アメリカと日本の生活スタイルの比較から、
「総合的な学習」で環境問題を考える
##
豊田市立大林小学校
伴 健太郎
##
1 はじめに
アメリカに行ってまず驚かされたことは、その緑の多さである。国連本部のすぐ横には、大きな木々が植えられた芝生の広い公園がある。ボストンコモンの木陰に入ると、夏とは言え、とても涼しく、たくさんの人たちがそこで休日を楽しんでいる。そして、そこには野性のリスやきれいな野鳥がやってくる。ホームスティ先のラドガーズは、すばらしい住宅環境であった。森の木々を住宅に取り入れ、緑いっぱいの中に住居を構えているという印象を受けた。
それとは逆にゴミに関するマナーは、あまり良くないという印象を受けた。ニューヨークで道に迷いながらホテルに向かって歩いていると、ストリートフェスティバルの終わった後の光景に出くわした。道じゅうがゴミだらけで、暴動でも起こったのかと勘違いするほどの景色であった。また、喫煙者が、吸殻をぴっと指で弾きとばす場面を、何度となく見かけた。
環境をテーマにした総合的な学習を展開する上で、私がアメリカで見たこのような場面や、現地で収集した資料を子どもたちに提示することで、より幅広い子どもの追究をさせたいと考えた。アメリカ理解と関わる内容を中心にして、授業がどう展開されていったかを記述したい。
2 アメリカンフェスティバルでアメリカに興味を引きつけ学習開始
学習のスタートに先立って、ワールド委員会の子どもたちとともに、アメリカンフェスティバルを開催することにした。全校児童対象の企画ではあるが、学習の前段階で、5年生の児童にアメリカに興味を持ってもらいたいと考えたからだ。
まず、第1段として、「アメリカのポケモンを見よう!」と題して、日本でも上映された、シーサイドピカチューをワールドルームで放映した。英語版であるにも関わらず、放課になるとたくさんの子どもたちが、ワールドルームにやってきた。5年生のS男は、次のように日記に記した。
この映画は、お父さんと一緒に劇場で見たものでした。内容が分かっていたので、英 語でも十分にわかりました。ポケモンを「ポォケモォン」と発音しているのが、すごくおもしろく感じました。アメリカの子どももポケモンを見て楽しんでいるなんて、おもしろいなあと思いました。とても楽しかったです。
映像は、どんな言葉よりも子どもたちを引きつける。ワールドルームに入り切れないほど子どもたちが集まり、英語のポケモンを楽しんだ。ワールドルームにはアメリカ滞在中に集めたパンフレット・ポストカード・写真をところせましと貼っておいた。私が写っている写真を見て、「先生ここはどこなの?」「これは何?」など子どもたちはたくさんの質問をした。写真やビデオから子どもたちは、少しずつアメリカという国に興味を持ち始めた。次に、第2段として、アメリカクイズを行なった。クイズの内容は子どもたちと相談して決めた。
クイズは、アメリカで購入した絵、絵葉書、カード、切手などの視覚に訴えるものを利用した。目で見てアメリカを感じさせたいと考えたからだ。
子どもたちの解答意欲を引き出すために、全問正解者には、アメリカで購入したキャンディーとペニーやダイム などのコインをプレゼントすることにした。
たくさんの子どもたちが、ワールドルームにやってきて、クイズに挑戦した。子どもたちに好評であったので、2回目のアメリカクイズを行うことにした。
子どもたちにアメリカに対する興味を引き出し、学習を開始することができた。
ワールド委員会アメリカフェアークイズ
@ このアメリカの雑誌(ざっし)の表紙の選手はだれでしょう
1 しんじょう 2 ボンズ 3 イチロー
A アメリカの新聞の一面にのっているゴルフプレヤーはだれでしょう
1 ジャンボおざき 2 タイガーウッズ 3 ライオンウッズ
B ブッシュ大統領のおくさんは次の写真のうち誰でしょう
1 2 3 4 5
C リンカーン大統領は次のうち誰でしょう
1 2 3 4 5
D この絵はすべてニューヨークの絵です。先日テロのあった世界貿易センタービルが描かれているのはどれでしょう
1 2 3
E この切手シートはアメリカで売っているものです。ジュラシックパーティーののっているものはどれでしょう
1 2 3
F 今のアメリカの国旗はどれでしょう
1 2 3 4
G この写真の中にうつっている日本のマンガは何でしょう
1 コナン 2 ドラゴンボールZ 3 ワンピース
H ここはどこでしょう
1 ニューヨークの町の中 2 山の中 3 深い森の中
##
子どもたちと考えたワールドクイズ
3 学習計画について
次ページは、単元構想図である。まずはじめに、親子環境オリエンテーリングを行う。オリエンテーリングのクイズから、学区の昔と今の自然の様子の違いを考えさせる。古地図の色ぬりや、学区のお年よりの話を聞くことで、大林学区がここ15年のあいだに大きく開発され、自然がなくなっていったことを学習する。また、学区にわずかに残る鹿島神社の雑木林で、じっくり自然に浸らせる活動も行う。これらの活動を通して、子どもたちは自然がなくなっていくことへのさまざまな問題点に気づいていく。
そして、森林の減少や自然破壊の問題について、国語の説明文・社会・道徳で学習をする。これらの学習を通じ、「環境を守るために自分たちにできることは何だろう?」という思いを子どもたちに持たせる。そして、このテーマで個々の追究をさせていく。
この学習計画の中に、アメリカと日本の生活スタイルを比較し、環境問題へと焦点を当てるような視点が持てるような活動や個への支援を行いたいと考えた。
4 アメリカの緑やゴミの問題を教えてもらおう
発見2の段階で、アメリカの環境問題を聞く会(講師・伴)を持った。子どもたちは、アメリカンフェアーでアメリカに興味を持っていたので、意欲的に話を聞き質問をした。 まず、ホームスティをしたラドガーズの住宅地の様子を写真で見せた。氷河が溶けてできた池や大木がそびえる林を、宅地に取り込んだ住宅の様子を見て、子どもたちは口々に、「こんなところに住んでみたいな。」とつぶやいた。写真から見る緑豊かな住宅環境に、子どもたちは、心からうらやましいと感じたようだ。
また、ワールド委員会で行ったアメリカクイズ(前ページ参照)のHに下の写真を使った。ニューヨークという大都市の中に、緑豊かの公園があり、野生動物も棲んでいることに、子どもたちは大いに驚いた。
アメリカのゴミ問題についても、たくさんの写真を見せながら話をした。家庭のゴミは、業者委託の分別回収をしていること、ニューヨークやワシントンDCの通りにはたくさんのごみ箱があるが、これはポイ捨てが多く苦肉の策であることなど、私が見たアメリカの実情をありのままに話した。以下は、B子の授業感想である。
私はワールド委員なので、アメリカンフェアーを盛り上げようと、いろいろ考えてきました。今日の授業で先生から、アメリカの環境についてのいろいろ話を聞きました。私が1番興味を持ったのは、住宅です。静かでいっぱいの自然に囲まれていて、家の敷地の中まで大きな木が生えていて、すごいなあと思いました。
もう一つ驚いたことは、ニューヨークみたいなすごい都会にも、緑がいっぱいある公園があって、とてもかわいいリスが棲んでいるこです。私も緑がいっぱいの環境の中で、住んでみたいと思いました。
この後B子は、住宅環境をアメリカの生活スタイルと日本の生活スタイルとを比較しながら調べを進め始めた。
5 アメリカとの比較を試みる課題を持った子どもたちへの支援の実際
親子オリエンテーリング、地域のお年よりの方の話、教科の森林・環境問題の授業などをもとに、子どもたちは、「自然環境を守るために自分たちに何ができるのか」というテーマを持ち、調べを進め始めた。個人やグループでそれぞれにテーマを持ち、現在調べを進めている。
アメリカンフェアーやアメリカの話から、アメリカと日本を比較しながら環境問題を考えていく子どもも現れた。小学校5年生の段階であるので、大きく教師の側で支援をしながら、この子どもたちのやる気を継続していきたいと考えている。
この学習は3学期まで続く実践である。そこで、これらの子どもたちの今までの学習の歩みについて記していきたい。
<CODE NUM=343A> A男への支援
課題作りの事前の段階において、開発と自然保護をテーマにディベートの授業を行った。
この学習が進むにつれ、多くの子どもたちは、森林保護の大切さを考え始めた。しかし、A男は、「みんなはやたらと自然保護のことばかり言うけど、まずは便利な生活があって、その上で環境のことを考えなければいけないんじゃないか。」と考え始めた。
そこで、A男にアメリカで行ったアンケート結果(次ぺージ)を見せた。そして、2番の項目に着目させた。アメリカの人たちも、利便性を自分の町の良い点と考えていることを知って、たいへん学習にやる気を示した。ディベートの授業では、A男ははりきって討論に参加し、勢いのある発表を行った。
さらに、街にゴミのないことを重要と考えているアンケート結果にも着目した。開発は当然必要であり、仕方のない面はあるが、ゴミ問題は自分たちの努力でなんとかなると考え始めた。そして、「大林の街からゴミをなくすために」という課題作りをし、追究を始めている。3学期、A男の追究をまとめたものを英訳し、アメリカで知り合った方に送付して、意見を聞いてみたいと考えている。
<CODE NUM=343B> B子への支援
森林破壊の問題、地球温暖化の問題を学習する中で、子どもたちは、開発の必要性と自然保護の必要性の矛盾を感じ始めた。B子は、豊かな自然の中で将来自分の家を建てて、暮らしたいと考えている。そして、緑と調和した住宅環境に興味を持って調べを進め始めた。アメリカの都市や住宅地の写真を貸してほしいと言い出したので、気に入った何枚かを焼き増しをしてプレゼントした。
彼女は、「自分が住むマンションの敷地の中を、緑と花で一杯にする計画」という課題作りをし、学習を進めている。担任の先生が行ってきたアメリカ。そこで写した何枚かの写真が、彼女の課題作りに大きな力を持った。
6 おわりに
この単元を進めているあいだに、世界貿易センタービルへのテロ攻撃とイチローの大活躍を、メディアは連日のように伝えていた。小学校5年生の子どもたちといえども、これらのニュースを通じて、アメリカの持つ空気を感じ取っていた。そんな中での学習の展開であったので、多くの子がアメリカンフェアーに意欲的に参加した。総合学習における個人の課題作りもアメリカと比較して考える子どももたくさん現れた。
「一歩間違えば私たちもあの事件の渦中に。」そんな思いがなかなか離れい。テロ事件で亡くなられた方のためにも、今後も続くこの学習で、子どもたちに力を出し切らせたいと強く思う。
社会科を核とした総合的な学習の教材開発
##
〜生活や文化の相互理解を図る米国理解学習を中心に〜
##
海部郡蟹江町立蟹江小学校
木 下 眞 吾
##
1 はじめに
平成11年度より、社会科を核とした総合的な学習の実践に取り組み、社会科と総合的な学習との関連を図る研究にかかわっている。今回参加した「米国理解教育プロジェクト」で得た貴重な体験や様々な資料を基に、第6学年社会科「日本とつながりの深い国々」の学習を核とした国際理解をテーマとする総合的な学習の教材開発に取り組んだ。
2 教材化の視点
小学校学習指導要領社会第6学年の目標の(2)には「我が国と関係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割を理解できるようにし、平和を願う日本人として世界の国々の人々と共に生きていくことが大切であることを自覚できるようにする」とある。そして、その目標にかかわる内容として「世界の中の日本の役割について、我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生活の様子を調査したり地図や資料などを活用したりして調べ、外国の人々と共に生きていくためには異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることを考えるようにする」と示されている。
一方、国際理解教育の目標には、諸外国の文化を理解し、尊重するとともに、世界と日本のかかわりを正しくとらえ、国際社会で信頼される望ましい資質を身に付けた人間を育成することがあり、国際社会の中で「自己の確立」と「共に生きる」ことを両輪とした「生きる力」を育成していくために、国際理解を課題とした「総合的な学習の時間」を設定し、より主体的な学習に取り組ませることも望まれている。
このように、国際理解というテーマについて社会科と総合的な学習のねらいが一致し、
内容にかかわりをもたせることができるので、関連させて教材化することにした。その際に、次の3点に考慮した。
・ 社会科で学習した内容や方法を取り入れ、社会科で学習した課題をより発展させて総合的な学習の課題として取り組ませる。
・ 第6学年社会科の単元「日本とつながりの深い国々」では、我が国と最もつながりの深い国の一つとしてアメリカ合衆国を取り上げ、我が国とのつながり、人々の生活の様子などを具体的に調べる学習に取り組ませる。
・ 第6学年総合的な学習の単元「日本とつながりの深い国々を調べよう」では、子ども一人一人に自らの興味・関心や問題意識などに基づいて調べる国を選択させ、
我が国とのつながり、人々の生活の様子などを具体的に調べ、まとめ、伝える学習に取り組ませる。
これらの学習を通して、外国の人々と共に生きていくためには、異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることを考えることができるようにしたい。
3 単元の構想
<CODE NUM=343A> 単元の目標
【社会科、総合的な学習共通】
○ 世界の国々の人々の生活や文化に関心をもち、様々な方法で調べようとする。
○ 世界の人々と共に生きていくためには、異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることを考えることができる。
○ 図書館やコンピュータなどを活用して資料を収集したり、地域や外国の人々と交流したりすることにより、世界の国々の人々の生活や文化を具体的に調べることができる。
○ 異なる生活や文化をもつ世界の国々に対して、一層の理解を深めることができる。
【社会科】
○ アメリカ合衆国の人々の生活の様子、日本とのつながりについて調べ、アメリカ合衆国の抱える問題点について考えることができる。
○ アメリカ合衆国の人々の生活や文化の様子、日本との違い、日本とのつながりを理解することができる。
【総合的な学習】
○ 課題を追究することを通して自分の生活と世界の国々とのかかわりに気づき、世界の国々の人々の生活や文化に対する見方や考え方を広げようとする。
○ 世界の国々の人々の生活や文化について調べたことや考えたことを自分なりにまとめて、友達や地域の人々に伝えようとする。
<CODE NUM=343B> 主な学習の流れ(16時間完了:社会科8時間・総合的な学習8時間)
4 第6学年社会科の単元「日本とつながりの深い国々」について
<CODE NUM=343A> 身近にある「アメリカ合衆国」を発表しよう(第2時)
この時間は、子どもたちが身の回りにある「アメリカ合衆国」を持ち寄り、それがなぜアメリカ合衆国なのかを発表し合う。子どもたちは、食べ物、衣服、スポーツ、音楽など身の回りから様々な「アメリカ合衆国で生まれたもの」を探してくる。それぞれが持ち寄るものが違うことから、アメリカ合衆国のとらえや見方がそれぞれ違うことに気づくであろう。そこから、アメリカ合衆国の多様性につなげていきたい。それとともにその過程を通して、日本人の生活の中に様々なアメリカ合衆国の文化が入り込んで、影響を及ぼしていることに気づかせたい。
子どもたちの中には、マクドナルドのハンバーガーについて発表する子どももいるであろう。その際に、アメリカ合衆国のマクドナルドの外観の写真を紹介する。日本のマクドナルドとの違いを考えさせ、国旗が掲げられていることに気づかせ、「多様性」という特徴をもつアメリカ合衆国における国旗のもつ意味に触れていく。
<CODE NUM=343B> アメリカ合衆国の人々の生活や文化について調べよう(第3〜6時)
ここでは、「米国理解教育プロジェクト」で得た貴重な経験や様々な資料、かかわらせていただいた方々からお聞きした情報を活用して、学習を進めていきたい。特に、New
Brunswick でホームステイをさせていただいた、Ryoko Toyama & Eckhart Mildentein夫妻の生活の様子や Ryoko
Toyama さんからお聞きした情報からも、アメリカ合衆国の人々の生活や文化の様子、日本との違いなどをとらえさせていく。
ア アメリカ合衆国に生きる日本(第3時)
この時間は、アメリカ合衆国の人々の身の回りにある日本文化について調べる。用意する資料は、アメリカ合衆国で写真に納めたり、持ち帰ってきた日本の文化である。
日本車、灯籠、寿司屋、日本料理店、日本語の案内、日本企業の看板、日本製品の広告、けん玉で遊ぶ子ども、日本の建築様式を取り入れたビル、浮世絵、書道に影響を受けた絵画、野球場に映し出されるイチロー、日本語の新聞、ポケモンカード など
メジャーリーグで活躍しているイチローをはじめとする、アメリカ合衆国に生きる日本人に目が向いたところで、たくさんの日本人が活躍していることにふれ、その一人 Ryoko Toyamaさんについて次のようなことを紹介する。
・ 新潟県三条市で生まれ。大学卒業後、東京で就職されたが、39年前に図書館の仕事につくためにアメリカ合衆国に渡られた。
・ ワシントンの議会図書館やニューヨークのコロンビア大学などの図書館の仕事を経て、キャリアアップし、現在、ラトガーズ大学の図書館長をされてみえる。
・ 現在、250名のスタッフを管理する図書館長として、週5日、週平均52時間働いてみえる。定年はないが、あと4年程働いて、後進に道を譲ろうと考えてみえる。
・ オレゴン大学の図書館にいるときに、ドイツ人の Eckhart Mildentein さんと結婚された。Eckhart
Mildentein さんは、ウォール街で証券アナリストをしてみえる。
Ryoko Toyamaさんの生き方について質問を受けたり、感想を聞いたりする中で、アメリカ合衆国で活躍する様々な日本人がいることや、アメリカ合衆国の社会がチャンスを求めてやってきた外国の人々にも機会を平等に与えていることなどをとらえさせたい。それとともに、アメリカ合衆国の人々の生活にも様々な日本の文化が影響を及ぼしていることに気づかせたい。そうすることで、自国の文化をこれまでと違う角度から見直すことにつながるのではないかと考える。
イ 日本とのつながり(第4時)
この時間は、前時までの学習で日本とアメリカ合衆国とのつながりが深いことを具体的にとらえてきた子どもたちが、そのつながりが深まってきた歴史について調べる。その中で、ラトガーズ大学と日本との交流の歴史や、それに端を発する New Brunswick 市と福井市との姉妹都市提携などに触れ、長い年月のかかわり合いの重みを感じさせたい。
ウ 生活の様子(第5時)
この時間は、アメリカ合衆国の人々の生活について調べる。Ryoko Toyama & Eckhart
Mildentein 夫妻の生活ぶりやお聞きした情報などが、資料の一つになる。
・ Ryoko Toyama さんはこれまでに五つの州でしか生活したことがない。アメリカ合衆国は、地域や州によってかなり様子が違い、仕事や旅行で中西部や南部に行くと、他の国に来たような感じがするので、「アメリカを知らない」と言ってみえる。
・ Ryoko Toyama & Eckhart Mildentein 夫妻はお二人とも仕事に就いているので、家事は役割分担してお二人でやってみえる。
・ 広い芝生の庭をもってみえ、隣や裏の家の庭との境界には塀や囲いなどはなく、目印の木が植えてあるだけで、芝生の庭は続いている。
これらの資料も活用して、生活の様子を具体的にとらえさせたい。
<CODE NUM=343C> アメリカ合衆国が抱える問題点について考えよう(第7時)
この時間は、前時までに調べたことを基に、「多様性」から生じる問題をはじめ様々な問題について調べ、考える。ここでも、Ryoko Toyama & Eckhart Mildentein 夫妻からお聞きした情報などが、アメリカ合衆国の人々の意識をとらえる貴重な資料の一つになる。
・ Ryoko Toyama さんがワシントンやニューヨークなどの大学図書館を選んだのは、それらの都市には様々な人種の人々が住んでいるので、日本人も入りやすい環境であると考えられたからである。
・ ワシントンの議会図書館で、初めて黒人の女性と隣り合わせで仕事をした。最初は彼女の体臭に閉口したが、仕事のパートナーとして頼もしい存在であることが分かると、気にならなくなったそうである。
・ Eckhart Mildentein さんはジャズが大好きで、ジャズを生み出した黒人の人々を尊敬してみえる。しかし、黒人の教育程度が低く、実力をつけることができないという差別があるので、黒人教育のために寄与したいと考えてみえる。
・ 多民族の国民がうまくやっていくために、「法社会」が形成されている。
5 おわりに
Ryoko Toyama さんから様々なことをお聞きする中でとても印象的だったのが、「一緒に生活しないと理解できない」という言葉である。約40年間アメリカ合衆国の社会で生活してみえた方が言われた言葉には重みがあり、確かにそういう部分があるだろうと感じる。アメリカ合衆国の人々と共に生きている
