20011105jh-kaiwa
テーマ:会話レベルへ高める
刈谷南中学校学校訪問研究協議会資料

平成13年11月5日
刈谷東中学校 犬塚章夫

「知識として得た英語を会話レベルまでに持って行くためには」

1、会話レベルとは・・・コミュニケーション能力

「会話レベル」に達するということは、つまり「コミュニケーションできるようなる」ことを意味する。では、コミュニケーション能力とは何だろうか。コミュニケーション能力( Communicative Competence )と言った場合、上の図一番左のように、その下位区分には、@文法運用能力(会話の表現や語彙などの運用能力も含む)、Aコミュニケーション方略(あとで詳しく述べる)、B社会言語学的能力(社会的背景を踏まえ、特定の状況でどの言葉を用いるのか考える力)がある。つまり、文法や会話表現・語彙を習得したからと言って、必ずしも会話ができるようになるわけではない。とりわけ、中学校段階では、Aコミュニケーション方略の初歩の段階を習得させる手だてをとりたい。

2、コミュニケーション方略とは

 次の2つの会話は、1年生の12月、生徒とAETが1分間で会話をした内容である。写真を見せながら、AETと会話をする活動を設定した。

例1
 Student(S): I can swim very well. Can you swim?
 ALT(A): Yes, I can.
 S: I can play crawl and butterfly. Do you play crawl and butterfly?
 A: Do I play?
 S: Do you play crawl and butterfly?
 A: No, I don't think so. Please show me. Crawl? I don't know. Is it a game? ... (ALT looked at the picture.) Oh, crawl and butterfly. (using gesture) Yes, yes. I was very good when I was at school. Is butterfly your best?
 S: Yes.
 A: Me, too.
 S: That's great.

この例では、明らかにコミュニケーション・ブレイクダウンを起こしている。生徒が言った「クロールとバタフライ」は日本語っぽい発音だったためか、またはplayという動詞といっしょに間違って使ったためか、ALTには理解されず、生徒の写真を見て始めて何のことを言っているのかがわかったようである。もちろん、このために1分間はあっという間に過ぎてしまい、ほとんど会話をすることもなく終わってしまった。

例2
 S: You can play the musical instrument?
 A: Yes. I can play the guitar a little. How about you?
 S: I can...
 A:: Can you play the musical instruments?
 S: I can play the horn.
 A: Horn? Oh, I see. Very good. And do you play it very well?
 S: No.
 A: What music do you like?
 S: ...? (thinking)
 A: Do you like rock music?
 S: ... (nod)
 A: What rock do you like?
 S: ... (smile)
 A: Do you like B'z?
 S: Yes, I do.
 A: I see. Very good. Do you like GLAY?
 S: Yes, I do.
 A: Very good. Larc? Larc-An-Cel?
 S: No, I don't.
 A: No?

この例においても後半生徒はYes, Noの返事をするのが精一杯で、会話はすべてAET主導で行われている。生徒はAETの言っていることがわからなかったか、あるいは自分が言いたいことを英語でどう表現したらよいのかがわからなかったのか、返事をする前にAETからの次の発話でそのきっかけをなくしてもいる。この場合、コミュニケーション方略を用いて、相手の言っていることがわからないとか、もう一度言い直して欲しいとか、自分が言いたいことがあるけど思いつかないという意思表示などをすべき場面である。

 これらの例から見てもわかるように、生徒は一つのテーマ(話題)での会話ができるようになっているとは言えない。会話の前に準備しておいた基本表現を暗唱して言ったあと、AETの返事に反応して次の発話を考えたり、AETが次々と質問してくる内容に反応したり、ましてやAETに逆に聞き返したりと、会話をつないでいく能力が育っていないことがわかる。

 生徒に中学校段階で必要なコミュニケーション方略を具体的にあげると次の3つになる。
@ 時間を確保する・・・Well,などの言葉や、あいづちなどを適切にはさみ、会話の中の沈黙をなくす。
A 意味理解を確認する・・・相手が言っていることがわからない場合、I beg your pardon? Sorry?などと尋ね返したり、自分が言いたいことがうまく言えない場合に、別の単語で表すとか、写真を見せるとか、ジェスチャーをするとか、なんとか意思を伝えようとすること。
B 自分から切り出す・・・一方的に質問されてばかりではなく、話題をとらえて、自分から相手にも質問できる。

3、どう会話レベルまで高めるか

 まずは、基礎基本として、語彙や会話表現の定着をはかるドリルを十分行う。次に、それをペアやクラス内でのインタビュー活動などコミュニケーション活動として使う機会を作る。そして、実際にあるトピックでネイティブスピーカーと、なるべく実際の会話場面に近い状態で使わせる。つまり、会話力をつけるためには、AETと1対1で会話をする機会を作らなければならない。そして、その会話を記録し(カセットテープに録音してテープおこしするなど)自分で自分の会話を振り返る機会を作り、どこができていて、どこができていないのか、を知り、次の会話体験でそれを生かしていくことが必要になる。つまり、1つのトピックでの会話を1度きりではなく、単元中に何度か行い、徐々に失敗を成功に変えさせ、自信をつけさせるステップが必要となる。

ドリル

 ↓

コミュニケーション活動

 ↓

AETとの1対1の会話

 ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑

ふりかえり(自分の会話の分析)

 ↓

会話への自信・コミュニケーション能力