報告書の発刊にあたって
「米国理解教育プロジェクト」代表米日財団の助成による「米国理解教育プロジェクト」の第二年次事業(2000年11月〜2001年10月)が無事に終了し、ここに報告者の発刊をみたが、研修に参加され、様々なご努力を払われた小・中・高校の先生方並びに本事業に対しご理解とご支援をいただいた関係者の方々に、まずもってお礼申し上げたい。
本プロジェクトの目的は、小・中・高等学校における米国理解教育の改善と推進にあるが、そのため「長期的目標」として@米国に関する現行の教材を再検討し、新しい教材を開発すること、A新設の「総合的な学習の時間」のためのカリキュラムと教材の開発をすること、Bインターネット、研究会や講演会などを通して米国理解教育の普及と促進をはかること、等々を掲げ、また、「短期的目標」として参加された小・中・高校の先生に対して@ホームステイ、インダヴュー、討論などの直接体験の場を提供し、米国理解を深めること、A各訪問地で米国理解のための資料・教材を収集する機会をつくること、B米国の教師との交流を通して相互理解を促進すること、等々を掲げた。そして、第二年次では、それら目標の達成をめざして「米国の歴史と政治」、「社会的多様性と都市問題」、「米国民理解」の三テーマを設定し、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンDC等で現地研修を実施した。
研修参加の先生方は、限られた時間の中で誠実に努力され、成果を上げられたようで、そのことは、本報告書からもご理解いただけることと思う。もっとも、言語的制約等の条件もあり、時に理解不足や誤解もあろうかと思われる。その点では、多くの方々のご批評、ご意見をいただき、修正できれば幸いである。なお、現地研修にあたっては、ボストン日本語学校長の森上祐治氏、米日財団の David P. Janes 氏、ラトーガス大学グローバルプログラム・ディレクターの Seth A. Gopin 氏、同大学図書館長の Ryoko Toyama 氏、ミラーズビル大学学長の Joseph A. Caputo 氏、同大名誉教授の Walter Kreider, Jr. 氏等々の方々に格別のご配慮とご協力をいただいた。ここに記して謝意を表したい。
T 第二年次計画および実施概要
1.テーマおよび主な訪問地
第二年次の計画では、「米国の歴史と政治」・「社会的多様性と都市問題」・「米国民理解」の3つのテーマを設定した。それぞれの概略は次の通りである。
第1のテーマは、「米国の歴史と政治」である。参加者はボストン、フィラデルフィア、ワシントンDCを訪ね、「自由」と「平等」の概念が米国の歴史と政治にどのように形成されたかを研究する。最も古い都市の1つであるボストンでは、教育と文化的施設ばかりでなく、日本人学校における米国理解教育の現状を見たい。フィラデルフィアは、独立宣言と憲法が作成された歴史的な場所であり、南北戦争の戦跡であるゲティスバーグをも訪れる。ワシントンDCは米国政治の中心であり、米国理解には重要な拠点である。
第2のテーマは、「社会的多様性と都市問題」である。「多様性」は米国文化の特徴の1つである。ニューヨーク市とランカスター市は、文化的、民族の多様性の典型であると言われ、米国の「多様性」を教えるためるの格好の教材となる。ニューヨーク市は、しばしば民族のるつぼとして、ランカスター市は住民の多くがアーミッシュ派に属していることで、「多様性」が具現化された地域として有名である。ニューヨーク市立大学では、環境教育、歴史教育、グローバル教育の権威である教官に講演を依頼する予定である。
第3のテーマは「米国民理解」である。このプロジェクトは、教育における人的交流にも重点を置く。その一つとして、ニュー・ブランズウィックで、短期ホームスティーを組み込み、米国の生活様式、歴史、政治などを人的交流から理解する。この地域にあるラトガース大学は日米交流の草分けとして有名であり、研究協議や講演を通して、地元の研究者や教師と意見を交換する機会を設ける。この地域のもう1つの目的は、ペンシルベニア州のミラーズビル大学を訪ねることである。愛知教育大学とは学生交換協定があり、なお一層友好を深める予定である。
2.研修スケジュール
(1)事前研修
@ 2001年3月11日(日)第1回研修会(10:00〜16:00、以下同じ)
・プロジェクトの概要
・研修講話 「アメリカ研究の方法について」
第一年次研修生田中博章氏(名古屋市立桜田中学校)
柵木智幸氏(愛知教育大学附属岡崎中学校)
・年間スケジュールについて
・事務手続きについて
・班編成とティーム・ミーティング
A 4月1日(日)第2回研修会
・現地日程について
・事務手続きについて
・研修講話 愛知学院大学文学部教授 野村達朗氏
「現代アメリカのエスニシティ−と多文化主義をめぐって−」
・ティーム・ミーティング
・本日のまとめ
B 5月20日(日)第3回研修会
・研修日程について
・事務手続きについて
・研修講話 南山大学外国語学部教授 藤本博氏
「アメリカ合衆国から学ぶこと―日系交流の源流の地ラトガースの大学訪問にあたって―」
・ティーム・ミーティング
・本日のまとめ
C 6月10日(日)第4回研修会
・研修日程について
・事務手続きについて
・研修講話 南山大学外国語学部教授 岩野一郎氏
