コミュニケーションを意識した英語プレゼンテーションの授業
-1年単元「未成年の主張in
English」の実践を通して-
刈谷市立刈谷東中学校 犬塚 章夫
新学習指導要領によると、新しい授業として「総合の時間」が始まることになった。その授業では、今まで以上に自ら求め学ぶ姿が求められる。そして個人追究などで得た知識をお互いに共有するために、情報を他へ伝える場面が多くなるであろう。実際、企業などでも最近「プレゼンテーション」という言葉が多く使われ、自分の意見やアイディアを他へどううまく伝えるかという「プレゼンテーション能力」が必要とされてきている。
授業の中で、一人調べの発表などをする場面は多く見かけるが、原稿を読むだけなど聞いている者を意識していない発表も少なくない。発表することに慣れていない生徒にとって、大勢の前で発表することは、たいへんな緊張感を強いられることになるだろうが、聞いている者が理解してくれなければ、発表している意味がなくなってしまう。今までも2年生や3年生の代表数名には、英語スピーチ大会のための指導を通して、聴衆とのコミュニケーションの大切さを指導してきているが、一部の生徒への指導だけではなく、本当にこれからの社会で必要な技能を、もっと広く多くの生徒に学ばせる必要性を感じてきた。
そこで、私は英語の授業の中で、英語プレゼンテーションをするための段階的な指導を仕組むことで、恥ずかしがらず自信をもってクラスの前で英語を発表することができるようになり、また、積極的に聞く指導をすることで、聞き手を常に意識したプレゼンテーションができるようになるのではないかと考え、これを「プレゼンテーション単元」として構成してみた。本論文では、3年間の段階的な指導を考慮しながら、入門段階として1年生の授業実践を通して、「コミュニケーションを意識した英語プレゼンテーション」を体験できる授業について考えてみたい。
仮説1……段階的な指導ステップを踏むことで、自信をもってクラスの前で自分の考えを発表する力(プレゼンテーション能力)が育つのではないか。
仮説2……積極的に聞く態度を身につけるための指導をすることで、聞き手を意識した発表(コミュニケーションを意識したプレゼンテーション)ができるようになるのではないか。
次のページの図に示すような構造のプレゼンテーション単元を設定した。この単元を通して、生徒に「コミュニケーションを意識したプレゼンテーション」の基礎力を育てていきたいと考えた。この単元は教科書の内容を学びながら、積極的に聞く活動・聞き手を意識して話す活動が段階を追って仕組まれている「基礎段階」と、スピーチ原稿を作りながら、プレゼンテーションを意識しALTとのティームティーチングでさらに実践的な練習をする「発展段階」から成り立っている。
プレゼンテーション単元の「基礎段階」と「発展段階」の最後の授業では、「聞こえてますよカード」を用いての反応練習を行う。いくら一生懸命英語を話しても、聞いている者が発表者の方を見て反応してくれなければ、発表者も不安になるし、やりがいももてない。そこで、発表しながらも聞いている者の反応が見えるよう、聞き手に「基礎段階」では青赤の2色を、「発展段階」ではさらに緑と黄色を加えた4色の画用紙をわたし、発表を聞きながら該当するカードを提示させた。青は、「聞こえてますよ」を示し、赤は、「聞き取りにくいので、もう少し大きな声で言ってください」を示している。しかし、聞こえないのはあなたが悪いからという雰囲気にしないように、「聞こえない時は、身を乗り出して聞いてごらん。聞こえてくるから。」と聞き手からの積極的な働きかけが大切だと教えていく。さらに、緑は、「私はあなたと同意見ですよ。」を示し、黄色は、「英語の意味がわかりません。」をそれぞれ示している。
その他に、リスニング練習として、毎時間歌っている英語の歌の導入では、歌詞カードを穴埋め問題のようにして何度も聞かせ、英文を入れさせ、集中して聞く練習をする。また、途中に「テレパシー送信ゲーム」を行い、積極的に聞こうとする態度の大切さを教える。このゲームは、教室の黒板の前で生徒3名を黒板の方を向かせて立たせ、教室の後ろから一人の生徒がその3人の誰かに向かって、Hello.と呼びかけさせ、3人のうち、自分に向かってHello.と呼んでいると感じた生徒に手を挙げさせるものである。聞き手の3人は背後から聞こえてくる声に真剣に耳を傾けていなければいけない。
単元の「基礎段階」では、教科書本文を、「発展段階」では、自分のスピーチ文を用いて、読みの練習をした後、グループで聞き合う活動を繰り返したり、代表者にクラスの前に出て発表をさせたり、段階を踏んで多くの聞き手の前で話す活動を行っていく。聞いている者も、間違いを笑うのではなく、正しい読み方を教えたり、こう読んだほうがいいよというアドバイスを行ったりすることをすすめ、間違っても気にならない雰囲気作りに努めていく。
