自由研究発表第6会場発表要旨

6−1
短期大学でのListening指導をふりかえってー学生へのアンケートをもとにー
浅野敏朗(京都府立医科大学医療技術短期大学部)
  従来、一般教養の英語というと、やや難解な内容のものを訳読式で読んでいくということが多かったと思われる。この種の授業の特徴は、書かれた英語を読むことが主となり、内容が難しいとどうしても学習活動の中心は英文和訳になる。このパタンの授業では、教室の雰囲気が教師中心で静的かつ一方的になり、日本語ばかりが印象に残り、学習者は参加していてもあまり興味や関心を持てないといった感想を持つことが多いように思われる。
  そこで、できるだけコミュニケーションを主体にした授業を展開することを目標に、学習者に本物の英語にふれさせる機会を多く持たせることを目指し、しかも学習者が楽しめるようにと心がけて授業を計画した。コミュニケーションの活動の中でも、リスニングからスピーキングへという自然な言語習得の順序に従い、ListeningからInteractiveな活動へと発展させることを試み、最終的には再びListeningで授業が終えられるように計画した。さらに、教材は自然でauthenticな英語で、しかも楽しめる内容のものを選ぶようにこころがけた。
  本発表は、以上のような目標で行った短期大学におけるListening指導の経緯をふりかえる。授業の手順と方策、授業を行っての問題点や反省点を、授業の対象となった学習者のアンケート結果などをふまえて報告する。

6−2
リスニングによる概要把握 ーグループワークを取り入れて(U)ー
岩本藤男(掛川中学校)
  リスニング指導は、「教えているのではなくテストをしているにすぎない」という指摘が長い間されてきた。この問題を解決するための手段としてリスニング指導の中にグループワークを取り入れて授業実践をしてきた。グループワークで行う話し合い活動により、自分のリスニングの過程をい振り返ったり、注目して聴くべき部分をはっきりさせたりすることで、リスニングの結果のみならずリスニングの過程に目を向けさせることをねらった。
  本研究では、教師の解説のみで行ったリスニング練習の結果とグループワークを取り入れて行ったリスニング練習の結果を比較することで、グループワークが生徒の聞き取りにどのような影響を与えたかを検討し、今後の指導の参考資料としたい。

6−3
中学生のコミュニケーションストラテジーを促進する指導について〜 MERRIERアプローチの可能性 〜
佐藤昭彦(長野市立若穂中学校 信州大学大学院)
 中学生がALTとのインタラクションにおいて、相手の話している英語の内容をよく考えずに、機械的に、モデル通りに答える姿が見られる。これは、ドリル的な応答練習の限界を示している。中学生レベルでも予想外の質問に対して適切に応答するためには、ストラテジー能力は欠かせない。このストラテジー能力を促進する指導法として、MERRIERアプローチに注目してみた。
 MERRIERアプローチは、1995年に信州大学の渡邉教授他により提唱されたアプローチである。渡邉らはコミュニケーション能力を育成するために、生徒が「考えて」「表現」するためには、「望ましい」インプットを「工夫して」与えることが重要であるとしている。本発表では、MERRIERアプローチによってどのようなストラテジー能力が促進されるかを探るための、リサーチデザインについて発表したい。

6−4
実践的コミュニケーション能力の育成のための効果的なタスクと指導過程
竹本俊穂(福井県立丸岡高等学校)
 平成14年から施行される新学習指導要領において、英語科の目標として「実践的コミュニケーション能力の育成」が特に強調され、教室での切実なコミュニケーションの場を如何に確保するかが問われている。本発表では、まず教室でよく用いられるタスク(授業での活動)に焦点を当て、実践的コミュニケーション能力を育成するためには、学習者の意見や考えが反映する interpretive activities(解釈的活動)や humanistic activities(解釈的活動)といった性格をもった活動が望ましいことを提案する。しかし、このようなタスクは学習者の認知的負担が大きく、授業で行おうとしてもなかなかうまくいかない。そこで、本発表では、こうした問題を解消するための方法として、Skehan の提案する指導過程をとりあげ、この指導過程が認知的負担の大きいと考えられる意見や考えを反映するタスクにとって効果的かどうかをふまえて検証する。

