自由研究発表第1会場発表要旨

1−1
Branching Type and Grammatical Function of Noun Phrase: Their Effects on Japanese EFL Learners' English Relativization
AKIHIRO ITO, Aichi Gakuin University
  The present study examines the effects of branching type and grammatical function of noun phrase (NP) of relative clauses on interlanguage performance among Japanese learners of English as a foreign language. The sentence combining test was administered to Japanese learners of English (N=42). Results indicated that both of the two factors significantly determine the difficulty of English relative clauses. Left-branching (center-embedded) relative clauses have a tendency to be more difficult than right-branching ones. Moreover, it is implied that subject-relative clauses are answered more accurately than object-relative clauses. These findings suggested that branching type and grammatical function of the noun phrase are complimentary determine the difficulty level of English relative clauses. The results also implied the validity of Kawauchi's (1988) hypothesis that the difficulty order of relative clauses is as follows: OS > OO > SS > SO. The limitation of the present investigation and the directions of the further research are also discussed.

1−2
How are instrinsic and extrinsic motivation relevant to theorizing on the role of strategies in language learning?
Katsuhisa HONDA (Shizuoka University/Tokyo Gakuge University Graduate School)
  The first purpose of this paper is to assess the validity and reliability of a scale of intrinsic and extrinsic motivation of Japanese college students in their study of English. The relations between these types of motivation and the other orientations have been mainly discussed by Vallerand and his colleagues (1898, 1992, 1993 and 1997). The second purpose is to explore the role of the strategies as predictors of intrinsic and extrinsic motivation, and the influence of intrinsic and extrinsic motivation on learners' performance. Junior college students complete questionnaires that assess their (a) Language Learning Orientations Scale-Intrinsic Motivation, Extrinsic Motivation, and Amotivation Subscales (Vallerand, Pelletier and Noels, 2000:84-85) and (b) the role of strategies which are theoretically classified into two orientations; learning strategies (Oxford, 1990) and communication strategies (Dornyei and Scott, 1997). The results of a covariance structure analysis indicate that learners' 'performance assessed by their scores of the TOEIC test might be directly related to intrinsic and extrinsic motivation. Communication strategies might predict these two types of motivation, whereas 'compensation strategies' among six factors of learning strategies would predict communication strategies. 'Cognitive strategies' might be virtually uncorrelated with intrinsic and extrinsic motivation. The implications of these findings for the role of strategies are discussed.

1−3
ビリーフテスト:学習と教授の相関
島田勝正(桃山学院大学)
 大学における英語教員養成の出発点は、教員志望学生の英語学習暦と英語教師モデルの貧困さに起因する学習や教授に対するビリー
フの修正にある。
 学習に対するビリーフは教授に対するビリーフ形成に影響を与え、それが教授そのものを支配・規制するようになる。 本研究の目的
は学習に関するビリーフが教授に関するビリーフとどのように関連しているかを調べることである。
 今回使用したビリーフテスト(外国語教育に関する意識調査)は島田(1996)に教授に関する項目を付け加えた改訂版である。学習に関
する31項目と教授に関する31項目の計62項目から構成されており、外国語学習に関する文章記述に対する態度を5段階尺度法で答えさせ
る形式である。この調査を「英語科教育法?」のガイダンス時に27名の受講生に実施した。学習・教授項目間で有意な相関のある項目ペ
ア数70のうち、「外国語学習の過程は母語修得と同じである」と「英語の授業はすべて英語で行なわれるべきである」、「日本語に訳
せて初めて外国語を理解したと言える」と「読解ではすべて日本語に訳すべきである」など、因果関係が説明できる18の項目ペアが
あった。

1−4
中学校入学以前の英語学習の影響:学習者による評価
柳 善和(名古屋学院大学)高橋美由紀(中部学院大学)
 この研究は、中学校入学以前の英語学習が、学習者のその後の英語学習にどのような影響を与えているかを、学習者自身に評価させ、その結果を考察したものである。この研究の被験者は名古屋学院大学外国語学部英米語学科の2000年度入学生207名である。英米語学科を選択したという意味では、彼らは英語学習における成功者と言える。その彼らが自分自身の中学校入学以前の英語学習をどのように評価するかは興味深い問題である。
 柳・高橋(2001)では、同じ被験者に彼らの中学校以前の英語学習の経験について、その有無とその内容、そして満足度を調査している。これよると経験有りの学生は38%であり、そのうち2年以下の経験が67.8%を占める。また、彼らはその内容について極めて高い満足度を示しており、柳・高橋(2001)ではその具体的な内容を分析している。
 今回の調査では、(1)中学校入学後、それ以前に英語を勉強したこと(またはしなかったこと)の影響の大きさ、(2)現在英語学習が好きか?(3)中学校入学以前の英語学習が、現在の英語の好き嫌いに影響しているか?(4)同じく、現在の英語の実力に影響しているか?の4点について7段階スケールの選択式と記述式を合わせて回答を求め、その結果を分析・考察する。

