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TIPS for Reading

中部地区英語教育学会愛知県支部月例会(平成15年2月実施)において、「リーディング」指導のこつ・留意点などについて話し合い、次のようにまとめてみました。

1Reading学習の究極の方法は、個別学習。・・・「読むことによって読めるようになる。Smith 1985」自分にとって楽に読めるやさしい英文の本を大量に読ませることで、independent readerを育てる。
 語彙レベルでは、意味のわからない単語が5%を越すと、読み続けるのが困難になる。できれば2%くらいまでのレベルの本を与えたい。
 (実践例)内容が楽しくて英文レベルも(i-1のレベル)の本(オックスフォードやケンブリッジなどからレベルごとの本が出版させている)を各生徒に与え、簡単なbook reportを提出させながら、多読指導をする。
 (実践例)難しい英文の教科書と簡単な英文の教科書を使った比較実験では、上位生徒の読解力にはどちらの教科書も変わりなかったが、下位生徒は、簡単な教科書を使ったほうが伸びたという結果もでている。易しいレベルの英文を読むことでword recognitionの力が伸びていく。
 (実践例)中部大学の塩澤・佐藤による「Graded Reading System on-Line」ウエブ上に7レベル17トピックの英文と理解度チェック問題が登録してあり、個別学習として使える。また多くの英文の投稿も募集している。 http://shioz.isc.chubu.ac.jp/GRSL/
 (実践例)浜島書店Catch a Waveなどのような英検3〜準2級レベルの英文で書かれた英字新聞を読ませる。そのレベルの英語が簡単だと思えるレベル、つまり高校2年程度のレベルの生徒に読ませるのが最適。「今」話題の内容が英語で読めるので、背景知識が十分ある状態で英文読解ができる。

2Pre-Reading ・・・「読んでみたい」とまず思わせる。
 (実践例)シャーロックホームズのビデオを日本語字幕で見せる。事件が起こり、シャーロックホームズ登場まで見せておいて、その続きを英文で読み取らせる。どんなふうに解決するのだろうと読むことへの意欲が高められる。
 (実践例)「父を亡くした中学生のめぐみが、父の世界旅行したいという夢を叶えるために、よいアイディアを思いついた。」という部分まで導入しておいて、「さあ、どんなアイディアを思いついたのだろう。」と生徒に投げかける。いろいろアイディアを発表させてから、「じゃあ、実際にめぐみがどんなアイディアを実行したのか読んでみよう。」と英文を与える。

3Pre-Reading・・・背景知識を与えスキーマを活性化させる。
 (実践例)先ほど示したシャーロックホームズのビデオでの導入では、事件の概要や時代背景、登場人物のプロフィールなど、様々な背景知識がビデオから与えられるので、理解しやすい。
 (実践例)環境問題についての英文を読ませる前に、環境問題を1つ取り上げディスカッションしておく。また関連語句(英語)を黒板に書きながらmappingしてスキーマを形成させる。

4Pre-Reading・・・英文を読み取りやすくするために、必要な語彙を先に導入しておく。
 (実践例)スペースシャトルについての英文を読ませる前に、宇宙に関する語彙を英語ー日本語を結びつける活動を行い語彙の導入をしておく。英単語パズルやゲーム的な単語の導入でもよいし、英英辞典を用いて英語の説明からその単語を当てるような活動としてもおもしろい。
 (実践例)教科書の新出単語などをオラルイントロダクションなどで導入し、フラッシュカードなどでドリル練習してある程度定着させておいてから、英文読解に取り組ませる。日本語を見せ、英語を答えさせる練習をすると、語彙習得が促進するという研究もある。

5Pre-Reading・・・必要な文法や表現の指導しておく。
 (実践例)教科書のリーディングのページでは、特に教えたい英文の日本語訳を提示して、そこから英作文させてみる。英文を考えさせたり、似た表現をドリル練習しておく。
 (実践例)中学など未来表現、比較表現、関係代名詞など新出文法事項を含む場合は、当然その学習をしておかないと英文を読み取ることはできない。新出文法事項を導入し、ドリルで定着させてから、読解にはいる。

6While-Reading・・・top-downで概要把握から入る。背景知識も利用して推測させる。
 (実践例)「どんな内容が書いてあるか?」という問いでスキミングさせたり、ワークシートに読み取りのポイントなる質問を書いておいて、その答えを探しながら読ませるスキャニングをさせたりする。

