20160423

定価$39.95と船便運賃多分$8.00くらいを出して買ったCreating a New Old House(eBookなら$17.9だ。)を見返してみた。爺さんの真似をして椅子に座っていても、昔のようにはならないのだが、米国人も「昔風の家」というのが趣味だ。新築の巨大住宅にも、モダンな造りに混じって、



昔風のお屋敷が見られた。

こんな物を買い込むと、住宅ローンで共稼ぎとなるのだ。バンクーバーの建売団地では、区画ごとに「モダン」「ブリテイッシュチューダー」みたいなテーマでまとめたものもあった。



シアトルでも住宅は日本と逆で「古ければ古いほど高い。」次はシアトルで最も古いというQueen Annなのだが、外から見ただけでは新しいか古いか、見当がつかない。



中には本当に古いものもあるのだろう。1920年代には床面積も30坪前後と小さいのだが、こちらの方が100坪超の新築より高かったりする。




この辺りの事情について、バンクーバーで歴史の一端を知ることができた。当てもなく中心市街地をうろついていたら、URBANARIUM=都市展みたいな展覧会に出くわしたのだ。

1987年当時、バンクーバーでは中心市街地に高速道路を作るかどうかで、街をあげての大論争の後だった。

高速道路反対派が勝利し、その代わりにモノレールが導入されたが、現在でもやはり車から離れられない、という人が渋滞を作っているようだ。

中には道路工事そのものが嫌いだ、という人も混じっていたようだ。

それを迎え撃つ開発業者も、「まちづくり」のテーマにした仮囲いを作ったりして、説得にこれ努める。

再開発事業も市役所の都市計画審議会を舞台に、徹底的にやるので、巨大な模型が作られる。

覗き見をした時には大学の先生が講演をしていたが、
「お金持ちは近所の様子が変わってまちなみが気に入らなくなると、引っ越してしまうからまちづくりでは大して力になりません。」
と言っていたのが印象的だった。

事例として展示されていたのはキツラノ岬の話。1920年代から大規模工業開発が進められたが、第二次大戦とともに開発はより大規模な用地を求めて、南のフレーザー川沿いに移り、中心市街地近くのキツラノ岬は打ち捨てられてしまった。その後工場も移転し、低所得者の住む街になってしまったとのこと。

ところが1970年代に、住民が「子供の不良化防止は街をきれいにすることから。」と呼びかけて、ゴミ拾いから始まり、家の手入れを進めることになった。

すると「昔ながらの家が並ぶ、美しい町並み」という評判が高まり、不動産価値が上昇。「街をきれいに」という運動をしていた人々は固定資産税が払えず、家を売って引っ越さざるをえなくなってしまったそうだ。








頭に浮かんだのは「赤毛のアン」シリーズに出てくる「パティの家」だった。高級住宅街のお屋敷に挟まれた古い小さな家、という設定だ。「古い小さなおうち」というのが、1920年代のカナダでも人々を魅き付けていたのだろう。

本書は高校時代に村岡花子訳で「女を知るための教科書」として読んでいたのだが、今原文で読んでみても「大きなお屋敷に挟まれた古い小さな家」というのが目に浮かぶ。

しかし現実にはそうした古い家がそのまま残っていることは珍しく、古く見える家でも、新しく建てられたものもあるだろう。しかし探せばそうした家に出会うこともある。

バンクーバーでは1986年の万博を機会に、中心市街地に残った工場地帯の再開発を行った。というか、再開発のために万博を呼んだのだ。周辺の工場跡地にはモダンな集合住宅が並ぶが、その中に昔工場労働者のために建てられたらしい住宅を残して改装し、住んでいる人もいるようだ。手作りっぽい外観が好ましい。







近郊のニューウェストミンスターには「アーヴィング船長の家」というのもある。
http://www.newwestpcr.ca/culture/museum_and_archives/1865_irving_house.php

炉辺荘のアン

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