「中国・四川省大地震被災者支援チャリティークッキング」というのを覗いてみた。

面白かったのは「歌・太極拳・ピアノ」のパフォーマンスもやっていたのだが、そこに出ている人達と、「餃子を売って四川に金を送ろう」という人達とが、全く違う人種に見えたことだ。混声合唱で中国の歌、それも西洋音楽に倣った近代的革命歌曲みたいなのをやっている人達は、中華人民共和国を代表して、日本に派遣された大学教授・国費留学生といった趣。それに対して餃子をこねているのは私費留学生・就学生・その他様々ないきさつから、この辺りで暮らしているオバサン達みたいな感じだった。私はこちらの、国家とは関係が薄そうな人達の方が、肌に合っている。

国家とは関係が薄そうな人達にとっても、今回の地震は「なんとかしなければ」なのだが、これに「中国人として」がかぶさると、なかなか大変そうだ。

HGウェルズの「世界史概観」では、大陸横断鉄道が無ければ、アメリカ合衆国が「国」だなどと考える人は、無かっただろうと説いているが、国を成り立たせる、という点では大陸横断鉄道と同じことが、中国では既に紀元前3世紀に「都江堰」という形になっていた。巨大な灌漑用ダムが国家事業で、しかも当時のこととて化石エネルギーを使わずに作られ、日本程の広さの四川盆地が農地として使われる様になったのだ。

西洋では畑作灌漑と牧畜によって土地を搾取する農業が発達した。「土地さえあれば家畜が草を食って増えるから」というわけで世界中を植民地にしようとしたのが、ここ2,000年のことであった。これに対し水田稲作を中心とした農業では、巨大権力によって水利が確保されさえすれば、人力を投入することで畑作+牧畜に比べて、数百倍の土地生産性が保証される。地下水の過剰汲み上げによる塩水化-砂漠化も無い。

既にそうした究極の農業形態は2,000年以上も前に「蜀」の国でも完成していた。その後の2,000年はと言えば、権力の手先である田舎役人がハナクソほじりながら、田んぼに這いつくばった農民を搾取する、という水田稲作文化のありふれた情景が、今日に至るまで続いていたのであろう。

孔さんという人が「怪力乱神」を政治に持ち込まない方が良い、と説いたのもやはり紀元前3世紀だった。3月14日以降、西蔵で治安が悪くなっているのだが、しばらく前まで「政教一致」でやっていた西蔵は、一般中国ピープルからすれば、「怪力乱神」を政治に持ち込まない方が良い、と説いた紀元前3世紀の孔さんよりも、昔のハナシともいえるだろう。

同じく2,000年に渡って「神」をめぐって殺し合いを続けて来た西洋人から、「非民主的」などと指弾されるのは、一般中国ピープルからみても「余計なお世話」としか思われないのかもしれない。異教徒などより、ハナクソほじるだけの田舎役人のほうが、遥かに恐ろしいことをこの間の2,000年が証明している。

ともあれ大学教授・国費留学生も私費就学生・その他も「加油四川」である。ついでに夏休みには「加油中国」でテレビに釘付けというところか。