1997年(平成9年)度論文
-他とのかかわり合いを重視して-
刈谷市立刈谷東中学校 犬塚章夫
1 主題設定の理由
現代社会において、英語が果たす役割は多大なものになってきている。インターネットや海外旅行の普及で、さらに英語を使うことが身近なものになってきた。学校にもALTが派遣され、直接外国人と会話をする機会も与えられている。社会の要請は、とりもなおさず英語を使って意思の疎通を行うことができる力、つまりコミュニケーション能力の育成にあると言えるだろう。
一方、生徒の教室での様子に目を向けてみると、塾に行っていたりして、学校の授業で学ぶ前から学習内容を知っている生徒が多く、その動きが気になることがある。簡単な基礎練習の段階で意欲をなくしたり、逆に発言をする生徒がいわゆる「答を知っている生徒」に限られてしまい、まわりの生徒が自分で答を考えなくなってしまっている。そこで、どの生徒にも1時間の授業の中で活躍の場が与えられているような授業を仕組んでいく必要が出てくる。せっかく同じ教室で両者が学んでいるわけで、お互いが良い影響を与え合えるような雰囲気が必要であろう。
そこで私は、生徒同士のかかわり合いを授業の中に設定することで、どの生徒も活動的に授業に参加できるのではないか、実際の英語使用場面がイメージできるようなコミュニケーションの場を設定することで、コミュニケーション能力が育つのではないかと考え、「コミュニケーション単元」として授業を構成してみた。本論文では、2年生の授業実践を通して、他とのかかわり合いを通してコミュニケーション能力を高めることができる授業単元について考えてみたい。
2 研究の概要
(1)研究の仮説
仮説1…実際の英語使用場面がイメージできるコミュニケーション単元を仕組むことで、生徒の学習への意欲が高まり、コミュニケーション能力を高めることができるのではないか。
仮説2…単元を通して、他とのかかわり合いの場面を設定することで、どの生徒も活動的に授業に参加できるのではないか。
(2)研究の構想
ア、実際の英語使用場面がイメージできるコミュニケーション単元
(ア)単元構造図
次の資料1に示すような構造のコミュニケーション単元を設定した。単元の導入段階、中間段階、そして最終段階に、「実際の英語使用場面」がイメージできるALTとの会話が位置づけてある。それらは順に難易度を高める形で、3つのレベルとして設定してある。例えばレベル1は、ドルを使っての買い物をまず体験する場面。レベル2は、クリスマスのショッピングを少し意識させ、店を選んで買い物をする場面。そしてレベル3は、さらに店員との会話を楽しめるよう場面設定をした。またレベル1とレベル2の間の学習では、主に会話に必要な基礎表現を学習し、レベル2とレベル3の間では、さらに発展的な表現やリスニング・会話練習などを行い、レベル3の後では、読んでくれる相手を意識した自由英作文で単元をまとめることにした。

(イ)コミュニケーション単元を支える手だて
@ 実物の使用
1年で学習したハンバーガーショップでの買い物の場面では、日本円を使っての会話であった。そこで2年では、アメリカでの買い物場面をイメージし、実際のコイン(1・5・10・25セント)とドル札(これはゲーム用のもので、1・5・10・20ドル)を使うことにした。コインには数字が書いてなく、それぞれペニー・ニッケル・ダイム・クォーターと呼ばれている。それらの名前とともに、正しく小銭を出す練習なども行って実際の場面のイメージを持たせることにした。
A リスニング練習用ビデオ・テープ
ALTとの会話場面では、どうしても聞き取りが難しいので、そのスピードと言い方に慣れる意味で、ビデオやカセットテープで何回かALTの声を聞かせる場面を作り、聞き取り練習を行わせることにした。
B 暗唱用例文集「コミュニケーション・パターン」
買い物表現や道案内の表現は、教科書にもいくつか紹介されているが、それだけで十分とは言えない。そこで、補足的なもの(応用的なもの)も含めて、資料2にあるような、暗唱用例文集を作り、暗唱練習をさせることにした。例文は2往復の会話で構成してあり、会話内容で実際の使用場面をイメージできるようにした。
