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Exhibition 2003



「クッションから都市計画まで」
ヘルマン・ムテジウスとドイツ工作連盟:ドイツ近代デザインの諸相 
東京国立近代美術館  2003年1月18日-3月9日


 ドイツ工作連盟(DWB)は1907年に芸術家、工芸家、建築家などにより結成された。ムテジウスはその代表的な人物。実はムテジウスは日本との関わりが深い。法務省をはじめとする日本の官庁の建築に関わっている。が、後には欧米のジャポニズムやユーゲントシュティールを否定。日本にあんまりいい思い出がなかったのだろうか。ペーター・ベーレンスは電気会社AEGの専属デザイナーとして、電化製品、広告、ショールーム、工場までトータルでデザインした。その後、DWB内で、製品の規格化を主張するムテジウスと個人主義を主張するアンリ・ヴァン・ド・ヴェルドとの規格化論争が持ち上がった。ヴァン・ド・ヴェルドが勝利したものの、結果的には量産化の時代に入った。
 ベーレンスの卓上扇風機は、レトロな雰囲気が美しい。手仕事的な要素を残しつつ、量産可能製品でもあったのだから、バランスが取れている。ルシアン・ベルンハルトのポスターはどれも、どことなく女性ならではのかわいさが感じられ、目をひいた。タゴベルト・ペッヒェのチョコレートセットは鮮やかな黄色と花柄の組み合わせ。チョコレート色に合いそうだ。寒ーい冬にはこんなカップでホットチョコレートを飲んで暖まりたいな。



「ドイツの最も美しい本」展  印刷博物館P&Pギャラリー
2002年12月6日‐2003年2月16日

 ドイツ・エディトリアルデザイン財団により毎年選出されるドイツの最も美しい本の数々。日本での開催は6回目であり、今年から、モリサワ・タイポグラフィ・スペースから印刷博物館へと場所をうつした。豪華本ではなく、市販本が対象。テキスト、挿絵、製版、印刷、フォント、色、行間など本のデザインに関わるすべてが選考の基準となる。実際に手に取って見られるのがうれしい!気に入ったのは文学一般部門の『ロバの第二の耳 Des Esels Zweites Ohr』。布製小型ハードカバーで、広げるとロバの絵が表紙、背、裏表紙へと続く。中の余白が心地よい。『月が昇った Der Mond ist aufgeganden』は、表紙、しおり、小口、箱がすべて青で統一。極めつけは中の青空の写真。児童書青少年向け図書部門『おじいさんの天使 Opas Engel』は、守護天使のおはなし。ドイツ語はわからないけど、絵を見ているだけでほのぼのした気分になれる。どの本もテーマにふさわしい装丁だ。ドイツの本は全般的にフォントが小さめだけど、ドイツ人は眼がいいのかな?

「ミース・ファン・デル・ローエ VS. ル・コルビュジエ―20世紀の新しい空間を求めて」展 ギャルリー・タイセイ
2003年1月14日-3月

 20世紀を代表する大建築家の対決。なんと両者とも正規の建築教育を受けず独学だったという。そういえば、安藤忠雄も独学。ヨーロッパや京都の建物を見たり、コルビー(失礼!)の図面うつしたりして学んだ。
 ミースは欧米限定の活動だったのに対し、コルビーは欧米の他に日本、インド、アルゼンチンでも活動した。日本にはご存じ国立西洋美術館を建ててくれた。ミースのガラスとスチールの四角いスカイスクレイパーは、あまりにも冷たすぎる。私はもっと温かみのある建物が好き。いまだに都市においてガラスとスチールの高層ビルを建てたがる傾向はもう終わりにしてほしい。コルビーの「ロンシャン礼拝堂」は、光の採り入れ方がなんともすばらしい。光と影が神々しさをかもし出す。これぞ祈りの場にふさわしい。「ユニテ・ダビタシオン」の集合住宅は、赤・黄・青の色が単調な打ち放しコンクリートにおもしろみを与えている。ロフトに上がる階段は、プルーヴェのデザイン。
 椅子は、グラン・コンフォール、バルセロナチェア、ブルーノチェアなどを展示。ブルーノチェアは、キャンティレバー構造が安定感なさそうと思ったけど、座ってみたら、適度なスプリングが案外心地よかった。愛妻家だったという点も考慮して、個人的にはコルビーに軍配!




