アメリカとの違いをクイズを通して知ろう

愛知教育大学附属岡崎小学校

加藤 秀昭


1 はじめに

 小学校4年生の子どもたちにとって、外国というとアメリカ、イギリスといった名前はでてくるものの、その国については、ほとんど知らないといった様子である。そのような子どもたちに、外国を少しでも身近に感じ、関心をもたせることができればと考え、実践を行ってみた。

2 アメリカに対するモ識

 6月、子どもたちにアメリカに対する意識について聞いてみた。「アメリカってどんな国」ということでアンケートをとった。その中で何といっても認知度が高かったのが、「自由の女神」だった。テレビ番組などでアメリカの話題を取り上げる時、象徴的なものとして取り上げられていることが大きく影響していると感じた。

 また、それに続くものとしては、今年のイチローの活躍で、メジャーリーグのことが上がってきた。試合があるごとにテレビ中継もあり、ニュースや新聞でも毎日のようにイチローの活躍を通して子どもたちに情報として入ってきていることがうかがわれる。

 食文化については、ハンバーガーショップなどが日常生活で当たり前になっていることから、アメリカ人といえばハンバーガーや肉をよく食べているという意識をもっていた。

 その他には、ディズニーランドやアメリカの星条旗、とても広い国、などの意識があった。

3 アメリカクイズに挑戦
 アメリカに実際に行って、自分の目で見て不思議だとか日本とちがっているなということをいろいろ感じた。そこで、これらの様子を写真で撮り、子どもたちに見せ、それは何なのかをクイズ形式で考えさせることで、子どもたちにアメリカという国の生の様子が分かり、関心をもっていくのではないかと考えた。

 夏休みも終わり、新学期が始まると、早速子どもたちにアメリカクイズを行った。

(1) この木の箱はどんなお店で使うのかな。

 左の箱を見せて、「さて、この木の箱は、どんなお店で使っていたでしょう。」と質問してみた。子どもたちは、何かの踏み台だと思い、「服屋さん」とか「本屋さん」と答えていた。なかなか分からないようであったので、「右の白っぽいところに人が座るよ。」とヒントを出した。すると、左の斜めの所に足を置くというふうに考え、「靴屋さん」と答えることができた。正解の後、実際に靴あわせをしている次の写真を見せ、子どももなるほどと納得していた。



(2) この人は何をやっているのでしょう。

 これは、訪問したラトガーズ大学内のある様子を撮った写真である。「右手にパイプのような機械をもった男の人が、作業をしています。さて、この人は何をやっているのでしょう。」と質問してみた。コンクリートの上にある落ち葉を見て、「落ち葉をすっている。」とすぐに答えた。日本人の感覚ではそう考えるのが当たり前だろうと予測していた。すっているのではないということで、質問を続けたが、答えが出てこなかった。そこで、「落ち葉を空気で吹き飛ばしているんだよ。」と説明をした。日本では、落ち葉を集めて片づけるという感覚だが、アメリカは、歩くところから落ち葉を無くす作業をしており、子どもたちは、驚いていた。

(3) この扉は何でしょう。

 これは、私がホームステイしたお宅の中で見つけた扉で、「この扉は何でしょう。」と質問してみた。2階の壁にあり、30センチ四方のものであった。子どもたちは、ごみを捨てる扉、小さな物置などと答えていた。この扉も、日本ではまず家庭にないものだと思うので、なかなか答えが出なかった。

 これは、扉を開けると穴があいていて、地下室までつながっているものであった。この扉の近くに浴室があって、使ったタオルなどをこの扉に投げ込むと、地下室に落ち、そこにある洗濯機で洗うというために使われているのであった。洗濯物を運ぶ必要がなく、合理的な作りであり、子どもたちは感心するばかりであった。実際に地下室の落ちてくる穴も見せた。あわせて、地下室で洗濯物を干すことも説明し、日本のように太陽のもとで洗濯物を乾かさないということも、習慣の違いとして、知らせることができた。

(4) メジャーリーグの試合です。今、何をしているのでしょうか。

 この写真は、メジャーリーグの試合前の様子です。「今、スタジアムでは何が行われているのでしょう。」と質問した。選手が外野の方を向いて立っていることが分かると、「国旗を見ていてるんだ」とすぐに答えた。

 サッカーなどでは、国際試合の前には、その国の国歌と共に国旗が掲揚されることを子どもたちは知っている。おそらく、それがイメージとしてあり、すぐに答えることができたのであろうと考える。メジャーリーグというアメリカ国内のチームが対戦する時にも、必ず国旗が掲揚されるのである。日本のプロ野球では行われておらず、ここでも日本とアメリカの違いに気づくことができた。

 スタジアムの2つのスクリーンにも国旗が大きく映し出されており、観客も全員立っている。アメリカで、国旗の扱いの重要性を知るものとなった。

(5) この建物は何でしょう。

 左の写真を見せ、「この建物は何でしょう。」と質問した。これは、ワシントンのユニオン駅舎であるが、子どもたちは「美術館」とか「図書館」と答えた。日本の駅の前は、タクシーなどの車で混雑していて、そんな雰囲気を全く感じなかったことで、そのような答えが出たと考える。ヒントとして、「人がたくさん集まるところ」と言って、やっと駅という答えが出た。スタジアムの所でも国旗が重要であったが、駅舎の前にも国旗が3つ大きく掲げられている。首都ワシントンの玄関ということでもあり、日本の駅との違いを感じるものであった。


4 子どもの意識の変化

 実際に自分の体験を語りながら、現地で撮った写真をもとにアメリカクイズを行い、子どもたちに「アメリカって日本と違うところがあるんだ。」という実感をもたせることができたと思う。クイズを行った後の日記に「日本とぜんぜんちがうところや、えーっとびっくりするところがありました。アメリカと日本は、こんなにちがうんだと思いました。私は、日本に住んでいてよかったなと思ったり、アメリカってもっと知りたいな、行ってみたいなと思ったりしました。」という感想が書かれてあった。

 「もっと知りたい」という意識をもって、調べ活動に入ることで、アメリカ理解を少しでも深めることができると考える。

5 おわりに

 子どもたちに、見てきたものを写真などの具体物を使って伝えることで、何となく分かっていたような違いが、はっきりとした違いとなって実感させることができたと思う。日本との違いに気づくことで、「どうしてそんな違いがあるのか」を心にとめながら調べ学習をしていくことで、今まで見過ごしていたことにも気づくことができるのではないかと思う。