特に中学1年では既習の言語材料が限られており、あまり難しいトピックでは和英辞典に頼った聞き手にはわかりにくい英文になってしまうので、10行程の短いパターンをもった英文にさせた。テーマも身近な「私の1日の生活」とし、その中で自分の伝えたいことを表現させた。英文は、1文目が、Hi.2文目が、My name is …で始め、最後の文は、Thank you.とさせ、その中身を考えさせていく。
単元「発展段階」の最後の2時間はALTとのティームティーチングとする。1時間目は、生徒にスピーチ原稿を暗唱させてきて別室でALTと向かいあって座り、スピーチを暗唱で発表させる。ALTは評価カードを持っており、発音のおかしいところをチェックしておく。生徒のスピーチが終わったら、ALTはそのスピーチの内容について英語で質問をし、生徒に答えさせる。この活動で生徒は自分のスピーチの内容が理解してもらえたのかを感じ取ることができる。もちろん、前もってALTに原稿を見せたりはしない。その後、必要があれば間違った発音の練習をしていく。そして2時間目、つまり単元最終授業では、ALTは審査員となり、生徒のスピーチに1つ1つうなづいてもらいながら、簡単な評価をしてもらう。
本論文の主旨は、プレゼンテーション単元を進める中で、生徒の意欲や意識の変化を見ることである。そこで、英語を人の前で読む活動への取り組みの様子から、@英文を作る能力があるか、A日頃から人前で話をすることが得意かどうか、の2つの要素の組み合わせから抽出生徒を決め、本単元を通しての変容を調べることで、仮説を検証していくことにした。
英語の授業では最初に英語の歌やチャンツを使っている。学んだ文法表現を生きた英語のリズムで口ずさむためだが、その歌の導入を穴埋めのリスニングにした。前時までに導入した英文が繰り返し歌詞にでてくる歌だが、生徒は何度も「聞きたい」と言い、積極的に聞く目的が生じ、意欲的になっていると感じた。
教科名の英語を学んだ後、それを使ってWhat subject do you like?とその応答練習をした。Bingoゲームのようにグリッドを時間割表とし数個のブランクを各生徒に埋めさせ会話の答えと同じ教科を塗りつぶしていく。
次に先に述べた「テレパシー送信ゲーム」を行った。まず、聞き手が聞こうとしていなければ聞けないことを示した。生徒を一人教室の前に出し、クラスの誰かを見つめながら、What subject do you like?と質問させた。自分に向かって質問していると感じた生徒が答えることにした。目をしっかり見ていれば、ほとんど正確に答えれていた。そして、その後、「目をみなくても、テレパシーを感じることができるよ。」と「テレパシー送信ゲーム」をしてみた。なかなか成功とまではいかなかったが、「僕かな」というつぶやきが正解だったりした。生徒から「テレパシーって本当にあるんですね。」などという感想も聞かれた。
生徒に品物カードを持たせ、Whose watch is this?と尋ねあわせる。お互いに自分の品物カードを見て、It’s
Tom’s.とかSorry,
I don’t
know.などと問答をしながら、それぞれの品物が誰のものかを探し、誰の持ち物でもないもの、つまり犯人が残していった物を探すゲームである。このゲームを通して、いろんな友達に英語で話し掛け、相手に十分聞こえる声で答えるというコミュニケーションの基礎を感じてほしかった。生徒は楽しそうにこの活動に取り組み、犯人の残していった物がどれかわかると嬉々としていた。
6人のグループに分かれ、教科書本文を一人1文ずつ読んでいった。読めない単語を教え合わせることと、他の5人全員にしっかり聞き取れる声で読ませるのが目的であった。聞こえない場合は、聞き手が身を乗り出したり、近くに移動したりして「聞きたいんだ」という気持ちを動きで表すことを強調し、日本語でも日常あまり大きな声で話せないような生徒にも、嫌な思いをさせないよう配慮した。
続いて教科書1ページ単位で順に読ませ、「聞こえてますよカード」をグループで使わせた。教科書を読むときに他の5人がどのカードを示しているのか確認しながら読ませ、「聞こえるよ」の意味の青カードならよいが、「聞こえにくいよ」の赤カードだったら声の大きさをあげるとか、聞き手とのコミュニケーションを意識させた。
グループで一番読むのが上手だった生徒を決めさせ、グループの代表としてクラスの前で朗読をさせ、クラス全員での「聞こえてますよカード」を体験させた。各グループで選ばれたという自信も加わり、前で読む代表者も得意げに発表できたし、多くの聞き手が青カードを示しているのを見てうれしそうな発表であった。代表にならなかった生徒も、どんな感じで最後のスピーチが行われるかのイメージができたようだ。代表になれなかった生徒からも「どうしてもやらせてほしい。」などの声がでるなど、意欲を高めた生徒も多かった。
