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Exhibition 2004



永井一正ポスター展
ギンザ・グラフィック・ギャラリー  2004年1月9日-31日

 1階と地下のフロアではまったく作風が異なる。1階は緻密な線画のポスターが並び、地下はカラフルな幾何学ポスターが並ぶ。まるで二重人格のジキルとハイド。同じ作者とは思えない。つまり、幅広い作品を手がけることができる才能の持ち主ということだろう。赤のシリーズでは「SAVE」と訴えかけながら、動物たちが地の赤に溶けていく。急がないと時間がない、と切実な叫びが聞こえてくる。「LIFE」では、線画のトカゲやセミが妙に生々しかった。



ドイツの最も美しい本展
印刷博物館 P&Pギャラリー  2004年10月3日-2004年1月25日

 毎年恒例のドイツ・エディトリアルデザイン財団が選ぶドイツの美しい本。実際に手に取ってページをめくることができる。今回、印象に残ったのは、"ENGLISH FOR BIGiNNERS"。英語の教科書だ。表紙も挿絵も文字もすべて赤と黒で構成されていて、しゃれたデザインだ。この教科書なら楽しく英語が学べそうだ。



ヨハネス・イッテン 造形芸術への道
東京国立近代美術館 2004年1月14日‐2月29日

 宇都宮美術館で開催されていたときに新幹線に乗って行こう!としたまさにその日の朝、「日曜美術館」で東京での巡回展を知った。あれから半年、待ちに待った展覧会だ。
 いつのまにか具象を好まなくなった私の心に強く訴えかける色・色・色。《四季》の絵は、木も花も山も海も登場しない。ただ、色彩だけで心がとらえる四季の感覚を表現しているのだ。心のなかの何かもやもやした感じが絵になったようだ。《幸福な島国》という絵は、日本を示しているという。強い興味をもちながら、来日を果たしえなかった憧れの国日本。イッテン先生がイメージする日本は、桜の花が咲き誇る青い海で囲まれた緑豊かな国だったのだろう。墨絵や習字のような絵も多く見られた。同時代のカンディンスキー、パウル・クレー、ドローネーの影響が感じられる作品も多かった。《炎の塔》は天まで続く造形芸術への道だ。回転する塔を見ながら、これからもバベルの塔を昇っていこうと決意を新たにするのだった。



ロトチェンコのプロダクト・デザイン展
2003年12月4日-2004年4月18日  ワタリウム美術館

 岐阜県現代陶芸美術館で開催された「ロシア・アヴァンギャルドの陶芸」展から、その一部であるアレクサンドル・ロトチェンコのデザインが展示された。展示フロアは、ロシア・アヴァンギャルドの色である赤・黒・白でまとめられている。1920年代のロシアのデザインが、飛騨の匠の技によって現代によみがえった。ロトチェンコの「労働者クラブの読書テーブル&チェア」に座って、「ティーセット」でロシアン・ティーを楽しむ。隣には赤と黒の「チェス・テーブル」。当時の思想は抜きにして、ひたすらカッコいいし、前進していく力強さが感じられる。ただ、このティーセットは、本当に労働者向けだったのだろうか? ミルクポットなど取っ手がとても華奢なのが気にかかる。ガンガン洗ったら、すぐに割れてしまいそうだ。なんとなく、当時は実現しなかったわけがわかったような気がした。





