1998年(平成10年)度論文


実践的コミュニケーションを体験させる英語授業
-自他とのかかわり合いを重視したコミュニケーション・プロジェクト-

刈谷市立刈谷東中学校 犬塚 章夫


1 主題設定の理由
 私たちを取り巻く社会は、世界を意識することなしには生活できない程の国際社会となっている。そこで私たちに求められているのは、実際に人と人との交流を可能にする実践的コミュニケーション能力であると言えよう。
 一方生徒の様子を見てみると、ALTとの会話を楽しみにはしているものの、ただ会話をするだけでは満足できなくなってきている。もっといろいろな人と話をしてみたいという気持ちを持ち始めた生徒も多い。その一方で、英語が重要視されるあまり、受験英語に熱を入れる生徒も多い。それにより、生徒同士が協力して授業を作り上げていくといった気持ちが教室に不足してきているようにも感じる。
 そこで私は、授業の中で生徒にALTと単に会話をさせるだけではなく、さらに進んで実際に英語を使った交流を設定することで、どの生徒にもコミュニケーションを図ることへの意欲を高めることができるのではないか、また、グループでの活動をその核として捕らえることで、自他とのかかわり合いの中でお互いを高めていけるのではないかと考え、授業を構成してみた。本論文では、3年生の授業実践を通して、実践的コミュニケーションを体験させる英語授業について考えてみたい。


2 研究の概要
(1)研究の仮説

仮説1……実際に英語を使った交流ができるコミュニケーション・プロジェクトを仕組むことにより、英語によるコミュニケーションへの意欲が高まるのではないか。
仮説2……プロジェクトを通して、自他とのかかわり合いの場面を多く設定することで、お互いに協力したり高めあう態度が身につくのではないか。

(2)研究の構想
ア コミュニケーション・プロジェクトとは
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 右に示すような構造のコミュニケーション・プロジェクトを設定した。この単元を通して、生徒には交流やグループ活動での自他とのかかわり合いの中から、外国や自国の文化とのふれあい・人と人とのふれあいを体験させ、「共生」という価値観を育てたいと考えた。この単元には二つの英語を使った実際の交流を組み込む。一つは文化祭での「国際交流会」であり、もう一つは単元を通して行う「電子メール交流」である。また、単元を通して3回、ALTとの会話体験も行い、交流活動をレポートにまとめさせていく。

イ コミュニケーション・プロジェクトを支える手だて
(ア)人と人がふれあう国際交流会
学んだ英語が本当の意味で活きてくるのは、直接外国人と話をし、自分の言いたいことが伝わり、相手の言っていることがわかった時である。そんな体験ができるのが、この国際交流会である。近くの大学から留学生を文化祭に招き交流することにした。各学年で交流を企画したが、3年では英語の授業で1学期学んだ日本文化紹介と相手の国についての質問を英語で行う実践的コミュニケーション活動として展開することにした。また、参加予定の各国について、挨拶などの現地語も調べさせ、使ってみることで、英語以外の外国語にも興味を広げさせたいと考えた。

(イ)全員が体験できる電子メール交流
国際交流会では全員が会話を体験することは難しい。すべての生徒に交流を体験させるため、インターネットを使った電子メール交流を考えた。自分が交流してみたい国を自由に選ばせ、その国に交流相手を見つける。インターネットが発達してきた今でこそできる活動である。その基盤として、生徒のメッセージを載せたホームページを作成する。そしてそれを世界に向けて発信し、交流相手を探していく。また交流の内容も逐次ホームページに載せ、交流を振り返れるように考えた。

(ウ)自信をつけさせるALTとの会話
 国際交流会で、初対面の相手と会話をするとなると非常に緊張する。その緊張感を軽減させるため、交流会の会話内容を三つの場面に分け、3回の会話体験でリハーサルさせていく。この体験を通して、国際交流会で会話をする生徒には会話への自信をつけさせることができるし、聞いている生徒にも会話内容を理解しやすくさせることができる。

(エ)単元をまとめるプロジェクトレポート
 この単元を通して生徒に考えさせたいのは、文化の違いを理解し互いに尊重し合える心である。そのため単元の最後にレポート作成を位置付け、単元を通して「日本の文化と外国の文化の違い」を考えさせ、そのテーマを追求していくことで目標に迫らせたいと考えた。