Ryoko Toyama さんから学んだことで、自分だけではなく子どもたちも、外国の人々と共に生きていくためにはお互いに異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることや、理解し合うためにはどうしていけばよいかを考えることができるようになってほしい。
最後に、ホームステイでお世話をおかけした上に、様々なことを教えていただき、この実践への教材化にもご協力いただいた Ryoko Toyama & Eckhart Mildentein 夫妻に心より感謝したい。
人権と相互依存に基づく社会認識を育成する授業構想
##
−小6・「米国における多文化共生への取り組み」単元の場合−
##
知立市立知立小学校
大 橋 直 樹
##
1 本提案の目的と意義
日本全体の傾向として、日系のブラジル人、ペルー人などのように南米から、また韓国や中国などアジアからの、主に就労目的で来日し、一定期間の居住若しくは定住を考えているニューカマーと呼ばれる人の数が急増している。
また、戦前からの歴史的なかかわりにより、約64万人の在日韓国・朝鮮人が居住している。つまり、私たちは今やいながらにして、地球のすみずみの人と隣り合わせで生活しているのである。これまでのような単一民族国家観を改めていかなければ、円滑な生活を送ることが困難なものとなってきている。まず、早急に解決しなければならない問題として、各地で顕在化している異文化間摩擦の問題であろう。
地球規模でも、国境を超えた労働力移動や紛争、環境破壊による難民が日常的なものとなってきている今日、多文化社会における共存・共生は最重要課題であろう。
このような状況の中、私たちはどのような態度を持って、生活すべきであろうか。また、学習者である子供たちに主権者としてどのような能力を育成すべきであろうか。そこでは、人権と相互依存に基づいた社会認識や多文化共生の力が求められよう。
しかし、これまで、これらの言葉は頻繁に使われてきているが、これらの認識や能力を育成するために必要な学習内容や方法については十分に検討されていない。また、単一民族国家観や同心円的拡大主義にとらわれる傾向から、学習者の多様性や認識、帰属意識の多元性についても無視されつづけてきた感が強い。今こそこれらの課題に挑戦するカリキュラム及び学習単元が必要とされているのである。
そこで、本報告では、筆者の最近の研究テーマである「人権と相互依存に基づく社会認識を育成するカリキュラム」における一例として、小6・「米国における多文化共生への取り組み」という学習単元を構想していくことにしたい。
内容論において、「米国における多文化共生への取り組み」を例にして、学ぶことを通して、学習者の住む地域や日本、さらには地球社会における多文化共生への道を探っていく。なぜならば、米国は建国以来、先住民と移民によって、巨大な国家を築いてきた。そして、米国社会の在り様が、学習者の住む地域や日本、さらには地球社会の未来像に対するひとつの雛型となり得るためである。1)
例えば、米国における研修において、筆者らは Smithsonian National Museum
of the American Indian を訪れる機会を得たが、博物館の規模はとても大きく、展示内容についてはネイティブ・アメリカンの知恵や生き方を称える内容が目立っていた。このような博物館が経済や文化の中心地ニューヨークにあること自体、米国がマイノリティの存在や彼らのアイデンティティを認めていく政策によって、多文化共生を目指していることを示している。これらの傾向は、他の主要都市における博物館でも見られた。2)
さらに、ホームスティ先のファミリーとの懇談やラトガース大学及びミラーズビル大学での講義においても、米国における多文化共生に対する熱心な取り組みが感じられた。
方法論においても、多文化社会を前提とした欧米型の単元構想の形式を取り入れたいと考える。また、参加型、提案型の授業方法を積極的に取り入れたいと考える。なぜならば、冷戦構造に支えられてきた時代における、学習者の多様性を無視した一斉授業形式及び系統的知識注入型の授業形態のみでは、多文化社会に生きる学習者として求められる認識や能力、換言すれば、資質の育成に対して、十分なものであるとは言いがたいためである。
地域や国を舞台として、異文化間摩擦が起き、地球を舞台として、南北問題や宗教、民族の問題に起因する紛争が日常化している現在、これらを解決に導いていく根本的な力は教育に求められるはずである。そうであるとするならば、まさにこのような社会科授業構想が求められるはずである。
2 小6・「米国における多文化共生への取り組み」単元の実際
<CODE NUM=343A> 教育目的
本単元の学習において、学習者は以下の認識・理解や能力を身につけることができる。
・米国における多文化性について理解すること、また、日本や地球社会の多文化性について興味・関心を持つこと
・米国における多文化共生への努力について理解すること、また、日本における異文化間の問題やその原因について理解すること
・ニューブランズウイック市における多文化共生への取り組みについて理解すること、また、学習者の地域社会における取り組みについて調べることや課題について考えたりすること
・人権と相互依存に基づいた社会認識を獲得する中で、多面的な自己を発見し、葛藤場面において意思決定を行うこと、また、社会的主体として、多文化共生に向けて必要な提案を行うこと
<CODE NUM=343B> 教育意義
本単元の学習において、以下の点が教育意義として認められるであろう。
・学習者の地域社会や日本における異文化間の問題に対して、従来の単一民族国家観を見直し、人権と相互依存に基づいた社会認識を育成し、多文化共生を目指す点
・学習者の地域社会や日本における課題・問題の追究だけでなく、多文化共生への取り組みにおいて地球社会でもっとも進んでいる地域のひとつと考えられる米国社会について学び、さらに地球社会にまで視野を広げさせる点
・グローバルな視野で多文化社会の問題について認識し、それに基づいて価値判断や意思決定し、政治的、法的主体として、学習者の地域社会において多文化共生を目指した提案する点(Think globally , and act Locally)
<CODE NUM=343C> 教育方法
内容論において、学習者が多元的な視野で問題を捉え、追究していけるように、地球社会、米国社会、日本社会、学習者の地域社会にかかわる学習課題を相対化して設定する。
方法論において、学習課題を基礎的なものと補足的なものに分類する。補足的課題については、学習者の到達度や学習に対する欲求の方向性に合わせて、発展的課題と復習的課題を弾力的に設定する。3)
また、調べ学習やロールプレイ、ディベート等の参加的な活動を取り入れることにより、主体的な学習が行われるように留意する。その際、一斉授業の形態にこだわらず、必要に応じて、適当なグループを編成する。
さらに、ユニットごとに到達度評価を行い、次のユニットにおける学習計画を必要に応じて調整する。
<CODE NUM=343D> 学習者の活動と指導・支援上の留意点(時間数14時間+最大15時間程度)
基礎的学習課題 補足的学習課題(<MG CHAR="◯","発"
SIZE=70.0>展的・<MG CHAR="◯","復" SIZE=70.0>習的)
ユ
ニ
ッ
ト
1 ◇米国・多文化社会における共存について
知る。@ 教材1
・街を歩く人種、民族等の異なる人々
・街角で工事作業をする人種、民族等
の異なる人々
◇米国の人種、民族、宗教別割合を調べ
る。 教材2
・人種…白人、黒人、黄色人種 他
・民族…ヨーロッパ系、アジア系、アフ
リカ系 他
・宗教…キリスト教、ユダヤ教、イスラ
ム教、仏教 他
◇どのように異なる他者と共存・共生して
いく努力をしているか予想する。
(評)米国が地球社会において指折りな多文化社会であることに気づき、共存共生を目指してどんな努力がなされているかについて、興味・関心を持つことができたか。 <MG CHAR="◯","復"
SIZE=70.0>日本における外国籍の人について知る。
@ 教材3
○どんな人がいるか
・ニューカマー…日系ブラジル人
日系ペルー人
アジアからの人々
・オールドカマー…在日韓国・朝鮮人
○どんな問題を抱えているか
(評)日本における多文化現象についてどんな人たちが存在し、人権にかかわるどのような問題を抱えているかについて、興味・関心を持って調べることができたか。
<MG CHAR="◯","発" SIZE=70.0>地球社会における多文化にかかわる問題について調べる。B 教材4
○宗教対立
・イスラム教VSユダヤ教、キリスト教
・中東問題、米中枢同時テロ
○民族対立
・旧ユーゴ、インドネシア
(評)地球社会の多文化現象について、それに起因するどんな問題が存在するかについて、興味・関心を持って調べることができたか。
(ユニットの評価)
米国における多文化性について理解することができたか、また、補足的に日本や地球社会の多文化性について興味・関心を持つことができたか。
ユ
ニ
ッ
ト
2 ◇米国における多文化共生への歴史を調 べて発表する。D 教材5
・イギリス植民地時代
・独立戦争
・フロンティア
・移民史、移民制限法
・南北戦争
・公民権運動 等
(評)米国が200年の歴史において先住民と移民の子孫によって構成された多文化社会であることや、多くの苦難を乗り越えて今日の共存状態を築きあげてきたことを理解することができたか。
◇ネイティブ・アメリカンが米国において、どのように扱われているかについ <MG CHAR="◯","復"
SIZE=70.0>日本における琉球・アイヌについて考える。A 教材7
(評)日本におけるマイノリティの立場について、米国のものと比較することを通して、何が問題なのかを考えることができたか。
<MG CHAR="◯","復" SIZE=70.0>政治家のマイノリティに対する差別的な発言を考える。@ 教材8
・東京都知事石原氏 ・三国人発言
・長野県知事田中氏 ・北朝鮮発言
(評)差別的な発言の原因や、発言の是非について話し合うことを通して相互のかかわりや人権について考えることができたか。
<MG CHAR="◯","発" SIZE=70.0>米国と日本におけるスポーツチームにおける出身国や人種と差別などの問題
ユ
ニ
ッ
ト
2 て考える。@ 教材6
(評)米国では、国の政策として、マイノ リティの文化やアイデンティティを 守ることを通して多文化共生社会を 目指していることを理解することが できたか。 について調べる。A 教材9
・MLB・シアトルマリナーズ2001
・NBA・シカゴブルズ1998
・大相撲における小錦の昇進問題
・近鉄ローズ選手の最多本塁打記録
(評)日米のプロスポーツ界におけるメンバーの国籍や人種などについて調べ、特に日本における国籍の違いに対する差別や偏見について理解することができたか。
(ユニットの評価)
米国における多文化共生への努力について理解することができたか、補足的に日本における異文化間の問題やその原因について理解することができたか。
ユ
ニ
ッ
ト
3 ◇米国地域社会(ニュージャージー州ニューブランズウイック市)の多文化共生への取り組みや課題について知る。A 教材10
○取り組み
・異文化を理解する日や行事の自主的な設定(学校教育や市の取り組み)
・人種別の就職機会に対する条例
・差別に対する訴訟制度の充実
○課題
・経済活動等に対する考え方の違い
・個人レベルの偏見
・収入や人種、民族による棲み分け
(評)ニューブランズウイック市が多文化共生に向け、市民レベルで多くの努力をしていることや、それでもなお、多くの課題を残していることから、共存・共生の難しさについて認識することができたか。 <MG
CHAR="◯","発" SIZE=70.0>学習者の地域社会における多文化共生への取り組みや課題について調べたり考えたりする。B 教材11
○取り組み
・条例
・市の行事
・学校の行事
○課題
・外国人労働者の労働条件、社会保障 ・在日の人、同和地区の人権
・ホームレスの人に対する偏見
(評)学習者の地域社会における多文化共生に向けての取り組みについて調べてニューブランズウイック市のものと比較したり、課題について考えたりすることができたか。
(ユニットの評価)
ニューブランズウイック市における多文化共生への取り組みについて理解することができたか、また、補足的に学習者の地域社会における取り組みについて調べたり、課題について考えたりすることができたか。
ユ
ニ
ッ
ト
4 ◇学習者の周りの社会では、多文化共生ができているかを考え、異文化間摩擦にかかわる場面について、ロールプレイを行う。B 教材12
○家庭において
○学校において
○地域社会において
(評)ロールプレイを通して、多面的な自己を認識するとともに、葛藤場面に <MG CHAR="◯","発"
SIZE=70.0>多文化共生への取り組みは必要かどうか、ディベートを行う。B
○不要派
・自分たちの文化を優先したい
・就職や労働機会を失いたくない。
○必要派
・文化に優劣はないので、異なる文化を知って認めるべき
・人種や民族に対する差別や偏見
##
ユ
ニ
ッ
ト
4 おいて人権意識に基づいた意思決定を行うことができたか。
◇多文化社会を作るうえで、どのような行動や提案が必要になるか話し合う。A
○政治的主体として
○法的主体として
(評)多文化共生を目指して、社会的主体として、さまざまな分野で人権と相互依存に基づいた提案をすることができたか (評)学習者の生活がさまざまな人との相互依存によって成り立っていることを理解し、すべての人の人権を守るために、多文化共生に向けて、努力することが大切であることに気づくことができたか。
(ユニットの評価)
相互依存と人権に基づいた社会認識を養う中で、多面的な自己を発見し、葛藤場面において意思決定を行うことができたか、また、社会的主体として、多文化共生に向けて必要な提案を行うことができたか。
##
<CODE NUM=343E> 教材とメディアの例
米国現地研修で筆者が入手した博物館等のパンフレット@、記録した写真やビデオAアンケート結果をまとめたものB、インターネットによる情報C、新聞D、図書E
##
教材 教 材 の 内 容 メディア
1
A
6
@
A
##
パンフレット
##
さまざまな人種、民族、宗教的背景を持つ人々が、共に生きる米国社会
ニューヨーク市マンハッタン5番街にて
他には、ランカスターにおけるアーミッショの生活の様子等も興味深い。
##
Smithsonian National Museum of the American Indian正面
7 例えば、アイヌに関する博物館情報などはインターネットによって収集できる。 C
8
9 (例)
D
E
10 本報告書C班報告参照 E
12 例えば、藤原孝章「モノからヒトの国際化−外国人労働者問題を教える−報徳学園高校国際コースにおける「国際理解」の実践−」、『国際理解』23、手塚山学院大学国際理解研究所、1992 などが参考になる。 E
##
長野県知事田中氏・北朝鮮発言
##
近鉄ローズ選手の最多本塁打記録
##
※教材2、3、4、5、11については、紙面の都合等で省略した。
3 今後の課題
今後、以下の点において、分析及び検討を十分に行う必要性が認められる。
・それぞれの学習素材例が学習者の意識とどう関連しあっているか。
・それぞれの学習素材例が社会諸科学の成果に基づく学際的なものであったか。
また、(自己探求及び複線的)カリキュラム及び各単元構想の有効性について、実践を通して見つめなおす必要が認められる。
さらに、本研究では評価法に関して十分な言及することができなかった。本研究に限らず、国際理解にかかわる社会科実践において学習内容、方法及び評価を三位一体にして研究がなされているものはあまり見られない。国際理解にかかわる社会科教育がその目的を十分に達成するためには、評価面を十分に研究し、実践に組み入れていくことであろう。
参考文献・注
1) 例えば、ランカスターにおけるアーミッシュの生活なども、米国社会の多様性を示している。
2) 例えば、Museum of Afro-American history (ボストン) 、
National Museum American Jewish History for Jewish exhibits and education(フィラデルフィア)、UNITED
STATES HOLOCAUST MEMORIAL MUSEUM(ワシントン)など
3) 土屋武志「多文化共生社会の難問−社会科学習指導案作成原理の転換−」、<INLINE
NAME="画像枠" COPY=OFF>住忠久、深草正博編著『21世紀地球市民の育成・グローバル教育の探求と展開』黎明書房、2001に詳しい。土屋氏は現状の単元形式を大きく崩すことなく、多文化共生型の単元構想を構築するための基本要素として、@単元の教育意義をよりいっそう明確化することA発展的学習課題と復習的学習課・
アメリカとの違いをクイズを通して知ろう
##
愛知教育大学附属岡崎小学校
加 藤 秀 昭
##
1 はじめに
小学校4年生の子どもたちにとって、外国というとアメリカ、イギリスといった名前はでてくるものの、その国については、ほとんど知らないといった様子である。そのような子どもたちに、外国を少しでも身近に感じ、関心をもたせることができればと考え、実践を行ってみた。
2 アメリカに対するモ識
6月、子どもたちにアメリカに対する意識について聞いてみた。「アメリカってどんな国」ということでアンケートをとった。その中で何といっても認知度が高かったのが、「自由の女神」だった。テレビ番組などでアメリカの話題を取り上げる時、象徴的なものとして取り上げられていることが大きく影響していると感じた。
また、それに続くものとしては、今年のイチローの活躍で、メジャーリーグのことが上がってきた。試合があるごとにテレビ中継もあり、ニュースや新聞でも毎日のようにイチローの活躍を通して子どもたちに情報として入ってきていることがうかがわれる。
食文化については、ハンバーガーショップなどが日常生活で当たり前になっていることから、アメリカ人といえばハンバーガーや肉をよく食べているという意識をもっていた。
その他には、ディズニーランドやアメリカの星条旗、とても広い国、などの意識があった。
3 アメリカクイズに挑戦
アメリカに実際に行って、自分の目で見て不思議だとか日本とちがっているなということをいろいろ感じた。そこで、これらの様子を写真で撮り、子どもたちに見せ、それは何なのかをクイズ形式で考えさせることで、子どもたちにアメリカという国の生の様子が分かり、関心をもっていくのではないかと考えた。
夏休みも終わり、新学期が始まると、早速子どもたちにアメリカクイズを行った。
<CODE NUM=343A> この木の箱はどんなお店で使うのかな。
右の箱を見せて、「さて、この木の箱は、どんなお店で使っていたでしょう。」と質問してみた。子どもたちは、何かの踏み台だと思い、「服屋さん」とか「本屋さん」と答えていた。なかなか分からないようであったので、「右の白っぽいところに人が座るよ。」とヒントを出した。すると、左の斜めの所に足を置くというふうに考え、「靴屋さん」と答えることができた。正解の後、実際に靴あわせをしている次の写真を見せ、子どももなるほどと納得していた。
<CODE NUM=343B> この人は何をやっているのでしょう。
これは、訪問したラトガーズ大学内のある様子を撮った写真である。「右手にパイプのような機械をもった男の人が、作業をしています。さて、この人は何をやっているのでしょう。」と質問してみた。コンクリートの上にある落ち葉を見て、「落ち葉をすっている。」とすぐに答えた。日本人の感覚ではそう考えるのが当たり前だろうと予測していた。すっているのではないということで、質問を続けたが、答えが出てこなかった。そこで、「落ち葉を空気で吹き飛ばしているんだよ。」と説明をした。日本では、落ち葉を集めて片づけるという感覚だが、アメリカは、歩くところから落ち葉を無くす作業をしており、子どもたちは、驚いていた。
<CODE NUM=343C> この扉は何でしょう。
これは、私がホームステイしたお宅の中で見つけた扉で、「この扉は何でしょう。」と質問してみた。2階の壁にあり、30センチ四方のものであった。子どもたちは、ごみを捨てる扉、小さな物置などと答えていた。この扉も、日本ではまず家庭にないものだと思うので、なかなか答えが出なかった。
これは、扉を開けると穴があいていて、地下室までつながっているものであった。この扉の近くに浴室があって、使ったタオルなどをこの扉に投げ込むと、地下室に落ち、そこにある洗濯機で洗うというために使われているのであった。洗濯物を運ぶ必要がなく、合理的な作りであり、子どもたちは感心するばかりであった。実際に地下室の落ちてくる穴も見せた。あわせて、地下室で洗濯物を干すことも説明し、日本のように太陽のもとで洗濯物を乾かさないということも、習慣の違いとして、知らせることができた。
<CODE NUM=343D> メジャーリーグの試合です。今、何をしているのでしょうか。