リートフェルト展 職人であり続けたオランダ人デザイナー、リートフェルトの椅子の家
2004年1月17日‐3月21日 府中市美術館

 「赤と青の椅子」でおなじみのリートフェルトの家具と建築を扱った展覧会。「赤と青の椅子」が赤と青になる前の木目版や白版もあった。「ジグザグ・チェア」は従来は何本ものボルトで固定されていたが、現代の技術ではボルトの跡がないさらりとした表面が可能になっている。座ってみると、思ったより安定感がある。木のイメージしかないリートフェルトだが、カンチレバー構造のこの椅子を実現するためにスチールパイプを使ったバージョンもつくって模索していたのは驚きだった。これでもかというほど直線でまとめられたシュレーダー邸は、デ・ステイルの原則にしたがったモダン建築。すぐ後ろにあるレンガ造りの住宅との対比がおもしろい。ユネスコの世界文化遺産に指定されたそうだ。オランダに行ったら、見に行こう。
 欲を言えば、デ・ステイルとの関わりをもう少し示してほしかった。なぜ、3原色なのか。直線なのか。制約のなかで表現することにどういう意味があったのか。
 展覧会の後に参加したワークショップは、最高に楽しかった! なんと、憧れの「赤と青の椅子」の縮小版模型を制作できるのだ。構造を確かめながら、脚、肘掛け、背、座の順に組み立てていく。垂直の部材1本が肘掛けに届かないというオリジナルのレッド&ブルーができあがった。




20世紀デザインの旗手 レイモンド・ローウィ
2004年3月13日-5月16日 たばこと塩の博物館

 レイモンド・ローウィの作品は、まさに「口紅から機関車まで」と幅広い。流線形の機関車や自動車は、クライスラービルを横にした姿から発想を得たという。もっとも空気抵抗など関係ないエンピツ削りまで流線形にしてしまうのはナゾだが。アメリカでよく乗ったグレイハウンドのロゴは、変更前と後を比べるとおもしろい。変更前は太ったのろまな雑種だったが、変更後はスリムですばしっこい猟犬になった。コンコルドの内装では、通路に沿って天井を走る黒い帯を加えただけで、魔法のように空間が広く感じられるようになったから驚きだ。映像に写るローウィは、一言で言えば「伊達男」だ。オシャレなフランス的センスをアメリカに持ち込んで大衆にグッド・デザインを届けた。この充実ぶりで、入場料300円は安い!


SALIH MEKHICI DESIGN展 SHINING IN THE RAIN
2004年5月29日‐6月29日 ワールドデザインギャラリー[アクティブG3FTAKUMI工房]

 
金属メッシュの袋が、ぎゅっと口を結ばれて床に置かれている。柔らかいはずがないのに、どこまでも柔らかなこの質感。照明デザイナー、サリー・メクイッチのライトは、細やかな線で闇のなかに幻想の世界を描き出す。ジバンシーなどショールームを多く手がける彼のライトは、タイトルのごとく、雨に濡れた街角が実によく似合う。



プライベート・プロダクツ 建築のフィギュア展
2004年6月4日‐8月10日 INAXギャラリー名古屋

 
フィギュアとは人形のことを指すだけではないらしい。ここに展示されているのは、建物のフィギュアだった。好きな建築物を手元に置きたい、でも実物を置くことはできない。そこで願いをかなえてくれるのが建築フィギュアというわけだ。迎賓館、東京駅、東大安田講堂、岩崎邸、古河邸、F・L・ライトの自由学園明日館などの洋館が並ぶ。着色されていないので、実物とイメージが少し異なる。今はなき正田邸は、もうフィギュアでしか見られない。



現代デンマークポスターの10年
2004年6月3日‐6月26日 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

 絵筆を使ったような手描き風の作品が何点が見られた。なぜか、古さのなかに新しさを感じる。ベア・アーノルディのDSB(デンマーク国鉄)のポスターは、6枚並べると電車が動いているような錯覚にとらわれた。ポスターは長方形とは限らないことを示したのは、フースクミットゥナウン。最も印象的だった作品は、フィン・ニカルドの「SAVE THE HUMAN RIGHT」。耳の一部が欠けたミッキーマウス風デザインであり、かわいいイメージで重い人権問題をわかりやすく訴える。



PROJECT1 KURAMATA SHIRO
2004年3月19日‐6月30日 フロムファースト1F

 ISSEY MIYAKEのファッションと倉俣史郎の家具のコラボレーションという企画がユニークだった。といっても、倉俣は故人だから、倉俣の家具へのオマージュとして、ISSEY MIYAKEの服がつくられたと言ったほうが正しいだろう。倉俣のはかなくも美しい椅子「ミス・ブランチ」に合わせてつくられた白いウェディングドレスには、赤いバラの花びらが袋状になった裾に入れ込まれている。ISSEY MIYAKEの店内には、私を含めて、いつもと違う人々が訪れていた。