ブレインストーミングで書き出した英文の断片を1つのまとまったスピーチとしてまとめさせた。先に述べたように最初の2文と最後の1文は決まり文句とし、残りの数個の文を考えさせた。
完成した生徒から教師の英文チェックを受けさせ、読みの練習などに入らせた。英文に間違いのある生徒もいたが、個別指導で添削し、正しい英文を完成させていった。教師の「合格」という評価は、うれしいらしく、「これでいい?」と言いながら多くの生徒が見せにきた。
単元の「基礎段階」の最終授業(6時間目)に教科書の本文読み練習で行ったように、今度は自分のスピーチ原稿を用いて読みの練習をさせた。グループごとに他の5人に十分聞こえる声で、スピーチ原稿を読ませていった。
さらにグループの代表者を決めさせ、クラスの前での読みも行わせた。スピーチの発表本番では英文を暗唱で行わせるが、この時間は英文を見て読む活動とした。「聞こえてますよカード」も使わせ、聞き手の反応を確かめながら読むことをすすめた。
先に述べたように別室のALTと向かいあって座り、暗唱してきた自分のスピーチを、その英文を始めて聞くALTに話した。生徒はその後のQ&Aに苦労していたが、自分のスピーチが伝わった喜びを感想に書く生徒が多かった。ALTの質問がよくわからなくて、苦労した生徒も多かった。
いよいよスピーチの発表本番。クラスの前に順番に出てきて、英文を暗唱で発表させた。どの生徒も緊張して発表をしていたが、自分の番がくるまで一生懸命英文を暗唱している姿が見られた。また発表中も「私もそう思う」という意味の緑カードと、「英語がわかりません」という黄色カードを加えた「聞いてますよカード」4色を示すことで、聞き手もスピーチの内容に対して積極的に反応させた。スピーチをしている生徒も、うれしそうにカードの反応を見ていた。
先に述べたように、英語を人の前で読む活動への取り組みの様子から、@英文を作る能力があるか、A日頃から人前で話をすることが得意かどうか、の2つの要素の組み合わせから次の2人の抽出生徒を決めた。
・英文を作る能力は高いが、人前で話をすることに消極的になってしまう「A子」
・英文を作る能力は高くないが、いつも人前で話をすることに積極的な「B子」
彼女たちの本単元への取り組みを通して、先に述べた2つの仮説を検証していきたい。検証には、生徒の授業日記(授業の感想)、授業記録、まとめの作文などを用いる。
人前で話すことが苦手なA子にとって、クラスの前で英語のスピーチを発表することはかなり不安のあることのようだった。単元の「基礎段階」で行ったコミュニケーション活動のゲームでは、「会話は、わりとスムーズにできたけど、たくさんの人と話せませんでした。」(かぎかっこ内は生徒の授業後の授業日記に書いた文を示す。)と人に話しかけることへの消極的さを見せている。彼女の不安材料のひとつは、声の大きさのようで、「基礎段階」の最後に行った教科書本文読みの「聞こえてますよカード」の活動で、彼女はこう感想を述べている。「前で話して声は出しているつもりだったけど、赤の人がいたので、もっと声を出さなくてはいけないと思った。」赤の「聞こえにくいよ」のカードが自分の朗読中に上がっていたのを見て、もっと声をださなきゃと反省している。このことは、単元の「発展段階」でも不安として続いており、9時間目のの授業の感想には、「声を出しているつもりだったけど、実際に前でしゃべったら後ろまで聞こえるか心配です。みんな声が大きくてすごいと思った。私も発音や声の大きさに注意しなくてはいけないと思います。」と述べている。声を出すことは意識して練習しているつもりだが、他の人のように十分聞こえる声で発表できるのか不安がっている。そんな彼女だが、10時間目の授業でALTの前でスピーチをした時、ALTにGoodと評価してもらったことがうれしかったようで、感想にこう述べている。「発音で『これでいいのかな』と思っていたけど、Goodだったので、うれしいです。でも途中で間違えてしまったので、もっとしっかり覚えておきたいです。」良い評価をもらえたことが、彼女の自信となり、クラスの前でのスピーチにも意欲を高める結果となっている。そして最後のクラスの前でのスピーチ発表もうまくいき、こう述べている。「しっかり声を出すことができたのでよかったと思います。前よりも、発音に気を配ることができました。でもつまずかないで言えたので、前よりもうまくなれたと思います。」
A子にとって、「基礎段階」最後に行った「聞こえてますよカード」の活動で自分の弱い点が明らかになり、それを意識して練習していくことで、ALTからの良い評価につながり、さらにその評価が自信となり、最後のプレゼンテーションに自信をもって取り組める結果となったのではないかと考えられる。よって、彼女にとって、この単元を通しての手立ては有効であったと考えられる。