この写真は、メジャーリーグの試合前の様子です。「今、スタジアムでは何が行われているのでしょう。」と質問した。選手が外野の方を向いて立っていることが分かると、「国旗を見ていてるんだ」とすぐに答えた。
サッカーなどでは、国際試合の前には、その国の国歌と共に国旗が掲揚されることを子どもたちは知っている。おそらく、それがイメージとしてあり、すぐに答えることができたのであろうと考える。メジャーリーグというアメリカ国内のチームが対戦する時にも、必ず国旗が掲揚されるのである。日本のプロ野球では行われておらず、ここでも日本とアメリカの違いに気づくことができた。
スタジアムの2つのスクリーンにも国旗が大きく映し出されており、観客も全員立っている。アメリカで、国旗の扱いの重要性を知るものとなった。
<CODE NUM=343E> この建物は何でしょう。
右の写真を見せ、「この建物は何でしょう。」と質問した。これは、ワシントンのユニオン駅舎であるが、子どもたちは「美術館」とか「図書館」と答えた。日本の駅の前は、タクシーなどの車で混雑していて、そんな雰囲気を全く感じなかったことで、そのような答えが出たと考える。ヒントとして、「人がたくさん集まるところ」と言って、やっと駅という答えが出た。スタジアムの所でも国旗が重要であったが、駅舎の前にも国旗が3つ大きく掲げられている。首都ワシントンの玄関ということでもあり、日本の駅との違いを感じるものであった。
4 子どもの意識の変化
実際に自分の体験を語りながら、現地で撮った写真をもとにアメリカクイズを行い、子どもたちに「アメリカって日本と違うところがあるんだ。」という実感をもたせることができたと思う。クイズを行った後の日記に「日本とぜんぜんちがうところや、えーっとびっくりするところがありました。アメリカと日本は、こんなにちがうんだと思いました。私は、日本に住んでいてよかったなと思ったり、アメリカってもっと知りたいな、行ってみたいなと思ったりしました。」という感想が書かれてあった。
「もっと知りたい」という意識をもって、調べ活動に入ることで、アメリカ理解を少しでも深めることができると考える。
5 おわりに
子どもたちに、見てきたものを写真などの具体物を使って伝えることで、何となく分かっていたような違いが、はっきりとした違いとなって実感させることができたと思う。日本との違いに気づくことで、「どうしてそんな違いがあるのか」を心にとめながら調べ学習をしていくことで、今まで見過ごしていたことにも気づくことができるのではないかと思う。
アメリカ合衆国理解を深める授業構想
##
−社会科学習を基盤とした総合的な学習を通して−
##
名古屋市立丸の内中学校
西 尾 雅 志
##
1 はじめに 「百聞は一見にしかず」。外国を訪れたのは、今回が初めてである。実際に自分の目で見、自分の耳で聞き、自分の身をもって体験することがその国に対する理解を深めることに重要であるかを痛感した。
日本を出国する前、職場の仲間から「絶対に煙草を吸うことができないから、この際禁煙したらどうか」と勧められた。アメリカ合衆国の実情をよく知らなかった私は、半信半疑であった。さすがに空港、飛行機内、公共施設内は禁煙であったが、その他の場所では喫煙することができた。これは、自分が抱いていたアメリカ合衆国という国に対するイメージ、見方・考え方が変化した一例である。このような自分自身の変化が、これからの社会科の授業に反映していくと思う。
今回の研修で訪れた都市は、ボストン、ニューヨーク、ニューブランズウィック、フィラディルフィア、ランカスター、ワシントンである。これらの都市は、アメリカ合衆国の政治・経済・文化の中心であるとともに、アメリカ合衆国史に非常に関係の深い都市でもある。この研修では、それぞれの都市にある様々な博物館、歴史的建造物などを見学し、多くの資料を得てきた。
そこで、平成14年度から完全実施される学習指導要領を念頭において、こうした自分自身のアメリカ合衆国に対する見方・考え方の変化と現地で入手した資料、現地で撮影した写真をできるだけ多く生かすことができる授業を構想することにした。
2 新学習指導要領とアメリカ合衆国理解学習
<CODE NUM=343A> 学習内容の精選
平成14年度から完全実施される学習指導要領では、地理・歴史・公民の各分野で学習内容の精選が行われる。
地理的分野の「世界の国々」では「世界の国々の中から幾つかの国を取り上げ、地理的事象を見いだして追究し、地域的特色をとらえさせるとともに、国家規模の地域的特色をとらえる視点や方法を身に付けさせる」「二つ又は三つの国を事例として選び、具体的に取り扱うようにすること。なお、事例として取り上げる国については、近隣の国を含めて選び、それぞれ特色ある視点や方法で追究すること」となっている
こうした内容を受けて教科書が編集されているが、どの教科書を見ても「アメリカ合衆国」を取り上げている。従って、アメリカ合衆国の地理的な概要を生徒がつかむことは可能である。
しかし、歴史的分野では「世界の歴史については、我が国の歴史を理解する際の背景として我が国の歴史と直接かかわる事柄にとどめること」となっている。そのため教科書の「アメリカ合衆国」の歴史についての記述が大幅にカットされている。
<参考> 歴史的分野教科書 新旧の比較 (大阪書籍の場合)
旧 新
小単元「アメリカの独立」 1ページ
小単元「南北戦争」 1ページ 小単元では扱われていない
歴史へのズームイン「アメリカの独立と発展」で扱われている。
こうした学習内容の精選の結果、来年度以降、アメリカ合衆国の歴史、文化、生活スタイルなど多角的・多面的にアメリカ合衆国を理解させる社会科の授業構想が難しくなることが予想される
<CODE NUM=343B> 社会科学習と総合的な学習
これまでに小中学校で取り組まれてきている総合的な学習の中には、イベント的で継続性のないものがある。新学習指導要領によって社会科の学習内容がかなり精選された背景の1つに、総合的な学習の導入がある。そこで、アメリカ合衆国理解を深める学習を展開するためには、社会科学習と総合的な学習の1領域である国際理解を関連させ、十分な時間確保と学習内容の拡張を図っていく必要がある。そして、総合的な学習がイベント的にならないようにするため、社会科で培った基礎・基本を基盤にした学習にすることが大切である。
そこで、社会科学習を基盤にした総合的な学習を通して、アメリカ合衆国理解を深める授業を構想することにした。
3 アメリカ合衆国理解を深める授業構想
<CODE NUM=343A> 単元名 「アメリカ合衆国ってどんな国?」
<CODE NUM=343B> 現在までの取り組みと授業で育てたい生徒の姿
本校では、1年生を対象に国際理解学習を行っている。主にアジア、南アメリカ、アフリカの国々が中心で、先進国を扱っていない。その理由の1つに、アメリカ合衆国を含めた先進国の情報は、マスコミやインターネット等を通して大量に提供されているところにある。特に、日本と関係の深いアメリカ合衆国の情報は毎日のように提供されている。一方、アメリカ合衆国の首都や現在の大統領名を答えられない生徒がいる実情から考えると提供されている情報が、アメリカ合衆国理解につながっていないことが分かる。そこで、本単元では今回の研修で収集した情報(資料、写真等)を提供することで、次のような生徒を育てたいと考えた。
調べ学習やアメリカ人とのコミュニケーションを通してアメリカ合衆国への関心を高め、自らアメリカ合衆国へ行って様々な事象を追究したいと考える生徒
<CODE NUM=343C> 基本的な流れ
<CODE NUM=343D> 指導計画(13時間)
##
事 前 学 習
##
・多民族
・複合文化の国
・特色ある農業地域
・企業的大規模農業
・世界一の工業
・都市と都市を結ぶ交通・情報網
・世界の中のアメリカ 目標
アメリカ合衆国が、多民族・複合文化の国であることをとらえさせるとともに、世界の中心的な役割を果たしている様子を理解できるようにする。
##
<地理的分野の学習 6時間>
##
<目標>
アメリカ合衆国の歴史、文化や人々の生活に関心をもち、アメリカ人とのコミュニケーションに積極的に取り組むことができるようにする。
1 3つのグループを編成し、各コース別に調べ学習を行う。
○ 今回の研修で撮影した写真と研修行程表を各グループに提示し、調べ学習の手掛かりにさせる。その際、写真の日付に着目させる。
○ 今回の研修で入手した資料、パンフレットを自由に見ることができるようにしておく。英語の説明が多いのであらかじめ辞書をもってくるように指示する。
<アメリカ史> <アメリカ文化> <アメリカの生活>
##
<調べ学習 4時間>
##
ゲチスバーグ
##
アーミッシュの馬車
##
ワゴンサービス
##
リバティーベル
##
高層ビル
##
ボストンティーパーティー
##
パピルス(絵文字)
##
ハンバーガー
##
ヤンキースタジアム
##
2 調べ学習プリントに調べた内容と疑問点をまとめる。
3 各グループごとに報告書を作成し、調べた内容を発表する。
○ 発表内容で分からないことは質問させる。
##
体 験 的 な 学 習
##
1 アメリカ人の講演を聞く。
○ 事前に講演内容を打ち合わせておく。できれば視聴覚機器を活用してもらうように依頼する。
○ 講師はアメリカ東海岸出身者に依頼する。(今回の研修が東海岸中心であったため)
2 事前学習で生じた疑問を質問する。
##
<国際理解学習 2時間>
##
事後学習 1時間 「アメリカ合衆国ってどんな国」をテーマにまとめ文を書く。
##
4 おわりに
9月に起こった同時多発テロ事件には驚かされた。2週間ほど前にはあの場所にいたかと思うとぞっとした。ほんの2週間で国際情勢が急変したわけである。自分の目で見てきた貿易センタービル、ペンタゴンが崩壊してしまった。この事件が起こったとき、社会の授業中に「貿易センタービルはニューヨークのどこにあるの」「ペンタゴンって何」など様々な質問がでた。これらの質問の多くに即答することができた。これは、今回の研修の成果である。アメリカ合衆国理解を深める授業を構想する際、最も大切なことは教える教師がもっとアメリカ合衆国について理解を深めることだと思う。今回の研修では、東海岸中心に理解を深めることができた。しかし、西海岸、南部、中央部が残されている。社会科教師として、生徒に自信をもってアメリカ合衆国を教えるためには自ら西海岸、南部、中央部に出掛け、自分の目で見、自分の耳で聞き、自分で様々な経験をする必要があることを痛感した。そして、それらを授業の中で生徒に還元していくだけでもアメリカ合衆国理解を深めることになると思う。
##
アメリカ東部にみるこれからの生徒指導
##
豊川市立代田中学校
馬 場 孝 利
1 はじめに
現在、中学校教育における最も重大かつ緊急に取り組まなければならない課題は、生徒指導にかかわることである。
社会の急激な変化にともない生徒は多様に変化し続けている。教員は懸命に対応しようと努力しているが、対応しきれないのが現状である。生徒を全力で可愛がり面倒をみようとするが、従来とは異なり生徒の反応はにぶい。教員のエネルギーと情熱のほとんどは、生徒指導に使われていると言っても過言ではない。「可愛がり面倒をみる」ことで生徒を育てることができなくなりつつある現在、それを補う、または全く新しい視点からの方策・手立てを手に入れないとこれからの日本を担う生徒を育成することができないのではないか。そんな時、『アメリカの事例から学ぶ学校再生の決めて(加藤十八著)』という本に出会った。「80年代、暗くてじめじめして反抗的な目が飛びかい、アルコールやドラッグ、タバコの吸い殻が散乱していたアメリカの学校は、90年代に入ると明るく自由でのびのびとした雰囲気で、きわめてきれいな学校に変化してきた」ということ、その変化は「アメリカ2000教育戦略をもとにするさまざまな改革」にあったことを知った。そして、今回の米国理解教育プロジェクトに参加し、米国の現場の教員の声を聞く機会を得た。
「アメリカ2000教育戦略」に従って、アメリカの教員がどうすることによって、どのように学校を生徒を変えたのかを探ることは、私たちが悪戦苦闘している学校教育健全化の一助になると考えた。
「アメリカ2000教育戦略」の生徒指導(school discipline)に関わるアンケートを作成し、現地の教員に記入してもらうこと、また、直接(英語の教員の助けを借りて)インタビューすることを中心に調査した。
主なアンケート内容
1 How have schools and teachers been changed after
the Strategic Plan 2000 came into force compared with what they used to be?
(アメリカ2000教育戦略がスタートし、学校は教員はそれ以前と何が変わったのか。)
2 What did schools and teachers do to make
disciplined schools?
(規律ある学校をつくるために学校は教員は何をしたのか。)
3 What was your trouble to make disciplined
schools?
(規律ある学校づくりを進めるなか、苦労したことはどんなことか。)
4 What is your anxiety about the future of schools?
(現在の学校に対する将来の不安は何か。)
2 「アメリカ2000教育戦略(以下プラン2000)」のめざすもの
「プラン2000」とは、国家教育目標にもとづいた2000年までにどのように教育改革を行うかが示されたものである。以下、国家教育目標の生徒指導に関わる部分を挙げておく。
【目標6】安全で規律あるドラッグのない学校
【目標7】教員研修と教員の専門性の開発向上
【目標8】父母の参加
3 アンケート結果より
<CODE NUM=343A> 「プラン2000」からの学校の変化
・ 50州それぞれで教育上の統制が政策や法律で行われていたので、プラン2000は改革というよりもむしろ「勧告」だった。国中の公立学校で、おそらくほとんど変化に効果はなかっただろう。また、クリントンは携わらなかったし、ブッシュはそれほど継続的ではない。ブッシュのねらいは、生徒が学習をしていることを確かめるために彼らをテストすることだ。(40代 女性 高校教員)
・ プラン2000については、保護者や教員のほとんどがよく知らないのではないかと思う。アメリカの教育システムは非常にばらつきがあり、やり方もいろいろだ。貧しく荒れたミシシッピ州の学校とコネチカット州の裕福な学校とでは大きく異なる。しかし今でも(以前からも)重要なことは「家庭でのルール」にはまちがいがない。
(60代 男性 高校カウンセラー)
<CODE NUM=343B> 規律ある学校をつくるために学校や教員がしたこと
・ 開校中、正面玄関以外はカギをかけ、生徒と教師にIDカードを持たせる。侵入者(来校者も含めて)をチェックするために正面玄関にカメラをセットするなどして、学校の警備を強化した。また、武器の持ち込みを禁止したり、麻薬犬をつかい生徒のロッカーをチェックした。(40代 男性 高校教員)
・ それぞれの学区や郡、または州で「校内暴力」に的を絞って取り組んだ。金属探知機を置いたり、警備員を配置した。さらにIDカードを全職員全生徒に配布したり、ドラッグやアルコールに対して容認ゼロ運動(Zero-Tolerance)を行った。現任校には、保護者・教師・生徒・委員でつくる委員会があり、暴力事件を事前に予防する試みをしたがあまり効果がなかった。ある学校では過剰な反応をするが、何もしないところもある。(40代 女性 高校教員)
・ それぞれの場所によってかなりの差がある。ニューアークでは、不登校・暴力・退学10代の妊娠・片親家庭・犯罪・ドラッグなどがどんどん増える傾向にある。それらに対応するために規則を作ったり、違反があったときの対処法を決めている。校内停学(教室から離す)・数日間の停学・永久除籍(とても深刻)、そして、違法行為があった場合は警察に届ける。これらの罰を課すための規則や手順はすべて整っている。保護者もこれらの段階すべてに関わっている。生徒指導において私たちが抱える問題は、地方の学区やそれぞれの問題の本質によって大変異なるやり方で処理されている。
ほとんどの保護者はとても心配している。もちろんあきらめてしまった人も中にはいるが・・・。(60代 男性 高校カウンセラー)
・ 教員は学級経営の面でトレーニングを受ける。さらに、ほとんどの学校ではカウンセラーを置き、特別チームを作って特に手助けが必要な生徒を指導し、学校は行政上の支援を受けている。そして、家庭が公立学校にもっと関わりを持つことができるよう常に努力している。保護者の学校や教員に対する態度は、明らかに生徒の態度振る舞いに反映される。この保護者(家庭)こそ、重大なポイントである。私個人は、家庭との連携こそが規律ある学校をつくるための鍵だと思っている。(40代 女性 高校教員)
・ それまでより教員が生徒を認め、より生徒が抱えている悩みなどに気付くようになった。具体的には、校則を発展させたこと、その校則を生徒が理解しているかを常に確かめた。(60代 女性 生徒指導担当教員)
<CODE NUM=343C> 規律ある学校づくりのための苦労
・ ロッカーの点検やドラッグ容認ゼロ運動(Zero-Tolerance)は、新たに対応すべきことを出現させた。たとえばアスピリン(頭痛薬)を持っていることも許されなくなった。容認すべきことを容認できない苦しさがある。(40代 男性 高校教員)
・ 私の学校にはほとんど規律面のトラブルがない。しかし「この学校は安全」だから、もっと何か方針を立ててほしいと思っている教師が多い。生徒や保護者は、学校・教員の一致した意見がなにもないことを感じている。(40代 女性 高校教員)
・ 校則を発展させ、罰の段階を徹底させることで難しいことが二つ起こった。一つは、すべての生徒に校則と罰の必要性を説明し理解させること。そしてもう一つは、すべての生徒を同等に扱わなければならなくなったことだ。それぞれの生徒にあった指導が難しくなった。(60代 女性 生徒指導担当教員)
<CODE NUM=343D> 学校に対する将来の不安
・ 私たちが公立学校に関して心配していることは、学校が手を出しすぎていることだ。学校は生徒を育てることに責任をおくべきではない。医学的、精神的、感情的、肉体的に生徒はさまざまな問題を抱えている。学校はそれらに関わることはできない。いや、関わるべきでない。保護者の中には、子どもに薬をぬることができなかったり、ぬろうとしない親がいる。大人は働きに出て、子どもは家庭での躾や社交性がないまま、組織化された学校でほとんどの時間を過ごしている。常に言われていることだが、私は、この状態がもっと悪くなるのではと危惧している。(40代 女性 高校教員)
・ 家庭はもっと自分の子どもが通う学校に、校則に積極的に関わる必要がある。そして家庭が学校を理解し、学校は理解されるよう努力をし、家庭と教師の信頼関係を築いていく必要がある。(60代 女性 生徒指導担当教員)
※下線は筆者
1 個が大切にされ、生徒・教員がのびのびと生活し成長する規律ある学校づくりのための校則・違反に対する罰の手順を整え、その有効性を生徒はもちろん保護者にも理解させること
2 家庭が積極的に学校とかかわりを持つ機会(開かれた学校・説明責任)を積極的に設け、家庭と学校の信頼関係を築いていくこと^t
「明るく自由でのびのびとした雰囲気で、きわめてきれいな学校に変化した」ケースはあるが、アメリカの教員も私たちと同じように次代を担う生徒の育成に苦闘しているのである。
指針1は、現在の日本の教育改善に対して一つの方向性を示している。義理と人情、一部の教員にしかできない職人芸やカウンセリングマインドだけでは日本の将来を担う生徒の育成は難しい。これまでの慣習を打破し、勇気を持って、思いきった改革に向かわなければならない。
また、指針2については以前から日本でも盛んに言われ続けているが、なかなか実を結ばない。地域を含めた信頼関係は、教育改革を支える基盤となり、推進力・エネルギーとなる。
指針二つに共通するキーポイントは「具体的な行動」である。訪問中に直接インタビューすることができた教員は「学校を変えるためには何が必要か」という問いに、明確に次のように答えた。「一番重要なことは活動化だ。具体的に行動することだ。親に対して、行政に対して、そして教員が教員に対して具体的に働きかけることだ。」
4 おわりに
これからの生徒指導にとって大切なことは「具体的に行動」することである。無論、校則や罰が高圧的に生徒をしばりつけるのではない。個々の生徒がのびのびと活動し、社会的に有為な人間に成長するための校則・罰である。この視点は、必要不可欠である。さらに、私たち教員が生徒を導くための理想や理念を持ち続けていること、また、そのことに対する反省を忘れてはならない。
「教職員が世界を変えるのである!私の大学のすべての教職員は、目的を持って学生を指導している。その目的とは、創造的な考え方をする学生を育てることだ。そして、私たちは常にその目的を確認しあっている。」(ラトガーズ大学の教授)
「The best teachers are passionate learners.
We create tomorrow’s schoolars.
