gk.htm

学級経営の広場

Q-U

  河村茂雄考案による心理検査。「居心地のよいクラスにするためのアンケート(学級満足度尺度)」と「やる気のあるクラスを作るためのアンケート(学校生活意欲尺度)」の2つの下位尺度から構成されている。このQ-Uを活用することで、学級集団の状況を分析することができる。

  ○ 居心地のよいクラスにするためのアンケート集計結果 

 マズローの欲求段階説 人間は第1の欲求(生理的欲求)が満たされると、次に第2の欲求(安全と安定欲求)が生ずる。そして第3の欲求(所属と愛情欲求)、第4の欲求(承認と自尊心欲求)、第5の欲求(自己実現欲求)へと進んでいく。

  Q-Uでは、マズローの説を参考にして、X軸に「安全」、Y軸に「承認」を把握できるように設定してある。そして、これら2つの軸の重なりで、学級を下の4群に分けている。各生徒の数値をX軸・Y軸の重なりでプロットして、学級全体の分布状況を下記のグラフに図示することで、学級の状況を把握し、特にケアの必要な生徒を知ることができる。

侵害行為認知群 学級生活満足群
学級生活不満足群 非承認群

  ○ やる気のあるクラスを作るためのアンケート集計結果

 子供が学校や学級に満足するのはいろいろな背景による。下記のような項目で、それぞれの生徒の結果をグラフ化していく。クラス全体の度数分布をみたり、それぞれの生徒の強い点、弱い点をみたりして、指導に生かしていく。
  小学校・・・「友人関係」「学級意欲」「学級の活動」
  中学校・・・「友人との関係」「学習意欲」「教師との関係」「学級との関係」「進路意識」

  ○ 実施方法

 図書文化社から用紙を購入し実施する。(用紙代1人100円、コンピュー診断1人200円)
 用紙があれば、教師が手でグラフにすることも可能。6月と2月に実施することで、クラスの変容を見ることができる。

  開発者 河村茂雄先生のHPにある「Q-U紹介」 http://www.tsuru.ac.jp/~kawazemi/Q-Upage.htm
  『学級づくりのためのQ−U入門 「楽しい学校生活を送るためのアンケート」活用ガイド』
 河村茂雄著 図書文化 2006

構成的グループエンカウンター(SGE)

  國分康孝先生提唱のグループ活動。リーダーの指示した課題をグループで行い、そのときの気持ちを素直に語り合うことを通して、人間関係を作っていく。自己理解・他者理解・自己受容・感受性の促進・自己主張・信頼体験という6つのねらいをみたすに用意されている。

  構成的グループエンカウンターのHP http://www.toshobunka.co.jp/sge/

グループワーク実習(GWT)

  南山大学心理人間学科が提唱している方法。ラボラトリー方式の体験学習を学校現場でどう活用するかの研究が行われている。
  グループエンカウンターの手法に似ているが、後半の展開に違いがある。まずは、学習のめあてを提示した後、グループで活動を行う。そして後半では、その活動を振り返りながら(「ふりかえり」)、グループで意見や気持ちを交換する(「わかちあい」)活動と通して、人間関係作りを進めていく。

  グループワーク・トレーニングのHP http://www.eva.hi-ho.ne.jp/kumasan/kumasan.htm
  南山大学ビデオライブラリー http://www.nanzan-u.ac.jp/NINKAN/gp/videos/video-libraly.html
   犬塚が携わった刈谷市立依佐美中学校の実践(説明ビデオと研究報告書)が紹介されている。

道徳の新しい10種類のアプローチ

  様々な道徳授業の最新のアプローチの中から、10のアプローチが紹介されている。『新しいアプローチを学べば「道徳」が面白くなる』『道徳授業の新しいアプローチ10 』の2章で構成された本で、モラルジレンマ、VLFを利用した「思いやり育成プログラム」などの理論と実践例が紹介してある。
 アプローチ1 「価値の明確化」の理論・実践
 アプローチ2 「エンカウンター」の理論・実践
 アプローチ3 「モラル・スキル・トレーニング」の理論・実践
 アプローチ4 「VLF(思いやり育成プログラム)」の理論・実践
 アプローチ5 「モラルジレンマ」の理論・実践
 アプローチ6 「ディベート的討論による道徳」の理論・実践
 アプローチ7 「総合単元的道徳学習」の理論・実践
 アプローチ8 「批判的思考を生かした統合道徳」の理論・実践
 アプローチ9 「ストレス・コーピング」の理論・実践
 アプローチ10 「マンガによる道徳授業」の理論・実践