ウ 自他とのかかわり合いをすすめるグループでの学習
(ア)グループの編成

 生徒一人一人の興味関心を中心にグループを編成することを考えた。交流してみたい国が同じ生徒同士を集めてグループを編成する。人数は2人以上とする。いろいろな活動をするには、4人程度がベストであるが、気の合う者同士のグループが、意欲的な活動には必要と考えた。4人と人数を固定してしまうと、自分の交流したい国をあきらめなくてはならなくなる場合も考えられる。単元の1時間目に時間を与え、自分たちでグループを作らせる。グループ編成時には、全員が意欲的に活動できるよう、アドバイスしていく。

(イ)グループでの活動内容と活動場所
 のびのびとグループで活動をさせるため、教科書を学習する授業とグループ活動の授業を分けて行うことにする。授業は普通教室で行うが、グループ活動では、必要な資料や活動場所を確保するために特別教室を使う。グループ活動としては、各国の調べ学習や電子メールの読解と返事書きには図書室を使い、3回のALTとの会話やディベートの試合には大会議室を使う。

(3)検証方法
 本論文の主旨は、コミュニケーション・プロジェクトを進める中で、生徒の意欲や意識の変化を見ることである。そこで、英会話への取り組みの様子から、@英文を作る能力があるか、A気軽に話しかけることができるか、の二つの要素の組み合わせから抽出生徒を決め、本単元を通しての変容を調べることで、仮説を検証していくことにした。


3 研究の実践 
3年コミュニケーション・プロジェクト「Living Together(共生)」(22時間完了)
(1)授業の実際
ア コミュニケーション・プロジェクトと出会う(1・2時間目)
 単元への意欲を喚起するため、単元との出会いを大切にした。授業は図書室で行い、黒板に世界地図を掛け、カラフルな海外旅行パンフレットと各国情報の図書を準備した。まず単元テーマ「日本と外国の文化の違いを知る」と授業の流れを説明し、交流してみたい国を決めグループを編成した。メンバーが決まったら、資料を読ませ、ホームページに載せるためのメッセージ作りに取り組ませた。できたメッセージは、ホームページにまとめ、インターネットの国際交流のページなどを通して世界に発信し、交流相手からの返事を待つことにした。
 生徒は楽しそうに地図や資料を見て話をしていた。最初のメッセージの内容は、「カッパドキアってどんなところですか。」「キムチは毎日食べるんですか。」など観光地や食べ物に集中していた。また、サッカーファンが多く、自分の知っているワールドカップで活躍した選手名などを話題にする生徒も多かった。まず交流の楽しさを味わわせるため、自分の興味のある身近なことを話題にして、簡単な内容で数多くメールのやり取りをさせていくことが大切だとわかった。

イ 教科書でアイヌ文化を知る(3〜6・9・10時間目)
 教科書Unit6では、アイヌ文化について学ぶ。単元テーマとの関連で、日本の中にも違った文化が存在することも伝え、自然との共生についても考えさせたいと思い、アイヌ語や神話の資料も用意した。
 「アイヌの人々の生活がよくわかった。」と、生徒は内容にも興味を持ったようだった。生徒の興味を喚起するには、教科書の内容だけでなく、追加資料も効果的だとわかった。

ウ 第1回英会話体験で各国の現地語を使う(7・8時間目)
 1回目の会話体験では、英語以外の外国語にも興味を持たせたいと思い、各国語の挨拶を使わせ、既習の「〜に行ったことがありますか。」という表現を用いて会話をさせた。
 準備に1時間使ったが、生徒たちは外国の言葉に非常に興味を持ち、「ニイハオ」「アンヨンハシムニカ」「アディオス」など、各国の言葉を言い合っていた。紙を見ながらではなく、自然に暗唱して友達同士で会話している姿が印象的であった。興味関心が高まれば、自然に使ってみたいという気持ちが生まれることがわかった。
 会話の授業では、ALTのキア先生に各国の人になってもらい、生徒が話してくる各国の言葉に返事をしてもらい、その後英語で会話をしてもらった。生徒たちは、非常にうれしそうに覚えてきた各国の言葉を使っていたのが、印象的だった。例え挨拶言葉でも、自分の力で調べ活用できることは、生徒にとって大きな力になることがわかった。