Would I want me as my teacher? 」(ミラーズビル大学の教室の壁)
参考文献
加藤十八「アメリカの事例から学ぶ学校再生の決めて−ゼロトレランスが学校を建て直した」(学事出版、2000年)
アメリカの生活や文化を理解させる社会科指導
##
−2年生地理的分野「アメリカ合衆国」の教材開発−
##
尾西市立第一中学校
坂 井 辰 美
##
1 はじめに
今回の研修に参加するにあたって、生徒に「もし、あなたがアメリカに行けるとしたら、どのようなことを実際に見たり、聞いたりしてきたいですか」と質問してみた。その結果、「自由の女神やグランドキャニオンを見たい」など有名な観光地をあげたり、「アメリカの生徒の生活は日本とどのように違うのか」「夏休みはどのように生活しているのか」など同じ中学生の生活に対する興味をあげたり、「アメリカの人たちの食事について知りたい」など、アメリカ文化に対する興味をあげたりしていた。これら中学生の興味・関心の対象となりうる内容や視点を今回の研修の大きな課題として参加した。
2 教材化するにあたって
今回の研修内容を教材化するにあたって、アメリカを視察することによって肌で感じ、実際に見聞きしてきたことをまとめておきたい。
<CODE NUM=343A> 地域や社会に対する貢献
今回の研修でまず感じたのは、いろいろな場で地域・社会への貢献が求められるということである。例えば、最初の研修先であったボストン日本人学校では地域の高校の校舎を借りるためには、地域への貢献を求められ、現在は日本文化を紹介する講座を開いている。また、各地の美術館・博物館などでは夏休み中の生徒を受け入れるため、サマーキャンプが開催されている。これは、各施設が地域の子供たちを育てていこうとする地域貢献の一つであると考える。
さらに、各地の大学が社会貢献に意欲的に取り組んでいることである。ラトガーズ大学での講義であったように、社会人教育に力を入れているだけでなく、今回訪れた各地の大学が、自らの研究の成果を博物館や美術館で展示することで社会に還元しようとしていることに驚いた。
<CODE NUM=343B> 自国の歴史を大切にする国
アメリカ人と日本人の国家に対する考え方には大きな違いがあると感じる。これは、アメリカが自らの力で独立を勝ち取り、南北に分裂する危機を乗り越え、その後何度も「国家とはなにか」を問い続けてきたからこそ形成されたものと思われる。
さらに、今回の研修で自国の歴史を日本に比べ大切にしているように感じた。例えば、ボストンでは、建国の歴史が学べるように町中が整備されており、沢山の人々が建国当時の人々の願いや行為を知ることができるようになっている。フィラデルフィアでは、アメリカが独立を宣言した当時の様子を理解するに適した施設を国が整備している。南北戦争の激戦地であったゲティズバーグでは、当時の様子を学べる国立の公園が整備されていた。ワシントンでは、リンカンやワシントンをはじめ、多くの大統領経験者の記念碑があり、その業績を紹介している。
ホームスティ先の高校生がゲティズバーグを訪れたとき、体が震える感情を抱いたと語った。これは、このような国としての努力があるからこそ、自国の歴史を知る機会に恵まれ、先人の努力に敬意をはらうようになるのではないだろうか。
<CODE NUM=343C> 食に対する考え方の違い
アメリカについた最初の夜、ボストンでの夕食の量の多さには驚いた。出発前からアメリカの食事の量の多さは聞いていたが、想像以上の多さであった。ガイドブックには、「アメリカでは、食事はカロリーをとる行為であるといる意識が強かった」と書かれていたが、確かに頷ける多さである。
ホームスティ先での食事では、夕食は自分の出身国に関係した食事ではあったが、それほど違和感のない食事であった。しかし、次の日の朝の食事風景はアメリカらしいものであった。朝食の中身はスクランブルエッグやパンなどであったが、その横にビタミン剤やカルシウムなど数種の錠剤が置かれていた。つまり、体に必要な栄養素をビタミン剤などでまとめてとろうという食事であった。確かに町中にはビタミンショップが目立つ気がした。
しかし、最近は、体に必要な栄養素を自然の食物から取った方が良い、と考える人が増えてきたとのことである。そのため、無農薬で生産しているアーミッシュの人々の野菜が静かなブームであるという。
<CODE NUM=343D> サマーキャンプ
事前の生徒向けアンケートでもっとも多かった「中学生の夏休み中の暮らし方を知りたい」という疑問について視察前に調べたところ、夏休み中は「サマーキャンプ」に参加している生徒が多いことが分かった。そこで、今回の視察では、この「サマーキャンプ」について詳しく調べてみた。(詳細はAグループ研究報告参照)
<CODE NUM=343E> 多様性を持った社会
今回、ホームスティをさせていただいたフィシャー氏は、戦後7ドルを持ってハンガリーからアメリカに移住してきた。現在は10億を超える資産を持つ、まさにアメリカンドリームを実現した人物である。このようにアメリカは、いろいろな国から移民を受け入れてきた。大都市の多くには中国系移民のコミュニティーであるチャイナタウンがある。
このように、多くの民族を受け入れてきたため、アメリカには多様な価値観が存在する。例えば今回訪れたアーミッシュの村は現代文明を拒否し、自分たちの伝統を重んじながら生活している。
これらのことから、以下のねらいを設定し、実践の計画を立てた。
3 実践内容
地理的分野「アメリカ合衆国」の単元構成を考えてみた。ただし、現在担当している2年生はすでに、本単元の授業を終えているため、アメリカの文化や生活などに絞って実践を行う。
<CODE NUM=343A> 単元の目標
テーマを追究することで、アメリカが多民族国家であり、文化や社会のしくみなどにわたって、どのような影響を与えているのかを知り、各分野で多民族国家の特色が多彩に出ていることを理解する。
<CODE NUM=343B> 単元構想図
教師が実際に見たり、聞いたり、感じてきたアメリカの生活や文化を、生徒に調べさせたり、視察の追体験をさせたりすることで、アメリカに対する理解を深められる授業構成をする。
##
第1時 アメリカ各地の工業の特徴について調べ、特徴をまとめよう。
##
第2時 アメリカ各地の農業の特徴について調べ、特徴をまとめよう。
##
第3時 アメリカで撮影した写真を見て、テーマを考えよう。
##
第4時 テーマを設定し、調べ学習の計画を立てよう。
##
第5時 同じテーマを選択した者同士で、テーマについて調べよう。
##
第6時 元のグループに戻り、アメリカの文化や生活についてまとめよう。
##
↓
##
↓
##
↓
##
↓
##
↓
##
ここまでは今回の実践では行わない。
<CODE NUM=343C> 単元の流れ
第3時では、今回の研修で撮影してきた写真を生徒にみせながら、アメリカで学んできたことや感じたことを話す。ここでは、生徒にアメリカへの興味を持たせたり、疑問を持たせたりすることをねらいとする。この時間に見せた写真は、「学校生活や夏休みの暮らし」「食べ物」「合衆国の建国や発展に貢献した人物」「多民族国家」などのテーマで編集し直したものである。
第4時では、協同で調べていくためのテーマを設定する。(当然クラスによってはテーマ数が違ってくるが、できるだけ上記したようなテーマの設定ができるように指導する。)テーマ毎に何を調べればよいのか考えを出し合う。その後、調べるテーマの数と同数になるようにグループの人数を決め、グループ編成を工夫する。グループに分かれた後、誰がどのテーマを調べるかを決定する。
第5時では、協同で調べ学習を進める工夫として、ジグソー学習を取り入れた。この学習は、グループ内で何を調べるか担当者を決める。次に同じテーマを調べる生徒が集まりグループをつくり、協力して調べ学習を進め、お互いの情報交換をし合いながら分担したテーマを調べる。(その後、元のグループに戻り、調べてきた内容をお互いが報告し合う。第6時に行う。)また、この時間では、調べる方法、資料などの集め方やテーマに対する見通しを話し合わせる。
第6時では、第3時で調べた成果をもって、元のグループに戻り、報告をし、自分が調べた内容と他のグループ員の報告を合わせて、一枚の報告書を作成する。この報告書の最後には、アメリカ文化や生活に対する自分の考えをまとめて,報告書を完成させる。
(4) 授業を終えて
第3時に現地で撮影してきた写真を見せた。現在アメリカが注目されていることもあって、生徒たちは熱心に説明を聞いていた。時々質問をしてくる生徒も多数いて、返答に困るような質問も出てきた。この写真によって、生徒たちに十分調べようとする意欲づけができたのではないかと考える。その結果、生徒たちは「食べ物について」「アメリカをつくりあげた人々」「アメリカの中学生の生活」「サマーキャンプを調べよう」などのテーマを設定することができた。
第4時では、「何を、何で調べるのか」を話し合わせた。文献資料で調べる生徒が多かったが、インターネットを使う計画を立てる生徒もいたので本研究グループのホームページも紹介して調べる手助けとした。
第5時では、ジグソー学習を取り入れたこともあって、自分の持っている情報を教え合いながら、調べることができ、日頃はなかなか調べられない生徒が何とか自分の役割を果たすことができた。
第6時では、それぞれのグループ員が調べてきたものをコピーして、一人一人がB4サイズの紙に貼り付けて、まとめをした。さらに、全員が調べてきた内容を読んだ後、アメリカの文化や生活から考えたことを書いた。
5 おわりに
今回のアメリカ視察ほど、「百聞は一見に如かず」を実感できたことはない。教科書で教えている内容について実際に見たり聞いたり感動したりしたことを生徒に話すだけでも、興味をもって話を聞いている。来年度以降、社会科は学び方重視の傾向がますます加速していく。学び方重視の学習を支える重要な要素は、学習意欲を高める教材開発である。そのためにも今回の経験を大切にしていきたい。
##
ごみ問題から米国理解を考える
##
愛知教育大学附属岡崎中学校
夏 目 貴 司
##
@ アメリカは、日本にとって「大量生産・大量消費」のお手本の国だ
A アメリカの大都会では、ごみ問題はたいへんだろう
B アメリカでは、ごみの分別やリサイクルなどはどのように進めているのだろう
1 はじめに
現在、我が国のみでなく、それぞれの国が環境問題の解決に大きな関心を抱いている。地球環境問題については、まさにグローバルな視点での対応が迫られていくものである。いわゆる「京都議定書」についての米国の態度が、政治的な思惑の絡んだものであるにせよ、より身近な環境問題のレベルにまでおろしたときの、米国民の意識はどうなのか――これが、今回米国訪問の機会を与えていただくにあたって、私が抱いた素朴な疑問である。
そこで、この機会に、生徒にとっても関心の高い環境問題、とりわけ身近なごみ問題が、米国でどのように意識され、問題解決のための諸活動がどのように展開されているのかを調査し、教材開発に役立てたいと考えた。
2 「米国」と「ごみ」の授業を構想するにあたって
<CODE NUM=343A> 予想される子どもの意識と授業の切り口
@ アメリカは、日本にとって「大量生産・大量消費」のお手本の国だ
A アメリカの大都会では、ごみ問題はたいへんだろう
B アメリカでは、ごみの分別やリサイクルなどはどのように進めているのだろう
上記@〜Bは、本授業テーマにおいて予想される段階的な子どもの意識のとらえである。これらを授業の構想につなげていく見通しについて以下に述べる。
@については、子どもたちに、近年の我が国のライフスタイルが、米国のそれを取り入れながら発展してきたことを意識させる場が想定される。20世紀後半の、我が国の繁栄と米国文化とのかかわりについて想起させながら、子どもたちに、両国の密接な関係について語らせていきたい。【関心・意欲を高める段階】
Aについては、子どもたちのもつ「世界一の大都市ニューヨーク」という意識に切り込む場が想定される。子どもたちの暮らす地域や、近隣の中堅都市の規模からは想像できない「大都市のごみ」のありようについて思いを巡らせたい。【知的好奇心を喚起する段階】
今回の訪米が、米国東部を巡り、大都市を訪問できることから、映像などの資料収集と、その活用が考えられる。
Bについては、子どもたちが、より身近な足もとの部分において日米の比較をしていく場が想定される。実践の対象とする2年生は、「ネットワークプロジェクト(本校における総合学習)」のうち、「tプロジェクト(学年でチームを組み行う活動)」において、環境問題を追究しており、身近なごみ減量の意識が高い。そこから、意欲的に観察し、意見交流ができると考える。【新たな発見により自他を見つめなおす段階】
<CODE NUM=343B> 現地収集資料の位置づけと授業構想
現地で収集した資料の位置づけとしては、前述のA・Bの段階において、知的好奇心を喚起し、新たな発見を促すことに用いたい。授業構想については、教師の収集した資料を中心に展開することから、問題解決的学習過程を構想した長期の追究単元ではなく、1時間完結の形態とする。対象とする2年生が、昨年度までに地理分野におけるアメリカの学習を終えていることからも、本時は、今後3年生にわたって展開される日米関係を考える授業の伏線としたい。
3 現地での調査活動
<CODE NUM=343A> 各都市における情報収集
現地入りしてからは、ごみについての表示、それにかかわるものや活動について、情報収集をしながら写真撮影を行った。
まず、デトロイトの空港に降りて目についたのは、「Don’t Litter」の表示である。これ以後、各所のごみ箱やごみ収集場所において、この「散らかすな」の表示が最も多く見て取れた。また、日本では見ることのできない「標識」も、バスや徒歩で巡った都市の各所で発見した。それは、指定された曜日・時間にやって来るごみ収集車の停車場所であり、他の車の駐車禁止とともに、その場所の「Don’t
Litter」を促すためにデザインを工夫した「標識」だったのである。(写真1)
早朝こそ、ごみ収集の現場に立ち会えると考え、ニューヨークでは朝の散策を行った。揃いの制服を着て歩道の清掃をしている男性2人を「ごみ収集作業員」と思って声をかけたところ、返ってきた返事は意外にも「新聞販売業者」だという。早朝、新聞自販機に新聞を入れながら、その周辺の清掃を行うことも彼らの仕事だったのである。(写真2)
分別やリサイクルについては、公的機関からも呼びかけが行われ、公園にはそのためのごみ箱が置かれていた。(写真3)また、訪問先の大学や事業所のオフィスにおいても、紙のリサイクルが励行されていた。(写真4)
ごみ回収に使われる袋は、街頭に出されるものは白を基調とした「指定袋」が中心で、不燃ごみの容器等については、緑系や白系の半透明の袋に入れて出されていた。(写真5)
一般的な黒の袋は、ホテルなどの事業所からまとめて出されるごみが中心で、深夜にはホテルの裏口に集積されていた。(写真6)
都市では、公的機関のほか、「Golden Triangle」「DOWN TOWN DC」という名前のごみ回収業者の動きも目についた。彼らはそれぞれ制服を着て日中回収作業をしていたり、トランシーバーを片手にごみ箱周辺の見回りも行ったりしていた。(写真7、写真8)
<CODE NUM=343B> 家庭における情報収集
ホストファミリーのお宅では、夫人に当地での家庭のごみ回収の方法を聞いても「ピーター(自分の夫)の仕事だから私は知らない」といういかにも米国らしい返事が返ってきた。調理からごみ箱までは夫人が行うが、外に出し、回収のための準備をするのは夫だというのだ。ピーター氏に聞いて、ようやく週2回の収集日に戸外の決められた位置に置く
ことで市が燃えるごみを回収することがわかった。さらに、新聞紙等の紙の資源ごみと、
ビンや缶類は、それぞれ隔週1回回収されるため、ガレージ周辺にためてあるのだそうだ。我が国の一般的な回収方法と近いものである。
ただ、これは、郊外の一戸建てのお宅に言えることで、都市部のアパートなどがどういう状況で回収されるかはわからなかった。なお、我が国で見られる何種類もの分別(ごみ置き場での分類)のようなものは「聞いたことがない(ピーター)」ということであった。
4 現地収集資料をもとにした授業づくり
<CODE NUM=343A> 授業構想
授業は1時間完結で、米国の現状に関心をもち、大都会におけるごみ収集などが大変な事業であることを共感的に理解するとともに、我が国の分別やリサイクルの現状との比較を行えるような展開を組み立てた。そして、最後に、資料から読み取れる米国「再発見」の意識を、今年度末から次年度にかけての、国家間のつながり、人権や政治分野の学習につなげていきたいと考えたのである。
<CODE NUM=343B> 活用する資料
前掲の写真資料を要所要所で示し、子どもたちに考えさせながら展開していく。
まずは、右の写真「清潔華埠協会」のごみ袋を示して考えさせる。そこからは、中華街をはじめあらゆる人種とも街の美化を図り自分たちの生活を快適なものにしていこうとする意識について話し合わせる。事前調査から、かつて米国を旅行し、「何でも同じごみ箱に捨てていたと思う」というT男と、「アメリカのイメージってそういう大胆なところがある」というY男らの思いがやがて変容していくことをねらう。環境をよりよくしたいと願う思いや、自分たちで活動していく姿勢は、世界中どこでも同じであることを、資料からつかませていくのである。
<CODE NUM=343C> 授業の実際から
「世界一の大都市ニューヨークにはごみがあふれているのではないか」という疑問も、市のはたらきのほか、その他の業種(例えば新聞販売業)にあっても意識して取り組まれ、ごみ回収企業の働きもあって解決されているように見える。しかし、子どもたちは、資料の情報にさらなる問題意識をもちはじめた。
○ ごみ回収企業の作業員が、有色人種ばかりである。「雇用確保」のためかもしれないが、このことがさらに人種間の隔たりに発展しないのであろうか。
○ 私たちが「tプロジェクト」で見た、碧南市の「32分別」というようなことは、「人種のサラダボール」のアメリカにあっては、理解し合って進められないだろうか。
○ ごみの「行く先」は、どうなっているのだろうか。日本のような処理場や、埋め立て場が存在するのだろうか。その規模や、その位置が起こす問題はないのだろうか。
○ ごみをはじめ、アメリカの「負の部分」にも着目して世界を見ていきたい。
5 おわりに
今回の訪問で得た資料は、断片的な部分が多く、子どもたちの追究学習そのものを組織しうるものにはならなかった。しかし、今後につながる問題意識に火をつけることはできた。凄惨な事件の直後でもあり、子どもたちの意識の中にも平時の「豊かなアメリカ」という思いだけなく、「負の部分」に話が展開することにもなった。また、センタービル崩壊の現状から「瓦礫のゆくえ」を問う発言もあった。いずれにせよ、当初の意図とは違う部分も含め、米国を見つめることになった。今後も、私たちにとって、理解し合い、追究を深めていける米国、そしてグローバルな世界であり続けてくれることを望みたい。
##
米国における学校生活と英語教育
##
東浦町立東浦中学校
榊 原 将 道
1 はじめに
日本では、平成14年度からの新学習指導要領完全実施に伴い、当然、教師の側にも従来のカリキュラムに対する意識からの発想の転換が必要である。「学力」の捉え方自体が大きく変化する中で、米国における教育のあり方を知ることは、単なる異文化理解に留まらず、今後の日本の教育を考える上でも大いに示唆に富んだことである。
また、今回米国における研修の機会を頂いたことで、私は米国において英語がどのように教えられているかということに関心を抱いた。とかく日本における英語教育について様々な議論がなされる中、実際のアメリカでは英語はどのように教えられているかということはあまり情報として伝わってこない。もちろん、母国語学習と第二外国語学習では学習の意義や方法が根本的に異なることは当然である。幸い、研修中にホームステイした先のホストマザーがニュージャージー州の英語のスーパーバイザー(監督者)の方で高校の英語の教師でもあることから、米国における英語教育についてもインタビューをすることができた。また、実際に中学や高校で使用しているテキストも手に入れることができた。
2 米国における学校生活
<CODE NUM=343A> 就業年数
日本では、小学校(6年)、中学校(3年)、高等学校(3年)という就業年数が一般的である。州ごとで就業年数が異なるが、私の訪れたニュージャージー州では、小学校【elementary school】(4年)、中学校【middle school 】(4年)、高校【high school 】(4年)という制度になっていた。それぞれ、上級学校への入学試験はないが、それぞれの学校の卒業試験(State
Test)があり、それは一つの重要な通過点になっているということであった。ニュージャージー州の Edison という町では小学校から中学校、中学校から高校へほぼ100%の生徒が進学し、高校から大学へは約70%の生徒が進学している。
<CODE NUM=343B> 授業科目
中学校では第二外国語としてフランス語、スペイン語、ドイツ語の中から1教科を選択して受講している。コンピュータの授業も技術から独立して存在する。
高等学校では、さらに専門的な内容として、各教科がたいへんユニークな講座に分かれていて興味深い。いくつかの例を挙げれば次のとおりである。
社会科・・・世界史、世界地理、アメリカ史、基礎社会、社会心理学、政治・法律、 現代ヨーロッパ史、社会学など。
理 科・・・生物学、化学、生物化学、地学、環境学、物理、科学原理、一般科学。
音 楽・・・オーケストラ、バンド、音楽理論、音楽鑑賞、合唱など。
体 育・・・健康(Health)、運転教育(Driver Education)、
生涯体育(Lifetime Sports)、団体競技、個人競技など。
体育では、具体的に日本ではあまり学校で行われないスポーツとして、ホッケー、ボウリング、ゴルフ、フリスビー、エアロビクス、社交ダンス、ラクロス、護身術、レスリングなどがある。
この他にも、次のように専門学科に属するようなユニークな講座がある。
食物・栄養学(Foods/Nutrition)、人生学(Life skill)、国際食とアメリカ食(Intenational
and American Foods)、経理学(Accounting)、設計学(Drafting)、プログラミング(Programming)
また、授業の受講人数は最大30名、最低10名、平均15名であるとのことである。
<CODE NUM=343C> 年間行事