C インターネットの利用
最後のまとめの作文は、ただ書くだけでは意欲付けにつながらない。そこで、テーマにそって、実際にインターネットを通じてサンタクロースに電子メールを送ってみることにした。インターネットのサイトには返事を送り返してくれるものがいくつもあるので、いくつかのサイトに生徒のサンタへの電子メールを送ってみることにした。これで読んでくれる相手を意識して英作文に取り組むことができる。
イ、他とのかかわり合いをすすめる3つのステップ
独学ではなく、1つ教室で生徒が集団で学習している意味の最大のものは、お互いが個性を出し合い、助け合い、補い合いながら、高めていけるところにある。そこで次の3つのステップを授業に取り入れ、生徒が活動的に授業に取り組めるように考えた。
(ア)ステップ1「個の考えを持つ場」
英語では、テーマに必要な単語や文法事項・表現を覚えること、そしてそれを使って自己表現できる、つまり、英文を作ることができる力をつける場面ととらえた。自作の英語学習プリントを用いて、繰り返し単語や文法練習を行う機会を作ったり、教科書などの暗唱活動を重視している。
(イ)ステップ2「かかわり合いの場」
授業でのグループ学習を想定した。4人で1つのグループとし、お互いに教え合い学習をすることで、知識と技能を高める場面と考えた。文法練習や会話練習などの場面を1時間に10分程度取れるように設定する。
(ウ)ステップ3「自らを表現する場」
ALTとの会話を、身につけてきた技能を実際に試してみる場面と考えた。会話ではメモを見ずになんとか自分の言いたい事を表現する事を重視している。
(3)検証方法
本論文の主旨は、他とかかわり合うことで生徒がお互いにどう影響し合って、目指す個々のコミュニケーション能力の高まりに結びついていくかを見ることである。そこで、英会話への取り組みの様子から、@英文を作る能力があるか、A気軽に話しかけることができるか、の2つの要素の組み合わせから抽出生徒を決め、本単元を通して変容を調べることで、仮説を検証していくことにした。
3 研究の実践 「クリスマスのショッピングに挑戦」
(1)授業の実際
ア、ALTとの会話レベル1(1時間目)
いきなりALTとの会話で単元が始まった。まず簡単に単元のテーマを説明した後、本物のアメリカのお金を配ってその種類を説明した。前に述べたようにドル札はゲーム用の紙切れだが、コインは私が旅行に行った時に集めてきた本物のコインを使わせた。学習プリントでどのコインがいくらかを説明したが、数字が書いてないコインは生徒にとって区別しにくく、ものめずらしそうであった。
会話は、6人前後のグループに分かれて、隣接する「会話ルーム」に行き、テーブルの上に並んでいる物から好きなものを買ってくるという課題を与えた。生徒は、How much is it? I’ll take it.など最低限必要な英語を覚え、挑戦していった。お札は使いやすいが、コインは難しく、お札で支払いをして、お釣をもらおうとする生徒が多く見られた。それでも、何とかどの生徒も買い物ができたようだ。
会話の順番を待っている間は、コミュニケーション・パターンの暗唱時間とし、この時間は日本人英語教師(JTL)2人とALTとの3人のティームティーチングにしてあるので、サブのJTLが暗唱チェックを行った。暗唱例文は易しいものから順に並べてあるので、JTLの前に列ができるほど、意欲的に暗唱にも取り組んでいた。
イ、新出文法の導入と練習(2時間目・3時間目)
教科書Unit 7のStarting Outを学習した。2時間目は、There is の表現を学習した後、グループ学習で自由英作文に取り組ませた。グループ自由英作文とは、「4人で1グループとし、そのうちの一人が英作文の問題(日本語)を画用紙に書く、そして次の生徒がそれを英語に訳していく。できあがったら、またさっきの出題した生徒が次の問題を書き、別の生徒に渡す。」というように、一人の生徒が出題者となり、他の3人が解答者となる。分からない場合は、お互いに教え合うことにした。塾などでもうすでに知っている生徒も出題者になったり、他の生徒に教えたりと活躍の場面があったし、塾に行ってない生徒もアドバイスを受けながら英作文に取り組めていた。できあがった画用紙は英文をチェックした後、教室掲示をし、お互いに見合って参考にさせた。