話すことは得意なB子であるので、A子の感想と違い、単元の「基礎段階」で行ったコミュニケーション活動のゲームなどでも、「話すことも最初はわからなかったけど、何回もやっているとけっこう上手にしゃべれるようになった。」とか「上手に話せた。ちゃんと伝わった。」と積極性を見せている。またこの感想から、文法事項の理解などの苦手な彼女であるが、何度も練習し会話活動で使ってみることで理解が深まっていった様子がわかる。彼女は、「基礎段階」の最後に行った教科書の本文読みの「聞こえますよカード」の活動でも、「グループの前で話した時は少しつまってしまったけど、けっこう上手にできた。」と自信をもっている。ただ、彼女のこの「つまってしまった」という言葉は、これ以後彼女のキーワードとなり、つねにこだわっていく点となる。「発展段階」でスピーチを作り、読みの練習をしていく時、彼女はこう述べている。「いまいちうまく書けなかった。発音もうまくいかずにつまってしまった。」「自分が作った文を読んだらうまくいった。うれしー。私の周りの人はみんな上手だった。つまることがあまりなくて聞きやすかった。うまーい。」つまり、なんとか英文を完成させていく彼女であるが、読む練習をした時、どうもすらすら読めずつまってしまう。同じグループの他の生徒が読むとすらすらとつまらずに読めていることがうらやましく、それが彼女の次の目標となったようだ。そして9時間目のグループでのスピーチ読みの練習では、順にそれぞれのスピーチを読み、お互いに「つかえたら△、ちゃんと読めたら○、暗唱で読めたら◎」と観点を決めて評価しあった結果、他の班員から○の評価がもらえ、「つまらず上手に読めて○がもらえた。よかった。うまい人はすごくうまかった。声の大きい人はすごい聞きやすかった。」と感想に書いている。彼女のこだわりの「つまる」ことなしに読むことができ満足したようだ。そしてさらに他の生徒の読みを聞き、声の大きさにも着目している。そして次の目標である「暗唱で発表する」に彼女は努力しだした。英文としては未習事項も入っている彼女のスピーチを、彼女は一生懸命暗唱した。そして10時間目のALTへのスピーチの授業を終えてこう感想を書いている。「けっこう上手にできた。少しだけつまってしまった。楽しくできた。How many rabbits do you have?と聞かれ、すぐ答えれた。One rabbit.と答えたら「オー」とうなずいた。けっこう緊張してつまってしまった。でも暗唱がちゃんとできてよかった。とても面白くできた。」少しつまってしまったところもあったが、しっかりと暗唱できたことに満足をし、さらにスピーチの後のALTとの会話がすらすらとこなせたことへの自信も表れている。この活動で自信を深めた彼女は、単元最後のプレゼンテーションでも意欲を発揮している。感想にはこう書いている。「けっこう緊張したけど、自分としてはぼちぼち上手にできた。少しつまってしまったけど、ちゃんと覚えれていてよかった。またこういう機会があったらもっともっと上手に発表したいです。」さらに次への意欲を高めてくれたようだ。単元を振り返った作文で彼女は自分の学びをこうまとめている。「はじめはすごく緊張してて『つまったらどうしよう』とか不安がいっぱいだったけど、みんなの前でやる前に1回コンラッド先生の前でやったので、それで緊張はけっこうとけました。」彼女にとっても、始めての体験であるクラスの前での英語スピーチの発表は不安だったようだが、練習を積み、さらに完成したスピーチをALTの前でやって自信を高めたことで本番のスピーチにもリラックスして取り組める結果となったようだ。
B子にとって、「発展段階」の最後に行った「ALTへのスピーチの発表と会話」の活動が彼女の自信となり、最後のプレゼンテーションに自信をもって取り組める結果となったのではないかと考えられる。よって、彼女にとって、この単元を通しての手立ては有効であったと考えられる。
A子は、授業10時間目のALTへのスピーチの発表の時、緊張した表情があったが、ALTのほうをしっかりと見て、自分のスピーチを次のような英文ですらすらと発表することができた。Hi. My name is A. My club is brass band. I play the clarinet. I practice the clarinet every day. I practice more and want to be a good clarinet player. ALTからDo you like music?と聞かれ、Yes, I do.と即答もできていた。ALTの表情をまじかに見て、その表情から、又、その後の英語の質問から自分のスピーチが理解してもらったことを感じたようだ。授業の感想に、「発音がいいか心配だったけど、Goodだったのでうれしいです。」と書かれていたが、直接言葉として誉められたわけではないが、プリントに書かれた評価には満足できたようだった。