Metuchen High School の2001年〜2002年の年間行事予定をまとめてみると次のようなものがある。
8月30日
9月3日
5日
10月6日
11月13日〜15日
22日〜23日
12月8日
24日〜31日
1月1日
21日
23日〜29日
29日
2月11日
18日
3月25日〜29日
4月1日
4日
18日〜20日
5月4日
16日
27日
6月20日 Grade
9 Orientation (9年生のオリエンテーション)
Labor Day
Opening Day of School(新年度入学・始業式)
Metuchen Country Fair(学校祭)
Parent-Teacher Conferences(保護者会)
Thanksgiving Recess
Student Council Snow Ball(生徒会行事)
Winter Recess(冬休み)
New Year's Day
Dr. Martin Luther King
Day
Mid-Year Examination(中間テスト)
End of First Semester(前期の最終日)
Parent Orientation(保護者のオリエンテーション)
President' Day
Spring Recess(春休み)
(3/28 Passover, 3/29 Good
Friday, 3/31 Easter)
Easter Monday
Art Honor Society Induction/Arts Festival(芸術祭)
Spring Musical(ミュージカル)
SATT&UTesting(試験)
Spring Concert(コンサート)
Memorial Day
Last Day of School(修了式)
枠で囲ってある日は、祝日・休日である。これ以外にも、Staff
Workship として、教員研修の日が年間4〜5日計画され、その日は授業が休業になっている。
<CODE NUM=343D> 日程
授業時間は高校で45分間、中学校では43分間である。日本の学校にある短学活(ST)に相当するものは、1時間目の授業のあとに4分間だけあるとのことである。一日の就学時間については、中学校で8:00〜14:15、高校で8:30〜14:45ということである。
<CODE NUM=343E> 校則
基本的に校内での違反と校外での違反をしっかり区別している。校外の違法行為については、学校としてはノータッチで家庭の問題であるとしている。校内での飲酒、喫煙については、停学や退学の処分がある。遅刻やその他の軽い違反に対しては、居残り学習の罰があり、“Tank”という特別室で、授業後に残されることが多い。また、授業中にアメをなめるとか、ジュースを飲むことに対しては、多くの教師は認めないという考えをもっていても、実際にはある程度の教員があまり注意せず放任しているとのことである。服装については、多くの場合、公立校は私服、私立校は制服である。髪の毛を染めることやピアスをつけることは自由である場合が多い。日本で流行の「へそ出しルック」や「ミニスカート」については、品位がないということで親や教師側は反対の考えをもっている場合が多いということである。
<CODE NUM=343F> 試験
1月と6月(または5月)に試験がある。特に6月のテストは
State Test と呼ばれ、その学年の修了試験に当たるということである。特に4年生、8年生、12年生では卒業試験に当たり、その重みも異なるようである。
<CODE NUM=3440> ホームルーム
担任の教師は決まっているそうであるが、日本のように深いつながりはないようである。講座の受講についても、学習アドバイザーがオリエンテーションを行い、一年間で取得する単位などの相談に当たったり、卒業後の進路指導にも当たったりしている。毎日の日課の中で、1時間目の後にあるわずかな時間を使って、Flag
Salute(星条旗への敬礼)や諸連絡を行っている。そのため、どのホームルームにも教室の前面に国旗が掲示されているのがたいへん印象的であった。
<CODE NUM=3441> 教科書
教科書は無償で貸し出されるということである。その選定に当たっては、その学校の教員とその教科の
supervisor(監督者)とで検討される。教科書については、基本的に持ち帰らず、学校に保管しておくことが多いという話も聞いた。
<CODE NUM=3442> 学校生活
昼食は弁当ではなく、カフェテリアで食べることになっている。昼の休憩は40分で、混雑しないように、受講講座によって時差をつけて昼食をとるようになっている。教員は別のカフェテリアがあり、生徒とは一緒に食べない。また、一人一人が専用に使えるロッカー(鍵つき)をもっており、責任がもたされている。社会全体で福祉に対する意識が高く、校内のトイレでさえ必ず障害者用のトイレが設置されている。清掃活動はいっさいなく、清掃人が校内の掃除をしている。学校の修繕は、教員(校長など)の夏休み中の仕事の一つである。日本で行われている「清掃活動」に対して米国の教員に感想を聞いてみたところ、生徒に責任をもたせるうえで、たいへん意義深いと思うという感想であった。
<CODE NUM=3443> 教員
教員の勤務時間は、8:00〜15:30ということである。もちろん、その後もボランティアとして、その学校や地域のスポーツや芸術関係の指導者として活躍している人も多いという。雑務も多く、勤務時間で帰れることは少ないとの話も聞いた。ただ、夏休み中は、教員もほとんど学校に行かなくてもよく、バイトや他の仕事をしてもよい。教員の給与に関しては、初任給は、大卒者で税別年間3万3千ドル(日本円で約400万円)である。退職するまでの最高限度給与は6万ドル(720万円)である。また、勤務時間外のボランティアコーチなどに対しては、1日5ドル程度の補助があるということである。
3.米国における英語教育
<CODE NUM=343A> 英語学習の初期
児童用英語学習の参考書(小学校2年から4年)を書店で見つけ、調べてみると、日本の中学校や高校で学ぶ文法的な学習に限らず、バラエティーに富んだ実践的な英語表現や英語に関する教養的な内容が取り上げられていた。主な学習内容は次のとおりである。
英語の歴史(ヨーローパの言葉との関係)、発音のメカニズム、フォニックス、接頭辞、接尾辞、短縮形、辞書の使い方、品詞、動詞の活用、接続詞、前置詞、形容詞、文法、表記記号、筆記体、略語、文の校正、文章の書き方、文章のジャンル、手紙の書き方、詩の書き方、手話、点字など。
9歳の児童が対象のテキストであるにもかかわらず、内容的は日本の大学の英語科で学習するようなものも含まれている。
<CODE NUM=343B> 授業構成
高校での英語の授業の構成は、日本での英語教育のような会話のみを中心とした科目はない。基本的には、Writing
の授業と Reading の授業のみで、その中に Speaking の活動が部分的に取り上げられるということである。ほとんど、毎日この2科目はあり、毎日「国語」としての英語を勉強しているという。また、日本で漢字を繰り返し、ノートに練習し、覚えるような学習は小学校の低学年で単語を覚えるときにするだけで、その後はしないとのことであった。
<CODE NUM=343C> Writing の授業
文章や論文の書き方をはじめ、詩やエッセイの書き方、手紙の書き方等を学習する。著名な作家の文章を模倣し、書くこともあるとのことである。自分の考えをまとめるために調べ学習をしたり、授業時間中に電話を用いて、関係者にインタビューをしたりすることもあるという。また、何枚かの絵を見ながら、物語を作る story telling の活動もある。
<CODE NUM=343D> Reading の授業
Reading の授業では、文学作品を中心に読解し、考えたり、議論をしたり、感想を発表し合ったりするということである。作品については、シェークスピア、シュタインベック、ヘミングウェイなど日本でもお馴染みの作家の作品が多い。かなり、時間をかけてじっくりと読み込んでいくようである。小学生には「ハリーポッターの冒険」が大人気で、テキストとしても使われている。その中の活動の一部として、感想を発表し合う
Speech 活動、互いに議論し合う discussion や debate の活動、実際にドラマや劇を演じてみる drama の活動があるとのことであった。
4.おわりに
米国における学校生活、英語教育を調べ、強く感じたことは米国では生徒の学習活動が生活自体に密着しており、教科と教科が横断的に強く結びついているということである。日本で言われる「総合的な学習」は、米国ではより自然な形で、生徒自身が学習の必要や学習に対する興味を自然に感じられるような形で存在しているように思えた。
また、英語学習に関しても、日本で言われる4技能という捉えではなく、むしろ道具としての英語をより使いやすくするために、そのためのストラテジーをより多く、より念入りに学ぼうとしているように思えた。その点は、母国語としての英語と第二外国語としての英語の違いはあるが、言語の学習という点でいえば、日本の英語教育においてもさらに実践力・実用力を高めた英語指導をめざしていく必要があると思う。
アーミッシュの人々から学ぶこと
##
−現代アメリカにおいて電気も車も拒絶して生活する人々−
##
知立市立竜北中学校
小 田 哲
##
1 アーミッシュとの出会い
「あと数分で、300 年前から続いている生活がみなさんの目前に現れます。」と紹介したのは、アーミッシュ・バスツアーのガイドである。そしてしばらくすると実際にシンプルな服装をした女性の運転する馬車が子どもを乗せて私たちのバスの横を通り過ぎた。
私がこのアーミッシュの存在を知ったのは数年前に公開された映画「目撃者」(ハリソン・フォード主演)を見たときである。徹底した非暴力の平和主義と地域の人たちが集まり一日で納屋を仕上げる映画のシーンを見て私はアーミッシュの生活に大変興味をもった。
1998年に家族でアメリカを旅行した時にインディアナ州のアーミッシュ地域を訪れ、家並みを見たり、アーミッシュの経営する店に寄ったり、またそこで出会ったアメリカ人の老夫婦とアーミッシュについて話しをしたりすることでますますアーミッシュへの私の興味は深まった。
2 アーミッシュのプロフィール
アーミッシュの信仰は17世紀にスイスに始まる。 Jakob Ammon が創設者であり、彼は当時のキリスト教の現状(世俗性)に満足できず、より厳しく、勤勉に、そしてシンプルな生活をすべきだと考えた。彼らは戦争(暴力)、物質主義、軽率(不まじめ)を拒否し、理想を求めてアメリカに移住した。彼は神とのよりよい関係を保つためには物欲にとらわれない質素で正直な生活が必要だと考えた。故にアーミッシュの人たちは
plain people (質素な人々)を呼ばれる。
アーミッシュの人々は自動車を用いない。したがって日常生活や農業ではバギーと呼ばれる馬車を使用している。電話、電気など現代的な便利さは彼らの信仰、生活を堕落させるものとして考え、使用しない。彼らは Pensylvania Dutch と呼ばれる独特のドイツ語を話す。子どもたちは8年生までで学校教育を終了し高等教育は受けない。その後は農業、大工、畜産、ガーデニングなどに関する技術を学び、その仕事で生活をすることとなる。服装はシンプルで男性は無地のシャツに黒っぽいベスト、そしてズボンをはき、黒いつばのついた帽子をかぶる。そしてあごひげを生やしている。ただし、結婚するまではひげは剃ることになっているので未婚、既婚は一目瞭然である。女性は足首までの長い無地のワンピース、黒い靴下、そして平たい靴をはく。髪の毛は束ねて、白いキャップを被る。アクセサリ類は一切つけない。男女ともベルトの代わりにサスペンダー、ボタンの代わりにホックを使用する。
一家庭に平均して6〜7人の子供がいる。結婚すると彼らは土地を分けられ、自立する。彼らの職業は主に農業で平均して80エーカー(サッカー場80個)の広大な土地でコーン、小麦、タバコなどの農作物と乳牛を飼い、出荷している。彼らは plain people(質素な人々)と呼ばれているが経済的に poor(貧しい)ということではなく、むしろ経済的には豊かである。質素な生活が彼らの信条であり、生き方である。アーミッシュは全米で約10万人ほどいるが、その大部分はオハイオ州、インディアナ州、そしてペンシルバニア州に住んでいる。
以上が一般的なアーミッシュに関するガイドであるが、私たちが今回訪問したペンシルバニア州のランカスター市のアーミッシュが一番大きい地域である。そこでリサーチしたことを中心に中学校における教材化を工夫してみた。
3 アーミッシュの教材化(異文化理解)
<授業計画:3時間>
(テーマ)アーミッシュから何を学ぶか
1限 アーミッシュって何?
@ 映画「目撃者」の視聴
(アーミッシュの生活の描写シーン)
A アーミッシュの人々・生活 Q&A
2限 アーミッシュの学校について
@ アーミッシュ・スクールの特徴
A アーミッシュの学校 Q&A
3限 私たちとアーミッシュの生活を比較しよう
@ 質素な生活 VS 便利・贅沢な生活
A まとめ アーミッシュから学ぶべきことは?
##
異文化理解:アーミッシュの生活について調べよう
インターネットの活用:アーミッシュ関連サイト
ex. Pennsylvania Dutch coutry Welcome Center
http://www. 800padutch. com/
##
1限
##
<緊急用の公衆電話です>
##
<これは何?>
*FAQページには、たくさんのアーミッシュに関する質問と解答が載せてあるが、その中からいくつかの例を挙げておく。
☆なぜアーミッシュの男性はあごひげを剃らないの?
彼等(男性)は結婚するとあごひげは剃らず、のばし続ける。長いあごひげは成熟した男性を意味するからである(男性の既婚・未婚は一目瞭然)。反対に口ひげをはやすことは禁じられている。口ひげは軍隊をイメージするからである。
☆なぜアーミッシュの人たちは電気を使わないの?
彼等は電気そのものが悪いと考えているのではなく、電気を使用することで彼らの信教生活や家族生活が堕落することを恐れた。故に彼等は快適な生活、便利な生活、余暇のある生活よりも質素な生活、禁欲の生活に価値を求めた。それが神に近づく方法であると信じているからである。
☆アーミッシュの人たちはどんな言語を話すの?
彼等は地域や家庭内ではペンシルバニア・ダッチと呼ばれるドイツ語を話す。子ども達は学校で英語を勉強し始め、もちろん地域外では英語を用いる。例えば、大統領選挙に関してはテレビ、ラジオ等を使用しないため、新聞が情報源であるが、子ども達が学校で学ぶ英語の学力で十分に新聞を読むことができるそうである。
☆農場ではどんな作物を作っているの?
私たちが訪れたランカスターのアーミッシュ地域では、広大な農作地を有効に使用するために1年間のローテーションを考え、アルファルファ→コーン→小麦→たばこ→アルファルファのように季節に応じて栽培している。他にポテト、大豆、干し草(家畜用)も作り、また酪農として乳業も飼い、出荷するミルクは彼等の重要な収入源である。農作業ではトラクターなどは使用せず、馬を動力とした農機具を使っている。
2限
異文化理解:アーミッシュの学校生活について調べよう
インターネットの活用:アーミッシュ関連サイト
書籍:The Amish School
written by Sara E. Fisher and Rachel K.
Stahl
<素朴な疑問2>
☆一日で大きな納屋をどうやって造るの?
納屋作りはアーミッシュの人たちにとって大切な協同作業である。日の出と共に各地からバギーに乗ってたくさんの人々(家族)が納屋を建てる場所に集合する。大工などの専門家の指示にしたがい作業に取りかかり、昼食前に骨組みを作り、午後は屋根づくりに取りかかる。食事は女性が準備し、子ども達は一緒に遊んだり、物運びを手伝ったりする。一日で大きな納屋を仕上げるこの協同作業は大人にとっても子どもにとつても協同作業のすばらしさを体験する貴重な一日となる。
☆家族の団らんはどんな時間を過ごしているの?
夜は家族でゲームをしたり、一緒に本を読んだりしている。両親も一緒に遊ぶが、短い時間である。彼等は電気を使用しないので家事を行うにも時間がかかり、子ども達も家事をたくさん与えられている。故に短い時間だがこのゲームや読書など家族で過ごす時間を大切にしている。
<素朴な疑問1>アーミッシュの子供たちはファミコンを知ってるの?
アーミッシュの家の隣が普通のアメリカ人の家庭であることもある。私はツアーガイドに「アーミッシュの子ども達が普通のアメリカ人の家に遊びに行くこともあるのか」と尋ねた。彼は「もちろん」と答えた。そこで「アーミッシュの子どもがファミコンゲームをすることもあるのか」と聞くと、「Possible.(その可能性もあるね)」と答えた。
★アーミッシュ・スクールの特徴について話し合おう
アーミッシュの学校制度についてはたくさんの特徴があるが、その中から12の特徴を選んでみた。英文が比較的易しいため、英語の学習も兼ねて英文の意味を考えよう。
1 Cooperation, not competition is the main
spirit of plain school.
2 School has only one room.
3 Students are called scholars.
4 Scholars begin school at age 6 and
attend through the 8th grade at around age 14.
5 Grades 1 through 8 are in the same room.
6 Scholars usually don’t receive homework
because of the chores they have to
do at home.
7 Older scholars help younger scholars
learn.
8 Scholars and the teachers keep the
school clean.
9 Amish men take care of the heavy upkeep
of the school.
10
Teachers are usually unmarried and only a couple years older than
her/his 8th grade pupils. They
usually have no education beyond the 8th grade.
11
Parents visit the school unannounced.
12
Supplies, such as blackboard, needed for the school are purchased from
public schools that are being torn down.
##
<授業の様子>
##
<登校の様子>
##
Q 一つの教室の中に1年生から8年生までの生徒たちがいる。どのように授業をしているのだろうか。
##
<アーミッシュの学校教育について調べよう>
☆どうしてアーミッシュの人たちは彼ら自身の学校をもっているの?
彼らは子供たちに神を信じ、正直な生き方をしてほしいと願うためである。学校は家庭と同様に子供たちが神から与えられたそれぞれの才能を伸ばし、共同社会の一員である大人としての責任感と正直な生き方の学ぶ準備段階の場と考えている。
教科学習では reading を最も重要な勉強と考える。あらゆる学習の基本であるからである。日常生活では掲示によるメッセージを伝達手段としているため、正しく読み書ける能力は電話を使用しない彼らにとって不可欠である。算数も学校を卒業すれば仕事の場でその知識が必要になる。基本的には彼らは農業生活を営むが学校で学習したことがすぐに役立つ生活値の勉強である。高等教育は必要と考えていない。
☆新学期のはじまり
新学期が始まる1週間くらい前になると保護者たちが学校の掃除にやってくる。その時は先生も学校に来てその保護者たちといろいろな話をする。その会話から互いの思いを理解する。その後、先生は担当する20〜30人の生徒の名前、年齢などを覚える。学校と言っても教室は一つであり、その教室に1年生から8年生の生徒たちが一緒に学習する。
☆保護者は学校にどのように関わっているか。
アーミッシュの学校は市や町の運営でなく、アーミッシュの人々によって運営されているので保護者たちは学校の運営、教育に大きく関与している。例えば、新学期が始まる1週間ほど前になると保護者が学校を訪れ、営繕や清掃などを行う。学校が始まると先生や生徒に連絡なしで学校を訪れ、授業を見たり、学校の環境づくり(冬は暖炉の槙の用意、夏は除草作業など)を行う。ときには若い先生たちに指導に関して助言したりする。また家庭に先生と生徒たちを呼び、昼食会や歌声の会を開いたりする。先生と保護者の個人的なつながりはとても強い。
☆特殊学校の現状(障害者の教育)
アーミッシュの地域は閉鎖的であるため、近親結婚が多い。例えば、ランカスター市の地域では第1従兄弟の結婚は禁じられているが、第2従兄弟の結婚はよくあることである。その結果、障害(視聴覚障害、精神的障害、奇形など)のある子どもやずば抜けた才能をもつ子どもの生まれる可能性が高い。以前は公立の学校に障害者の教育を依存していたが、アーミッシュの学校で障害者教育(特殊学校)に取り組もうとするプログラムが生まれ、1975年9月に Clearview 特殊学校に2名の生徒が入学し、数週間後に3人目の生徒が参加し、地域全体に特殊学校に対する理解が深まり、現在保護者の協力援助により運営されている。こうした子供たちは学校では先生によるきめ細かな教育を受け、家庭ではその子どもに応じた仕事が与えられ、家族の大切な一員として温かく迎えられている。
<素朴な疑問3>
Q:アーミッシュの若者たちは現代文化に惹かれ、地域を出ていくことはないだろうか。
A:ツアーガイドによれば、地域の9%の若者がアーミッシュの生活を離れるそうである。その理由は彼らは高等教育(大学教育)を受けたいためである。私たちが訪れたミラーズ大学にもアーミッシュの出身者がいるそうであるが、ほとんどの生徒は質素な生活を続けているそうである。
私たちの生活とアーミッシュの生活を比較しよう
☆質素な生活 VS 便利な(贅沢な)生活
長所と短所
(物を大切にする心、環境問題にも関連させたい。)
##
3限 話し合い
##
☆結論 アーミッシュの生活から学ぶこと
約3時間におけるランカスターのアーミッシュ地域のバス・ツアーの最後にこのツアーを務めたガイドがアーミッシュの生活についてこのように結論づけた。
私たちにとって最も大切なものは?
