がClassroomscreenで当たったところ、意見をしっかりと述べていた」とおっしゃっていました。
 Classroomscreenの使い方は、「周囲と話し合ってください。誰があたるかわからないからね
と予告してあげることがポイントです。当たるかもしれないからしっかり情報を収集する、そうした条件設定はとても重要だと思います。また、ノルアドレナリンの効果も見過ごせません。
  一方では、相互指名が行われていました。私も一時やっていましたが、後で記録をまとめると、発言する子が一部に偏り、全く発言しない子もが多く出てしまいました。いろいろ試行錯誤しましたが、結局相互指名はやめました。見かけの授業は進むのですが、多くの児童の自己肯定感を下げてしまうと感じました。これは藤里小でも感じたことです。相互指名は、いかにも主体的なように見えますが、実は授業に消極的になる児童を生み出すシステムだと私は思っています。(うまく行っている人は教えてください。)全員を伸ばす「仮設1」と、主体性を伸ばす「仮説2」の両方の実現は、難しさもあるということを感じ取りました。
 藤里小学校では、振り返りを大切にしていました。
 磯部先生が言っていたように、「まとめ」と「振り返り」は違います。4年生では、振り返りをスプレッドシートに打ち込み、みんなの意見を読み合い、さらに教師が「〇〇さん、これってどういうこと?」と追発問している場面を見ました。振り返りは、共有することで、より学びが広がったり、深まったりする大切な過程です。また空欄が視覚化されるので、必ず入力しなければならないという必要感も生まれます。苦手な子には、教師が支援をしていました。そうして全員参加がなされていました。「振り返りレシピ」を作っているクラスもありました。こうしたアイデアはみんなで工夫し合って、改良を進めていけば、それが学校文化になっていくと感じました。
 今回素晴らしいと思ったのは、「ことばの教室」や「日本語教室」も公開されたことです。江南市の市会議員をはじめ、多くの人に見てもらえたことは、支援を要する子への支援の拡充のためにもよかったと思いました。2時間公開も貴重です。
 「Chromebook活用チェック表」は秀逸で、毎年、より高いものに更新されると思います。見える化、意欲向上の即効薬です。それにより、児童が素早くタイピングをする姿に感心している江南市議会議員を多数見かけました。ICT教育には、多くの市費も必要です。活用の姿を見てもらえたことは幸いでした。
 最後に、素晴らしい実践を披露していただいた藤里小学校の先生方、これまでの10年を振り返り、次の10年を作ろうとしている宮田中地区校の先生方に、熱いエールを送ります。
 


2 犬山市立東部中学校研究発表会を参観して
 11月7日に行われた東部中学校の学習公開。2020年、21年と現職教育に伺っていたので、その後の様子を見たく参観しました。
 テーマは「生きて働く力を育む生徒の育成」、 サブテーマが-考えをひろげ、深め合う活動を通して-です。

 初めに、理論の説明がありました。
 目を引いたのが、仮設 1と関わりますが、各教科ごとの見方、考え方がまとめられていたことです。
 全国の多くの研究では、見方・考え方をひとくくりにし、ほぼ意味をなさない研究が目につきました。
 東部中学校では、教科ごとに明確に示され、それが指導案にも位置づけられていました。特に秀逸だったのは、考え方を生徒によるイラストで表現されて、それが10類型のマグネットシートとして黒板の左端に貼られていたことです。 見方シートはよく見ます。私は考え方シートとして思考ツールを貼っていました。このイラストのシートは初めて見たものです。その内容の是非は検討が必要ですが、別の形のイラストも考えてみたいと思います。

 教科別では、例えば国語の見方として、「話す聞く」では〈情報・構成・表現〉、「読む 」では、大きく物語文と説明文とにわけ、物語文では〈 登場人物・構成・ 言動・ 場面・語り手〉、説明文では、〈キーワード・ 論理・ 要旨〉に分けられていました。考え方では、〈分類する、焦点を当てる、比較する、活用する、同じように考える、関係付けるなど 14の考え方が示されていました。左は数学の例です。
 ただ、生徒の意識化を図るために、授業中にこれらの見える化は、先ほどのイラストシート以外ではなかったように思います。
 その教科の授業時間だけで構わないので、教室に提示されていると、より有効になるのかと考えました。また、見方・考え方の研究が進んでいる社会科では、さらなる工夫の必要性を感じました。そもそも内容教科である社会科の見方は、多岐に渡ります。東部中では、地理は〈位置・分布・地形〉、歴史では〈 年代、時代の変化、結果〉、 公民では〈効率・公正・持続可能性〉とありましたが、当然それで足りるわけではありません。丹葉地区でよく行われている、見方カードのような見える化の必要性を感じました。とはいえ、道徳を含めた各教科でこれが作られたことには大きな意味があり、今回の研究の中でも大きな成果の一つであると考えています。

