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Exhibition 2002



「名作椅子130脚に座る〜椅子デザインの系譜と座り心地〜」
 新宿パークタワー
 2002年10月10日-27日

 自由に座れるなんて画期的! 写真でしか見たことのない名作椅子に見て、触れて、実際に座れる貴重な機会だった。座り心地をサーモグラフィで科学的に分析。
気になった椅子は次のとおり。

 ジオ・ポンティの「スーパーレジェーラ」。不具合のため座れなかった。写真で見るよりずっと華奢なフレーム。本当に指1本でふわっと持ち上がった。これには赤バージョンもあるらしい。小柄に人に合う椅子。

 エール・アールニオの「グローブ」。『20世紀のデザイン』の背に載っている。座ると、ふっと外界から音が遮られて静かになり、自分だけの世界に浸れる。包まれる感じが心地よい。

 イームズの「ラ・シェーズ」。まっすぐに座ったり、脚を投げ出したり、体勢が変えられる。微妙なカーブは計算に計算を重ねて設計されたようで、どのように座っても快適。

 イームズの「DCW」。いやー、赤には弱い私。部屋に置きたい1品。座り心地もいい。

 ハンス・ウェグナーの「ピーコックチェア」。優雅な形には見とれる。本当にクジャクが羽を広げているようだ。が、意外。座ると背中が痛い。

 ヘリット・トーマス・リートフェルトの「レッド&ブルー」。かねてからの憧れの椅子。この色使いや形がなんとも言えない。座り心地もサーモグラフィもどうでもよくなる。

 ジャン・プルーヴェの「グラン・ルポ」。大好きなプルーヴェの椅子。ああ、この渋い赤色もいい。座り心地はちょっと厳しい評価だった。私はそんなに悪くないと思ったんだけど。座と背の角度が変えられたらもっといい。

 ル・コルビュジエの「シェーズ・ロング」。最も座り心地がよく、長時間座れるが、敷いてある毛皮がカユい。素足では座れない。

 デザイナーらしきオシャレなおとうさんと小学生の息子さん2人がいた。子供たちは無邪気に椅子に座って楽しそう。おとうさんのわかりやすい説明にじっと耳を傾けている。「デザイナーはデザインするけど、自分ではつくらないんでしょ?」と子供。さすが、よくわかっているではないか! 子供たちはジャージ姿。デザイナーの息子だからって、年齢に不相応なシャレた服装をさせているわけでない。伸び伸びと育てている感じが伝わっている。好印象の親子だった。幼いころからデザインを鑑賞する目を養う教育を受けられる恵まれた子供たち。将来はきっと優れたデザイナーになるのだろう。



「1960年代グラフィズム」展  印刷博物館
2002年10月19日-12月1日(後期)

 ちらしで見たはずなのに、1960年「世界デザイン会議」のポスターと1964年「冬季オリンピック」のポスターが見あたらない。どうやら、前期と後期があったらしい。しまった、前期も来ればよかった。後期の作品でおもしろかったものは、まず「サッポロ・ギネス」のポスター。どうも雰囲気が変。そう、ギネスのロゴがカタカナなのだ。「スタミナのつくビール 英国より来るギネス」というコピーがまたおかしい。「スタミナ」? 黒ビールはカロリーが高いとしても、ビールにスタミナということばはなんだかそぐわない。「英国」? ウソウソ、ギネスの本社はアイルランド。アイルランドに行ったときにちゃんと会社の前を通ったのだから。目を引いたのは、「9th Tokyo Motor Show」の海外向けポスター。デザイナーは亀倉雄策だった。1965年グラフィックデザイン展<ペルソナ>のポスターは会場が銀座松屋になっている。松屋はこの時代からデザインに力を入れていたんだなあ。酒悦海苔パッケージは1961年の作品とは思えないほど洗練されている。種類ごとに4色。


「Great Expectations―英国デザインの現在」展
東京国際フォーラムロビーギャラリー
2002年12月10日‐15日


 最新英国デザインを展示。作品ごとに音声による説明が聞ける。デザイン学生とともに生の通訳付きの説明を聞けた。ラッキー! 建築から家電、医療器具にいたるまで様々な分野のデザインが展示されていた。おもしろいのは、コンピュータ搭載で勝手に掃除してくれるダイソンの掃除機。ぜひ実演が見たい。他には、使い捨てコーヒーカップをリサイクルした鉛筆やスツール、マイケル・ヤングの高床式犬小屋、2色2重構造によって穴が開いてもすぐわかる医療用手袋、洗濯槽が取り出せる洗濯機(洗濯槽のカビが問題になっている日本にはぴったり)など。