##
◆アーミッシュの生活
300 年間変わらない生活
質素な生活
物を大切に使う生活
協力する生活(共同社会)
##
◆現代アメリカの生活
高度に発達した文化生活
便利で豊かな生活
物を浪費する生活
個人的な自由な生活
##
維持し続けているもの
##
失いつつあるもの
##
家族・地域社会の絆
(family & community bond)
授業で使えるネタ
##
愛知教育大学附属名古屋中学校
木 村 祥 治
##
1 はじめに
英語教師になって14年目。今回の米国研修が自分にとって初めての海外経験である。ALTとのTTも新任の頃から比べると格段に増え、今現在に至っては毎日顔を合わすほどである。ALTにも鍛えられ、自分なりにも努力をしてきた英語力がどこまで通じるのだろうか。今回の研修のマイ・テーマはまさしくそれであった。
そして、味わった現実は「聞き取れない」であった。何とか自分の話したい意図は通じるものの(おそらく誤りだらけであろうけれど)、相手の言っていることが分からないのである。「何とかなる」と思っていた私には、かなりのショックであった。その屈辱を思い出しつつ、今後の英語授業に役立てるための話題を中心に今回の研修を振り返りたいと思う。
2 話題
<CODE NUM=343A> 機内にて
初めての国際便機内放送。ここから私のショックの体験は始まった。フライトアテンダントの話す内容がよく分からない。機内で話す内容なので「こんなことを言っているのだろう」という予測はできる。しかし、細かい数字などはよく聞き取れなかった。特に、搭乗待ちの時に、スムーズに搭乗させるため座席ナンバーごとに呼び出していたように思うのだが、よく分からず、結局周りの動きに合わせて搭乗するより仕方がなかった。
一方、機内食を出されるときの、フライトアテンダントの言葉は、分かりやすかった。ここで、気づいた特徴は、英語でサービスされると、かしこまった感じがほとんど感じられないということである。飲み物を出されるとき、おそらく日本語ならば「コーヒーかオレンジジュースか何になさいますか」というような尋ねられ方をされるであろう。私が予想した英語は、“Would you like to drink some coffee or juice?”、しかし、ノースウェスト航空のある乗務員は“For
you?”のただ一言であった。もちろん事前にどんな飲み物が用意されているかは放送済みであるので、理解できなくはないが、きわめて合理主義的な一面を見ることができた。
<CODE NUM=343B> 交差点にて
New Horizon Book2のUnit6にこんな会話がある。
Mother Duck:Be careful! It’s a red light. That means you have to
wait.
Child Duck:Do we still have to wait?
Mother Duck:No. It’s a green right now. Let’s go. You don’t have to
run.
見るからに、“have to (do)”を導入するための会話であるが、これと似たようなそして内容的には全く逆の会話を現地の見知らぬ人と交わすことができた。
ボストン美術館からの帰り道、私達数人が信号待ちで立ち止まっていると、突然背後から、ある夫婦に声をかけられた。
Man:Why do you stop here?
Kimura:The sign is red. We have to wait.
Man:No. No. You don’t have to wait. No cars. You can go.
Woman:Yes, you have to wait. と言いながら、2人とも歩いていった。
唖然とした我々は、周りを気にしながらけっこう距離のある横断歩道をまだ赤信号だが渡っていった。
アメリカに着いてから2日目のこの出来事は、私達の行動を大胆にしたように思う。それ以降、「赤信号は、車が来なければ Go!」という意味に変わった。
こんなエピソードを授業時に話しているうちに、子どもから「青信号って Blue なの?」という質問が出てきた。待ってましたとばかりに、green
or blue の議論が始まった。「日本の青は緑の意味も表すから green だ。」「いや青を green というのはおかしい。blue だ。」しばらく子どもたちの意見を出させたあと、「教科書を見てみよう」の指示のもと前述の会話を確認した。「やったー。green
だ」と green 派の喜びの声があがった。この議論のために当初予定していたコミュニケーション活動の時間が十分に確保できなかったが、授業観察をしていた実習生からは、「50分間がとても短く感じ、教師も子どもも使う英語が多く、子どもたちがとても生き生きとしていた授業でした」との評価?を得た。
<CODE NUM=343C> 初めてのホームステイ
私達がホームステイでお世話になった外山さん宅は、図書館館長を務める夫人と証券アナリストのご主人の二人住まいであった。
塀のない広々とした敷地、芝生の庭、隣家との距離の広さ、洗濯機・乾燥機を備えた地下室など教科書にあるそのままの家庭であった。
ドイツ出身のご主人は仕事で忙しく、主に外山夫人にお世話になったが、日本の方であるため会話に苦労をすることはなかった。事前研修で聞いていたとおり、「食事の際には、何かのお手伝いをする姿勢」を実行しようとした私は、日本人の方なので「いいですよ。私がやりますから」というような言葉が来るかなと一瞬予想したが、「セルフサービスですから」という言葉で、その予想は裏切られた。忙しいご主人も盛んに、“What can I do for you, Ryoko? ”とパソコンに向かいながら問いかけていた。
ご主人との会話はわずかな時間しかできなかったけれども、証券アナリストらしく、現在、そして将来のアメリカ経済は先行きが暗い、不景気(彼は“crisis”と呼んでいた)が来ると夫人にも私達にも言っていた。もちろん、その時には、私達も彼らも9月にアメリカに何が起こるかは予想だにしていなかったが、ご主人の予想が別の形であたってしまったことが残念でならない。
<CODE NUM=343D> 人種
様々な人種が集まる国アメリカ。私が最もそのことを感じたのは、自由の女神に会うためにリバティー島に行くフェリーを待っているときのことであった。1時間近く列に並んで待っているときに、自分の周りに何と多くの人種がいたことか。飛び交う言葉は、フランス語、イタリア語、中国語、韓国語、識別できない言語の方が知っている言語をはるかに上回っていた。そして、並んでいる人たちに向けていろいろなパフォーマンスをみせてくれる人たちもまたいろいろな国の人たちであった。あるパフォーマーから“Are you from China?”と聞かれ、やはり日本人はまずは中国人に見られるのだなと感じた。“I’m from Japan.”と答えると、“For
you.”と言って、1曲ウクレレで曲を歌ってくれた。
ニューヨークの5番街では、「一度は入ってみよう」と思い、超有名ブランド店に入ってみた(もちろん購入意欲はなかったが……)。そこで気づいたことは、ドアマン兼警備?としてドア近くに立っていたのはすべて黒人であったということだった。一方、中にいる店員は白人である。別のブランド店に行っても同じだった。そのことに気づいてから、意識していろいろな場所を訪れてみると、美術館や博物館のガードマンはやはり黒人が多かった。一方、街角でホットドッグやドリンクを売っている人はヒスパニック系が多かったように思う。わずかな滞在期間で判断するには早計過ぎると思うが、職業的な棲み分けは現にはっきりとあるのではないかと感じた。
また、ニューヨークは地下鉄が発達しているので、子連れの母親もベビーカーなどを使って利用している光景をよく目にした。そして階段や乗り降りの際、周りにいる人が一言声をかけ、ベビーカーを階段の上や下まで運ぶのをきわめて自然に手助けしていた。ある時、同じような光景に出くわした時、ある母親は手伝いの申し出を断っていた。申し出ていたのは黒人であった。単なる偶然かもしれないが、人種問題の根深さを考えさせられる一場面であった。
別の店では、中国人の商魂魂をよく見かけた。ニューヨークでの通りを開放してのマーケット、モール内のいろいろな屋台で積極的に客を呼び込もうとしているのは、中国人が圧倒的であった。
<CODE NUM=343E> トイレ
アメリカに渡って驚いたことの一つにトイレの構造がある。しきりの下の方がオープンになっているのである。「安心してできないではないか」と初めは思ったが、逆にこれが安心して用を足すためと思うまでにそんなに時間はかからなかった。
別の話になるが、アメリカでは公道に自販機はない。本校の ALT(出身はスコットランド)にも聞いたが、自販機は盗難の的になるのでなくなったらしい。それは、アメリカでも同じだと思われる。日本でも自販機荒らしが多発しているが、近い将来自販機がなくなる日が来るのであろうか、とふと思ったが、日本の商魂魂はすさまじいので、それはあり得ないだろうと思った。もし、万が一日本から自販機がなくなったら、それは日本の治安がよほど悪くなった証になってしまう。
3 おわりに
今回の研修視察に行く前に、個人の研究テーマをあれこれと考えていた。現地の教員からの情報収集、現地で用いられている様々な英語など。本稿が結果として、旅日記的になってしまった感は否めなく、事前研究の不足は否定しようがない。
しかしながら、初めての海外経験はいずれにせよ、自分を大きく成長させてくれたと確信している。アメリカの広大さに触れ、一方で、自分の英語力の未熟さを身をもって経験することができた。それでも、2週間現地で様々なことを体験する機会を与えていただいたことに感謝したい。
「百聞は一見に如かず」と言われるが、自分が体験してきたことを、授業の場で子どもたちに話し、問題提起をし、共に考える授業をこれからも目指していきたいと思う。
最後に、9月のあのテロ事件の後、3年生のクラスで1時間を使って、アメリカはどうするべきか討議をした。子どもたちの反応は様々であった。アメリカは報復攻撃をして当然だという意見が多かった。自分は「違う」という意見を言った。どんなことがあっても人が人を殺していい権利はないと私は思う。一日も早く、平和な日が訪れてほしい。
アメリカ合衆国についてもっと知ろう。
##
米国理解を深める授業実践
##
名古屋市立沢上中学校
植 田 則 康
##
1 はじめに
イチローなど、海外で活躍する日本人のニュースも最近は多くなり、米国から多くのものが日本に導入されている。国際社会の発展にともない、さらに今後も米国をはじめ、海外の国々との関わりは深くなってくる。生徒には、こうした国際社会で主体的に行動できるようになって欲しいと考える。
2 生徒の実態
本校生徒は、海外の国や人々と直接かかわりを持つ生徒は少ない。海外での旅行をした経験のある生徒の割合は、学級に3、4人と1割ほどであり、1年間で1ヶ月ほど来校するALT以外で、外国の人々と接する機会を持つ生徒はほとんどいない。しかし、多くの生徒が外国の歌や映画、テレビでのニュースなど強い関心を持っている。
米国に対し、生徒がどんなイメージを持っているかアンケートを実施した。そこから、多くの生徒が「科学技術が進んでいる」「人柄がおおらかそう」など、米国は自由で明るく、豊かな国であると考えていることが分かった。その一方で、「犯罪が多い」「みんな銃を持っている」など、危険な国であるという考えを持っている生徒も多い。
また、中には「政府が自己中心的な考え」「軍事力がすごそう」など、同時多発テロ事件に影響を受けた意見や、「みんな I like sushi.って言ってそう」などALTの自己紹介などに影響を受けた意見が見られた。
3 実践の方法
生徒が考える米国のイメージには、「みんな金髪」「みんな足が長い」「みんな銃を持っている」など、偏ったとらえ方をしているものも多い。そこで、本年度担当する2・3年生を対象に、生徒が米国に対する理解を深め、米国と日本の違いに気づいて、それぞれのよさについて考えを深められるようになって欲しい。また、海外の国や人々に興味を持ち、積極的に交流をしようとする態度を育てたいと考える。そこで、以下のような3つの観点で、米国から持ち帰った資料をもとに実践に臨んでいる。
【持ち帰った資料を利用の観点】
@ 英語の学習内容を深める資料の提示
A 生徒の興味・関心を高める話題の提供
B 米国への理解を深め、交流をする意欲を高める支援
4 実践の内容
@ 英語の学習内容を深める資料の提示
教科書など、英語学習で習う内容や、扱っている話題について、関連した資料を提示することで、生徒の興味・関心を高め、学習内容の定着を促すことをねらいとして実践を重ねている。
“I have a dream. One day my four little children
will not be judged by the color of their skin...”
【教科書に掲載されたキング牧師の演説の一部】
教科書で扱う、公民権運動の指導者として活躍したキング牧師の功績と人権について、さらに考えを深めることをねらいとして実践に臨んだ。
有名な“I have a Dream.”のスピーチのビデオを視聴したり、25万人の人が集まったワシントンDCの現在の風景を写真で見たりすることを通して、「ワシントンDCのUSキャピトルに行きたい。」「キング牧師の像と記念写真を撮りたい。」、「リンカーンの奴隷解放宣言後の歴史を調べる。」などと言った声が数多く聞かれ、生徒の意欲を高めることにつながったと考える。
また、「バスで黒人が乗れない席があるなんて信じられない。」、「やられても、やり返さないキング牧師はすごい。」といった意見も出され、運動の意義に迫ることができたと考える。
キング牧師の演説の一部を音読する際にも、意欲的に練習をし、リズムやイントネーションをまねて、感情を込めて音読する生徒の姿が数多く見られた。教科書の内容に対する英語の技能の面でも、生徒の成長が見られる実践であった。
A 生徒の興味・関心を高める話題の提供
生徒の興味・関心の高い話題について、資料を提示することによって、さらに米国に対する興味・関心を高め、考えを深めるねらいで実践を行っている。
生徒にとってはなじみの深いファースト・フードのポテトやジュースの大きさを比較した。トレイの大きさで日本のものと単純に比較しても、米国のサイズの方が大きく、これを見て生徒は、一様に驚いていた。
多くの生徒が「ぜひ見たい」と話した写真が下の写真である。貿易センタービルが写っている写真は、生徒にとって非常に興味の高かったものである。写真を見て、言葉を失っている生徒の姿が印象的であった。
リサイクル活動が盛り上がりを見せている本校生徒にとって、ゴミの分別や、ゴミの処理に対する話題には、関心が高い。そこで、米国の各地で写真に収めてきたゴミ箱や、ホストファミリーの地域でのゴミの処理について紹介をした。すると、ゴミのリサイクルについては、日本の方が進んでいる点も多く、驚く生徒が多かった。
B 米国への理解を深め、交流をする意欲を高める支援
普段はあまり目にすることのない、米国の一面を紹介することで、生徒の理解を促し、海外や外国人と交流をしようとする態度を育てるねらいで実践を進めている。
生徒にとって銃や犯罪といった危険なイメージでとらえられているニューヨークについて、最近の景気伸びや警官の増員などの政策から、最近はずいぶんと治安がよくなってきたことを、写真とともに紹介することは、生徒にとって驚きであった。ただし、地下鉄などよくなったとは言っても、日本のそれとはずいぶんと雰囲気も違うので、その違いに戸惑う反応を示した生徒が多かった。
「米国に住む人はみんな足が長くて金髪」といった生徒の抱くイメージも、民族衣装を着て歩く人の姿などを紹介することによって、崩れてきたことが生徒の驚いた表情から分かった。また、出店などでは、英語を母国語としない人たちを多く見かけることを説明し、近年ヒスパニック系の労働者をが増えていることなどを紹介すると、米国が多くの人種や民族のるつぼと言われるゆえんを、生徒はあらためて感じたようであった。
さらに多くの生徒が驚いたのが、文明生活とは距離を隔てたアーミッシュの人々の存在であった。IT産業や宇宙開発など、先進のテクノロジーを誇る米国の中にあって、物質的な豊かさを求めない人々の存在は、生徒にとっては衝撃的であったことが、その後の感想などから分かった。また、こうしたアーミッシュの人々と、そうでない人が隣り合わせて住んでいるという共存の姿を知ることは、今後の生徒たちの成長にとって大変意義深いものであると考える。
5 実践の成果と課題
実践後に行ったアンケートから、これまでの実践を通して、生徒の米国に対する理解が深まったことが分かる。教科書の内容に対して、教師自身が体験した話をしたり、収集したりしてきた資料を提示することは、生徒の興味・関心を高め、学習に対する積極的な態度につながったと考える。また、感情を込めた音読など、英語の技能面にもよい成果を上げることができた。
その一方で、生徒が英語学習する際、表現の定着を促す教材を工夫する必要性を感じた。外国人の移民を受け入れてきた米国のノウハウを活かせるように、実践を重ねていきたい。
また、今回の実践を通して、交流という面で課題が多く見つかった。当初Eメールなどで、海外の学校との交流を計画していたが、生徒自身がアルファベットの配列に慣れておらず入力作業に時間がかかることや、コンピュータの台数や動作スピードが限られていることなどで、思うようにはかどらないという問題が生じている。今後生徒が使える表現を増やし、本校のコンピュータ環境を考慮した授業を進めていきたい。
6 おわりに
国際社会の発展にともない、今後ますますさらに多種多様な価値観を受け入れていくことが必要となってくる。多くの価値観を受け入れてきた実績のある米国の姿を通して、今後あるべき国際社会の方向性を生徒とともに今後も模索していきたい。
国歌斉唱・国旗敬礼にみる移民の国・アメリカ合衆国
##
愛知県立刈谷高等学校
神 谷 康 夫
##
T はじめに
アメリカ研修旅行を終えてまもなくのテロ事件と、それに続くアメリカ軍のアフガニスタン侵攻で21世紀も暮れようとしている。テロ事件直後のアメリカはナショナリズムの異常な高揚を感じさせていた。移民の国として人種・民族問題を抱えるアメリカであるが、歴史を振り返ると国家的危機に直面した時ほど、すさまじいエネルギーを感じさせる国であり、ここにアメリカの魅力があると言える。
現在のナショナリズムの高揚の中で、先日の新聞報道によると、教育現場における国旗敬礼の義務化が信仰の自由を犯すのではと話題になっていた。アメリカを旅していると感じることは、国旗・国歌に溢れていることである。今回の研修旅行の訪問地はアメリカ誕生の重要地点であるからでもあるが、公共施設はもとより、個人の家でも日常的に国旗を掲げている家も目にした。訪れた学校の各教室には国旗が掲げられており、毎日国旗敬礼をするとのことであった。ニューヨークで大リーグ観戦をしたが、これも国歌斉唱で始まる。そこで、国旗・国歌からアメリカ合衆国の特徴を考える授業実践を考えてみたい。
U 授業の構想
1 単元の目標
現代の世界及びわが国の政治・経済・文化を考える上で、アメリカ合衆国の果たしてきた役割には絶大なものがある。19世紀はこのアメリカ合衆国が近代国家として発展した重要な時期であり、現在に至る人種・民族問題を含むアメリカ的特質が19世紀にどのように形成されてきたかを理解させる。
2 指導計画
第1時 西部開拓とインディアン
第2時 南北戦争と資本主義の発展
第3時 移民の国・アメリカ合衆国(本時)
第4時 カナダ・ラテン=アメリカ諸国の情勢
3 本時の目標
19世紀のアメリカ合衆国は多くの移民を吸収しながら、領土的、経済的発展を遂げてきた。今年は、イチロー選手が大リーグで大活躍をしたが、大リーグの試合は必ず国歌「The Star-Spangled Banner」の斉唱で始まる。また、学校では朝の授業前に国旗敬礼が行われ宣誓の言葉を述べる。そこで、この国歌斉唱・国旗敬礼という視点からアメリカ合衆国の特質を考察させ、移民の歴史を理解させる。
4 展開
T はじめに
アメリカ研修旅行を終えてまもなくのテロ事件と、それに続くアメリカ軍のアフガニスタン侵攻で21世紀も暮れようとしている。テロ事件直後のアメリカはナショナリズムの異常な高揚を感じさせていた。移民の国として人種・民族問題を抱えるアメリカであるが、歴史を振り返ると国家的危機に直面した時ほど、すさまじいエネルギーを感じさせる国であり、ここにアメリカの魅力があると言える。
現在のナショナリズムの高揚の中で、先日の新聞報道によると、教育現場における国旗敬礼の義務化が信仰の自由を犯すのではと話題になっていた。アメリカを旅していると感じることは、国旗・国歌に溢れていることである。今回の研修旅行の訪問地はアメリカ誕生の重要地点であるからでもあるが、公共施設はもとより、個人の家でも日常的に国旗を掲げている家も目にした。訪れた学校の各教室には国旗が掲げられており、毎日国旗敬礼をするとのことであった。ニューヨークで大リーグ観戦をしたが、これも国歌斉唱で始まる。そこで、国旗・国歌からアメリカ合衆国の特徴を考える授業実践を考えてみたい。
U 授業の構想
1 単元の目標
現代の世界及びわが国の政治・経済・文化を考える上で、アメリカ合衆国の果たしてきた役割には絶大なものがある。19世紀はこのアメリカ合衆国が近代国家として発展した重要な時期であり、現在に至る人種・民族問題を含むアメリカ的特質が19世紀にどのように形成されてきたかを理解させる。
2 指導計画
第1時 西部開拓とインディアン
第2時 南北戦争と資本主義の発展
第3時 移民の国・アメリカ合衆国(本時)
第4時 カナダ・ラテン=アメリカ諸国の情勢
3 本時の目標
19世紀のアメリカ合衆国は多くの移民を吸収しながら、領土的、経済的発展を遂げてきた。今年は、イチロー選手が大リーグで大活躍をしたが、大リーグの試合は必ず国歌「The Star-Spangled Banner」の斉唱で始まる。また、学校では朝の授業前に国旗敬礼が行われ宣誓の言葉を述べる。そこで、この国歌斉唱・国旗敬礼という視点からアメリカ合衆国の特質を考察させ、移民の歴史を理解させる。
4 展開
学 習 内 容 学
習 活 動 指導上の留意点
導 入 (1)ビデオ(大リーグ第72回オールスター・ゲーム(2001.7.10))での国歌斉唱とイチロー選手のプレイ。
(2)合衆国の小学校での国旗敬礼(Flag Salute)
国歌斉唱が行われているスタジアムの雰囲気を感じとる。
常時、国旗が掲げてある教室の写真を見る。
宣誓の言葉の英文とその日本語訳を読み意味を考える。 イチロー選手が短期間で大リーグの最高峰に立った背景には、遠い国からやって来た外国人がひたむきに頑張り成功するというアメリカンドリームを人々に思い起こさせ、アメリカの人々の熱い応援が存在していることを指摘する。
展 開 (1)合衆国における国歌斉唱と国旗敬礼のもつ意味とその歴史的背景
・移民の地としてスタート
↓
・イギリスから独立
↓
・世界中から移民を受け入れなが
↓ら発展
・多様な人種・民族・宗教・社会的状況の人々が存在
(2)移民の推移と世界情勢
・17〜18世紀(植民地時代)
↓ オランダ・イギリス中心
・19世紀前半(旧移民)
↓ 西・北欧中心
・19世紀後半(新移民)
↓ 南・東欧増加、アジア系登場
・20世紀前半(移民制限)
↓ 中国・日系移民禁止
・20世紀後半(移民法改正)
アジア・ラテン=アメリカ系の急増
(3)著名な人物
・カーネギー(スコットランド)
・ベーブ=ルース(ドイツ)
・ローズヴェルト(オランダ)
・ケネディ(アイルランド)
・ジョージ=アリヨシ(日本)など 野球の試合や学校などの日常生活で国歌斉唱や国旗敬礼をして宣誓の言葉を述べることにどのような意義があるのか、意見を述べる。
自由の女神の台座に
刻まれている詩を読
む。
各時代に世界で起こっていた重大事件
(革命・戦争など)
を年表で確認し、移
民の推移と対応させ
時期ごとに資料の空
白に書き込む。
合衆国の歴史上の著名人を教科書から拾い出す。
国歌と国旗敬礼の宣誓の言葉が誕生した歴史は簡潔に紹介するにとどめる。
宣誓の言葉には多様な社会構成の中で、自分たちが調和して暮らしていきたいというアメリカ人の願いが込められていることを指摘する。
この詩はエリス島の税関に来た移民たちを激励するものであったことを理解させる。
世界情勢と移民との関連を指摘する。
アングロ=サクソン優越の観念が依然、存在していることを指摘する。
彼らの出身国と業績を簡潔に紹介して理解を深めさせる。
##
展 開 (4)アメリカ社会の特質
・多民族社会をどのように理解するか。
・「るつぼ論」
↓
・「モザイク論」
↓「サラダ=ボール論」
・今日的問題
人種・民族的差別、対立の存在
最近起こった人種民族問題を含んだニュースを紹介し、意見を発表する。 ヨーロッパ文化追随に対する批判として多元文化主義が存在していることを指摘する。
人種差別撤廃運動などが依然、存在しており、問題解決は難しいことを理解さ
せる。
まとめ 国歌斉唱・国旗敬礼という儀礼は、国歌・国旗を敬うという世界共通のあり方に加えて、アメリカ合衆国にとり特別な意味をもつものである。すなわち、多様性をもつ国民各々の、国民の調和と国家統合の願いの表れなのである。
Oh, say can you see by the dawn’s early light what
so proudly we hailed at the twilight’s last gleaming ? (中略) Oh, say does that star-spangled
banner yet wave o’er the land of the free and the home of the brave ?
