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TIPS for Writing

中部地区英語教育学会愛知県支部月例会(平成15年1月実施)において、「ライティング」指導のこつ・留意点などについて話し合い、次のようにまとめてみました。

1生徒の興味がもてる内容を選ぶために生徒の実態を把握し、意欲付けをはかる。意味のある内容を書かせないと、書きたい・伝えたいという思いがおこらない。
 (実践例)ダイアローグ・ジャーナル・アプローチ 教師と生徒の交換日記を英語で行う。英語を直すのではなく、内容について英語で返事を書きやりとりをしていく。
 (実践例)「サンタクロースに手紙を書こう」「新年の抱負を書こう」「スターにファンレターを書こう」「海外にペンフレンドを持とう」など生徒の興味関心にあわせたテーマを考える。
 (実践例)何枚かの写真を見せて、それを組み合わせてストーリーを英語で書かせる。

2「書かせる」ときには、その読者を意識させることが大事。
 (実践例)フランス人のALTの母校とコンタクトを取り、クリスマスカードを書かせて、返事を待つ。クラスの半分くらいに返事が届いた。
 (実践例)「外国の人に日本の文化を紹介しよう」というテーマでは、日本の文化について知らない外国人が読むことを意識した英文が書ける。

3内容がないと書けないので、「空想の世界」を書かせるのもよい。
 (実践例)先週の土日に何をしたかを書かせるときにも、特に何もしていない生徒もいるはずなので、そんな時には「こんな土日の過ごし方があったらいいな」と思うような内容が入ってもよいことにすると話が書けるようになる。
 (実践例)ステップ1「自分の住んでいる街を英語で紹介」クラスみんなで文を考える。ステップ2「好きな街を選んで、その街に住んでいるつもりで英作文」

4どんな文を書けばよいのかのイメージ作りのためにも、作文例を提示する。
 (実践例)毎年使えるような作品はとっておいて、翌年の見本とする。修学旅行英語レポートとして作品作りに取り組み、優秀作品を教室掲示するなどしてイメージ作りに役立たせる。
 (実践例)テーマの説明をした後、教師が例としてスピーチして示す。ちょっと笑いをとるような内容で例を示すと、生徒もおもしろい作品に仕上げようと努力する。

5書かせる内容に関する「必要な語彙」を効果的に導入する。単語やチャンクのドリルなどを工夫する。
 話されている言葉のほとんどはチャンクで構成されているという報告がある。単語でなく、語の固まりを暗記していることが大切。
 (実践例)作文を始める前に、クラス全体で、「○○に関する英語を言おう」と単語を出させ、マッピングの図に表しながら黒板に英単語を書いていく。以後の英作文に使える表現なども含めて書いていく。

6英作文は「英借文」。基本文を覚えることから、自分の書きたい文へと発展させることができる。日本語を書いて和英辞典で英訳していくと、へんてこな英語になる。
 日本語をそのまま一語一語辞書で調べて英語にしていくのではなく、別の知っている英語表現にあてはまらないか考えてみる。別の言える言い方にする。

7Accuracyもfluencyもどちらも大事。そのバランスが大切。accuracyなしにfluencyは上達しない。中学校レベルでは文法などの「正確さ」に重点を置き、高校レベルでは「内容や構成」に力を入れることが効果的。
  (実践例)ダイアローグ・ジャーナル・アプローチの実践調査によると、中学生でaccuracyが伸び、高校生でfluencyが伸びたという報告がある。

8Show and Tellなどスピーキング活動や、リスニング活動、リーディング活動など4技能の関連を常に意識したライティング指導をすることが大切。
 リスニングやリーディングから英語表現や内容についての情報を学び、それをライティングに生かすとか、逆にShow and TellやALTとの会話を想定した台詞としての英文をライティングさせるなど活動が組み合わせれる。
 (実践例)「冬休み何したか」について口頭で会話活動をさせた後で、冬休みについての作文を書かせてみる。オーラルだと間違いが気にならず、お互いに友達の英文を聞くことで何をどんなふうに言えばよいのかわかるという利点がある。

9書いた英文を声に出して読んでみると、文がおかしいことに気づくことがある。
 
読んでリズムがおかしかったら、その文はたいてい間違っている。

10評価の基準を明らかにすることで生徒の意欲も高まる。
 (実践例)「○○について英語で書こう。」という課題では、目標を10文以上とし、8文以上書けたらA、4文以上書けたらBと提示しておく。また、英文の正確さで評価するとか、内容がテーマにあっているかという適切さについて評価するとかも、示しておくことができる。

11作品を見合ったり、添削しあうことで、作品を高めることができる。
 (実践例)英作文の優秀作品をいくつか選び、印刷して配布する。友達の文は読みたくなるし、読まれることを意識して英文を書くこともできる。

