2008.2.16
 
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このところ「バイオマス《という言葉をよく耳にしますが、木造建築が「環境を育てる建物《であるのに対し、鉄骨・鉄筋コンクリートの建物は「環境を奪う建物《と言えるでしょう。

そうした木造住宅の弱点が防火性能でした。都心の住宅を木造で造るために考えたのが、左下の外壁です。以下詳しく見てみます。

郊外型住宅の外壁はこちら



A

枠組壁工法の場合、ツーバイフォーでなく、ツーバイテンで壁を構成したらどうかと思います。外壁ではこの厚さで断熱材を充填します。また壁厚を確保することで水道配管・電気配線の自由度が飛躍的に増大します。

B

外壁下地は高圧木毛セメント板です。耐火壁を構成出来る、枠組壁工法の構造面材です。木毛セメント板は50年前の壁で言えば土塗り壁に近いものだと思います。

耐火性能などが優れているので、表面に石・タイル・板などの模様を付けて、塗装することにより、外壁仕上材とすることも広く行われていますが、仕上材とするには構造上必要な釘を隠す工夫がまだ確立されていないので、構造には算入しないことになります。ここでは昔の様に「羽目板《の下の「土壁《のような使い方をしています。

全国にいくつかメーカーがある様ですが、浜松から近いのは、「竹村工業さん《

C

通気性防湿フィルムです。ポリエチレン100%の上織布であるようです。

D

角波鋼板です。ガルバリウム鋼板と呼ぶこともありますが、galvanized steel sheetという訳で、昔でいう亜鉛鍍鉄板です。ただし昔の様に亜鉛ではなく、アルミニウムその他を加えることにより、耐候性は飛躍的に向上して居る様です。

波板が戦後初めて登場した頃には、連続アーチ、あるいはサインカーブの断面しかありませんでした。あれが構造的には一番強く、0.27mmの薄板でも使うことが出来たのですね。外装建材として優れていすぎたために、戦後の日本を代表する風景を作り上げ、「最早戦後ではない《ということで嫌がられている様ですが、外装材としては合理的なものだと思います。

その後「波《ではなく、さまざまな「角波《が作られました。平らな部分があると、構造的に歪みを生じやすいので、材料の厚みで補ってやる、というものです。一時は10mmピッチ程のものが流行った時代もありましたが、近年角波ではあるが、45-50mmピッチ、という構造的には合理的なものも出ています。いずれ最初に登場したサインカーブの波板が復活するのではないかと思います。

E

セルロースファイバー吹き込みによる断熱です。原料は古新聞というのがエコです。北海道など北国では大分普及して来た様ですが、浜松ではこれから、といったところでしょうか。

実は私、グラスウールがダメなんです。以前は平気で建物の断熱材としても大分使ったのですが、あるとき、夏の最中に汗だくの体中グラスウールまみれになったことがあり、それ以来体が受け付けません。工事現場にグラスウールが置いてあるだけでもう駄目です。と言う訳で私の設計からはグラスウールを追放することにしました。

南国浜松では100mmくらいのグラスウールで済ませてしまうことが多いのですが、北国ではそうはいきません。札幌などでは壁・天井セルロースファイバー吹き込み300-400mmというのが今風なのだそうです。

近回りで吹き込みをやってくれるところは無いか、と思っていたら、20年程おつきあいのある飯田市の櫻井さんがこのための会社を立ち上げた、という朗報が。何でもフィンランドまで出かけて、機械を買い込んで来た様です。これで断熱材の問題は解決しました。保存材にはホウ酸を使っているということで、「何だ、目薬と一緒か。《と思ったのですが、現場で匂いをかぐと、小学校の頃に遊んだ紙粘土の匂いがします。「エコトピア飯田《

飯田と言うと遠く聞こえるかもしれませんが、実は兵越峠を挟んだ隣町になってしまったのであります。茶臼山、治部坂といった最寄りのスキー場もこっち方面で、断熱工事は委せて安心といったところです。長野県まで行けば、この辺では知る人の居ない「本気で焚いても安全なストーブの据え方《を知っている人も居ます。

F

通気性防湿フィルムです。ポリエチレン100%の上織布であるようです。

G

ドライウォールにペンキ塗りです。

次の課題

壁をここまで重装備にすると、断熱性能は飛躍的に改善します。外部通気層などを無視し、簡単に壁の断熱性能を見ると、

高圧木毛セメント板 20mm 0.13㎡K/w
セルロースファイバー 235mm 5.95㎡K/w
石膏ボード 12.5mm 0.06㎡K/w
合計  6.14㎡K/w
 
これに対し開口部は
断熱アルミサッシ 二重ガラス0.43㎡K/w

と15倊程の差があり、開口部が断熱上の弱点となりかねません。次の課題は開口部です。とりあえず室内側に障子を入れるとかが、考えられます。しかし熱設計はきりがない、という感じもありますね。

江戸時代将軍様への御年始に、足袋が許されたのは二万石以上であり、それ以下のものは裸足にわらじ履きで、雪を踏んで登城した、というのは昔話としても、つい昨日まで、障子紙の外は外気だったのですから。それが今では北海道に行くと、4重サッシを入れて、ダルマストーブで石炭を焚きながらTシャツでビール、ということになります。