エ 電子メールから各国情報を読み取る(11・14時間目)
 1回でも多く電子メールの交流を体験させたいと思い、単元中の2時間を、メールから各国の生の情報を読み取り、返事を書く時間として確保した。単元が進むにつれ、徐々に生徒のメッセージへの返事が集まってきたので、交流相手が見つかった国については、メールを渡し、返事を書かせた。相手が見つかっていない国については、図書資料などの調べ学習を続けさせた。またこの2時間の授業以外にも、メールが着いたらすぐに渡し、放課などに返事書きをさせていった。最初は、食べ物や趣味の話題が多かったが、交流が進むにつれ、日本と外国の文化の違いに話題をもっていくようになってきた。
 生徒は、返事のメールが来ると非常によろこび、食い入るように英文読解に取り組んでいた。わからない単語は辞書を調べたり、質問に来た。返事の英文にも意欲的に取り組み、「先生、これであってる?」と添削を求めてきた。授業以外の場合にも、宿題という雰囲気はなく、自然に英文を読み、英文を書いていたのが印象的だった。学習意欲が本当に高まった時、生徒は進んで学習に取り組むことができることがわかった。

オ 英語でディベートに挑戦する(12・13・17〜19時間目)
 教科書Unit7では、英語による討論を学ぶ。ディベートを体験することで、日本と英語圏の文化の違いを考えさせたいと思い、実際に英語の簡易ディベートに取り組ませることにした。授業では単元テーマと関連させて、「日本国内旅行と海外旅行、どちらがいいか。」というテーマで行った。奇数班は国内旅行派、偶数班は海外旅行派と決め、自分たちの意見と相手の予想される意見を考え英文にし、討論の準備をさせた。ディベートは3回戦行ったが、教室を大会議室に移動し、三つのテーブルで同時に行わせた。
 英語のディベートはかなり難しく、準備した英文を話すことができても、相手が何を言っているのか理解するのに苦労をしていた。英語の力を持った生徒がいきいきと活動していたことに注目したい。高いレベルの知的好奇心を喚起することも必要だとわかった。

カ 第2回英会話体験で日本の遊びを紹介する(15・16時間目)
 文化交流では、相手の文化を理解することばかりでなく、自国の文化を紹介することも大切だと思い、日本文化の紹介をする場面を国際交流会の会話に位置付けた。言葉だけではなく、動作を伴った説明ができるよう、日本の伝統的な遊びを紹介させることにした。授業は、来日していたALTキア先生のお母さんを教室に招き行った。剣玉・羽子板・こまなどを準備し、それらを初めて見るキア先生のお母さんに英語で遊び方を説明させた。
 1時間で、説明する物を決め、英文を考えさせた。1学期の授業でも何度かやっているので、生徒はかなりすらすらと要点を押さえて説明文を作り、実演も含めて楽しそうに活動していた。キア先生のお母さんにとっては、初めて見るものなので、反応がよく、生徒も説明するかいがあって楽しそうだった。特に剣玉やこま回しの得意な生徒はいきいきと実演をしていた。体験と自信が会話には大切であるとわかった。

キ 第3回英会話体験で文化の違いをたずねる(20・21時間目)
 単元最後の会話体験では、この単元で追求してきた文化の違いについて会話させようと思い、「日本ではこうですが、あなたの国ではどうですか。」という文化比較の内容で会話させた。日本文化紹介の会話では同じ物を説明する班があり、会話を聞いている生徒の意欲を減らしてしまったので、今回は同じ質問にならないように、食べ物について、正月の過ごし方について、学校生活についてなど、話題を変えて行わせた。
 文化の違いについての説明を聞く会話なので、今までの会話より聞き取りが難しかったようだ。それでも、質問をした班は、その内容についての基礎知識があるので、他の班より理解できていたようだった。リスニングにおいては、その話題での基礎知識の有無が大きく関係していることがわかった。