アール・デコの精華
2004年4月20日‐6月27日 東京国立近代美術館工芸館

 幾何学模様を多面性を特徴とするアール・デコの時代。アール・ヌーヴォーとはまた違った意味での華やかさがある。カッサンドルのポスター「ノルマンディー号」にも再会できて感激。ピエール・シャローのフロアスタンド「修道女」は、幾何学的な三角の組み合わせだが、その名のとおり黒衣に身を包んだ修道女のように見えるところがおもしろい。アール・デコに影響を受けた日本人作家の作品も紹介。内藤春治の「壁面への時計」は幾何学の組み合わせであり、文字盤の数字もいかにもフランス的だ。しかし「壁面への時計」って何? 単なる壁掛け時計ではないのだろうか。



エンプティ・ガーデン2展
2004年4月24日‐9月26日 ワタリウム美術館

 デザイン系の展覧会ではないけれど、お気に入りのワタリウム美術館がまたまたやってくれました! シュタイナー&レンツリンガーの《ホエール・バランス》は、吹き抜けの天井から、花、果物、骨、野菜などのモビールが吊り下がる。下に置かれたマッサージベッドに寝転んで鑑賞すると、上から吊り下がる庭は一見きれいだが、よく見ると下着など不思議なものもいっぱい。心地よくて長居してしまう。鑑賞している人たちは皆楽しそう。トーマス・フレヒトナーの《スパイス・ガーデン》は、ひたすら緑の木や葉や草をスライドに映す。一作品がフェードアウトしながら次の作品につながり、スライドは果てしなく続く。見ていると、だんだん心が無になっていく。リラクゼーション効果があるくつろぎの展覧会だった。疲れている人にオススメ。



巨匠が描いたオリンピックポスター展
2004年6月30日‐7月18日 ポーラミュージアムアネックス

 亀倉雄策、ピカソ、ミロ、ウォーホルなどの巨匠が、それぞれの作風で力強くオリンピックを表現している。拙訳書に『フンデルトヴァッサー 建築』があるが、彼の手になるサラエボオリンピックポスターもあった。渦巻きがトラック風になり、OLYMPIAの文字まで曲線になっている。黒地に白いドットで雪が描かれ、冬季大会であることを強調する。色や形が異なる多数の窓は、彼が建築で「窓の権利」を訴えていたことを思い出させる。ひとつひとつの要素があまりにもフンデルトヴァッサーらしい。



モダンってなに? MoMA The Museum of Modern Art @ 森美術館
2004年4月28日‐8月1日

 デザイン関連も充実。アール・ヌーヴォー、デ・ステイル、ロシア・アヴァンギャルド、ドイツ表現主義、バウハウス、ウォーホルなど近代デザインを満遍なく紹介している。と、そこへ、真っ赤な髪に白の水玉模様の真っ赤な服に身を包んだ人物が現れた。草間弥生さんだ! 彼女自身がアートだった…。あまりの存在感に、会場内のどの作品も彼女の前では色あせて見えた。





2004年ADC展 Tokyo Art Directors Club Exhibition
2004年7月2日‐7月30日 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

 今では誰もが知っている新潮文庫の「YONDA」は本が売れない時代に本を読まない世代にアピールしたことは確かだ。かわいいパンダと原色のイラストに足を止め、YONDAグッズがほしくて、思わず本を買ってしまった人も多いのでは。動機は何であれ、本を読む楽しさを知るきっかけになればよい。「ラフォーレ原宿」の赤・黄・白の地に目玉のシリーズも同様にシンプルでインパクトがある。キリンビバレッジ「体質水」のポスターは、ほぼ漢字だけで構成されているところが新鮮だった。



