20011015el-kokusai
テーマ:国際理解
日高小学校校内研修会資料

平成13年10月15日
刈谷東中学校 犬塚章夫

「国際理解を見通した小学校英語のあり方」

1、国際理解の6つの方法  「子どもに英語を教える先生と親のための月刊誌 Kids com」2001、2月号より

(1)異文化理解 外国の生活や文化を知る
 世界の国々の特色や伝統文化、生活習慣等を知る。現在実施されている国際理解教育のなかで最も多いパターンで、外国人や地域ボランティアに協力を要請し、ゲストに招くこともある。世界には自分と違う考え方や習慣があるということ、また、意外にも似ているところがあることを知り、互いを認め合うことで、個性を尊重する大切さを学べる。

(2)自文化理解 日本の生活や文化について再認識する
 日本の生活習慣を見直したり、行事や伝統について学んだり、日本古来の文化を体験したりする。知識や技術を持つ地域の人たちやボランティアを招いて、落語や三味線・琴などの鑑賞や体験をしたり、正月や七夕の由来、日本古来の習わしなどにふれたりすることも可能。学んだことを外国に伝えるという活動に入ると、国際交流にもつながる。

(3)国際交流 外国人と交流する
 地域にある外国人学校の子どもとふれあったり、インターネットを通してEメールでやりとりをしたりすることで、世界の人々に接する。お互いの生活や文化、流行等について紹介しあうことで、自分たちと違う世界があることを体感できると同時に、共通点を見つけることもできる。

(4)英語学習・外国語学習 外国語にふれる
 歌やゲーム、料理など、子どもの興味・関心のある事項を英語で取り上げる。世界共通語となりつつある英語にふれることで、地球のあらゆる人々に関心を持ち、交流したいと思うきっかけや動機となる。中学校で学ぶことの前倒しや、読み書き重視の内容ではなく、外国語に親しむこと、コミュニケーションしようという態度を育てることが目的。

(5)世界や地球の問題の把握 問題提起し、何ができるか考える
 身近なところから関心を引き出し、世界や地球上で起こっているさまざまな問題を知ることで、自分自身の立場を再認識する。手助けを必要とする国や人々がいるとすれば、自分たちにはどんなことができるのか、どうすれば状況を改善できるのか等をみんなで話し合い、解決策を考える。世界の実情を知ることで、自分たちの生活や日本という国についても見つめ直すことができる。

(6)外国に限らない異文化理解 自分とともに、身近な人を理解し尊重する
 外国の生活や文化を知る前に、まず自分のこと、および身近な人間のことを知り、理解し、尊重する態度を養う。自分の身近にある異文化、すなわち、同じ日本人であっても自分とは違う人間の個性を理解することから国際理解は始まるという考え方。自分と他人の違いを知り、それを尊重する態度を育てるところから、異文化理解が始まる。

2.国際理解教室の例

(1)横浜市国際理解教室 市内全公立小学校に外国人講師を派遣

38の国や地域出身 87名の外国人講師が活躍
 中学校・高校のAETと大きく異なるのは、講師の母語が英語とは限らない点、「英語を教えること」そのものが目的ではないという点だ。「英語に親しむという観点から、授業は国際語である英語を使って行われますが、大切なのはあくまで異文化に触れ、視野を広げること。新しい世界に驚きや感動を覚え、日本文化との比較を通し、違いを違いとして受け止めること。そして、想像力を働かせ、講師とのコミュニケーションを楽しむことなのです」と、伊藤課長は語る。

6年間に6名の講師から指導を受けられるシステム
 担当校は1年ごとに変更される。それは、子どもたちが在学する6年間で6名の外国人講師から指導を受け、できるだけ多くの文化を体験できるようにするためだ。講師が替わることによって、子どもたちは1年目はフィリピンの先生、2年目はオランダの先生、3年目はケニアの先生といった具合に、さまざまな国の人とふれあうことが可能になる。