7While-Reading・・・bottom-upで内容理解を深める。
 いわゆるできない生徒ほどtop-downの背景知識から多くを推測し(多くは間違っているのだが)、できる生徒ほど語彙の理解からbottom-up的に内容を把握しようとしているという調査結果がある。
 (実践例)単語を理解させる。品詞に着目させたり、意味のわからない単語を文脈から推測させたり、脚注や辞書から1語の日本語を与えるのではなく選択肢から選ばせることで考えさせたりする活動を組み込みながら全体の内容を理解させる。
 (実践例)文のcohesion(文法上のつながり)に着目させ、he, that, one, doなどが何を指しているのか考えさせたり、but, andなどのdiscourse marker(接続表現)から文と文のつながりを理解させたりする。

8While-Reading・・・リスニングとリーディングのプロセス(情報処理)は同じ。リスニング力が増すと、リーディング力も増す。
 リーディングは、文字情報を頭の中でいったん音声情報に直し、さらに意味理解している。リスニングも音声情報から意味理解をしているので、この部分の処理が速くなるとリーディングの処理も速くなる。ネイティブに近づけば、リーディングにおいても、文字情報から直接意味理解まで無意識に進むようになる。
 (実践例)「スラッシュ・リーディング」意味の固まり(チャンク)ごとにスラッシュ(/)を引き、意味を考えながら音読させたり、前から順番にチャンクごとに訳させたりしていく。
 (実践例)教師があるまとまった内容の英文をチャンクごとに切りながら(そうすることで、意味の固まりを認識させる)音読し、生徒にそれを聞かせて意味をとらえさせる練習をする。

9While-Reading・・・読み物教材自体をタスク化する。reading for informationの活動にする。
 (実践例)read and draw 英文を読んでその内容(指示)にしたがって絵を描いたり、色を塗らせるなどの作業をさせる。
 (実践例)jigsaw reading 4人のグループを作る。それぞれに別の読み物を配布し、それぞれに内容を読み取らせる。その情報を組み合わせることで、一つのタスクが達成できるようにする。たとえば、宝物のありかを示す地図を見せ、それぞれの情報を組み合わせることで宝の位置がわかるようにしておく。
 (実践例)read and match 英文を読んで、その見出しを選択肢の中から選ぶような活動。
 (実践例)read and correct 英文を読んで、挿絵の間違いを指摘させる活動。

10Post-Reading・・・意味を考えながら音読させる。
 
(実践例)意味を考えて読ませるために、read and look upさせる。教師の英語を聞いて英文を見ながらリピートし、その後顔を上げて英文を見ないでもう一度音読してみる。これをチャンクごとに、あるいは文ごとに行う。
 (実践例)英文の持つ意味や機能などを考えながら、演じ(音読)させる。(オラル・インタープリテーションやスキット・劇化など)
 (実践例)生徒に覚えて欲しい表現や単語を日本語化しておいて(例参照)、それを英語になおさせながら音読練習させる。例 But his friends started to fall (次々と). (やがて) the tree was almost (裸の)....

11Post-Reading・・・要約(summary)させることで、内容を確かなものにする。=outputに耐えれる力とする。
 (実践例)読んだ英文を、簡単な英語の要約文として与え、その英文中の( )内を適切な語句で埋めさせる活動。
 (実践例)読んだ英文を、簡単な別の英語で表現させる。英語で要約文を書かせる。

12Post-Reading・・・読んだ内容について討論したり、英作文のトピックとして英文を書かせる。
 (実践例)環境問題について読んだら、身近な環境問題への取り組みについて日本語で(できるなら英語で)話し合う。また、自分の意見を英語で書かせる。

13Post-Reading・・・内容把握できているかどうかをリスニング問題(True or False)でチェックする。
 (実践例)読んだばかりの英文の内容把握についてリスニング問題としてチェックすることもできるが、以前学習した内容について時間をおいてリスニング問題として再度聞かせてその理解度をチェックするのもおもしろい。

14和訳先渡し方式で時間を生み出し、reading for meaning だけでなく、reading for languageの時間として使う。
 (実践例)英文と同時に和訳も提示して、読解にかかる時間を削減させる。ただし、和訳だけに頼った活動にならないように、日本語や英語の質問に答えさせる際に、該当する英文箇所に下線を引かせるなどの作業をさせることで、英文を読む機会を増やす。

15ストーリーテリング(読み聞かせ)をする。
 (実践例)絵本や簡単なストーリーを教師が読み聞かせをする。教師は、意味の固まりを意識して、聞いて理解しやすいように音読することにこころがけるとともに、生徒の表情などから理解度を推測し、わかっていないようであれば簡単な英語に言い換えて繰り返すなどの工夫をしていく。教師が魅力的な話し口調(技術)で読み聞かせをすることで、生徒の興味と集中度は増す。

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