20010628el-teigakunen
テーマ:低学年の英語学習
小高原小学校要請訪問 資料

平成13年6月28日
刈谷東中学校 犬塚章夫

「低学年の英語学習でめざすもの」

1、低学年・中学年・高学年の特徴

低学年 中学年 高学年
発達段階に応じた特徴 低学年が集中できる時間はせいぜい15分から20分程度であるが、聴覚が優れ、丸暗記が得意である。歌やライムを通して、自然に英語の音を体得できるように遊戯的要素を取り入れて十分に吸収させる。 中学年は、友達とも上手に遊べるようになり、自己中心的な性格から脱皮していく。フラッシュカードを使って、ゲーム形式のかるたやクイズを通して活気のある授業の中、リスニング能力を伸ばす。 高学年は、思考力、知識力が発達してきて、知的要求を満たす内容を求めるようになる。それまでに培ってきた音声への柔軟性を活用して、簡単な文で自己表現をしたり、絵を見て説明をすることなどに挑戦する。

↑(矢次1995)

0から4歳 5歳から7歳 8歳から9歳 10歳から12歳
英語学習面における特徴 歌を歌ったり、体を動かしたり、単語を覚えたり、実物で経験を増やすことに適している。 歌や会話やスキットや絵本など、どんどん覚えて発表することが得意な年齢である。 ゲームが好きな年齢で、対抗意識が強くなる時である。また、何でも覚えて、何でも発表できる。 分析的、理論的な面が発達し、読み書きにも優れてくるが、そろそろはずかしさもでてくる年齢である。

↑(松香1995)

低学年 中学年 高学年
どんな活動がいいか インプットとTPR インプットとゲーム インプットと会話活動
(フォニックス)

2、インプットとは、
   英語の「入力」。入力しなくては、アウトプット(出力)できない。
   たとえば、英語の歌やビデオでひとこと英会話
   小学校段階で、ネイティブの発音を十分聞かせる。

3、TPRとは、
   Total Physical Response(トータル・フィジカル・リスポンス)
   英語を聞き、その意味する動作をさせる。
   発話を期待せず、聞いた英語の意味を動作で表現させる。
   英語を発音したくなるまで、十分に英語を聞かせる。

4、ゲームとは、
   簡単な単語などを使った遊び的な活動
   ビンゴやカルタ取りなど

5、会話活動とは、
   AETとの会話を意識させる
   買い物の場面など

6、フォニックスとは、
   アルファベットと発音の関係のルール
   現在、中1の1学期にやるようにお願いしているが、将来的には小学校高学年で導入したい。
   音の違いにも注目させたい。

7.言語習得理論(伊藤1995)
  カナダの脳生理学者ペンフィールドは、母語の基本は4,5歳ごろにはできあがっており、模倣能力が最高の4歳から8歳の間が第2言語収録開始の最適期で、その時期に始めれば母語の干渉はまったくないと述べている。
  また、米国の生物言語学者のレネバーグは、幼児の脳は未分化で年齢が進むにつれて左右脳の機能が分化し、思春期に完了するのであるが、外国語はそれまでに始めないと大変な意識的努力が必要であるが、それまでに開始すれば外国語にさらされただけで自動的に習得できるであろう。とし、思春期までを言語習得の臨界期( critical period )としている。

 豊かな入力によって言葉を浮かびあがらせる
 この考えは母語習得過程の応用から生まれたものである。すなわち、幼児は母親からの言葉にじっと耳を傾け、まずは理解能力が育成され、それから徐々に言葉を発するようになる。母親は幼児が理解できるようにスピードを落とし、繰り返しを多くしてやさしい表現で語りかける。幼児は最初は身振りで応え、1語文、2語文、多語文へと発展していき、ついに完全な文、そして連続文(談話)を産出できるようになる。
 こういった習得過程を応用したのが、クラッシェンなどのナチュラル・アプローチと呼ばれるものである。まず、絵とか実物とかを見せながら教師は学習者に語りかける(teacher talk)。教師の言っていることが理解できたかどうかを学習者は、最初は身振りによって反応し、徐々に1語文、2語文で反応できるようにする。たとえば、動作反応によって理解力をつけ、徐々に産出能力をつける「全身反応法(Total Physical Response)が活用されている。