  『道徳教育の新しいアプローチ10』諸富祥彦著、明治図書出版 2005http://booklog.jp/asin/418811018X/via=ainuzuka

ゼロトレランス

  「ゼロトレランス」とは、アメリカで行われてきた生徒指導の方針で、トレランス(寛容)なしに生徒を処分しながらも、別の方法を用意して指導をしていく方式。プログレッシブ・ディシプリン(段階的指導)を行うことを前提としたもの。平成18年5月の国の研究報告書にも紹介され、日本における生徒指導の方針の転換が示唆されている。

  同報告書では、[コラム]段階的指導(プログレッシブディシプリン)の事例(p14)として、次のような文章があるので引用したい。
『段階的指導とは、大きな問題行動に発展させないために、小さな問題行動から、曖昧にすることなく注意をするなど、段階的に指導をする方式である。この指導方式は、アメリカで広く実践されているゼロトレランス(直訳すれば、「寛容ゼロ」ということだが、各学校現場では、「安全で規律ある学習環境」を構築するという明確な目的のもとで、小さな問題行動に対して学校が指導基準にしたがって毅然とした態度で対応するという理念をさす)と深く関わっている。』

  また同報告書では、教育委員会におけるコーディネーター機能の充実という項目(p18)で、『現実には、指導困難な児童生徒がおり、その問題行動の中には、校内の指導と家庭の協力だけで解決できない場合があり、「校区内ネットワーク」と「市町村ネットワーク」を活用したサポートチームなどを結成して、問題解決に当たることが必要である。』と述べているが、西尾市では、それを活用した制度が効果をあげている。西尾市では、生徒指導アドバイザーを置き(現在3名配置)、いじめ・不登校・問題行動・児童虐待に対応するサポートチーム(学校・教育委員会・生徒指導アドバイザー・他の協力者で生徒の状況に応じて編成するチーム)を組んで指導をしている。問題行動では、教育委員会の権限で「出席停止制度」を適応しながらも、その生徒を学校外でどうサポートしていくのか、必要に応じて職場体験なども組み込み、悩みの相談には直接生徒指導アドバイザーが当たりながらも、学校復帰の指導体制を取っている。

  『ゼロトレランス―規範意識をどう育てるか』加藤十八著、学事出版 2006http://booklog.jp/asin/4761912928/via=ainuzuka
  国立教育政策研究所「生徒指導体制の在り方についての調査研究報告書ー規範意識の醸成を目指してー」平成18年5月
    http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/seito/seitohoukoku.pdf p10-14参照

生徒指導

アメリカで購入した「The First-Year Teacher's Survival Guide: Ready-to-Use Strategies, Tools & Activities for Meeting the Challenges of Each School Day by Julia G. Thompson」からの情報のいくつかを紹介します。

(1)作りたい学級の雰囲気

 1、生徒も教師も学級のきまりを理解している。
 2、生徒が協力して学習に取り組む雰囲気がある。
 3、生徒同士が、そして教師もお互いに尊敬している。

(2)許してはいけない生徒の行動

 1、脅迫・おどし行為 ・・・ いじめ、からかい、セクハラなど寛大に取り扱わない。
 2、薬物乱用 ・・・ 薬物、アルコール、たばこなどは、ゼロトレランス。
 3、他の学ぶ権利を奪う行為 ・・・ 学習を妨害する大声なども。
 4、権威への軽蔑 ・・・ 教師に対する反抗的態度、口応えなど。
 5、学習の放棄 ・・・ 生徒の学習状況を把握し、保護者に連絡する。
 6、危険な行為 ・・・ はさみを持って走り回ることから、火器の使用、備品の危険な使い方
 7、不正行為 ・・・ 文章の偽造
 8、遅刻 
 9、無断欠席 ・・・ 出欠席の記録
10、暴力 ・・・ けんかや、それをけしかける声がけ、武器になるような物の使用