3時間目は、教科書本文を暗唱したり、新出文法表現を使ったコミュニケーション練習をさせた。
ウ、クリスマスに関わるリスニング練習(4時間目・5時間目)
教科書のListen and Speakを学習した。教科書のListenのページは、クリスマスソングの紹介リスニングなので、以後毎時間クリスマスソングを英語で歌うことにした。そしてALTにカナダのクリスマスの様子を語ってもらったビデオをリスニングとして見せた。サンタパレードからクリスマスシーズンが始まることから、欲しいプレゼントの一覧表(クリスマス・リスト)のことも聞いた。そして、子供たちはサンタクロースを心待ちにして寝ること、サンタクロースにミルクとクッキーを置いておくことなど、興味深く異文化にふれることができるような情報を聞き取らせ、答えあわせをしながら解説を加えていった。
エ、道案内表現の導入と練習(6時間目)
教科書のAsking the Way(道案内)を学習した。道を他尋ねる表現と、その説明の仕方の表現を数多く導入した。次の授業(ALTとの2回目の会話)で、実際に使う表現なので真剣に練習し、表現を覚えようとしていた。
オ、ALTとの会話レベル2(7時間目)
2回目のALTとの会話では、クリスマス・リストにある物の中から1つを選んでの会話である。まず会話ルームに入って、自分の行きたい店(本屋・CD屋・服屋など)への道を尋ねさせた。生徒には地図を持たせ、ALTの説明する道順をメモしながらリスニングさせた。その後、買い物になるが、今回は机の上に品物を並べておくのではなく、隠しておいて生徒に「〜が欲しい」と言わせた。支払いもなるべくコインで払うようにし、課題の難易度を上げてみた。生徒はまず道順の説明に戸惑い、メモも十分できなかった。さらにコインでの支払いにも苦労し時間がずいぶんかかってしまった。
カ、長文の読解練習(8時間目〜10時間目)
教科書のRead and Thinkを学習した。この本文では、クリスマスソングの定番「きよしこの夜」誕生の秘密にかかわるエピソードを学ぶ。単語を導入し、本文の意味を理解するのもグループ学習を取りいれてみた。4人で順に一文ずつ日本語に訳していく。分からない場合は教え合いながら考えていく。教師は机間巡視をし、全体指導すべき英文を見つけ、授業の最後にまとめとして全体に説明をしていった。また本文の読み練習もグループ学習を取り入れてみた。4人で一文ずつ音読していく。読めない単語はお互いに教え合うことにした。
キ、新出文法の導入と練習(11時間目・12時間目)
教科書のUnit 8 Starting Outを学習した。ここでは比較表現(比較級・最上級)を導入した。ここでも2時間目と同様、グループ学習で自由英作文に取り組ませた。
ク、リスニングと会話練習(13時間目・14時間目)
最後のALTとの会話の準備段階である。2回目の会話の後、ALTと話し合いをしていくと、次の2つのことが生徒には不足していることがわかった。@リスニングの理解力不足。道順を説明しても、道筋を追ってメモしていくことができない生徒が多い。A簡単なひとことが言えない。例えば、店員にThank you.とかHave a nice day.と言われても黙ったまま去っていくとか、黙ってお金を支払うなどの行動が目立った。そこで、13時間目と14時間目を使って、その2点に絞り会話練習することにした。ALTに頼んで道順を説明しているカセットテープを2種類、難易度を変えて作り、テスト形式で聞かせた。次に店での買い物場面を想定したモデル会話を作り、それを全員に暗唱させた。さらにグループ学習で、ロール・プレイング(役割練習)させ、できるグループには単語や表現をオリジナルのものにどんどん入れ替えて練習させていった。
ケ、ALTとの会話レベル3(15時間目)