ク 国際交流会で練習の成果を披露する(特別活動)
 韓国・中国・モンゴル・タイ・マレーシア・ロシアと、6カ国からの留学生を迎え国際交流会が行われた。3回のALTとの会話での体験を活かし、各国語での挨拶、日本の遊びの紹介、日本との文化の違いについての質問を各クラスの代表班が行った。
各クラスの代表という自信もあってか、緊張しながらも、しっかりとした口調で会話に取り組めていた。遊びの紹介で、相手に説明が通じて相手がうなずいてくれた時や、本などの資料で調べて覚えてきた各国の言葉が、実際にその国の人に通じて返事が返ってきた時に、生徒が非常にうれしそうな顔をしていたのが印象的であった。言語学習においては、自分の発した言葉が相手に「通じた」という喜びが、なによりの意欲喚起となることがわかった。

ケ プロジェクト・レポートで交流をまとめる(22時間目)
 電子メールの交流などからわかったことをB4サイズ1枚にまとめさせた。話題をしぼり、読んでもらうことを意識してイラストなども入れながらまとめさせた。
 生徒は、レポートをまとめるため、今までのメールを読みなおしていたが、資料がばらばらになっていて、交流内容がうまくまとめられない班もあった。楽しそうなレポートが数多く仕上がった。追求のまとめをレポートなどに書くことで、情報を整理する力が高まっていくことがわかった。

(2)検証と考察
  先に述べたように英会話への取り組みの様子から、@英文を作る能力があるか、A気軽に話しかけることができるか、の二つの要素の組み合わせから次の2人の抽出生を決めた。
・ 英文を作る能力は高いが、会話に消極的になってしまう「A子」
・ 英文を作る能力は高くないが、いつも会話に積極的な「B子」
彼女たちの本単元への取り組みを通して、先に述べた二つの仮説を検証していきたい。検証には、次の資料を用いる。生徒の授業日記(授業の感想と自己評価……自己評価は、毎時間「コミュニケーションへの意欲」はどうであったか、10段階で数字に表した。22時間の自己評価点の推移をグラフにまとめてある)、授業記録、まとめの作文、アンケート。


ア A子は、プロジェクトを通して、コミュニケーションへの意欲を高めることができたか1998paper02.jpg (36193 バイト)
  授業日記に自己評価させたコミュニケーションへの意欲の変容グラフを見てみると、単元開始以来、徐々に点が増していき、8時間目の第1回英会話で満点に達している。以後、9時間目と20時間目に少し下がるものの、満点をずっとつけ続けている。意欲が高まっていく過程を詳しく見てみよう。1時間目の意欲点は6であったが、2時間目で8に上がっている。2時間目の授業日記には、「フランスの知らなかったくらしをたくさん知ることができた。びっくりすることやうらやましいことばかりでてきた。」と、書いている。ホームページに載せるメッセージを書くために調べ学習をしたことが、興味を高めてきているようだ。以後しばらく意欲点は8を続けるが、6時間目で9に増える。この日の授業日記には、「来週には交流できるとわかったのでうれしかったです。」と書いている。ALTとの会話が楽しみになって意欲が向上してきたことがわかる。そして8時間目の会話の授業で意欲点も10になった。会話に消極的であったA子であるが、この日の授業日記には、「つまってしまって上手に会話をすることができなかった。もっと上手になりたいです。」と書いている。会話への意欲が高まってきている。
  意欲点はその後8時間目の会話の授業以外9であったが、10時間目を境に、10点満点を続けていく。この理由を分析してみる。A子の班はフランスとの交流希望であったが、交流相手が見つからず、7時間目であきらめて、マレーシアとの交流を始めた。

こうやってフランスのCecileさんとの交流が始まってから彼女の意欲は10を続けていく。11時間目のメールに返事を書く授業では、次の様にメール交流への期待を表している。「日本の文化を教えるのは難しかったけど、相手国のことを知れるので楽しみだ。」また15時間目の日本文化紹介を準備する授業の授業日記に次の様に書いている。「日本の文化を紹介するのは、たいへんだ。紹介することで、自分がよくわからないことも知れるので楽しい。」交流への期待が、会話への意欲へと引き継がれてきている。また先のメールから得た情報の印象は強く、21時間目の第3回会話体験でも話題を学校と決めた。  