「アメリカ建国物語」
・ティーム・ミーティング
・本日のまとめ
D 7月14日(土)第5回研修会
・研修日程等について
・事務手続きについて
・研修講話 皇学館大学文学部教授 深草正博氏
「歴史教育からみた米国理解」
・ティーム・ミーティング
・本日のまとめ
E 8月11日(土)
・研修日程等について
・ティーム・ミーティング
・学長より現地研修出発を直前にしての激励挨拶
・ミーティングの続きと本日のまとめ
(2)現地研修行程および主な訪問・見学先等
月 日 | 曜 | 都 市 発 着 | 現地時間 | 主な訪問・見学先等 |
1日目 8/14 |
火 |
名古屋国際空港 名古屋国際空港発 デトロイト空港発 |
11:25 13:25 12:00 (11H35M) |
名古屋空港国際線出発ロビー 3F北21・22カウンター御集合 荷物を預けた後、4F特別待合室にて出発式 出国手続き後、空路デトロイト経由ボストンへ |
ボストン空港着 |
15:31 17:30 |
入国後、ボストン市内のホテルへ移動(ボストン・ホテル)泊 | ||
2日目 8/15 |
水 | ボストン滞在 | ボストン日本人学校・ボストン美術館・ハーバード大学、ネイビーヤード(USSコンスチチュート号)(ボストン・ホテル)泊 | |
3日目 8/16 |
木 |
ボストン発 ニューヨーク着 |
16:00 17:30 18:30 |
トリニティチャーチ、ケネディライブラリー、フリーダムトレイル、クインシーマーケットなど。 航空機にてニューヨーク(ニューアーク空港)へ、到着後は専用バスにてホテルへ(ニューヨーク・ホテル)泊 |
4日目 8/17 |
金 | ニューヨーク滞在 |
リンカンセンター、ダコタハウス、コロンビア大学、チャイナタウン、ウオール街、国際連合本部など。 |
|
5日目 8/18 |
土 | ニューヨーク滞在 |
セントラルパーク・メトロポリタン美術館など |
|
6日目 |
日 |
ニューヨーク発 ニューブランズウイック着 |
14:00 17:00 |
アメリカインディアン・ミュージアム、ラトガーズ大学Dr.
Seth A. Gopin氏の案内・説明による市内高層建造物視察見学 |
7日目 |
月 | ニューブランズウイック滞在 |
美術館、日本人留学生の墓に献花、大学図書館にてグリフィス・コレクションについてRuth
J. Simmons氏の講話および図書館長のRyoko Toyama氏、Kayo Denda氏よりニュージャージー州における日本人収容所についてのレクチュアーを受ける。 |
|
8日目 |
火 |
ニューブランズウイック発 |
9:00 |
専用バスにて出発、途中プリンストン大学に立ち寄る。到着後ロダン美術館・独立公園など |
9日目 |
水 |
フィラデルフィア フィラデルフィア発 ランカスター着 |
14:00 15:45 |
エドガー・アラン・ポー歴史館、ペンシルベニア大学人類博物館フィラデルフィア美術館など。バスにてランカスターへ。 |
10日目 |
木 | ランカスター滞在 |
アーミッシュ見学(ミラーズビル大学出のDr.
kreider氏のレクチュアー)、また同地区社会科教師2名の講義 |
|
11日目 |
金 |
ランカスター発 着 ワシントンDC着 |
9:00 |
専用バスにて出発 途中ゲテイスバーグの視察見学をしながらワシントンDCに移動 |
12日目 |
土 | ワシントンDC滞在 | リンカンメモリアル、ルーズベルト・メモリアル、ジャファソン記念館、ホロコースト記念館、スミソニアン・ナショナル歴史博物館など見学(ワシントン・ホテル)泊 | |
13日目 |
日 | ワシントン滞在 | ホワイトハウス、USキャピトル、ナショナルギャラリー、アートアンドインダストリー、スミソニアン・キャッスルなど見学(ワシントン・ホテル)泊 | |
14日目 |
月 |
ワシントン国際空港着 |
10:45 12:45 14:00 16:30 |
専用バスにてアーリントン墓地訪問後、空港へ移動 出国手続きの後、デトロイト経由にて空路名古屋へむかって出発(機内でアンケート実施)(機内)泊 |
15日目 |
日 | 名古屋国際空港着 | 18:00 | 入国手続きの後、解散。 |
(3)事後研修 9月30日(日)
・報告書の作成について
・報告会の開催について
・ティーム・ミーティング
・事務手続きについて
成果報告会の開催について(12/8(土))
1.受付 14:30〜15:00
2.プロジェクト委員長挨拶 ・・・魚住
3.現地研修状況(Video上映)
4.個人研究発表
小学校代表 アメリカと日本の生活スタイルの比較から
〜「総合的な学習」で環境問題を考える〜
(豊田市立大林小学校 伴 健太郎)
中学校代表 アメリカの生活や文化を理解する社会科指導
〜「2年生地理的分野「アメリカ合衆国」の教材開発〜
(尾西市立第一中学校 坂井 辰美)
高校代表 米国社会に根付くマザーグース
(愛知県立豊田東高等学校 弘山 貞夫)
課題共同研究発表
A.「アメリカの教育から学んだこと」
B.「米国民の歴史的価値観――人物・出来事・教科書から」
C.「多文化社会における自立と共生――家庭・学校・地域
D.「日米の生徒の意識から学ぶ教育と社会」
5.謝辞 ・・・杉浦