ALTとの会話の最終段階である。会話の内容は、2回目の会話と同様だが、店員との会話をより充実させ、たとえば「一番大きいものをください。」や「もっと安くしてください。」などの比較表現を使うように指示をした。3回目となると会話もかなりスムーズになり、比較表現を使って会話を楽しむ様子も見られるようになってきた。
コ、単元のまとめ英作文(16時間目・17時間目)
単元のまとめの授業である。サンタクロースがインターネットにホームページを持っていて、電子メールを送ると返事がもらえることを伝え、自由にメッセージを書かせた。書いた英文は、教師が学校の指導用パソコンから入力し、インターネットを通じて送信した。翌日には返事が届き、プリントアウトしてその生徒に渡した。もらった生徒は、何が書いてあるんだろうと、辞書を片手に興味深げに解読に取り組んでいた。
(2)検証と考察
先に述べたように英会話への取り組みの様子から、@英文を作る能力があるか、A気軽に話しかけることができるか、の2つの要素の組み合わせから次の2人の抽出生徒を決めた。
・英文を作る能力は高いが、会話に消極的になってしまう「S子」
・英文を作る能力は高くないが、いつも会話に積極的な「N子」
彼女たちの本単元への取り組みを通して、先に述べた2つの仮説を検証していきたい。検証には、生徒の授業日記(授業の感想と自己評価)、授業記録、まとめの作文を用いた。
ア、S子は、コミュニケーション単元を通して、学習への意欲を高め、コミュニケーション能力を高めることができたか
毎時間、授業日記に次の4つの項目を自己評価させた。
@
英語を聞いたり、読みとったりする力 (以後、「@
聞く・読む」と記述) |
S子の自己評価の変遷をグラフに表すと資料3(下のグラフ)のようになる。まず、A「話す・書く」の項目に注目してみたい。英文を作る能力が高い彼女は、2時間目や11・12時間目のように新出文法を学ぶ授業では、高く自己評価している。2時間目の授業日記「たくさん書いていると、だんだんスラスラ書けるようになってきた。」、11時間目の授業日記「難しそうに見えたけど、erとestとthanを覚えたら簡単だった。」にあるように、文法を学んだだけでなく、グループ学習での英作文練習が理解を助けたと考えられる。

会話が苦手な彼女であるが、3回の会話では、レベル1で自己評価が3であったものの、レベル2・3と自己評価は5になっている。授業日記を読んでみると、会話レベル1「無事終わってよかった。」、会話レベル2「ちょっととまどったけど、言いたい事が言えてよかった。あと、まけてもらったりもすればよかった。」、会話レベル3「前回より迷わないで言えるようになった。どんな物でも買えるようにしたい。」会話の回数をこなすことで、だんだん自信を持って会話に取り組み、さらに次の高いレベルへの意欲が表れている。実際の会話内容を見てみると、資料4にあるように、最初の会話では黙ってお金を出すなど沈黙が多かったが、最後の会話では動作にも英語がつき、全体にスムーズに会話が進んでいる。このことからも、会話への自信がついてきていると考えられる。またそのことは、彼女の単元のまとめにも現れており、「3回も(会話を)やると慣れてきて、3回目は、2回目に比べて言いたい事がまとまって、あんまり止まらないで言えた。」と書かれている。さらに、話をしたいという意欲は、自己評価の項目B「意思伝達」の変遷を見ても、やはり7時間目・15時間目の2回の会話で高くなっている。
資料4 |
会話レベル1 (Student S and Conrad) S: How much is it? |
会話レベル3 (Student S and Conrad) C: Can I help you? |
会話レベル1で、会話の難しさを体験したS子だったが、得意な文法練習が意欲付けとなり、次の会話への学習意欲へとつながっている。実際の場面をイメージとしての会話も、繰り返し表現を覚える練習をして取り組むことで、自信につながり、高いレベルの会話に挑戦したいという気持ちになっていったのではないだろうか。これらのことから、S子は、コミュニケーション単元を通して、学習への意欲を高め、コミュニケーション能力を高めることができたと言えよう。