そして、21時間目の第3回英会話を終えて、A子は次の様に振り返っている。「カナダの文化を知れた。今まで知らなかったことをたくさん知れてよかった。でも難しかった。」依然会話への抵抗はあるものの、会話を通して情報を得たことへの満足感が表れている。
これらのことから、A子はメール交流への期待感からコミュニケーションへの意欲を持ち始め、フランスのCecileさんとの実際の交流をきっかけに、強い意欲を持ち続けるようになったと言える。


イ B子は、プロジェクトを通して、コミュニケーションへの意欲を高めることができたか1998paper03.jpg (36580 バイト)
B子のコミュニケーションへの意欲の変容グラフを見てみよう。会話に対してもともと積極的なB子は、単元の導入とともに高い意欲点を続けている。実際には10点満点なのに、7時間目のキア先生との会話準備の授業で「10+10」、11時間目と14時間目の電子メールへの返事書きの授業では、「10+5」「100」、16時間目のキア先生のお母さんへの日本文化紹介の授業では
「100」と記入している。B子が電子メールでの交流やALTとの会話の授業に、非常に意欲を高めている表れであろう。
 逆にB子が意欲をなくした19・20時間目を分析してみたい。19時間目は教科書本文の内容把握を行った。ゲーム的な要素を入れて行ったが、内容が難しく意欲が高まらなかったようだ。次の20時間目の授業で、意欲点が8に下がっているが、理由は第3回の会話体験の相手が、西三のブライアン先生であることのようだ。B子は、以前にもブライアン先生と会話を経験しているが、英語が聞き取りにくく、苦手としていたからである。会話の授業の日記に、B子はこう書いている。「あまりよく聞き取れなかった。でも楽しかった。」やはり聞き取りが難しかったようだが、会話には満足しているようだ。
  学習内容により意欲が高まらなかった授業もあるが、B子にとって交流が中心のプロジェクトは非常に意欲を喚起するものであり、コミュニケーションへの意欲は高まり持続していたと言えよう。


ウ A子はプロジェクトのグループ活動を通して、協力したり高めあう態度が身についたか
 A子のグループは4人で、4人ともコミュニケーションに対して活発とはいえないおとなしい雰囲気のあるグループである。他のメンバーは、C子(英語の学力高い)D子(学力やや高い)E子(学力低い)とう構成。日頃から仲の良い4人なので、グループ活動では協力して作業を行うことができた。単元を振り返ってグループ活動の感想を聞くと、グループの4人は、こう書いている。「グループで協力して訳をやったり、会話文を考えたり、まとめのレポートをどんな風にした方がいいか考えたりすることができた。ほとんどのものを協力して、意見もそれぞれ言うことができた。A子」「順番に手紙を訳していったので、協力はできた。英語の文章を作るのが苦手な子は、日本語で文を考え、得意な子がそれを英文にしていった。C子」「誰かが辞書を調べて、誰かが文章を書いてなど、けっこう協力できたと思います。一人にまかせっきりになることもあったけど。D子」・「自分はあまり役に立っていなかったように思う。自分が苦手なものでも自分から取り組んでいかなきゃと思いました。E子」学力が高い方のA子C子D子は、英文を解読したり英語で手紙を書く作業を積極的にやることができ、かなり満足しているようであるが、英語が得意でないE子はあまり貢献できなかったことを反省している。しかし、C子が言っているように、E子も手紙の内容を日本語で考えるという形で参加できている。みんなで作業を進めたいという気持ちがその分担に表れていると言えよう。
 ALTとの会話への取り組みを見てみると、それぞれ次の様に言っている。「うまくいったと思う。だけど一人一文ずつぐらいだったので、もう少したくさん話す内容を考えておけばよかったと思います。A子」「グループ活動はみんなで協力してうまくできたけど、話す時になると予定通りにはいかなくてあせった。C子」「文章を作ったりどこを読むか分担したり、とてもスムーズに決まったと思う。D子」・「日本の物なのに質問を言われると、ちょっととまどってしまった。会話の時の質問にすぐ答えれるようになりたいと思った。でなきゃ使う時会話にならない。E子」会話への準備としてのグループ活動は順調であったが、いざ会話となると緊張感も手伝ってか、相手の質問に即座に答えることができなくて困っていた。英語が苦手なE子が「質問にすぐ答えれるようになりたい。」と意欲を出しているのが印象的である。自分の能力を卑下することなく、意欲的に考えられたのも、困った時もグループの誰かが助けてくれるという安心感があったからだろう。
 A子のグループは、4人という人数も適度であり、お互いにできることで仕事を分担し、お互いを尊重している雰囲気ができていた。