ポスターのユートピア ロシア構成主義のグラフィックデザイン
川崎市民ミュージアム  2003年2月15日‐4月6日

 赤・勢・激・力…。ロシア・アヴァンギャルドのみなぎるエネルギーと訴えかける力のすごさに圧倒される。これは商業的なポスターとはまるで違うプロパガンダ・ポスターだ。赤と黒の幾何学が、変わっていく時代の変わっていく芸術を力強く物語る。フォトモンタージュが多用されているが、どれも厳しい顔つきで笑顔などまったく見られない。目を引いた労働カレンダーは金づち、飛行機、旗などのマークが一見かわいいけれど、工場は止まることなく常に稼動していたことがわかる。
 最近、日本では「ロシアバ」なる軽い言葉でもてはやされているロシア・アヴァンギャルド。実はそんな生易しいものではない。 懸案事項があったために、今ひとつ集中できず…。




サ安藤忠雄建築展2003 再生―環境と建築
東京ステーションギャラリー 2003年4月5日‐5月25日

 
安藤建築は、素材的にはガラス、スチール、コンクリートの建築だと言える。別の見方をすれば、光、風、水を感じる建築だとも言える。
 私は、安藤の大プロジェクトより小プロジェクトに惹かれる。「ユネスコ瞑想空間」は、一見、何の変哲もないコンクリートの円筒だけど、光と風を肌で感じながら自分だけの世界に入れそうな空間だ。今回は展示されていなかったが「光の教会」も好きなプロジェクトのひとつ。自然を感じながら厳かな雰囲気のある場をつくり出すことにかけては安藤に並ぶ者はない。「フォートワース現代美術館」は、水のなかに浮かび上がる白い美術館がまぶしい。これはどこかで似た風景を見たと考えていたら、そうだ、広島の厳島神社。水のなかに浮かび上がる赤い神社。これを白で再現したのかな。「直島ミュージアム」プロジェクトは、フンデルトヴァッサーの丘の家をふと思い出させた。といっても、曲線のフンデルトヴァッサーに対して、ジオメトリーの安藤。似ていそうで対照的なのがおもしろい。「表参道同潤会アパート」は、ケヤキ並木とつながるように屋上に植栽されるとか。レトロな趣ある同潤会がなくなるのは淋しいけど、安藤の手によってどう生まれ変わるのかが楽しみでもある。



ヨーロッパ・ジュエリーの400年
2003年4月24日‐7月1日 東京都庭園美術館

 
またしても、建物にぴったりの展覧会。展示品のひとつひとつが小さいこともあって、人が流れずものすごい混雑だった。99パーセントくらいが女性。残りの1パーセントは仕方なしにパートナーについてきた男性。やっぱりジュエリーは女性の永遠の憧れなのね。17世紀や18世紀のジュエリーは、ミハエル・ネグリンを思わせる。ネグリンは、こうしたアンティークを現代的なテイストを加えて解釈し直しているわけだ。アンティーク・ジュエリーは時を越えた美と妖しいまでの光を放ち続け、いつの時代にも女性たちを魅了してきた。きらめくダイヤの向こう側に、数々の所有者の喜びや哀しみが映し出されているように感じた。


ポスター芸術の巨匠たち―ロートレックからウォーホルまで―
2003年6月20日‐7月27日 サントリー美術館

 
私のデザインマインドの原点とも言える作品は、A・M・カッサンドルの「ノルマンディ号」。力を与えてくれる作品であり、お守りなのだ。今回、初めて実物の前に立ち、その迫力に圧倒された。よく見ると、船の前をカモメの群れが飛んでいる。小さなカモメと大きな船。対照的な存在。私はカモメの一羽になって、ノルマンディ号を見上げている。
 私好みのポスターは、少ない色とすっきりしたラインが効果的に使われているもの。よって、ウィーン分離派やマッキントッシュの作品に大いに魅せられた。また、レイモン・サヴィニャックの作品はいつどこで見てもかわいい。「半額でご旅行を」は、人物が半分しか描かれていないのがおもしろい。





ウィーンの夢と憧れ 世紀末のグラフィック・アート
2003年7月5日-8月24日 うらわ美術館

 
ウィーン分離派のグラフィックを中心とした展覧会。ああ、分離派のポスターは美しい! 何度見ても、その美しさを再確認し満ち足りた気分になれる。縦長、余白の効果的な使い方、少ない色、抽象的な絵、美しいタイポグラフィが特徴的。陰影や立体感のない平面的な美しさは、日本の浮世絵から影響を受けていた。実は、私は筆使いに画家の激しい感情が表れている絵が大の苦手。グラフィックのようなさらりとしたものが好きなのだ。ポスター以外では、本の装丁も美しい。なんと、展覧会カタログは、展示品のコロマ・モーザー装丁の本と同じで、アンティークな風合いに仕上がっていた。




