天竜川流砂促進現場見学会 報告
【テーマ】「天竜川流砂」
■日時 平成16年2月22日(日)
■集合 浜松市保健所 南駐車場集合 午前7時40分
■場所 秋葉ダム・佐久間ダム
【内容】
佐久間ダム湖上流に堆積した土砂を流水によりダム湖下流部へ移動する流砂促進事業の見学会が、天竜川漁業協同組合の主催により開催されます。川や湖をきれいにする市民会議では,普段目にすることのできない天竜川の実態・現状について理解を深めるため、今回の見学会へ参加することになりました。
【行程】
7:45 浜松 発(保健所)
8:45 天竜川漁業協同組合(合流)
○ 天竜川漁業協同組合組合長挨拶
○ 天竜川ダム再編事業対策委員会幹事長 趣旨説明
9:30 秋葉ダム土砂湖外搬出現場・佐久間第2発電放水口見学(車中)
10:30 JR飯田線 中部天竜駅 発
10:57 JR飯田線 大嵐駅 着
○ 流砂促進見学(採水・採泥・透視度等調査)
○ 昼 食
13:19 JR飯田線 大嵐駅 発
13:42〜14:30 JR飯田線 中部天竜駅 着 レールパーク見学
14:45〜15:30 佐久間ダム見学・電力館にて電源開発より説明
16:35 天竜川漁業協同組合(解散)
17:45 浜松 着
●流砂促進とは
上流から流れ込む土砂は,流水とともにダム湖に入ります。ダム湖内では流速が遅くなり土砂を下流へ流す力が減るために,土砂が堆積します。これを堆砂と呼んでいますが,これはダムの貯水容量を減少させるばかりでなく,洪水時には上流部の河川水位の上昇をもたらし,浸水被害を及ぼすことが懸念されます。堆砂を排除する方法としては,湖外搬出(堆砂をダム湖の外に出してしまうこと。
●天竜川の流砂促進事業の見学
平成16年2月22日午前7時50分保健所前を出発。55人乗りの大型バスに、補助席まで使わないと座れないほどの多数の参加者でした。当日開催された、杉の里ロードレースの会場を横に見て、午前8時45分、天竜川漁業協同組合に到着。簡単な開会式の後、天竜川漁業協同組合で募集した、約100人のバス2台と合流して、午前9時10分に出発しました。
●開会式の挨拶
開会式での天竜川漁業共同組合長のあいさつで、今日の見学会は、天竜川の水をきれいにするにはどうしたらよいかを、国土交通省の人と電源開発KKの人と共に考えること、そのために、佐久間ダムの流砂促進事業の見学会を催したと言う趣旨の説明がありました。
国土交通省からは伊久見さん、電源開発KKからは、福島さん、竹之内さん、野田さんが参加されました。
●車中の説明
車中(3号車)、漁業協同組合の秋山さん、小笠原さんから、今日の行程と見所について、次のような説明がありました。
「今日は、秋葉ダムの浚渫の揚砂場2箇所(車中)、秋葉ダムのメタンガスの発生状況(車中)、大輪の天竜川右岸の排水孔の水と本流の透明度の違い(車中)、大嵐駅付近の堆砂状況(下車)を見学してもらいます。
流砂促進事業は、以前流水掃砂といわれ、ダム上流の水を減らして川底を出し、台湾坊主と言われる大雨を利用して、上流の堆積した土砂をダムの深部に移動させる作業のことです。ダムに堆積した土砂を取り除く方法には、湖内移送、湖外搬出の2つの方法があります。湖内移送は、ダム湖の中の影響の少ない場所へ、堆砂を移動させる方法です。湖外搬出は、ダム湖の外に持ち出してしまうことです。流砂促進は、湖内移送のひとつで、ダムの水を抜いて上中流部を河川状にし、その流れを利用してダム湖内の下流部へ、堆砂の移動を促進させる方法です。
天竜川には、毎年120万立方mの土砂の流入があり、佐久間ダムの3分の1が埋まっている状況です。今から対策を採らないと、ダムの機能が駄目になる恐れがあります。
今、気になることは、昔の鉱山跡からの排水が、ダムに入っているのではないかという疑問があり、水が汚染されるのではないかと懸念されます。