 @英語をたっぷり与える「教師の語りかけ(Teacher talk)」
 教師はできるだけ英語を使って授業をする。学習者は場面から先生が何を言わんとしているかを大体察知するであろう。もし、学習者がとまどうような場合は、英語のあとに日本語を添えてやってもよい。
 A誤りにこだわらない
 学習者は与えられた言語材料を素材にして、徐々に言語規則体系を築き上げていくのであり、その途上においては不完全な形が表れるのは当然で、学習者は自己の発した中間段階的発話(「中間言語」と呼ぶ)によって、どのくらい進歩したかを検証していると考えられる。
 B言葉をかたまりとして与える
 児童期は右脳が活動的であるが、その特徴として、全体的認知能力が優れている。したがって、言葉も分析的でなく、かたまりとして与えたほうがよい。教室英語を毎日かたまりとして与えることは有益である。また歌とかストーリーなど、楽しい教材をふんだんに与えることが栄養になり、右脳から入った教材が左脳に移り、自然と英語の文法体系が構築されるのである。音調とかリズムはかたまりとして右脳で習得されるもので、英語の発音の基本をなすイントネーションは、歌によって早くから習熟させるべきである。

8、TPRの例 (Traugh 2000)
 Lesson 8 Body Talk
Activity
1 Stand with children in a circle. Have them stand at least an arm's length apart from each other.
 円になって、両手がぶつからないように間隔をあけさせよう。
2 Tell the class to listen carefully to the movements described in the song you will play.
 歌の中の動きをよく聞いてみようと言う。
3 Play the song "Body Talk" and have children move with you as you model the movements (shown below).
 Body Talkの歌を流して、動きのモデルをしながら、子供たちに体を動かすように言う。
4 After the class has practiced with the music several times, stop the CD, and have each child in turn take one step into the middle of the circle, lead the rest of the class in moving a body part mentioned in the song and then step back in line.
 何度か練習した後で、CDを止め、ひとりずつ前に出て動きをさせ、他の子供に真似させる。

List of Movements
eyebrowsまゆ, nose鼻, cheeksほっぺ, mouth口, tongue舌, chinあご, head頭, shoulders肩, elbowsひじ, hands手, fingers指, arms腕, chest胸, tummyお腹, hipsお尻, one leg片脚, the other legもう一方の脚, kneesひざ, one foot片足, the other footもう一方の足, whole body全身

BODY TALK

Move your eyebrows up and down.
Everybody move your nose, like a bunny.
Move your cheeks, like a frog.

Now move your mouth, like a fish.
Move your tongue, like a lizard.
Move your chin from side to side.

Now move your head around and around slowly.
Now move your shoulders up and down, up and down.
Now move your elbows, Wiggle those elbows.

Move your hands. Shake those hands.
Everybody move your fingers. Make them wiggle.
Swing your arms. Swing them around and around.

Move your chest - in and out. Keep going. Good.
Now move your tummy,. Stick it way out.
Hold it in. Good work.
Now shake those hips.
Warm up those hips from side to side.
Move them around and around.

Move one leg. Swing it gently back and forth.
Now the other leg. Try to balance.
Swing it slowly. Good work.
Move your knees. Wiggle those knees.

Now move one foot. Shake it all around.
Get ready to shake your other foot.
Move it all around. Shake it.

All right. Get ready now.
Shake your whole body out. Wiggle every part of you.
Keep going. And stop.

Give yourselves a hand, everybody. You did a great job.

参考文献
「早期英語教育」中山兼芳編  ニチブン 1995
 伊藤克敏「言語習得理論と早期英語教育」
 矢次和代「カリキュラム(小学校低・中・高学年)」
 松香洋子「早期英語教材の選び方・つくり方」
"Music & Movement in the classroom Grades PreK-K"
 Steven Traugh, Creative Teaching Press, 2000