エ B子はプロジェクトのグループ活動を通して、協力したり高めあう態度が身についたか
B子のグループは6人で、ほとんどがコミュニケーションに対してかなり活発にできるグループである。仲の良い6人グループだが、英語が不得意な生徒が多く、なかなか活動が始まらなくて心配をした。他のメンバーは、F子(英語は得意)G子(学力中位)H子・I子(学力下位)J子(学習意欲少ない)という構成。
 電子メールの英文解読や返事書きでは、グループ活動についてこう言っている。「うまくいったよ。まあ一番がんばったのはB子かな。B子」「人数分メールがなかったので個人でやりにくかった。グループで集まって皆で訳すのはムリだった。F子」「紙が1枚しかないから、大人数だと自分で自由にできなかった。G子」
「一人一人がやってる。H子」「英文がうまく訳せなくて、ちょっと苦労した。I子」・「(アンケート未提出)J子」6人という人数だと、グループ活動が難しくなる。英語ができる生徒は自分なりにやりたいが、他の生徒のことも考えると自分だけで進められないもどかしさがある。G子は、次の様に感想を述べている。「なるべく小人数のほうが自分を出せるが、多人数だとやれない人が出てしまい、まとまらなくなる。」会話への意欲は高いメンバーであるが、打ち合わせが十分でなく、ALTとの会話にも準備不足のまま突入してしまった。アンケートには次の様にある。「最高だった。また外人を呼んでほしいと思う。B子」「一番初めの失敗を生かして、2回目からは少しがんばってやりました。でも、もう少し自由に会話ができたらよかったです。F子」「グループの集まる時間がなかなかとれず、完璧にまとめられず、失敗に終わってしまった。G子」「うまくいったけど、前に出ると言葉を忘れてしまう。H子」「なかなか良かった。でも日本の文化を伝えるとき、私たちはあんまり日本の文化を知っていないような気がした。I子」・「(未提出)J子」授業日記に現れる一人一人のコミュニケーションへの意欲は高く、個人的にはどんどん会話したいという気持ちがあるようであるが、グループで型の決まった会話をするには話し合いがうまくいかず、準備が十分できなかった。しかし、話し合いの時にお互いに相手のことを考え、自分だけがまわりを無視してやるのではなく、メンバーに「私がこれやる。いい?」と了解を取りながら分担を決めており、最後のレポートも絵の得意なB子が中心にまとめてきた。
 B子のグループは人数が多く、活動しにくい部分はあったが、彼女たちの持ち味を出せていた。自分の気持ちが素直に出せる仲間の中で、英語の能力の低い者も嫌な思いをせず、英語が得意な生徒がうまくカバーしていた。


4 まとめと今後の課題
 今回実践したコミュニケーション・プロジェクトは、生徒の意欲喚起という意味で非常に効果があった。グループ活動を多く用いたことも、一人一人の生徒の持ち味を生かし高め合う活動となった。それは、単なる会話ではなく人と人とのふれあいを求めた交流と、人と人とのかかわり合いの中で学びを高め合うグループ活動を単元の核として仕組んだことが、うまく機能したからではないだろうか。

 今後の課題として次の二つのことを考えていく必要がある。まず、国際理解を考えていく時、I子が「日本の文化を伝えるとき、私たちはあんまり日本の文化を知っていないような気がした。」と言っていたように、自国文化理解にも目を向けていく必要がある。また今後、インターネットなどの物理的環境が整ってくれば、今回教師主導で行ってきた電子メールの交流も、より生徒自らの活動に変えていく必要がある。
 今後も英語の授業で、どう交流を核とした単元を仕組んでいけるのか、3年間の学習段階を踏まえて考えていきたい。