イ、N子は、コミュニケーション単元を通して、学習への意欲を高め、コミュニケーション能力を高めることができたか
N子の自己評価の変遷グラフは、資料5(下のグラフ)にある。N子はS子に比べると、様々な授業内容によく反応し、意欲を高めている。単元の流れに沿ってN子の動きを見てみたい。

まず、会話の得意な彼女は、グループの中でもいつも1番最初に会話をしていた。資料6の実際の会話内容を見てもわかるように、彼女は会話レベル1で、早くも意欲的に「Discount, please.」という表現を覚え使っている。覚えたことをどんどん使ってやろうという意欲の表われであろう。自己評価項目B「意思伝達」も満点の5となっている。その一方、項目A「話す・書く」では、N子にとって最低の2となっている。「Discoun please.」の次のひとことが言えず、会話が終わってしまった反省が表れているのであろう。
しかし2時間目の授業で文法を学びグループで英作文練習をした時は、「今までと変わった文法を習ったということで、すごく勉強になった。」と授業日記にあり、自己評価項目A「話す・書く」も2から5に上昇し、意欲を高めた。
4・5時間目では、クリスマスの生活の様子などをリスニング教材として取り上げた。授業日記にも「外国のクリスマスはすごく盛大に行われているんだと思った。ハロウィンとかもあって、楽しそうだと思った。」「日本よりもすごく盛大にやるということで、すごくにぎやかなんだと思った。プレゼントもたくさんもらえていいなあと思ったけど、その分あげなくちゃいけないし…。」と興味を持っている。この興味は単元終了後も続いており、まとめの作文にも「今度はクリスマスも終わって2月くらいに節分についてとか、日本の行事についてどう思うか、とか知りたい。」と、異文化理解への興味へと発展している。
単元が進み、6時間目の道案内表現の導入から始ったリスニングは、N子を悩ます事になる。6時間目の授業日記「道を教えるのが難しいと思った。尋ねて聞き取るのにも同じくらい頭を使った。」から始り、13時間目「道を聞き取るのが難しいと思った。」14時間目「今日も道を聞くのがあったけど、全くわからなかった。」と、道案内の英文を聞き取ることへの難しさが語られている。しかし、リスニング練習として繰り返し道案内の英文を聞いた13・14時間目では自己評価項目@「聞く・読む」が最高の5になっており、このような練習の繰り返しへの意欲も表れている。
単元を通して、N子の会話内容を比べてみると、次のような事もわかる。(資料6参照)最初の会話では、沈黙が多く、黙って動作だけという部分が見られたが、最後の会話では、13時間目に行った会話練習の授業日記「お金を出す時とか、ありがとうとか、そういうちょっとした会話も大切なんだと思った。」にあるように、動作に言葉が伴うようになってきている。文法練習で学んだ比較表現も使われており、学習したことが活かされている会話であると評価できる。単元まとめの作文でも「会話をするのはすごく楽しいです。計3回もやったんだけど、どれも違う店へ行き、あきる事もなかったです。お金もちょうど出さなくてはいけない時は、ちょっとあせったけど、もうだいぶ使い方にも慣れました。」と、満足感が表れている。
最後に、単元まとめとして「サンタクロースヘのe-mail」を書かせたが、自己評価項目C「文化興味」を満点の5(16時間目)にするなど意欲を高めている。しかし、英作文はN子の苦手とすることで、授業日記にも「サンタさんをまだ信じていた頃のことを思い出した。その時はスラスラ書けたけどなんだか恥かしかった。英語で書くのは難しいと思った。」「書きたい事はあるんだけど、それを英語にすることが難しかった。」とあるように、書きたいという意欲はあるが英文がうまく書けないと反省が表れている。単元を通して学んできた表現が、直接「サンタへのe-mail」で使いにくかったのが原因の1つであろう。今回は、クリスマスと言うテーマからサンタクロースで意欲付けとしたが、文法のまとめとしてのテーマの選び方も考えていく必要を感じた。