1−5
「現在との関連性」に焦点をおいた現在完了形の文法指導
野呂瀬稲子(山梨YMCA英語学校)
 現在完了形は、日本人英語学習者にとって習得困難な項目のひとつに挙げられる。その理由として、日本の(主として中学校における)英語教育において、現在完了形は「完了、結果」「継続」「経験」という用法の分類に基づいて指導がなされており、その本質的意味・機能の指導が十分でないとの指摘がある。
 中学生の現在完了形の習得状況(羽鳥 1987、竹中他 1988)を見ると、「現在完了形ができない」要因として、@現在完了形と過去形の event time はともに過去時であるため、この二つの使い分けが難しい、A日本語と英語の時制・相の違いを考慮せず、現在完了形の意味をその日本語相当句「・・・してしまった」「ずっと・・・している」「・・・したことがある」をもとに理解しようとする、ことが考えられる。従って、こうした問題点を改善するためにも、その本質的意味の指導は重要となってくる。
 本発表では、その本質的意味をを「現在との関連性」ととらえ、過去形との意味の違いに注目しながら、完了形指導を考察する。その上で、「現在との関連性」に焦点をおいた完了形指導手順を提案していくつもりである。

1−6
EFLリーディング・テストのあり方 ― テスト項目の二次元分類法に焦点をあてて
樽井 千寛(信州大学大学院) 塩川 春彦(北海学園大学)
 これまで教育現場では、リーディング・テストはほぼ教師の直感によって作成され、それぞれのテスト・アイテムがどのようなリーディング能力を測っているのかについての検討や合意を経ずに実施されてきた。
 一方、靜(1999, 2000)は、「言語単位レベル」と「認知レベル」の二つの次元の組み合わせによるリーディング・テストアイテムの分類法を提案している。
 本研究では靜提案の長所ならびに問題点を探り、EFLリーディングにおけるテストのあり方を考えてみたい。

1−7
要約、クローズ、多肢選択とテキスト構造が学習者に及ぼす影響
内藤徹 (福井県立 鯖江高等学校)
 現在、英語教育ではCLT ( Communicative Language Teaching ) が盛んに叫ばれている。リーディングにおけるコミュニケーションを達成するためには、読み手は書き手の意図を理解し、その要点を掴まなければならない。これには、要点を見つけそれらを論理的に再構築し自分の言葉で簡潔に表現する要約が、その能力を身につける良い方法と考えられる。
 要約は、リーディングにおけるコミュニケーション能力を高めるのに役立ち、学習者の理解度を判断したり、読解や言語問題を解決するのにも役に立つと考えられる。また、今日、国公立大学の二次試験問題にも要約を求める問題が多数出題されており、要約指導はこの点でも必要と考えられる。
 そこで、要約と他の2つの方法を比較し優位性があるのかどうかを検証してみたい。他の2つの方法の1つは、実用性に富み、総合的に言語能力を測定するのに適しているといわれるクローズテスト。もう1つは、実用性、客観性に優れていて、大学入試センター試験にも取り入れられている多肢選択テストである。
 さらに、テキスト構造が良いものと悪いもの、すなわち、この小論の中では段落があるものとないものでは、学習者がどれだけ影響をうけるのかについても、先行研究と理論的背景を踏まえ、データを分析しながら考察し検証をしたい。
 分析方法は t-test、 ONE-WAY ANOVA→ RYAN'S METHOD、 PEASON PRODUCT MOMENT COEFFICIENT などである。

1−8
単純過去との対比による現在完了の理解と指導−高校新入生に焦点をあてて−
松井 正(大阪・樟蔭高等学校)
 本発表は高校新入生に焦点をあてて日本人英語学習者にとっての現在完了の習得の困難点を単純過去との対比により明らかにし、あわせてその効果的な指導方法をさぐることをねらいとする。まず最初に現在完了と単純過去の相違点を現在との関連の有無および不特定過去と特定過去の二つの観点からとらえ、次いでそれらの違いに関する理解度調査結果を報告する。
調査によると、現在との関連の有無に関しては、主語や結果が現存している場合でも生徒は単純過去の使用を好む傾向があることがわかった。また、特定過去と不特定過去の違いに関しては、頻度や期間を表す副詞類は現在完了と結びつけてとらえられる傾向があること、談話の流れの中で現在完了から単純過去への移行の理解が困難であることなどが判明した。これらはいずれも日本語の介在や用法分類に対する過度の意識化が原因であると考えられる。これらの事実をふまえて、現在完了の指導ではどのようなことに留意する必要があるのだろうか。発表の後半では指導方法に関して若干の考察を試みたい。