2008.6.13

Stone breddo

友人から手製のパンと山羊チーズを貰った。チーズの方はもとより絶品なのだが、パンも食べるとはまりそうな味だ。「塁麺麭」と名付けよう。豪華なだけで命の糧となることの薄い、マイダス王のような食生活の横行する現代日本での、若者による「糧」づくりへの成果だろう。

贅沢な材料を使った「塁麺麭」とは較ぶべくも無いのだが、「糧」というのでふと思い出したのは、

Obasan
Joy Kogawa
1981
に出て来た「おじいさんのstone breddo」だった。トルドー首相の秘書をつとめた事もある著者の自伝的なこの本は、現代カナダ文学の代表作のひとつで、多民族国家統合を理解する推薦図書という評価が高い。

第二次大戦の強制移住でSlocan近くの山中に追いやられた6歳の主人公はおじいさんと二人、小麦粉だけを練って!! ストーブで焼いたstone breddoを、斧で細かく割って食べる、という暮らしをしていた。

Joy Kogawaのすごいところは、stone breddoでかろうじて命をつなぐ悲惨な暮らし、という大人の歴史認識の向うに、子供の目から見たカナダの大自然のすばらしさが重ねられているところだ。1945年8月15日、人里離れたスローキャン山中のカナダの空に、おじいさんを助けて主人公が掲げる「カナダの流星旗」は美しい。

おじいさんによるスローキャンの昔話にも面白いものがあった。その昔、土地を逐われた原住民が住処を求めてさまよううち、山の中に良いところがあると伝え聞き、その地を目指して辛く長い旅を続けた。くじけそうになる仲間を励ましながら、

ゆっくり行けば、行けるのだ。
ゆっくり行けば、行けるのだ。
Slow you go, you can go.
Slow you go, you can go.
と言いながら着いた所がSlocanという地名になったのじゃよ。

最近のJoy Kogawaは日本人の血を引くものとして、第二次大戦中に日本軍によって中国で行われた犯罪への謝罪が行われないことを心配しておられるようだ。

「塁麺麭」の作者とは

「おやじ、ウチって金ある?」
「なんだよ」
「○×湖へ○×△□※に行くんだけど,○×△※ったら,○×△※めるかなあ?」
「ウチは金無いからしばらく%い飯でも食って来てくれ。」
という会話があったようで、%い飯を食って経験を積むと、さらに「糧」としての味わいが深まることであろう。