これらのことから、N子は、コミュニケーション単元を通して、会話や異文化理解への意欲を持ち続けていたと言えよう。さらに会話に使われている英文も飛躍的に伸びており、英文を作る能力の低いN子であったが、コミュニケーション能力が高まってきていると考えられる。
ウ、S子とN子は、他とのかかわり合いの場面を通して、活動的に授業に参加できたか
普段もあまり口数が多くないS子は、グループ学習についての感想を授業日記に一度も書いていないが、副級長もやっているN子は、3時間目と11時間目の授業日記に「班でやるとすごく楽しい。」と書き、さらに4時間目に「予習してきた子がいてすごいと思った。」と友達を評価し、さらに11時間目に「先生の話を聞いて今日習ったことは理解して欲しい。」と友達を励まし、15時間目に「もうだいぶ会話はできてきたと思った。」と班員のALTとの会話を評価している。グループ学習では積極的なN子が、役割をよく果たしているようだ。
次に、14時間目のグループ学習の授業記録から、4人(S子・N子・W男・M男)の他とのかかわり合いがどう機能しているのかを考えてみたい。14時間目は前半でリスニング練習をした後、モデル会話文を暗唱した。短い会話文なので全員暗唱することができたが、グループ学習は、そのモデル会話をベースにオリジナルな会話文に変えていく練習である。暗唱ができているので、紙を見ないで、オリジナル会話をその場面のイメージで読んでいく練習である。グループ学習の様子は資料7のようであった。W男・N子がリードしてモデル会話文から部分修正し、M男の協力でオリジナル文を作り上げた。会話の練習ではお互いにペアを組んで練習をしあったり、練習の様子を見てアドバイスなどをしている。積極的なN子がW男と学習をリードし、口数は少ないが能力の高いM男が英文作りに貢献している。おとなしいS子は、話し合いなどにはなかなか加われないが、ペア練習にはまじめに参加していた。それぞれの生徒が持ち味を出し、学習を完成していったと評価できよう。
資料7 |
オリジナル会話練習のグループ学習の様子(「授業記録」より) 1、
N子・W男主導で会話内容設定、モデル会話の紙に修正を書き込む 2、
M男主導で、会話の終結部分を作り始める 3、
W男(店員)・M男(客)、S子(店員)・N子(客)で読みの練習 4、
それぞれ役割を交換してさらに練習 5、W男・M男の会話をN子がチェック |
一般的に他の授業での様子をあわせて考えても、一斉授業では、「わからない」と言って眠そうにする生徒も、グループ学習が始ると、友達の応援もあって活動に参加するようになった。気楽に話しができる雰囲気ができ、表情もやわらかくリラックスした様子も多く見られた。グループ学習の活動人数は4人がベストのようで、6人だと誰かにまかせる態度が現れてくる。4人だと全員が活動しなければグループ学習の課題ができないことが多く、効率的のようだ。
これらのことから、積極的なN子はグループの中でも話し合いをリードし、他のメンバーが活動できるよう配慮することで、消極的なS子はそれにしたがってまじめに活動に参加することで、活動的に授業に参加していたと考えられる。
4 まとめと今後の課題
今回実践した生徒の多くは、昨年度から学期に1度のコミュニケーション単元を経験してきている。コミュニケーション単元は1度きりの実践ではあまり大きな効果を見る事はできないかもしれないが、何度も繰り返し実施するうちに、会話への意欲やコミュニケーション能力が育てられてきていると感じる。今回の実践では、新たにグループ学習での「他とのかかわり合い」を取り上げて単元を実践してきたが、学級で同時に学習する意味は、やはりお互いに良い影響を与えある事であると確信できる結果となった。
今後の課題としては、3年間の指導計画の中にいかにこのコミュニケーション単元を位置づけていくか、どんなテーマで積み上げていったらよいのかをまとめてみたい。今回は、最後のまとめの英作文として「サンタへのe-mail」を取り上げたが、単元で学習した表現が十分生かされてなかったので、まとめの英作文が、テーマとしても、さらに文法確認としても機能するような課題を見つけていきたい。