12教師の英文添削に時間をかけすぎて、燃え尽きてしまわないように。
 生徒の英文を全部読み、全体のエラーの傾向や英文のレベルをとらえてから、個々の英文へのチェックを始めるとよい。
 エラーの場所に、アンダーラインを引いたり、簡単なコメントを書く程度にし、生徒にエラーに気づかせ意識を高めたい。
 生徒も文法やエラーのfeedbackは大切だと認識している。生徒に理解できる方法でチェックをし、間違いに気づかせるようなシステムを作りたい。
 そのために生徒が間違えやすい文法を知り、生徒のエラーを正確に認識し、ポイントとなる文法をわかりやすく教えるこつを身に付ける。
 生徒の好みのコメント方法(全部のエラーにチェック、大事なエラーだけチェック、内容についてのコメントのみ、アンダーラインなどのみ)を知る。 

13英作文の下書き状態で一度添削をし、feedbackを入れて文法のエラーなどに気づかせ、最終稿で評価したい。
 エラー箇所に印をつけ、生徒に何が間違っているのかについて気づかせる。全体に多く見られるエラーについては、文法ミニレッスンで定着させたい。
 エラー箇所の記録(log)を取っておくと、継続的な定着の様子を把握することができる。

14英作文をさせればさせるほど、ライティング力はつく。エラー修正など省エネに努め、ライティング指導を嫌わないこと。
 同じようなテーマで何度も書かせると、慣れてきて表現も覚わってくる。

15

2005年 実践集

(犬塚章夫)
今年1月に論文にまとめた実践を紹介しました。田尻先生の実践を真似る形で実践してみました。生徒にいかに自己表現させるかを考えました。音楽と写真で生徒の書きたいという意欲を高めたり音楽と詩を使ったり、卒業メッセージ(英文卒業文集)を書こうという単元を作ったりと、自己表現する場を多く作りました。そしてノートに授業中少し時間をとって書かせた後は、家庭学習でそれを完成させてくるという進め方にしました。家で生徒が書きたいと思うようなテーマの投げかけ方が大切だと思います。音楽はけっこう有効です。しんみりするような音楽を流しながら英作文をさせると、生徒は意欲的に取り組みだします。みなさんも試してみてください。


(伊部真美)
「新出表現、または新出文法事項を学習後、必ずそれを用いて身近なことを1文書いて提出します。(2文以上も可)
実践例:中学1年 進行形
1時限:進行形の肯定文を学習。時間の終わりに「ただ今進行中」の事を文にしてみる。
     例)Ms.○○is talking with Keiko.
       I am not sleeping.(先生に「眠そうね」と言われて) 
       Ryo is writing in his notebook.
2時限:進行形の疑問文を学習。カードゲーム終了後、今度は疑問文で1文作って提出する。勘のよい生徒たちは、教師がこの文を授業後にチェックしているだろうと予想し、
    Are you drinking coffee?
    Is Ms○○( a Japanese teacher)checking our sheets?と書いてきたり
またその時間は部活動が進行中だろうと予想し、
    Is Mari playing softball?など書いてくる。これらの作文には必ず英語で返答している。
こう言った書く作業を通して、面白い文や良く書けている文は、教室に飾ったり、英語通信で発表したりしています。すると、中には「自習勉」(自主勉強ノート)にもっと書いてきたり、別のバージョンで挑戦してくる生徒もいます。」


(伊藤省三)
概要:英語学習の方法や言語習得理論などを題材に生徒に意見を書かせる活動
目的:ライティング能力向上、英語学習の方法について考えること
対象:中学二年生くらいから上級者まで
手順:
1 英語学習の方法や言語習得理論などについて意見を書かせる。実際に高校三年生で実施した場合には「A theory claims that it is impossible or very difficult to master a foreign language if you are not exposed to it by the age of twelve or thirteen. Do you agree or disagree with this theory?」という指示で文章を書かせた。
もっとやさしくしたい場合は、「What is your favorite way to learn English?」「What English song do you like best?」「What do you do to build up your vocabulary?」といったような指示をすれば良いだろう。授業時間内に書き切れない分は宿題として次回に回収する。
2 回収した文章を、教師が一枚の印刷物にまとめて生徒に配布する。生徒が目を通す時間を与えた後、教師主導でそれについて話し合う。
バリエーション:
・意見を書かせる前に、参考になる文章を読ませてもよい。
・意見を書かせる前に、ブレインストーミングをしてもよい。
・完成した文章を回収する前に、生徒同士で文章を交換し、互いにコメントし合ったり、間違いを直し合ったりしてもよい。(これはJarrell先生、犬塚先生のアイディアです。)
・他人の文章を読んだ後、さらに自分の意見を膨らませて文章を書かせてもよい。(これは犬塚先生のアイディアです。)
生徒作品例:
その1
Yes. I think so. A TV commercial says that we should be exposed to English before studying it. Don't think. We need to feel.
その2
I don't agree with this theory. I believe if we really want to master a language, we can nearly master it some day at any age. Brains have more capacity than we may think. Maybe it is very difficult to master the sounds that are not in our mother tongue. Also the subtle feeling that we have for a word may be different from that of foreigners or even others in our culture. Apple and <I>ringo</I> are not exactly the same. In spite of these difficult problems, I think what counts most is our strong will.
どちらも上に示した高校三年生向け課題に対する作品です。(向陽高校三年生、2003年)




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