(3)こんなことをするとトラブルになる

 1、違反に対して適切な罰を与えないでいる。
  例) みんなの前で大声で口論しているのに、注意しかしない。
  示唆) 大きなけんかに発展する危険性がある。その場から引き離し指導するとともに、学校にも報告をあげる。
 2、いろいろなことに寛大になりすぎる。
  例) 学級で決めたことを平気で破っている。
  示唆) 時間を取って話をし、学級で決めたことを守らせる。
 3、許されること、許されないことの境界をはっきりさせないでいる。
  例) 教室で乱暴な口を聞いているのを聞いても聞こえないふりをしている。
  示唆) 不愉快に思うことは許さない。その生徒に適切でなく失礼であることをわからせる。
 4、 生徒が問題点について話をしたがっているのに、時間を作らないでいる。
  例) 試験の解答について苦情が続出、話を聞かないでいてさらに騒ぎが大きくなる。
  示唆) 生徒に感情的に話をさせていると不満が増加する。落ち着いて話をさせる必要がある。
     多くの生徒が感情的になっている場合は、紙に状況を書かせて、あとでしっかりと読むことで対応する。
 5、 ルールの適用に一貫性がない。
  例) プロジェクトの締切に厳格にしているのに、部活のスター選手が締切の延長について母親からの苦情があり
    認めた。他の生徒からクレームが来て、締切を守らない生徒がでた。
  示唆) どの生徒にもルールや締切が同じになるようにする。
 6、一人を罰している間にもっと大きな違反が起きている。
  例) 通路に鞄を置いている生徒を注意している間に、カンニングをしている生徒がいた。
  示唆) 行動する前に全体の状況を把握し、違反行動に対処する。

(4)そうならないためのチェックリスト(週の初めにチェックして行動を改善していこう)

 私は先週、・・・
  □ 必要な時に保護者に連絡をしなくて失敗した。
  □ 罰を与えた。
  □ 授業中生徒を眠らせてしまった。
  □ 声を荒立ててしまった。
  □ 一部の生徒の違反行為を見逃してしまった。
  □ カッとなってしまった。
  □ 生徒がうるさいのにしゃべり続けてしまった。
  □ 生徒を指さすなど、失礼な行動をしてしまった。
  □ 生徒にがみがみ言ってしまった。
  □ 生徒が教師を無視するのを許してしまった。

(5)25の生徒指導上やってはいけないこと

 1、教師が正しくて生徒が悪いということを証明する無駄な時間を過ごすな。それより、問題の解決策を生徒とともに考えろ。
 2、カーッとなって物事を客観的に捕えられなくなるな。
 3、一貫性のないことをするな。
 4、生徒の違反行為に個人的に介入し過ぎるな。生徒の行為に感情を入れ過ぎず、客観性を保て。
 5、生徒に違反行為がしやすい状態を与えるな。貴重品を置きっぱなしにしておいたり、部屋を空けっぱなしにしたり、誰も見てない状態を作ったりしない。
 6、他の生徒の前で生徒と対決をするな。状況を悪化させるばかりでなく、見ている者を不安にさせる。その生徒に恥をかかせることでさらに状況を悪化させる。個人的に話ができるような場所を選べ。
 7、生徒に謝罪を強制するな。生徒に恥をかかせるだけで、心からの謝罪にならない。問題解決のためにともに考えることで心からの謝罪が得られる。
 8、違反行為を理由に成績から得点を引くな。成績は生徒の学習上の進歩の度合を示すものであり、行動の評価ではない。
 9、怒っている生徒に触るな。ちょっと触っただけでも誤解される。
10、事件が小さく扱いやすいうちに動き始めることに躊躇をするな。
11、生徒に悪いレッテルを貼るな。行動は悪いかもしれないが、生徒が悪いのではない。
12、学校管理者に早く送りすぎるな。自分で解決できることはしろ。
13、小さな事件をすぐに専門家チームに送るな。違反行為の推移を見てプランを立てろ。
14、罰を2重3重に与えるな。
15、教師が怒った状態で問題行動を起こした生徒と接するな。怒った状態で生徒に改善を進めることはできない。
16、正しくない行動を見ぬふりするな。お互いにふざけ合わせたり、目をまるくしているだけではだめ。
17、良い行いをさせるために生徒を脅したりいじめたりするな。うまくいかない。
18、ただ止めるように言うだけではだめ。どうすればよいか示せ。
19、生徒を助けるためにカンニングなど大きな問題を隠したりするな。他の先生と相談し、学校の方針に従え。
20、怒って罰を与えるな。落ち着いて、行動する前によく考えよ。
21、罰として学習課題を与えるな。違反行動にふさわしい活動をさせよ。
22、一部の生徒の罰を全員に与えるな。
23、対決的になるな。問題解決をはかれ。
24、怒っている生徒に教師の要求に従うように命令するな。
25、良い行動をさせるために罰のおまけをするな。かわりに強化せよ。