6−5
「書く」コミュニケーション活動を重視したライティング授業の実践
塩谷三徳(静岡県立大仁高等学校)
 「ライティング」の中で、英語で「書く」ことに対して、従来の文法や和文英訳の重視だけでなく、自分の考えを英語で表現する自由英作文ができるような生徒の育成にも目が向けられるようになってきている。しかし、日本語だけで意志の疎通ができる環境の中で、授業中に生徒が自主的に英文を書くような環境を作るのには相当の工夫が必要である。「英語で表現する」という点では共通している「オーラル・コミュニケーション」の授業が動的な部分が多いのに対して、「ライティング」の授業が静的である点も「ライティング」の授業の扱いを難しくしているのではないかと思う。平成11年3月に告示された高等学校学習指導要領は、「ライティング」の内容について「言語の使用場面を取り上げ、実際にコミュニケーションを体験する機会を設けるよう配慮するものとする。」と述べている。その中で言語の使用場面として「電子メール」を例として挙げている。
 本研究では、授業外の自主的活動や授業中の特別な活動として電子メールでの海外との文通を扱うのではなく、電子メールを中心とした「書く」コミュニケーション活動を中心とした「ライティング」の授業を、それぞれ少し異なる形態で3集団に対して行った。それぞれの「ライティング」授業の年間の展開例を示し、問題点と結果を考察する。

6−6
「実践的コミュニケーション飴力」を養うピクチャーカード活用法
矢亀 尋美 (信州大学大学院)
 現在、我が国の中学・高校での英語教科において、実際に使える英語のコミュニケ←ション能力、「実践的コミュニケーション能力(practical communicative competence)」の養成が求められている。本研究は、コミュニケーション活動を実践的にするための手段として中学校の教科書付属教材で身近なピクチャーカードに着目し、授業での活用法を提案するものである。ピクチャーカードは、教科書の内容や状況が紙芝居のように大きな紙に絵や写真で視覚化されているものである。それは、クラスの全体に注目させ、「言語の使用場面」を一目瞭然に示す効果が期待できるのでさまざまな使い方が可能なはずである。しかし、これまで実際の教室では一定の使用法しかされてきていないように思える。
 本発表では、中学校教師に行ったアンケート結果から、ピクチャーカード利用の現状を考察するとともに、コミュニケーション活動に有効な手段となる活用法を提案する。また、提案する活動について、授業実践の報告をする。

6−7
スピーキング指導の実際
石渡 雅之(名古屋短期大学)
 新学習指導要領になってからも、 引き続き「コミュニケーション能力」に焦点を当てた英語授業が要求されている。コミュニケーションという言葉自体これまで常に教育現場で意識されてきた言葉であり、様々な実践がなされてきた。 本発表は、教育現場(中学校)における活動の中で学習者のスピーキング活動の焦点を当て、コミュニケーション重視の英語教育においてどのような指導が なされるべきなのかを語用論の研究成果をもとに考えたものである。 語用論のなかでも特にframeについての研究成果を実際の授業に生かすことを提案し、スピーキング活動の今後の方向性と問題点を考えるきっかけとしたい。

6−8
プレリーディング活動の種類と読解力の伸びに関する研究〜中学校における速読指導の試みから〜
杉田 由仁 (山梨大学非常勤講師)
 プレリーディング活動が、 文書の内容理解に関して効果を発揮することは、多くの研究(Hudson 1982,Tudor 1986、Taglieber et al. 1988、Akagawa1992、Mochizuki 1992、Iijima 1993,Furuya 1993)によって明らかにされてきた。しかし、 それらの結果を厳密にとらえると、確かにプレリーディング活動が、学習者の 「その場での理解を助けた」ということは実証されているが、はたしてプレリーディング活動により、学習者の「読解力」そのものが伸長したかどうかについては明らかにされていないように思われる。
 そこで本研究では、プレリーディング活動が読解力そのものの伸びにどのような効果をもたらすかを検証したいと考えた。 そのための手立てとして、読解力の指標としては、読みの速さと理解度をその構成要素と規定し、「速読力(WPM)」の変化を測ることにした。そして、 中学生英語学習者に対して速読指導および2種類のプレリーディング活動を複数回の授業に継続しておこなった。この結果をもとに、 プレリーディング活動の種類と読解力の伸びについて一考察を試みるものである。