単元最終時間のクラスの前でのスピーチの発表でも、A子は緊張した表情で黒板の前に出てきて、前時の授業のようにすらすらと暗唱で英文を発表していた。一人のALTに向かって話すのと違い、クラス全員に話すことに緊張感はさらに増したようだ。A子は、次のように授業の感想を述べている。「発表に夢中で、あまりカードを見ていなかったです。でも、ちらっと見たとき、自分では声をしっかり出しているつもりだったけど、『聞こえない』のカードの人がいたので、もっと声を出さなくちゃいけないと思いました。」まずは、自分の発表で一生懸命だった彼女だが、ちらっと目に入ってきたカードで、自分の不足点を理解し、直そうとしている。
これらの授業の様子から、A子は、聞き手を意識したスピーチの発表ができるようになっていると考えてよいであろう。よって、彼女にとって、この単元を通しての手立ては有効であったと考えられる。
B子は、授業10時間目のALTへのスピーチの発表の時、緊張した雰囲気で、途中何度もつまりながらも、ALTのほうをしっかりと見て、自分のスピーチを次のような英文で最後まで暗唱することができた。Hi. My name is B. I…I get up at six. I clean my rabbit’s hut every day. ( Wow ) I… I… I often listen to ARASHI’s song. I watch volleyball games on TV every day. I…I like watching… I like watching volleyball on TV. ( Uh.. ) I like volleyball and ARASHI very much. 途中、( )内のようにALTからの反応もあり、その反応を聞いて、B子もリラックスした笑顔が見られていた。スピーチの発表後も、ALTから、I like volleyball but I don’t like ARASHI. とコメントされ、B子も笑っていた。その後、ALTから How many rabbits do you have? と質問され、One rabbit.とB子も答えることができていた。B子の場合、会話の様子から、ALTとのコミュニケーションがうまくいっていることがわかる。授業後の感想にも、彼女は、「How many rabbits do you have?と聞かれ、すぐ答えれた。One rabbit.と答えたら「オー」とうなずいた。けっこう緊張してつまってしまった。でも暗唱がちゃんとできてよかった。コンラッド先生と意見があわなかった。とても面白くできた。」と、ALTとの会話を楽しめた様子がわかる。
単元最終時間のクラスの前でのスピーチの発表でも、B子は緊張した雰囲気ながらも、前の授業よりかなりすらすらと英文を暗唱で発表していた。表情もにこやかで、声もクラスのみんなに聞こえさせようと大きな声で意識して発表ができていた。スピーチの最初から最後までにこやかな表情で発表できたことが、印象に残った。B子の授業後の感想には、こう書かれていた。「スピーチは緊張したけど、みんながたくさんカードをあげてくれていたので、そのカードを見たら自然と緊張感がぬけて、すごく発表がしやすかった。もうちょっと、はきはきとスピーチができたらよかったなと思いました。」聞き手の挙げたカードが彼女を励まし、緊張をやわらげたようだ。
これらの授業の様子から、B子は、聞き手とのコミュニケーション(気持ちのやり取り)を楽しむようなたスピーチの発表ができるようになってたと考えてよいであろう。よって、彼女にとって、この単元を通しての手立ては有効であったと考えられる。
検証と考察で抽出生徒の単元における学びを通して述べてきたように、この単元で実践してきた手立ては、それぞれの能力や性格の生徒にも有効に働いていたと結論づけてよいであろう。今回の実践では、1年生の2学期段階なので、既習表現も少なく、スピーチ自体はそれほど長いものではなかったが、この単元を通して、聞き手とのコミュニケーションを十分理解したプレゼンテーションができたのではないかと思う。
この実践はこれで終わるのではなく、2年や3年の1学期にもさらに高いレベルのスピーチ内容を追究していきながら、さらに聞き手とのコミュニケーション(気持ちのキャッチボール)のあり方を研究していきたい。さらに、学級内でのプレゼンテーションにとどまらず、コミュニケーションの手段として、インターネットのホームページを利用したスピーチの発表や、他の生徒のスピーチへの反応を電子メールでやり取りさせるなど、実践的なコミュニケーションとしてのプレゼンテーションとして発展させていきたい。