田中一光回顧展 われらデザインの時代
2003年6月21日-8月31日 東京都現代美術館

 会場に一歩足を踏み入れると、そこは一面の「海」だった! 水を表すペットボトル製の透明の壁面と海を表す青いグラデーションの床。安藤忠雄が展示デザインを担当し、田中一光の持つ透明感を表現したという。床の青いグラデーションは、展示作品のひとつ「島のポスター」を床で再現。一面の海に文字の島が浮かぶ。なるほど、タテ型のポスターより、ぐっと海に近づいた感じだ。田中一光は日本文化に造詣が深く、伝統文化を現代的な感覚で表現している。幾何学的な日本舞踊や歌舞伎のポスター、切り絵風のポスター、タイポグラフィー、ロゴなどどれを見ても、0.1ミリの妥協も許さなかったという仕事に対する厳しい姿勢が感じられる。完璧な美と呼ぶのにふさわしい。私の古巣IdcNのポスターもあった。「デザインを保管するミュージアムが必要だ」と安藤忠雄がギャラリートークで言っていたが、IdcNがこうした優れたデザインを収蔵してくれることを期待しよう。
 ミュージアムショップでハードカバーのノートに目がとまった。鮮やかな9色。美しい装丁。微妙な質感。表紙には窓がある。田中一光のデザインだった(赤を購入)。



レイモン・サヴィニャック回顧展
2003年7月19日-8月31日 田崎美術館

 
軽井沢で思いがけず出会えたかわいい展覧会。サヴィニャックの作品をこれだけ一度に観られる機会はなかったので感激! おなじみの「Monsavon」のウシのポスターに「Treca」のヤギのポスター。まるで絵本ができあがりそうなかわいさだ。日本の企業の仕事もしていたらしく、森永チョコレートや豊島園のポスターも見られた。やはり、少ない色、はっきりした線、一様ではないやわらかな塗り方を特徴としている。残念ながら、「エール・フランス」のポスターは見当たらなかった。併設のサヴィニャック・カフェも感じいい(この展示が終わったら別の名前のカフェになるんだろうか)。フランス的かわいさを堪能して、雨の避暑地の憂うつが吹き飛んだ気がした。 



ブックデザインの源流を探して チェコにみる装丁デザイン
2003年7月26日‐9月28日 印刷美術館

 ロシア・アヴァンギャルドとともに最近、注目されているチェコ・アヴァンギャルド。なかでも、ヨゼフ・チャペックのデザインが人気で、有名なエミル・ヴァヘクを表紙にした本も出版されている。赤を基調にしている点など、ロシア・アヴァンギャルドとの相似が見られる。といっても、エミル・ヴァヘクや愛犬を取り入れたデザインなど、ユーモラスでかわいらしさを感じさせるものも多い。このワンコ「Dasenka」はただ者ではない。ミュージアム・ショップではグッズになっていたから驚きだ。





Quietness 静けさのデザイン
現代フィンランドデザイン展
2003年10月10日‐10月28日 リビングセンターOZONE

 
デザイナー、建築家、アーティストがそれぞれのやり方で静けさを表現するという、おもしろい展覧会だった。ながーい木のベンチが会場の外から会場の奥へと続いている。これは外の展示と中の展示に関連性を持たせるという意味があったらしい。ユリヨ・クッカプロは、かつてはオーガニックなフォルムの樹脂やスチールのチェアで有名だったが、ここ最近は幾何学に転向した。展示されていた椅子は、リートフェルトのレッド&ブルーの構造を思わせる。白い空間のなかで青い影を落とす白い椅子は、この上なく静かだった。



FEEL FINLAND
2003年10月14日 スパイラルガーデン

 一日限りのフィンランドデザイン展。NOKIA、marimekko、iittalaなどフィンランド企業の製品を展示。エーロ・アールニオの椅子はかわいすぎー! 「ポニー」や「ティピ」にまたがったり、「ボール」で瞑想したりと体験できるのが楽しい。マイヤ・イソラの「Unikko」は大のお気に入り。黒バージョンも渋い。NOKIAの携帯電話もシンプルでよい。かつて、○‐フォンでカメラのないシンプルな機種に変更したいと言ったら「うちにはありません」と言われたのを思い出して苦笑





