植物豆知識の頁 35

移動する?チゴユリ


チゴユリ

 

草花が生えている場所からまるで動物のように移動するということではありません。しかし、多くの草花

は種子を散布してやがて元の生育地とは異なる場所に新しい世代が芽生え育っていきます。このことはあ

る意味では植物の適合環境を求めての移動なのかも知れません。また、イチゴのように親株からランナー

を出してその先に新しい株をつくことや地下茎が地中を伸びてそこに芽をだすのことも同じだと思います。

しかし、種子が散った先で芽生えてもその草花が移動したとは思いませんし、ランナーや地下茎の先に新

しい芽生えがあってもこれまた移動したとは言いません。しかし、つぎのチゴユリの例はどうでしょうか。

チゴユリは実がなり種子もできます。だから種子で殖えることもできます。ところが実際には種子で殖え

るよりも地下茎が地中を伸びてその先に新しい芽を出すことの方が盛んなのです。この地下茎が伸びて新

たな個体ができるときに他の草花との大きな違いがあります。それは地下茎が伸びた後の親株が消滅する

ことです。新個体は栄養体生殖ですから親株と同じ形質、いわゆるクローンです。親株がなくなって別の

場所に同じもの、クローンが芽生えるのですから移動したとも受け取れます。ただし、私たちには地下茎

の様子は見えませんので新しい芽吹きとしか見えないと思います。また、チゴユリの地下茎は親株の近く

で芽を出すものと離れた場所まで伸びて芽を出すものとがあるので、親株の位置に目印でもつけて置かな

い限り親株の消滅すら気づかないのではないかと思います。