(訳) 見たまえ 黄昏の最後の光の中に 我々が誇りと仰いだもの(星条旗)が暁の初めの光に照らされているのを。(中略) かの星条旗は いまだ自由の国であり勇敢なる者の故郷である この地上に翻り 我々を見守っているのだ
##
I pledge allegiance to the flag of the United
States of America and to the Republic for which it stands one Nation, under God,
indivisible, with liberty and justice for all.
(訳) 神の御下で全人に自由と正義をもった、分かちえない国を象徴している、アメリカ合衆国の国旗とその国家に、忠誠を誓います。
##
資料@ 国歌「The Star-Spangled Banner」
資料A 国旗敬礼 宣誓の言葉
資料B 国旗の掲げてあるアメリカ合衆国の小学校の教室
毎朝、授業の前に生徒が星条旗に向かって起立し、左胸に手を当てながら宣誓の言葉を言う。ただし、取り組み方は多様で、地域・学校により異なり、全く行わない学校もある。また、信仰の自由という点から教師は生徒に強制することなく、参加するかどうかは個々の生徒の判断による。
資料C 自由の女神の台座の詩 資料D 移民出身地域の推移
(エマ=ラザルス作 1881年)
汝の疲れたる貧しき
自由の空気を吸わんものと
身をよせあう人々を、
汝の豊かな海辺に集まる
うちひしがれた人々を、
我に与えよ。
かかる家なき嵐に弄ばれたる人々を、
我に送り届けよ。
我は黄金の門戸のかたわらに、
ともしびを高くかかげん。
5 国際化の進展等社会の変化や科目の専門性等にどう対応したか。
(1)国歌斉唱・国旗敬礼という、生徒にとり日常生活においても身近なことを視点にし、比較文化的にアメリカ合衆国の歴史と社会の特質を生徒に考えさせた。
(2)世界におけるアメリカ合衆国の役割の大きさから、アメリカ史を系統的に扱った。
(3)外国人労働者が急増してきた現在の日本と、アメリカ合衆国の移民の歴史との相違点を生徒に考えさせた。
(4) 白人中心の歴史ではなく、被征服民のインディアンやマイノリティにも比重をおいた。
(5)国旗敬礼の宣誓の言葉を原文で読ませるという歴史学の手法を用いた。
6 指導計画作成を通して明らかになった各科目の検討課題
(1)カナダ・ラテン=アメリカ史をアメリカ合衆国やヨーロッパとどのように関連づけたら系統性のあるアメリカ史の学習ができるのか。
(2)アメリカ文化圏をどのように位置づけたらよいのか。
7 参考文献
・「資料が語るアメリカ」(有斐閣) ・「大リーグ物語」(講談社現代新書)
・「アメリカ世界U」(有斐閣新書)
V おわりに
ニューヨークのヤンキースタジアムでマリナーズ対ヤンキース戦を観戦したことはアメリカ研修の楽しい思い出の一つである。選手・観客全員が起立して国歌斉唱が始まった時、「イチローは歌誌が分かっているのだろうか?」と思いながら、胸に手を当てて歌っているイチローの姿を見ていた。試合が進む中、7回に「私を野球に連れてって」を再び全員起立して歌っている時には、アメリカ人から見れば異邦人である自分も、何故かしら隣の席のアメリカ人の大学生グループとの一体感を感じていた。国旗・国歌という身近なものの背景にも、深い歴史的・文化的相違が存在する。今後ともこのような視点から世界史教育を考えていきたい。
標識や掲示物から見えるアメリカ
##
愛知県立惟信高等学校
遠 藤 茂
##
1 はじめに
今回の旅行で、私が目標としたものはもちろんアメリカ理解である。長年英語教師として、英語に関わりまた英語を母国語とする一方の大国であるアメリカについて教室で機会があるごとに話してきた。しかし、そのアメリカ理解も個人的な今までのアメリカ人との交際や本、そして今から24年前の西海岸の旅から得たものであった。いろんな意味でアメリカの中心である東海岸を直接見ることと、24年間に風化しつつある恐れのある私の直接的な経験を補正することは私のアメリカ理解をより深いものにしてくれるものと期待した。また、同時に私が経験したことをどのように生徒に還元するかということももう一つの目標でもあった。その方法の一つとして、アメリカを何か目に見える形として写真に撮ること、特に標識や掲示物に書かれた英語を記録してはどうかと思った。とはいうものの旅行中になかなか思うような被写体が見つからなかった(あってもバスが通過してしまったり)り、私の写真技術が未熟だったりして十分なものが揃ったとは言えないかもしれないが、これからいくつか紹介したいと思う。
2 標識や掲示物
<CODE NUM=343A> 道路標識
@NO TURN ON RED(ニュージャージー州ニューブランズウィクで)
現在教えている高校3年生の英語の副教材に、アメリカにはNO TURN ON REDという標識があって日本人がとまどったという一節があったので、アメリカでぜひ見つけたいと思っていた。「赤信号で曲がるべからず(もちろん車が)」という意味で、逆に言えばそれがなければ曲がってよいことになる(もちろん個人の注意と責任において)。
ANOTICE NO PARKING VIOLATOR’S CARS WILL BE TOWED AT
OWNERS’ EXPENSE
これもよく見る標識であるが、「警告 駐車禁止 違反者の車は車所有者の費用で索引させるものとする」という意味で、日本では『違反者の…』以降は書いてない場合が多いのではないだろうか。日本でも実際にレッカー車に牽引された場合の費用は違反者に回ってくるのであろうか。アメリカではそのことが明文化されている。
<CODE NUM=343B> 身体障害者への配慮
@PLEASE KEEP WALK WAY OPEN FOR WHEELCHAIR USERS(WHEELCHAIR
USER は<INLINE NAME="画像枠.93" COPY=OFF>)
ARING FOR ASSISTANCE
@はランカスターのファミリーレストランの横の駐車場を横切る横断歩道での標識であるが、「車椅子使用者のために歩道をあけてあげてください」という意味である。Aは同じくランカスターのホテルの入り口で「ベルをお鳴らしください。ドアをお開けします」という意味。このような身体障害者に関する標識はいろんな所で見られた。
<CODE NUM=343C> 公園での自然保護に関する標識
@CEDAR HILL Red flags mean Keep off the grass!
Flags will be posted when grass is most at risk
and easily damaged by your feet.
Respecting the red helps keep Central Park green.
(ニューヨーク、セントラルパーク)
「ヒマラヤスギの丘
赤い旗は芝生に入るべからずの意味!芝生が最も無防備で簡単にあなたの足で傷つけられそうな時、旗が立てられます。赤い旗を尊重することがセントラルパークを緑豊かに保つ助けになるのです。」
よく知られているように、セントラルパークはニューヨーク市の中心にあり市民の憩いの場となっている非常に大きな公園である。朝早くからたくさんのジョッガー、ランナー、サイクリスト、ローラースケーターが集まって緑豊かな森の中の道で練習に励んでいる。もちろんいたる所に適当な芝生もあるが、上記のような標識が立てられ、自然環境保護を促していた。
AFEEDING OF BIRDS & OTHER WILDLIFE IS
PROHIBITED(同上)
「鳥やその他の野生動物に餌をやることは禁じられています。」
セントラルパークの自然には様々な野鳥や動物がたくさん生息している。栗鼠などもいたる所に見られた。毎日何万人も公園にやってきて餌を与えれば生態系の破壊のみならず環境破壊にもつながるであろう。
BVISITORS PLEASE TAKE NOTICE
Sitting on grass permitted Skateboarding and
rollerskating prohibited
Use trash barrels Dogs on leashes only / clean up
after your dog
Plantings should not be touched Alcoholic
beverages prohibited.
Walk your bicycle Ball playing and other games
prohibited.
Vendors prohibited Motor vehicles not allowed Park
closes at 11:30
(ボストン、コプリー広場、1883年創立)
「使用者は次の事項に注意してください。芝生に座ってもよい。スケボーやローラースケートは禁止。ごみ箱を使うこと。犬はつながれたもののみ許可/糞の後始末を。植木に触るべからず。アルコール飲料禁止。物売り(露店)禁止。モーター付き乗り物(自動車、オートバイ等)乗り入れ禁止。11時30分閉園。」
ボストン市内にある小さな(といっても日本的に言えばかなり大きいが)公園。
<CODE NUM=343D> 空港にて
Don’t let your luggage get carried away.(ニューヨーク、ニューアーク空港)
「荷物置き引きにご用心」以前は治安が悪かったというニューヨークに着いたとたん目に入った展示物。
<CODE NUM=343E> 工事中の掲示物で目を引いた逸品
@FUTURE SITE OF BOTANICAL GARDENS. THE BIG DIG
WORTH ITS WAIT. (ボストン)
「植物園建設予定地。待つ価値ある大工事(地面を掘る工事)」
アメリカ到着後最初に訪問した大都市のボストンとニューヨーク、いずれもいたるところが工事中。アメリカはやはり好景気なのか(まだ9月11日の前であったが)。この標語日本語にしてしまえば面白みは半減するが、英語はとてもリズムがよくて印象に残った。なんとか走るバスから撮影に成功。
ASlow Down My Daddy Works Here (ペンシルベニア州ランカスター郊外で)
「スピード落とせ。私の父さんここで働く。」
本来なら、無味乾燥的な高速道路工事現場。子供にひっかけ安全運転を喚起。大リーグの野球中継で必ず1度は幼い子供のアップが画面一杯に映し出される国。まあアメリカ人でなくてもうったえるものがある。やはり走るバスの中から撮影に成功。
<CODE NUM=343F> 働く車
@FedEx Federal Express (ニュージャージー州ニューブランズウィクで)
日本でも宅急便各社激しく競争中。当たり前ではあるが、アメリカにも宅急便あり。
Federal Express を縮めてFedEx (フェデックスと発音か)。
AAMERICAN FURNITURE RENTAL FOR HOME AND OFFICE
“FIRST CLASS SERVICE THE AMERICAN WAY”(場所同上)
「アメリカン家具レンタル
家庭およびオフィス用 “一流サービス アメリカ流”」 日本人は引っ越しの時家具を全部持って移動するが、アメリカ人は家具は元の家置いたまま、つまり家具付きで元の家を売って次に引っ越すとか。だから日本とは違った意味で家具を非常に大切に扱う。逆に売ったり買ったりするのが面倒なので家具のレンタル会社のビジネスが成り立つのかも。最後の『アメリカ流』が象徴的。
BFREE BLOOD PRESSURE CHECK (ボストン市内で)
「無料血圧チェック」これは献血車ではないかと思う。この手の車を人のよく集まる場所でよく見かけた。ただし、日本とは違って様々な団体がそれぞれの趣旨で行なっているようである。この車はキリスト教系宗教団体のもの。
<CODE NUM=3440> 求人広告
NOW HIRING - REDNER’S WAREHOUSEMARKETS - JOIN THE
REDNER’S TEAM TODAY! (ペンシルベニア州ランカスター郊外で)
「今雇います ― レドナーズウェアハウスマーケッツ ― 今日レドナーズのチームに加わって下さい!」
かなり巨大なスーパーマーケットであった。しかし夕方にもかかわらずほとんど客が入っていなかった。ウィークデイのせいもあるかもしれない。だが日本でこんな状態なら確実に倒産すると思われるのだが。しかし、スタッフ募集の標語は明るくていい感じ。
<CODE NUM=3441> 地下鉄の乗車カード販売機
Farecards / bills accepted $1,$5,$10,$20 / See map
or kiosk for fare
Each passenger 5 and older needs a farecard to
enter and exit all stations
Farecards can be returned for replacement value
only.
Not redeemable for cash.
@ INSERT MONEY A SELECT FARECARD VALUE / Press + to
Add Value / Press - to Deduct Value B TAKE FARECARD / Take Farecard at Trade-in
Below → USED FARECARD TRADE-IN / To increase farecard value first insert used
farecard of $7 or less / Then repeat steps 1,2 & 3 (ワシントンD.C.)