あかり
イサム・ノグチが作った光の彫刻 AKARI
2003年10月28日‐12月21日 東京国立近代美術館 本館2階ギャラリー4

 
日系アメリカ人イサム・ノグチによる光の彫刻展。内部に電球を入れて作品を光を発する「ルナー彫刻」を手がけていたイサム・ノグチが、岐阜の美濃和紙と出合ったのがきっかけでこれらの作品が誕生した。木枠に竹骨を巻きつけ、和紙を貼り、木枠を抜くという工程でつくられる。作品を見ながら、ふと、バックミンスター・フラーのジオデシック・ドームを思い出していた。進んでいくと、パネルの説明のなかに、「1951年AKARIをたたんで封筒に入れて友人のバックミンスター・フラーに送った」との記述があるではないか! やはり、つながりがあったのだ。イサム・ノグチは日本人以上に日本の伝統を愛し、和紙によって電球の光をあたたかな太陽の光に変えた。



ガウディ かたちの探究 Gaudi, Exploring Form
2003年10月4日‐12月14日 東京都現代美術館

 
展示室に入った瞬間、「うわーっ」と歓声を上げた。連続する白い布で白いカテナリー・アーチが再現されている。厳かな雰囲気さえも漂って、美術館のなかとは思えない。アーチを抜けると、展示が始まった。逆吊り模型の発想がユニークだ。一見、金属の棒がたくさん吊り下がっているだけだが、下に置かれた鏡をのぞくと、あら不思議、ちゃんと建物の模型に見える。錐状面の波打つ屋根は、正弦曲線が使われている。パイプの模型では平面部分と曲面部分を連続させて、この原理が説明されている。なるほど、文系の私にもよくわかる。要するにジャバラをぎゅっと押し縮めると波形になるということだ。実物が見られない建築展の難しさを知っている私は、実のところ、あまり期待していなかった。それは大きな間違いだった。



ジャン・ヌーベル展
2003年11月1日‐2004年1月25日 東京オペラシティアートギャラリー

 
閉所恐怖症の人にはお勧めできない展覧会。狭くて暗い空間に閉じ込められ、ひたすら映像やスライドによって作品が紹介される。建築展によく見られる模型や図面は見当たらない。大型スクリーンでは臨場感を高めるために、都市のざわめきなどの音が流される。が、とてもスクリーンのなかの建築には入り込めない。暗さと狭さと騒音に心が落ち着かなくて、一刻も早く出たい気分になってしまった。効果を狙ったのはわかるけど、やっぱり、展覧会には開放感がなくてはね。



モダンお化粧グラフィック展
2003年10月14日-11月28日 MOTS

 
大正モダニズムの化粧品のパッケージ。化粧水や乳液の容器、、せっけんの箱などに、繊細な日本女性や花が描かれていて、アールヌーヴォーの影響を感じさせる。パッケージに漢字が多用されていることも、アルファベットやカタカナを見慣れた現代においては、かえって新鮮だ。当時のデザインは、西洋の影響を受けながら、ほどよく和風にアレンジされていた。



わたしの同潤会アパート展
2003年11月10日-11月30日 日本建築学会建築博物館ギャラリー

 同潤会アパートの姿を、映像と実物の部品によって紹介。解体されたアパートのドア、ソファ、窓などが展示されている。フランク・ロイド・ライトを思わせるものもあった。表参道のアパートが取り壊されるときは話題となったが、自宅の近くにあった江戸川アパートはひっそりと姿を消した。大きな黒い建物があった場所ががらんとし、向こう側の風景が見えた。私の心にもぽっかりと穴があいた……。と言っても、これは住んでいない人の感傷なのかもしれない。住んでいない人にとってはレトロな趣ある場所だけど、洗面所やお風呂を見るとやはりここで暮らすには勇気がいりそう。



MINI MINI MOTOR SHOW
2003年11月26日-12月25日 クリエイションギャラリーG8 & ガーディアン・ガーデン

 MINI Cooperの模型を、クリエイターがそれぞれの感性でクリエイトするという、おもしろい企画だった。若手クリエイターから大御所まで、123名+111名が参加。目立ったのは、ぬいぐるみをかぶせるというアイデア。なかでも「ぬいぐるま」というタイトルの作品が笑えた。大御所デザイナーでは、過去の自分の作品の数々を縮小して貼り付けるという手法が見られた。一番気に入ったのは、三日月を上に載せ、車体に都市のビル群が描かれた作品。ごめんなさい。タイトルと作家をメモしてくるのを忘れました。



あかりメッセージ2003 Lighting Next Generation 「来」
2003年12月12日-26日 AXIS GALLERY ANNEX

 JIDAの会員による照明デザイン。40立方センチほどの箱のなかで次世代のあかりを提案する。季節柄、クリスマスを意識したものが多く見られた。最期の晩餐を赤い光と黒い陰で演出した「H×W×D」、何層ものハートのむこうにサンタさんが現れる「Heart Coming」、人々・街角・光を暖かく表現した「あかりのありか」などが心に残った。



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