植物豆知識の頁 11

「オナモミの種子の不思議」

植物にとって種子は子孫繁殖のためのひとつの手段です。さつまいもは

通常では花を見ることはありませんが、川原のやせた土地などで栽培す

るとヒルガオに似た花がつきます。私たちが食用にする芋(貯蔵根)が

育ちにくいので種子を作って世代交代をしようとするのです。
サツマイモ の花
 
種子はこうした世代交代、子孫繁栄の重要な手段と言えます。種子であ

れば環境の変化に強く、環境条件の適するまで生き延びることもできる

のです。

日本で有名な大賀博士が咲かせたオオガハスは2000年前の遺跡から

出土した種子を発芽させたものです。また、栽培している人も多いと思

いますが、ツタンカーメンの遺跡から出たツタンカーメンの豌豆もまさ

にタイムカプセル、時代を超えて生きていると言えると思います。
 
さて、写真は野原に普通に見られるイガオナモミ(左)とオナモミ(右)

の実です。それを縦に切ってみると写真のように2個の種子が入っていま

す。秋に実ったこの種子はかぎ状のトゲでヒトや動物にくっつくなどして

様々なところへ運ばれます。地面に散ったこれらの種子はやがて条件が整

えば春には発芽します。これは他の種子植物でも同じです。ところがこの

オナモミの仲間は不思議なことに春には2個の種子のうち1個しか発芽し

ないのだそうです。もう1個の種子はもう1年後の春になって発芽するの

だそうです。もし、2個が同じ時に発芽し、成育の環境条件が不利だとす

ると生き延びることができません。片方の発芽を遅らすことによって生存

の確率が高くなるわけです。

自然の営みには実に巧妙にして不思議なことがあるものですね。