地下鉄はボストン、ニューヨーク、ワシントンDCの3箇所で乗ったが、全部チケットの販売システムが違い初めて行った人間には苦労の種かも。
「乗車カード/お札は$1,$5,$10,$20のいずれかしか使えません/料金については地図を見るか、キオスクできくかしてください/5才以上の乗客は全ての駅の出入りに乗車カードが必要です/乗車カードの返却は交換価格のものとしかできません 現金には変えられません
@お金を挿入してください。A乗車カード価格を選んでください。価格を上げるためには+を押してください 下げるためには−を押してください。B乗車カードを取ってください / 下のトレードインで乗車カードを取ってください。→使用中使用済みの乗車カードのトレードイン(本来の意味は下取りまたは交換)/乗車カードの価値(格)を増やすためには、先ず、7ドル以下の使用された乗車カードを挿入し/@ABの手順を繰り返してください」
このようなことを初めて瞬時に理解することは不可能に近いと思えるくらいだ。
先ず、日本での名古屋の地下鉄のシステムの先入観が理解を妨げる。名古屋には子供料金と大人料金の区別がある。というところから混乱が始まる。しかも、自分で行く先までの料金を設定しなければならない。ただ、最後の使用中または使用済みのカードがお金を足すことによって再利用できるシステムはすぐれ物ではある。これも後で帰国後写真を解析して気が付いたことであるが。最後に失敗談をひとつ。上記の文の下線部に関係することだ。同行していた仲間の一人が間違って高額のカードを買ってしまった。さっそく私が駅員さんに交渉することになった。ところが、掛け合ったら現金には変えれないとのこと。それはその時は気が付かなかったが確かに書いてあるとおり。私が執拗に現金に変えることはできないかと掛合っているときに、係の人が同額分の小額のカードで換えること示唆したような気がしたのだが、何分初めて体験するシステムであり、自分の現金へのこだわりとその交渉を英語で行なうハンディとで同額の小額のカードに変えるチャンスを逃してしまった。後で気が付いたのだが、一度でも使ってしまったカードは交換できないとのこと(未使用のみ交換可)。そこまでは書かれていない気がするのだが。小額カードに換えれれば皆で分けることもできたのに、その仲間の方には申し訳なく思っている。
<CODE NUM=3442> 静寂と敬虔な気持で
@SILENCE AND RESPECT (ゲディスバーグ、国立墓地で)
「静寂と敬虔な気持で」
ゲティスバーグの古戦場跡にあるアメリカ最初の国立墓地とのこと。この掲示は墓地の入口に入ってから数十メートルぐらいの所に立っていた。もちろん国立公園である。制服を着たレインジャーが巡回していた。ここに眠る南北戦争を始め様々な形で亡くなった軍関係者の眠る場所。静かに尊敬の気持を持って行動しましょう。
AWELCOME TO ARLINGTON NATIONAL CEMETERY OUR
NATION'S MOST SACRED SHRINE PLEASE CONDUCT YOURSELVES WITE DIGNITY AND RESPECT AT
ALL TIMES PLEASE REMEMBER THESE ARE HALLOWED CROUNDS
(ワシントンD.C.、アーリントン国立墓地で)
アーリントン国立墓地へようこそ。私達の最も神聖な場所です。常に尊厳と敬虔な気持を持って行動してください。ここが聖地であることをお忘れなく」
ケネデイ大統領をはじめ無数の英霊達の墓地。ゲティスバーグとはまた違った意味でスケールの大きな墓地であった。
BQUIET / RESPECT PLEASE (ワシントンD.C.、リンカンーン記念堂で)
「静寂と敬虔な気持で」ゲティスバーグとは違ってSILENCE がQUIET に代わり、RESPECT
にPLEASEが付いていて、リンカンーンの座像に近づける親しみやすさが感じられた。
CCAUTION / AREA SLIPPERY WHEN WET
(ワシントンD.C.、アーリントン国立墓地で)
「注意 濡れると滑りやすい区域です」広い緩やかに傾斜した芝生である。確かに雨が降って濡れると滑りやすいと思われる。身障者用の通路が示されており心配りが感じられた。
DPLEASE DO NOT PUT COINS IN POOL (ワシントンD.C.、ケネディ大統領の墓で)
「泉の中にコインを入れないでください」まさかアメリカでこのような掲示を見るとは思っても見なかった。ローマのトレビの泉の習慣が、日本ばかりかアメリカまで波及し、ケネディ大統領のお墓の前の泉にまでコインを投げ入れる輩がいようとは。
<CODE NUM=3443> その他に印象に残った掲示2点
@The IMAGINE Mosaic Is Cleaned Regularly Throughut
the Day
(ニューヨーク、セントラルパーク)
「このイマジンのモザイクは一日中定期的に清掃されています」
1980年に暗殺されたジョンレノンはセントラルパークのすぐ西の72ストリートに面する通称ダコタハウスと呼ばれる高級マンションに住んでいた。彼がこよなく愛し散歩したという彼のアパートからすぐ見えるようなセントラルパーク内の散歩道は今はストロベリーフィールズと呼ばれている。ビートルズの歌の“Strawberry Feilds Forever ”にちなんで名づけられたものだ。その道路上にあるのがイマジンのモザイクだ。直径2、3メートルほどのもので、奥さんのヨーコさんが中心となつてレノンの代表作であるイマジンの歌にちなんだ記念物を作ろうと世界中のファンに呼び掛けてお金を募って、1985年に完成したのがこのモザイクである。円の中心に
IMAGINE の文字がタイルではめこめられている。早朝の写真には落葉以外は何も上にのっていないが、夕方に行ったときはたくさんの人が訪れていて花や飲み物のようなものがたむけられていた。だから常に掃除の必要があるのであろう。
AOpen all nite Fri Sat live music (ワシントンD.C.の本屋さんで)
「オールナイトでやっています 金土は生演奏付き」(NIGHT が NITE になっているのがいかにも現代アメリカ的)
ワシントンD.C.のデュポン広場近辺には洒落た本屋さんがいくつもあって、様々なジャンルの本が揃っていた。写真の店は、結構学術的な本も売っている店で、手前の本棚の側面にSの抜けた SCIENCE の文字が読み取れる。上記の掲示は実は電気による掲示で、その下はなんと喫茶室(もっとも禁煙であるが)になっていて難しそうな哲学書のようなものを若者がコーヒーか何か飲みながら読み耽っていたのが印象的であった。手前左側のガラスのケースにはパイのようなお菓子が入っていた。
3 終わりに
標識や掲示物から見えるアメリカと大げさなテーマを掲げたが、何かモザイクではないが断片的提示になってしまったのではないかと危惧している。しかし、道路標識に見える自己責任的考え方や身障者や子供のような弱者への配慮、自然環境保護へのきめ細かいうったえ方、工事現場の看板の掲示文のセンス、地下鉄乗車カード販売方法の合理制、国のために死んだ人々への特別な気持などから部分的かもしれないがアメリカの何かを感じていただければ幸いである。
米国に根付く「マザーグース」
##
愛知県立豊田東高等学校
弘 山 貞 夫
##
1 はじめに―――マザーグースとは
英語圏の子供たちの間で古くから伝承されてきた童謡を総称して Mother Goose(マザーグース)と呼ぶ。子守唄、物語、数え唄、なぞなぞ、早口言葉など、さまざまな唄を含み、その数は1000以上あると言われている。子供が最初に出会う絵本がマザーグースである。
なぜ英語の伝承童謡をマザーグースと呼ぶようになったか。実は、フランスのペローの童話集が1729年にイギリスで出版された時‘Mother Goose’s Tales’という副題をつけた事に始まる。『赤ずきん』や『シンデレラ』などを載せたペローの童話集は英国でも人気を博した。そこで、イギリスの出版業者であるジョン・ニューベリーは、このタイトルを拝借して自分が編集した童謡集に‘Mother
Goose’s Melody’と名付け、1765年ごろに出版した。これ以降、伝承童謡集に Mother Goose というタイトルが付けられるようになった。なお、アメリカでは
Mother Goose Rhymes(ガチョウおばさんの唄)、イギリスでは Nursery Rhymes(子供部屋の押韻詩)の呼称が多く使われている。
日本では大正11年に北原白秋が『まざあ・ぐうす』を出し、Mother Goose という呼び名が知られるようになった。竹久夢二もそれ以前に数編訳している。戦後では、昭和51年に谷川俊太郎訳、堀内誠一イラストで『マザー・グースのうた』5巻(草思社)が出版され、マザーグース・ブームを引き起こした。最近では幼児英語教育の一環としてマザーグースが扱われている。
英語圏では、マザーグースの一節が小説、ミステリィ、映画、マンガ、新聞、雑誌に良く引用される。それだけ英語圏の人々にとってマザーグースが身近なものである、という証拠でもある。また、キャラクターの豊富さもマザーグースの特徴である。Humpty Dumpty をはじめとして Little Bo-peep、Georgie Porgie、Jack and Jill、Simple
Simonなど個性豊かな人物が登場する。登場人物のイメージが人々に共有されているからこそ、その人物名を出すだけで、性格や様子、その場の状況などを生き生きとあらわすことができるのである。
2 ホストファミリーへのアンケートから
代表的なマザーグースの唄を30編リストして、その中から自分の気に入ったマザーグースを10編選んでもらうようにアンケートを作成した。ホームステイを引き受けてくれた家族に依頼し、全部で17通を回収した。その結果、上位10編は次の通り。カッコ内が合計数である。
1 Humpty Dumpty (16)
2 Hickory, dickory, dock(14)
2 This little pig went
to market (14)
4 Three blind mice (13)
4 Twinkle twinkle little
star (13)
6 Jack and Jill went up
the hill (12)
7 Baa baa black sheep (11)
7 There was an old woman
who lived in a shoe (11)
9 Pop! goes the weasel (10)
9 Ring-a-ring o’roses (10)
数量的には多くないが、ある程度の傾向は掴めたのではないか。1位が人気キャラクターの「ハンプティ・ダンプティ」、2位が柱時計をネズミが昇り1時を打つという「ヒコリ、ディコリ、ドック」と、幼児の足の指を一本ずつ数え最後にくすぐる「この子豚さん市場へ」というあやし唄だ。「きらきら星」が4位に入っている。
アンケート項目の2番目は、「マザーグースをどうやって覚えたのか、また、マザーグースについての想い出は何か」を記してもらった。いくつか羅列すると、
(a)I grew up with nursery rhymes. I really enjoy and love all of them. I taught them to my children at school
and at home. We played games using nursery rhymes, drew pictures and recited
them around the dinner table.(マザーグースと共に私自身育った。小学校でも家庭でもマザーグースを子供たちに教えた。)
(b)I have many brothers and sisters, so “the old
woman who lived in a shoe with so many children she didn’t know what to do” is
significant to me.(兄弟姉妹がたくさんいたので「靴の中のオッカサン、子だくさんでどうしたらいいか分からなかった」というマザーグースが一番想い出深い。)
(c) I learned Mother Goose as a child. My mother would sing or read the rhymes. As
children we would recite the rhymes at school. Some rhymes have movement. For example, “Ring around the rosie, a
pocket full of posies” is a rhyme which children sing, holding hands in a
circle, moving in the circle and then sitting on the floor as they sing “ashes,
ashes, we all fall down.” (母親がマザーグースを歌ったり読んでくれた。「バラのまわりを回ろうよ」は、手をつなぎ輪になって回り、最後に床に座る、という動作をした。)
(d)When I was a baby I was put to sleep by Mother
Goose rhymes.(赤ちゃんの時に、マザーグースの唄で寝かしつけられた。)
(e)My memories have to do with telling them to my
children. Now I entertain my grandchildren with them.(自分の子供にマザーグースを話して聞かせたし、今は孫たちにそれらを聞かせ楽しませている。)
全般的に言って、年輩の人たちが多かったせいか、昔親や祖父母に歌ってもらったこと、そして自分の子供や孫に今も読み聞かせている、という答えが多かった。多民族・多文化のアメリカ社会にあってマザーグースが、アメリカ文化の根っこのひとつになっている証ではないだろうか。
3 ボストンにある「マザーグースのお墓」
ボストンにグラナリー墓地がある。フリーダム・トレイルの出発点である Boston Common に隣接している。ここには、ジョン・ハンコックやサミュエル・アダムズなどアメリカ建国に貢献した人たちが埋葬されている。その一画に「マザーグースのお墓」が存在する。Isaac
Goose の妻で、Elizabeth Goose がマザーグースその人で、ここに眠っていると。いきさつとしては、こうである。ボストンで Thomas
Fleet という印刷業者が Songs for the Nursery or Mother Goose’s Melodies for Children という本を出版した。(ただし、どこにもこの本は現存していない。)彼が結婚した女性の母親が
Elizabeth Goose と言う名前だった。おそらくマザーグースの本を売るために、義理の母親がその作者だという説を流布させたのではないか、と言われている。
ともあれ、今では観光名所のひとつになり、「地球の歩き方」にも紹介されている。今回、ボストンを訪れるに際してぜひ立ち寄ってみたい場所だった。写真もバッチリ撮ることが出来た。イギリスから移植されたマザーグースではあるが、アメリカ独立の名誉を保つためにもマザーグースの作者がアメリカ起源だという説が広まったのかも知れない。ともあれ、マザーグースの海賊版がこのボストンで数多く出版されたことは、事実である。
4 施設名に付けられたマザーグース
ニューヨークに滞在中、電話帳でマザーグースのキャラクター名が付いた場所を調べてみた。
(a)Jack & Jill School of St. George’s Church
(b)Humpty Dumpty Institute Co.
(c)Jack & Jill Playgroup
3箇所が見つかり、地図を頼りにマンハッタン島を捜しまわった。土曜日でどこも開いていなかったのは残念。外から写真を撮るにとどまった。イギリスではレストランやパブにマザーグースの名前が良く付けられている。アメリカでも探せばもっと見つかるはずだ。
5 マザーグースのキャラクター・グッズ
ペンシルベニア州のランカスターで二泊した。夕食後、宿舎の近くにあった Hallmartというディズニーのキャラクター人形などを売る店に入ったら、マザーグースの唄をもとにした置物を売っていた。Hey
Diddle Diddle のナンセンスな唄で、猫がヴァイオリンを弾き、雌牛が月を飛び越える場面が描かれている。持ち帰ることを考え、小さい方を買うことにした。他に
This little pig went to market.の置物もあった。
6 幼児教育のためのマザーグース本
ラトガーズ大学から日本人留学生の墓地へ行く途中、昼食を買いに入ったスーパーマーケットで1冊の本を見つけた。“My Discovery Book about Nursery Rhymes”と言うタイトルの薄い本だ。親向けのメッセージに、This
Discovery Book has been developed by early childhood educators to help your
child develop early learning skills
while learning about nursery rhymes.
There are puzzles, games, mazes, and lots of sticker pages in this book
all designed to make learning fun for your child. とある。
10の唄を使い、さまざまなアクティビティが用意されている。いくつか紹介すると、
(a)This little pig went to market を使い、数をかぞえさせたり、
(b)Little Miss Muffet の唄を使い、迷路をなぞり字を書く筋肉を発達させたり、
(c)Hey diddle diddle の唄を使い、biggest(最上級)という語彙を身に付けさせたり、
(d)Humpty Dumpty の唄を使い、4つに分かれた絵を元通りにくっつけたり、
(e)Itsy Bitsy Spider の唄を使い、記憶力と集中力を養ったり、
など、多様な活動が出来るようになっている。2歳から3歳用ということで、親が読み聞かせ、それに沿って基礎的な言語スキルが育つように工夫されている。言葉の学習の入門期にリズムがあり、親しみやすいキャラクターを伴ったマザーグースを使うところが、興味深い。
7 マザーグース絵本あれこれ
旅行中に書店を見かけたら中に入り、児童書コーナーへ行き、マザーグース絵本を探した。購入したいくつかをリストすると、
(a)“Counting-out Rhymes Coloring Book”数え唄をもとにした小型の塗り絵本。
(b)“The Little Mother Goose Coloring Book”27の唄にイラストが付いた塗り絵本。
(c)“Nursery Rhymes Pop-up Book”6冊シリーズに分かれている飛び出す絵本。
(d)“Humpty Dumpty & Other Nursery Rhymes”4冊シリーズでイラストがで楽しい絵本。
現在私の手元には千冊近くのマザーグース集成がある。過去十数年で蒐集した結果である。その多くは、日本にいながらにして入手できた。それだけおびただしい数の絵本が出版されていると言うこと自体が、マザーグースの根深さを示しているのだろう。マザーグースのイラストを描けると言うことは、イラストレーターとして認められたという証拠でもある。現在も一流のイラストレーターが想像力と創造力を発揮して、多彩で多様なイラストを描き続けている。
8 美術館でのマザーグース・コレクション
ラトガーズ大学内にある Zimmerli Art Museum を訪れた際、アメリカ児童文学のコーナーがあった。そのひと部屋がマザーグースの原画コレクションにあてられていた。壁面に数十枚の絵が掛かっていた。また、中央の大きなテーブルには、石膏で作られたマザーグース・キャラクターたちが並んでいた。予期しない嬉しい発見だった。
9 終わりに---異文化理解の架け橋に
外国語学習の目的のひとつは、異文化理解である。英語圏の文化基盤のひとつを構成するのがこのマザーグース。ところが、英米の文学に親しんでいる英語教師でも、意外にこのマザーグースは知られていない。英米の子供たちにとっては当たり前のマザーグースの一節が、外国語として学ぶ日本人学習者には何のことなのか、理解できないでいる。
今回の米国東部への旅行を通じて、マザーグースの実際を垣間見ることが出来た。時間がなくて、マザーグースを演じるパフォーマーたちに会う機会はなかったが、アンケートやインタビューを通じてマザーグースが、アメリカ社会に脈々と息づいていることを実感できた。英語授業の折々にこれからもマザーグースの唄を少しずつ紹介してゆきたい。最後に、私のホームページ( http://www.sun-inet.or.jp/~syasui )の中に「マザーグースの部屋」を設けてある。マザーグース研究会の活動や、マザーグースの用例、マザーグースの持つ万華鏡的世界を公開しているので、興味のある方は一度アクセスをされたい。
“Choice and Decision”
##
アメリカ社会のバックボーンとなるもの
##
愛知教育大学附属高等学校
前 田 健 次
##
1 “Choice and Decision”だらけのアメリカ
アメリカで半月暮らしているうち、私はある一つのことに気づいた。それは、「アメリカの生活は“Choice
and Decision”(選択と決定)で一杯である。」ということである。
起きてから寝るまで生活のほとんど全ての場面に、この「選択と決定」が現れる。ホテルの部屋に入れる新聞は何?朝食のオムレツには何を入れる?ランチの料理は?ドリンクのサイズは?....あるサブマリン・サンドウィッチの店で、お客と店員が「パンは?→バターは?→野菜は?→ハムは?→チーズは?....」と問答をしながらカウンターを挟んで約4メートル程を横に平行移動しながら進み、ようやく完成に至るという光景を目にした。ほとんどの商品が出来合いで、「選んで決める」という必要がない日本国内ではめったに見られない光景であり、ビデオに撮って皆に見せたいと思ったくらいである。
2 アメリカの教育観の基盤となる精神
最初は違和感さえ感じたこの“Choice and Decision”も、研修中研修後と私がアメリカという社会の成り立ちについて学ぶにつれて、次第に納得できるようになってきた。建国以来の歴史、国の構成員が多種多様という事実、そしてそこから生まれてくるイデオロギーから、アメリカという社会では、そこに住む人々は大人から子どもまで、たとえ家族の中でさえも、一人一人が個々別々の存在という意識がかなり強い。
個人がちゃんと“Choice and Decision”をできる環境というのが「自由な社会」の定義であり、更に、それぞれの個人間での“Choice
and Decision”の利害調整をするルールが「法」の役割と考えることができる。
そんなアメリカ社会で暮らすには、一人一人が自分がどう考えるのかをはっきり言えるようになる必要がなる。アメリカ人に教育の目的を尋ねると、“To be independent”(自立できるようになること)とか“To be self-sufficient”(自分のことは自分でやれるようになること)という答えがよく返ってきた。ここでも、それを「社会、人生のあらゆる場面で自らの“Choice
and Decision”をちゃんとできるようにすること」と読みかえることができはしないだろうか。
子どもたちは小さな時から自分の意見をはっきり言えるように躾けられ、学校では、作文やディベートやスピーチを通して自分の立場をはっきり表明することや、自分の意見で相手を説得することを学ぶ。同時に、ディスカッションを通して自分とは違う他者の意見が存在することや自分の意見と相手の意見の摺り合わせをすることを学ぶのである。
さらに今回の研修旅行中、大変印象に残った言葉があった。ラトガース大学で受けた講義の中で、教授は教育を通して学生に何を望むかについて次の4点を挙げた。
@ Speak clearly
「知をもって語り」
A Write clearly 「知をもって表し」
B Ask intelligent questions 「さらなる知を求め」
C Think creatively
「新たなる知を創る」
そして教授は、「大学は単に学問を学ぶというだけの場所ではなく“Learn to be
Socialized”(社会でやっていける人間になるための何かを学ぶ)のだ。」と語った。
「知識に頼った機械的な答えを探すのではなく、創造的な考えを持って自らの意見を作り上げることができるようになるために学ぶのである。」と。
教授の言葉は私の心に強く響いた。私自身が経験してきた「学び」、そして教職員として毎日私が接している生徒たちの「学び」にそのような理念があるのだろうか?
3 我が国の教育観には基盤があるか?
振り返って我が国ではどうなのだろうか?多くの場合は、依然として知識や教養の習得に(しかも量的にどれだけ身につけたかに)重点が置かれている。例えば、「歴史」を学ぶ際に、我が国の学校の授業では「○○年に××があった」という部分の習得に一定の重点が置かれ、テストなどでもそういった部分が問われることが多い。
一方、アメリカでは歴史上の事柄の中に自分を置き自分ならどうするかを討論させる授業がある。ミラーズビル大学での講義の中では、第二次大戦後の東京裁判を題材にして検事側、弁護側、被告人のそれぞれの立場をリサーチして討論をするというハイスクールでの授業事例が紹介された。また、歴史上の人物になりきり、ある歴史上の行為に対して「自分」がなぜそういう決断をしたかを語るというような授業スタイルも紹介されている。どの例においても、その底流には自分の立場や意見をはっきり表明できるかという考え方が流れている。
今回の研修旅行中にホームステイをした先のマリー・イーガンさんはかつて日本の高校を訪れたり、日本からやってきた高校生の世話をしたことがある。そのマリーと、私の勤務校へALTとして来ているジェーンが、偶然にも同じような言葉を言っているのが大変興味深い。:「日本の大学生は欧米の高校生くらいに思える。日本の senior-high student(高校生)は欧米の
junior-high student(中学生)ぐらい。」
場面状況に適応した状況判断がどれだけできるかという基準で見るとどうか、という私の問いかけに対する答えである。日本の若者はいつまでも幼く、自分がどうするべきかをちゃんと判断する力が発達していないように見えるということである。
ミラーズビル大学での講義の中、講師の先生が自らの授業の目標として“good competent
citizen”(生きていくのに十分な能力を持つ市民), “good informed citizen”(必要な知識を十分に持った市民)を育てることだと語っていた。「市民を育てる」という視点は、今まで我が国の教育観の中にあっただろうか?
「学びの再生」という言葉をどこかで読んだことがあるが、知識教養の習得を重視してきた我が国の教育が、近年閉塞状況に陥りつつあるのは確かである。「何のための勉強?」「子どもたちに何を教えて、どのように育てるのか?」私たちに問われるものは非常に大きい。しかしその打開のヒントは、前述のようなアメリカの教育観や教育スタイルにあるのではないだろうか?小さな子どもから大学生まで一環して流れる「学び」のバックボーンが、今こそ必要である。