日本語をいっさい話さず絵や身振りで伝達
 基本的に母語を使わず、時刻の地理や文化(国の場所や面積、自然、通貨、衣食住、学校、伝統行事、音楽など)を英語で説明することが求められている。子どもたちは、絵、写真、ジェスチャーなどから講師の言っていることを理解しようとし、講師も担任と協力して、自分の意思を子どもたちに伝えようと努力する。お互いの熱意を通して、言葉の壁を越えたコミュニケーションが生まれ、結果として子どもたちは異文化や外国語に対する積極的な関心を示すようになる。説明は原則として日本の事物との対比によって行われる。例えば、日本の国旗を指差して、Japanと言ったあとに、フィリピンの国旗を指差して、The Philippinesということで、講師の出身国を伝えると同時に、日本がJapanであることを理解する。

(2)川崎市立東小倉小学校 地域や保護者のボランティアとともに行う活動

保護者からボランティアを募って始められた外国語教育の時間
 全校児童の保護者に向けて手紙で呼びかけた。「外国語はできないけれど子どもとふれあい、一緒に楽しみたいという方」「ちょっと外国語ができるからお手伝いしてもいいよという方」どちらでもいいから参加してほしいと。

アーヒスタ・チャレーン(ゆっくり行きましょう)の精神で
 東小倉小学校では英語活動の時間を「アーヒスタ」と呼んでいる。これはウルドゥ語の「アーヒスタ・チャレーン(ゆっくり行きましょう)」に由来する。「この活動が息長く続くように」という願いが込められているという。
 細かい文法のミスにこだわるような英語教育は小学校では必要ない。それよりも小学生の間にネイティブ・スピーカーのきれいな発音をたくさん耳にしたり、異文化としての英語を身の回りに感じる体験を数多くしておくことが必要。中学生になって初めて英語の文法を習ったときに、一気にそれが豊かな英語教育として実を結ぶ、それでいいと、小学校ではそのもととなる学習ができればいいのではないか。
 「小学校での英語学習を、中学への準備段階としてでなく、耳と目と心で英語を体験し、子どもたちの将来の言語生活に生きて働く力を身に付けることととらえる」「異文化にふれることで相手との違いを認め合い、尊重し、励ましあえる国際コミュニケーション能力の基礎を培う」このふたつをアーヒスタの主なねらいとしている。

3、英語授業(英語活動)の留意点

(1)国際交流とのドッキング
 さまざまな国とのふれあいが体験できるとベスト
 英語だけでなく、他の外国語にも触れるのもよい
 国際語としての英語を実感させるのも必要

(2)2・3回聞いただけで発音させない
 何度も聞かせる 聞いているだけでは飽きるので、体を動かすことをメインの活動にして、自然に何度も聞かせる
 すぐに発話を求めず、自然に発話しだすのを待つくらいの余裕を持ちたい
 飽きないで聞く活動ができるいろいろな活動を工夫する

(3)教え込まない
 10個教えて(導入して)、5つ覚えることができればよい。また次に7つ覚えればよい。
 10個覚えることを目標にすると、できなかった子が、苦手意識を持つ
 子どもが「英語難しい、わからない」と家で親に言うと、塾通いが増える

(4)カタカナをふらない
 ネイティブの発音を何度も聞かせ、子どもの言語習得能力を発揮させる
 大人の都合で、カナをふって、カタカナ英語を定着させない

(5)リズムや音楽を使って楽しく活動
 英語を発話するときには、楽しくいつの間にか何度も発音できるリズム読み(チャンツ)を工夫したい
 ゲームなどを行う場合は、BGN(Background Noise)も効果的。
 音楽で活発に活動できる雰囲気が作れるし、ある程度の騒がしさがあると、恥ずかしがらず大きな声で会話できる

(6)先生もいっしょに楽しむスタンツで
 AETの先生とのTTでは、担任の先生もいっしょに楽しむ
 AETの先生がいないときでも、そのときの活動を思い出していっしょに遊んでみる
 朝の会や帰りの会、給食の時間などちょっとした時間で復習の活動も入れて楽しめる

(7)先生がまず国際理解(交流)・英語活動を楽しむ
 海外旅行での国際理解体験
 英語活動の研修会などへの参加