バンドが50年代ファッションに身を包んだアジア人バンド、というのもそれらしいが、客席だけが違う。
米軍のGIと、従軍慰安婦にもある意味では通じるところのあるアジア人の女ではなく、日本人紳士淑女になっている。
私の年代がある部分「生得のもの」として背負ってきた50s/60sのポップスというのは、
実はアメリカの戦争遂行の為のもの、とも考えられるのだ。
そう考えるとプレスリーの「監獄ロック」も別の意味が見て取れる。
アメリカの世論が、アジアにおけるアメリカの戦争を「正義の戦争」と考えていた時代に、
犯罪者に対する監獄を歌いながらも、前線に送られる若者の抱いていた、
「国家の名による殺人」という不条理に対する疑問に響くものがあったのではなかろうか。
ステージではカウガール姿のお嬢さんがピストルを撃つ真似をしながら歌い続けている。
映画の「Aサインデイズ」では、
アジア各地に作られたこうしたファッションの店でその昔、
前線に送られる若者がピストルをぶっぱなしていた事が分かる。
アメリカは戦争で豊かになった国、でもあり、第二次大戦後も30年に渡って世界のどこかで戦争を継続してきた。
50s/60sのアメリカンポップスの明るさは戦争と背中合わせというところにも秘密があるのだ。
夏休みで帰っていたボブが飛行機の中で読んでいたのはJFKに関する新刊であるらしく、
CIAの陰謀が次第に明らかになりつつあるらしい。
ことの発端は「沖縄に陸揚げされた莫大な日本本土決戦用の軍事物資がどこへ運ばれたか、」に隠されているのだそうだ。
以前、やはりボブに借りた"Snow Falling on Cedar"という小説に出てきた、沖縄の海岸の水たまりに、
日本刀を握ったまま浮かんで半ば腐っている日本兵の死体の姿など思い浮かべつつ、
50s/60sアメリカンポップスの生演奏の続くKENTO'Sの店内を眺めていたら、
アルコールの廻ったノーミソにとんでもない事実が閃いた。
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