 「東中学びスタンダード」 も示されていました。今後も必要に応じて加除修正を加えつつ、実態に合わせて発展させていってほしいと思いました。
 
道徳スタイルも、教材により〈共感的な教材、 偉人に関する教材、 自然環境 伝統文化に関する教材、 モラルジレンマ教材、 社会問題に関する教材〉と、それぞれにスタイルが示されていました。私は、卵型や、クラゲ型、などと称していたものですが、この方がより学問的です。これもみんなで追試し、より良いものに磨いていってもらえたらと思います。

 仮説Ⅱには、「自己の学びを調整できる振り返り活動」というものでした。 私が伺った時に、振り返りは他社と共有してこそより学びが広がり・深まるとお話しました。東部中ではその点が意識され、他者と振り返りを共有し、その内容を自分の学びに活かすと示されていました。 振り返りのポイント・視点は、他校でも実践してほしい 貴重な実践だと思いました。
 ただ、社会科では、意見は端末の画面で交流されていましたが、振り返りは紙ベースで行われていました。この後、どう交流するのか疑問をもちました。
 
  仮説Ⅲの「心身の成長を促す 健康教育」は東部中 独自のもので、歴史のある取り組みであります。以前伺った時に、生徒の表情が柔らかく、人間関係づくりがよくなされていると感じましたが、その根っこに、この健康教育があったのかだと納得しました。今後も学校の文化として、大切にしてもらいたいと思います。

 仮説 Ⅳの「教師力の向上を図る取り組み」は思わず微笑んでしまいました。特にサークル活動はとても興味深く、遊び心もあり、昭和時代の現職教育が思い出されました。私も新人の頃は、現職教育といえば バレーボールなどのレクリエーションでした。今思えば、職場の同僚性を高める大切な手段だったんだなあと思い出すことができました。
 講演は、田中浩之先生。他の研究会でのつながりもあり、もう何度聴いたかわかりませんが、内容はいつもの感じでソフトな語りでした。ここに示された「深い学び」の技法20
は労作です。カテゴリーにはやや疑問を感じますが、理論としてわかりやすい。しかし、理論には実践が伴なわないと空虚です。これを、どう児童生徒のレベルで具体化するか、それが現場教師の仕事です。ぜひこれらを具体化して行きましょう。

 田中先生、東部中の先生方、素晴らしい姿を見せていただき、ありがとうございました。
 つくづく参加してよかったと思いました。
























3 フェイクニュースというフェイクニュースを検証する
 小学校5年生では「情報化した社会と産業の発展」を学習します。東京書籍では、次のように計画されています。
  1.情報産業とわたしたちのくらし(6時間)  2.情報を生かす産業(5時間) 
  3.情報を生かすわたしたち(4時間)
 情報産業とわたしたちのくらしのねらいは「放送などの情報産業で働く人々について,情報を集め発信するまでの工夫や努力などに着目して,聞き取り調査をしたり映像や新聞,インターネットなどの各種資料で調べたりして,まとめることで放送などの情報産業の様子をとらえ,それらの産業が国民生活に果たす役割を考え,表現することを通して,放送などの情報産業は,国民生活に大きな影響を及ぼしていることを理解できるようにするとともに,主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度や,学習したことをもとに情報の受け手として正しく判断することや送り手として責任をもつことが大切であることを考えようとする態度を養う。」
 11月5日のTBSサンデーモーニングが次のような放送をしました。
 イスラエルとハマスの紛争について、ハマス幹部をめぐりインターネットに投稿されていた画像について、「生成AIでつくられたフェイク画像」と放送したのです。
 視聴者の批判を受け、7日にHP上で「2014年以前から海外のネットニュースなどに出回っていた可能性が非常に高い」と微妙な訂正をしました。
 
Q1 取材を受けた人は、次のように言っています。
 ① TV局に「貧しくかわいそうな(     )が、強い(      )に攻撃されて  いるような絵(画像や動画のこと)がほしいがないか」と言われました。 
 (    )に、〈イスラエル〉〈ハマス〉のどちらかを入れなさい。
 ? TV局に「○○は・・・と言っているはずだから、その絵がほしい」といわれたので「多  くの動画を調べたけどありません」と答えました。
  そのあと、TV局はどうしたのでしょう? 正解 動画に違う意味の日本語の訳をつけた
Q2 送り手がこのニュースを流した目的は何でしょう?
 これ以後は、取材を受けた人からの問題です。
Q3 送り手は、送り手の意思に都合の悪い事実が起こったらどうするのでしょう。
  正解 報道しない自由の権利を行使する
Q4 送り手は、送り手に都合の悪い事実がネット上で流れたら何というのでしょう。
正解 「だからネットは信用できない」と開き直る
Q5 以上のことから、あなたが情報の受け手として感じたことを自由に書いてください。
 
 TVが正しいとは限りません。情報の受け手として正しく判断することを教えてあげてください。
 
恒例のシーズンオフシリーズは、
 1月25日 土井謙次   「織田信長はなぜ強かった?-将たる者に必要なものは-」
 2月15日 高橋宏滋 先生 「『やまなし』の真実」
 3月15日 早川浩史 先生 アメリカ関係