ダムから搬出された土砂は、浜松や豊橋方面で建築資材として運ばれ、使われていますが、あまり良質ではありません。シルトや粘土が混じっているので、篩い分けています。除いたシルトや粘土は、また湖に戻していますが、それが水を濁らせて、鮎などに影響しています。秋葉ダムからの揚砂の量は、年間23万5000立方mもあります。土砂の篩い分けの影響をその透明度の違いから、大輪の天竜川右岸の発電所の排水と本流の水で比較してみてください。以前は、洪水があっても、2〜3日で水が澄んだものですが、今では1ヶ月も濁りが続きます。」
途中、車中から秋葉ダムの湖面の、メタンガスの発生状況を見ましたが、湖面に波が多くて確認できませんでした。メタンガスが発生するということは、湖底に有機物が溜まっていることを示します。おそらく上流から流されてきた、木材や落ち葉などがたくさん堆積しているのでしょう。大輪の天竜川右岸、発電所の排水孔の水は本流に比べてはっきり濁っていました。バスの窓からしっかり確認しました。
●大嵐駅にて
午前10時10分、中部天竜駅に到着。今にも雨が降りそうな雲行きでした。富山村へ通じる道路が決壊していて不通なので、ここから、飯田線の電車で大嵐まで行くことにしました。午前10時30分発の2両編成の電車は、通勤電車並みの込みよう、おそらく飯田線では、めったに無い混雑だと思いました。大嵐まで27分の旅で、トンネルとトンネルの間の、見上げるような山に挟まれた小さな駅、大嵐に着きました。駅に降り立つと、雨が降っていました。しゃれたレンガつくりの洋風な駅舎、地もとの人の憩いの場所にもなっているようでした。
駅前の広場で、国土交通省の伊久美さんと電源開発の福島さんから簡単な説明があり、弁当の配布を受け、富山村方面に見学に行くグループと、すぐ下を流れる天竜川に下りて、水質検査をするグループに別れ、傘をさしながら行動を起こしました。
伊久美さんの話
「今日は流砂促進の様子と、今、目の前にある天竜川の状況をよく見て欲しいと思います。見た目の感じと、実際の測定の結果とは食い違うことが多いし、遠くで見ると濁って見えますが、近くで見ると透明に見えます。そこらも自分の目で確かめて下さい。」
福島さんの話
「ダムはこの下流20kmの所にあります。今、流砂促進をやっているので、川のような状況になっています。見て分かるように、この辺に上流からの土砂が堆積しています。この辺の堆積のために、この上流の長野県天竜村の河床が上がり、洪水の恐れがあるので、この辺の土砂を、流水を利用してダムの底に移動させています。山の傾斜と河原の様子を比べて、堆積の状況を見て下さい。」
●ダム湖岸の調査
私は、天竜川に降りて水質を調べる、40人ほどのグループと行動を共にしました。駅の前から、細い道を約30mおりると、昔の川へ下りる階段が出てきます。普段は湖底に沈んでいるものですが、流砂促進事業でダム湖の水位を下げたので、出てきたものです。現在の水面から、約20m上のところまで、ちょうど田んぼの土のような、泥が堆積していました。周辺は、やはり田んぼの土のような、泥臭い匂いが漂っていました。川幅の3分の1くらいの深い溝の中を、濁った水が滔々と流れていました。その水で堆積した土砂を流しているのです。その流れの岸から水を汲み、濁度と透視度を測りました。濁度は、104、透視度は6〜8cm、水温は7℃、なお気温は5℃でした。
ちなみに、濁度というのは、カオリン(白陶土)1mgを、1リットルに混ぜたときの濁りを1度として決めます。つまり、濁度104と言うことは、104mgのカオリンが、1リットルの水に混ざっている濁りと同じということになります。また、透視度は白い円盤を沈めたとき、見える深さで表します。透視度6cmと言うのは、沈めた円盤が6cmを越すと見えなくなると言う濁りのことです。どちらもたいへん濁っていることがわかります。
●佐久間電力館にて
雨の中、駅の憩いの家やホームの待合ベンチ、駐車場の陰などで、適宜昼食をとり、午後1時24分発の電車で大嵐駅に別れ、バスの待つ中部天竜駅に戻りました。午後2時にバスで佐久間電力館に移動、バスを降りて、5分ほど急な坂道を歩き、午後2時20分佐久間電力館に到着。そこ電源開発の福島さんから、説明を聞きました。
