20011018jh-visual
テーマ:視覚教材
富士松中学校研究発表会研究協議会資料

平成13年10月18日
刈谷市英語指導委員   
刈谷東中学校 犬塚章夫

「コミュニケーション活動における視覚教材の活用」

1、実際のコミュニケーション

家族の写真を持ち歩き、話題になると写真を見せて話をすることがある。
ビジネスの世界でも、カタログやポートフォリオなどの中に、図や写真を多用している。
 最近では、コンピューターでPower Pointなどを使ったプレゼンテーションも行われている。
街にも見ただけでそれが何であるかわかるようなサインボード・シンボルマークがあふれている。

これらは、図や写真が言葉と同様(ある場合には言葉以上に)情報伝達に役立っていることを示している。
くどくど言葉で説明しているよりも、写真を見せるだけで伝わる。また、写真を見せて説明することでより理解されやすい。
→したがって、図や写真は、教室の中でも「視覚教材」としておおいに活用していきたい。

2、授業の中での視覚教材

 絵や写真など教科書の挿絵を使った「ピクチャーカード」、言葉をインパクトを持たせて提示する「フラッシュカード」など教室で多く使われている。また問題集などでも最近はイラストがふんだんに使われ生徒の興味を喚起させている。ここでは、コミュニケーション活動における視覚教材(興味を喚起するためのイラスト的なものではなく、コミュニケーションに直接関わる使われ方をした物)を紹介したい。

(1)Say things about a picture
 下のような絵を見せて、そこに描かれているものを英文で書かせる(言わせる)活動。時間を決めて、グループで考えさせて、競わせたり、個人で行ったりできる。 出典"Five-Minute Activities" Penny Ur & Andrew Wright, Cambridge Univ. Press, 1992

(2)メモリーゲーム
 上のような絵を見せ、3分間とか時間を決めて絵を覚え、絵を回収した後で、その内容について英文を書かせる。

(3)違いはどこかな
 下のような2枚の絵を見せ、その違いを英文で言わせる。パワーワークやグループでも活動できる。 
 

(4)インタビューゲーム
 下の絵のように少しずつ違う図を4つ用意する。生徒にバラバラに違うカードを配る。生徒はクラスを自由に動いてIs there ...?の文型を用いて問答をし、自分のピクチャーカードと同じ地図を持っている生徒を3名探して教師に報告する。  出典「英語授業のアイデア集英語教師の四十八手4 ゲームの利用」山本展子著 研究社1994

(5)地図で調べる
 生徒Aと生徒Bはそれぞれ相補的な地図をもっている。生徒Aは自分の地図にのっていない場所への道順を生徒Bに聞く。それは生徒Bの地図にはのっているので、Bはそれにしたがって道順を教える。目的地に着いたならばAはその場所の名前を地図に書き込む。  出典「コミュニカティヴ・アプローチとは何か その理論と展開」長澤邦紘著 三友社出版1988

★コミュニケーション活動の原理
(1)Gapの原理
 人と人との間にギャップが存在することにより、そのギャップを埋めようとしてコミュニケーションの必然性が生まれ、それが大きな学習の動機づけになる。また、実際にコミュニケーション・ギャップが存在する場面を設定し、そのギャップを埋めるための学習活動を学習者に提示することにより学校現場でのコミュニカティブな学習活動が可能になる。
a インフォメーション・ギャップ
 一人の学習者が他の学習者の知らない情報を持っている。両者ともお互いに、相手にない情報を持っている。
b ジグソーの原理
 グループのメンバーに内容の異なる情報がバラバラに与えられ、各人は互いに情報交換をしながら自分たちのインフォメーション・ギャップを埋め、最初に与えられた課題を完成させる。
(2)統合的原理
 現実の社会生活における言語の使われ方と同じように、コミュニカティブな言語学習活動においては、英語を話す、聞く、読む、書くの4技能が様々にお互いに関連し、総合的な言語使用が行われる。
(3)競争原理
 ある程度の競争は、学習者に活気や励みになり、学習の強い動機づけともなる。
出典 「英語のコミュニケーション活動」北出亮著 大修館書店1987



3、Authentic Material

 上記のようなコミュニケーション活動のための視覚教材のほかに、買い物ゲーム(シミュレーション)のために、実物の新聞広告を使ったり、ハンバーガーショップでの買い物で、実物のメニューを用いたりすると、コミュニケーション活動がよりリアルになり、学習意欲を喚起することができる。

4、生徒の注目を集めたり、理解を助けるための視覚教材

 教科書のピクチャーカードや、異文化の説明をする際に用いる図や写真などは、クラス全体に提示することで、生徒の注目を集める働きがあるほかに、言葉では説明しにくい部分の理解を助ける情報源となる。Show and Tellのようなスピーチ活動として、教師と生徒のinteractionを伴う導入活動などに、視覚教材は大きな効果をあげている。

5、視覚教材を使う時の留意点

(1) 提示するタイミングはドラマティックに
 生徒に視覚教材を見せた段階で、生徒の注目は視覚教材に集まる。つまり、図などを見せてしまった後に、活動についての説明をしても聞いていない生徒もでてくる。ペアのコミュニケーション活動で図などを使う場合は、説明をしっかりした後で図を配りすぐ活動に入ったほうがよい。
 クラス全体に提示する場合も、生徒の期待を高めるような言葉を言ってから、見せたほうが効果的。

(2) クリヤーな画像と大きさ
 せっかくのインフォメーション・ギャップを与える教材でも、小さくて細部まで見えなかったり、図が見にくい状態では、意欲を失くしてしまう。最近はコンピュータのカラー印字などもできるので、カラー写真などが提示できるとよりわかりやすく、意欲の喚起になる。その分、費用がかかるので、パウチをして何度も使用できるようにするなどの工夫も必要であろう。
 小さな写真をクラス全体に見せるときも、OHCなどを利用することもできるが、コンピュータで画像処理をして大きな紙にカラー印字したものを用意しておけば、提示しやすい。

(3) 生徒の興味関心を調査して
 自作のコミュニケーション活動教材を作る際には、生徒がよく知っているキャラクターや人物(たとえば、有名な歌手の写真や同じ学校の先生の写真など)を用いることも生徒の注目度をアップさせる。ただ、そのキャラクターの話題でコミュニケーション活動の本来の意図がぼやけてしまわないように配慮する必要はある。