フランス銀木の系譜 ピュイフォルカ展  東京都庭園美術館
2002年9月21日‐12月1日


 アール・デコ様式の銀器を使ったテーブルセッティングがアール・デコ様式の庭園美術館によく合っていた。草花などの装飾を好んだ父親のルイ=ヴィクトール・ピュイフォルカとモダンなデザインを好んだ息子ジャン・ピュイフォルカ。直線と曲線を大胆に用いた後者のデザインは、現代生活でも使えそう。燭台も現代的。といっても、銀器を磨く執事がいないとメンテナンスが大変。あのアンディ・ウォーホルもピュイフォルカのコレクションをしていたらしい。


「内藤ルネ」展 弥生美術館
 2002年9月

ホッとした。キャンディーより、チョコレートパフェよりあまーい少女の夢が詰まった作品。ほのぼのした気分になれる。でも単なる少女趣味では片付けられない。特に目を引いたのは、「魔女シリーズ」。幻想的で美しい魔女たち。《哀しみの舞踏会》という絵に惹かれた。少女はなぜ哀しいのだろう。憧れのあの人が他の女の子と踊ってるから? 誰にも誘われずに壁の花になってるから? 描かれている少女たちが、淋しげな表情をしているのはなぜだろう。インテリアデザイナー、プロダクトデザイナーとしても活躍。先週行けば、ルネ先生のお茶会が開かれていたそうだ。残念。ルネ先生って、女の子より女の子らしく繊細で優しい心をもった人なのだろう。



「横尾忠則 森羅万象」展 東京都現代美術館
 2002年8月10日-10月27日

一目で彼の作品だとわかるド派手色のポスター。毒々しい色が不安な気持ちにさせる。ごめんなさい。作家の意図は伝わってると思うけど、強烈すぎる。Y字路の絵は打って変わって、幽霊が出そうな怪しいほどの静けさ。人っ子ひとり出てこない。これは写真を拡大して映し出したものを絵にするという手法で書かれた。グラフィックデザイナーとして、アーティストとして、多彩な才能を感じさせた。


日本デザインコミッティ創立50周年記念「デザインの原形」展
松屋銀座8階大催場
2002年9月4日-9日

デザインには最も力を入れているデパート銀座松屋。ここのギャラリーとデザインショップは私のお気に入り。今回は大催場という場所で行われた展覧会。白を基調にした洗練された展示は、とてもデパートの催場とは思えない。選定されたのは、一見、なんの変哲もないシンプルなデザインの製品。色も抑えたものが多い。しかし、そういうデザインこそがまさしく「原形」であり、時を越えて海を越えて生き続ける。いわゆるプロ好みを感じさせるデザイン展だった。同時に本も発売。これがまたしゃれた装丁なのだ。



「JIDAデザインミュージアムセレクションVol.4」展 アクシスギャラリー
2002年4月2日‐6日

 日本インダストリアルデザイナー協会が選定した後世に残したいモノを展示。パソコン、クルマ、掃除機、デジカメなど数々のインダストリアルな製品が並ぶ。デザイナーの厳しい目が選んだモノは、大衆に人気がある製品とは必ずしも一致しないかもしれない。それは、製品の開発過程、新しい生活への提案、初代であることなども考慮されているから。日本のデザインもなかなかがんばっている。


「ル・コルビュジエ モデュロール―均整、身体、空間―」 ギャルリー・タイセイ
 2002年7月8日‐9月20日

モデュロールは、ル・コルビュジエが考案した比例。比例ってそんなに大切なのかな。よくわからない。決められた数値のなかに絵や建物を当てはめてしまうなんて、なんだか窮屈そう。そもそも、ル・コルビュジエの絵なんてあったんだ。建物も設計し、椅子もデザインし、絵も描く。多彩な才能は認めるけど、ちょっとよくばりすぎ。ま、難しいことは置いといて、「シェーズロング」に寝そべって、ゆったりできたからいいか。


「タカラ・リカちゃん」 松屋ギャラリー

 リカちゃんはいつの時代も女の子の夢であり、友達でもある。初代リカちゃんから5代目リカちゃんまでを並べて見ると、その変遷がよくわかる。目は大きくなり、脚は長くなり、髪は栗色から金髪になるなど、時代に合わせて進化を遂げている。私が好きだったのは、リカちゃん似の顔で、小麦色の肌、金髪のストレートヘアの女の子。残念ながら展示されていなかった。あの子はいったい誰だったのだろう。