福島さんの話
「天竜川は、木曽山脈と赤石山脈の間を中央構造線に沿って流れる、日本屈指の急流河川で、本流には5つのダムがあります。そのうち電源開発では3つを持っていて、発電、上水、農業用水、工業用水などに使用しています。佐久間ダムでは、佐久間発電所(最大出力35万kw)で、年間約15億kwhの発電をしています。現在日本の発電は、原子力が34%を占め、石油、LPG、石炭の火力が56%、水力はわずか10%です。しかし、水力発電は、ピーク時の電力不足にすぐ対応して発電できるので、ピーク時に対応する電源としてたいへん重要です。また、純国産のエネルギーであり、二酸化炭素の発生も無いクリーンな、環境にやさしいエネルギーでもあります。さらに設備の耐用年数も長く(100年以上)経済的です。
ダムに流れ込んだ水の速さが遅くなると、水の砂を運ぶ力が弱くなり、堆砂が起こります。ダムは、その堆砂の量が見込んで設計してありますが、上流部で流速が落ちると、そこへ砂が堆積して河床が上昇し、洪水を起こすことがあります。佐久間ダムの上流の長野
県天竜村でそのため3回も洪水に見舞われました。そこで、堆砂を除去する事業を始めたのです。現在佐久間ダムでは、年間、流砂促進で200万t、湖外搬出で40万t、湖内移送で40万tを目標に、堆砂を処理する事業を行っています。」
その他、電源開発会社の説明もありましたが、省略します。
福島さんへの質問
Q. ごみ対策はどうしていますか。
「流木は引き上げ場所があって、引き上げてチップにしています。その他のごみは、佐久間町に引き渡して、処理してもらっています。」
Q.排砂の生物への影響はどうですか。
「佐久間ダムには排砂用のゲートが無いので、排砂はしていません。」
Q. 新豊根発電所の発電量(112万5000kwh)が大きいのはなぜですか。
「揚水式発電所なので大きいのです。」
Q. 佐久間ダムへの土砂の流入量はどのくらいですか。
「年120万立方mで、湖外の搬出量は年間40万立方m。差し引き毎年80万立方mずつ堆積しています。」
Q. 堆砂による発電への影響は無いのですか。
「計画堆砂量の範囲なら、影響はありません。また、発電所の水の取入口の高さ以下なら発電には関係がありません。」
Q. 流域の森林保護のために、金は出していますか。
「森林保護のためには、全く出していません。」
Q. ダムの水は安全ですか。汚染物質は入っていませんか。
「ダムの水は自然の流水なので、汚染物質は入っていません。もし検出されれば、それは人為的なものです。」
●帰りの車中の話
午後3時45分、電源開発の佐久間電力館を出発、帰途に着きました。帰りの車中で、漁業協同組合の方と雑談をしながら、帰りました。
秋山さん、小笠原さんとの話の中から
「このごろの天竜川のアユは、昔と違って、香りが全くなくなりました。昔は川端でもアユの香りがしましたものですが。また、アユの特徴である、縄張りを作らなくなりました。だから友釣りができません。友釣りの醍醐味が味わえなくなって、釣の面白みが半減しました。どうも毎年放流を繰り返しているので、遺伝子が変わってしまったのではないかと思います。天然のアユとアユが違ってきているように思います。
今から言うことは、私の個人の考えで、漁業協同組合としての意見ではありませんが、流砂促進は毎年やらないで欲しいと思います。10年くらい堆砂を除く作業を徹底的にやって、その間はわれわれも我慢しますから、その後は澄んだきれいな水を流して欲しいと思います。今のように毎年流砂促進をやられては、アユが全滅です。
できたら、森林の保全に力を尽くして欲しいと思います。以前、植林のイベントをやりましたが、植林や森林の保全は素人で、簡単にできることではないと言うことが、よく分かりました。だから、今はやっていません。」
午後4時50分、天竜市の漁業協同組合に到着。ここで2台のバスとお別れして、一路浜松市へ。午後5時30分ころ無事に保健所に帰り着きました。バスを降りると、もう雨はやんでいました。