「ソニア・ドローネ」展 東京都庭園美術館
2002年7月6日‐9月8日

抽象画ってよくわからないけど、ドローネの作品はただ純粋に女性らしくてかわいい! 色遊びが大胆で楽しいし、元気な動きが感じられる。《色彩のリズム》は特に好きな作品。絵の好き嫌いは理屈ではない。初めてこの絵を見たとき、何か心に触れるものを感じた。絵画以外にも、衣装デザインやテキスタイルなど幅広く手がけている。レターヘッドも展示されていたが、いかにもドローネらしいデザイン。ドローネの作風は、夫のロベール・ドローネの影響を受け、影響を与えた。もっとも、ソニアは94歳、ロベールは56歳で他界しているので、ソニアのほうが作家活動はずっと長いわけだ。



「アルヴァ・アアルト展」 新宿パークタワー
2002年8月

やっぱり人間は地に足がついたところで暮らさなきゃ。都市の高層マンションに囲まれていると、ふとそう思うときがある。アアルトの低層建築は自然と一体化している。フィヨルドをイメージしたという花瓶もフィンランドの大自然を感じさせる。椅子も冷たい金属は一切使われず、木のぬくもりが感じられる。でも、座れないのが残念。椅子はやっぱり座ってみなければわからないよね。


「バックミンスター・フラー」展 ワタリウム美術館
2002年5月6日

フラーは、幾何学構造や自然科学という文系の私が苦手そうな分野を研究。数学者でもあった彼の頭の構造は、バリバリの文系人間である私の頭とはまったく異なるものなんだろう。彼の発明は、実にユニーク。独自の理論「ダイマクション」に基づく、ダイマクション・カー、ダイマクション・マップ、ダイマクション・バスルーム、ダイマクション・ハウスを開発。バスルームはまさに現代のユニットバス。数学オンチの私用に体験コーナーも設置されていて、難しい理論が少しはわかったような気になれる。余談だが、展示室に「キュレーター募集」の求人広告を見つけた。コネが多いと言われる業界のなかで、ワタリウムの開かれた体制を見た気がし、ここが好きになった。


「カンディンスキー」展 国立近代美術館
2002年3月26日‐5月26日

鮮やかな色彩の迫力大画面に圧倒された。《コンポジションVII》の前で立ち尽くす。モノの形を表現するんじゃなくて、モノの放つエネルギーを表現しているんだそうだ。凡人の私には見えないが、芸術家にはそれが見えるらしい。点・面・線の織り成すハーモニー。せっかくだから、カンディンスキーへのオマージュでつくられたマルセル・ブロイヤーの「ヴァシリー・チェア」を会場に置いてほしかった。


「未来をうつくしくするデザイン」展 西武ギャラリー
 2002年6月19日‐24日

遊・楽・美をテーマに、透ける黒色のカーテンの向こうに作品を展示するという変わった手法。カーテンをめくって見るのが面倒だけど、カーテンの向こうにぼんやり見えるのもまた別の魅力かも。ブリオンヴェガの赤いラジオがレトロな感じでいい。これは復刻版が発売予定。マイケル・ヤングのプラスチック製犬小屋は画期的でキュート。作品集CDつきで、ちょっと得した気分。



「現代デンマークデザイン展デニッシュ・ウェーブ+」
みなとみらいギャラリー
2002年2月8日‐3月10日

デンマークの建築、インテリア、デザインを展示。すいていたので、アルネ・ヤコブセンの「エッグ・チェア」に座り放題。初めて座って感動した。ぐるぐる回って、某ヘヤースタイリング剤のCM気分。包まれてホッとできる椅子。



「オーストリア・デザインの現在 DESIGN NOW, AUSTRIA」 原美術館
2002年1月26日‐4月7日

1970年代以降のオーストリア・デザインを紹介。建築家ハンス・ホラインと思想家ヴィクター・パパネックの理念が国内外に大きな影響を与えている。

以前、ヴィクター・パパネックの『生きのびるためのデザイン Design for the Real World』『人間のためのデザイン Design for Human Scale』を読んだことがある(名古屋で講演も聴いたことがある)。弱者のためのデザインを提唱。また、日本の茶せんや下駄、足袋などを評価していた。 ふと、引用されていたある一節を思い出す。「釜ひとつあれば茶の湯はなるものを、数の道具をもつは愚な」(利休)。これは、モノがあふれかえる現代に鳴らす警鐘だろうか。




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