ぐるぐるめぐるル・コルビュジエの美術館
2004年6月29日‐9月5日 国立西洋美術館

 国立西洋美術館には何度も足を運んでいるものの、展示物を見ることが中心であり、建物自体をじっくり見たことはなかった。 巨匠ル・コルビュジエが日本に建ててくれた唯一の建物である国立西洋美術館の内部を改めて見学した。これまで気づかなかったが、展示室上に低いガラス張り空間がある。本来は自然光で絵画を照明するはずだったが、現在は蛍光灯が入っているという。不透明ガラスを通して、蛍光灯の光が和らげられている。屋上庭園は、サヴォア邸を思わせる。ヨーロッパ的に、日光浴を考えたのだろうか。収蔵作品が増えた場合に、かたつむり状に増築していくことを考えたというが、弟子による増築はその形をとらなかった。屋上庭園をはじめ、中3階のミニ階段、床照明など、現在使われていないものが多いのが残念だ。



幻のロシア絵本1920‐30年代展
2004年7月3日‐9月5日 東京都庭園美術館

 ロシアのイメージとはほど遠く、柔らかでかわいらしくユーモラスな絵本が並んでいた。素材や印刷に恵まれないだけに、よけいにその造形的な質の高さが目立つ。動物などを描いた楽しい絵本がやがて労働をテーマとするプロパガンダ的なものへと変わっていく。本のサイズもだんだん小さくなり、ついには豆本になってしまった。こうして、ロシアアヴァンギャルドのデザインと同様に、国家の統制を受けて、絵本も姿を消してしまったのだ。



英国モダン・デザインの魅惑 ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ
2004年7月17日−9月5日 岐阜県美術館



光の彫刻 イサム・ノグチ あかり
2004年9月17日−10月31日 岐阜県美術館

 日系アメリカ人イサム・ノグチの美濃和紙と竹ひごを使った「あかり」。古き良き日本の温かみを感じると同時に、不遇な過去ゆえにか、淋しさが漂う。年代によって、「あかり」が進化していく様子がわかる。伝統的なちょうちん風な作品に始まり、形や脚で遊びながら、伝統の域を打ち破り造形的になり、やがて本来の姿に回帰する。展示会場デザインは、インテリアデザイナーの重鎮、内田繁。日本の伝統的な紗を使った展示が蚊帳を思わせ、その向こうに見えるあかりが幻想的に浮かび上がる。白い作品を魅せるための色の背景も効果的だった。でも、本当に「あかり」が似合う場所は、美術館ではなく、古民家なんだろう。日本人を父親に持ち、日本の伝統文化に惹かれ、自らノグチ姓を名乗り、アメリカで日系人強制収容所に志願して入りながらも、日本人になりきれなかったノグチの哀しい思いが「あかり」とともにゆらめく。



リキテンスタイン 版画の世界
2004年9月18日‐11月7日 名古屋市美術館

 アンディ・ウォーホルと並ぶポップアートの帝王ロイ・リキテンスタインの展覧会、そして、今日は土曜日、さぞかし若者たちで混雑しているだろうと美術館に足を運んだ。予想に反して、会場内には閑古鳥が鳴いていた……。これが名古屋の現実か。ゴッホ、ルノワール、モネといった「定評ある」画家にしか興味を示さない(定評あるブランド、ルイヴィトンを異常に好むのと同じかも)。リキテンスタインがすごいのは、一目で彼の作品だとわかる独創性であり、太いラインの輪郭、原色、60年代風の女性たち、多用されるドット、吹き出しなど、すべての要素が実にユニークだ。他からの引用も多いが、彼の手にかかると、モネもミッキーマウスもタンタンもたちまちリキテンスタイン色に染まる。かつてブルジョワたちのものだったアートが大衆の元に降りてきて、アートがもっと身近になった。そのことにリキテンスタインが果たした役割は大きい。



COLORS ファッションと色彩展 ―VIKTOR&ROLF
2004年8月24日-12月5日 森美術館

 オランダ人デザイナーは、制約をインスピレーションと創造の基盤とするのが得意―それを確かに裏付けているデュオ、ヴィクター&ロルフの会場構成とショーの映像。黒の間に始まり、マルチカラー、赤と黄、ブルー、最後に白の間に終わる。色の制限があって、ヴァリエーションが出しにくいはずだ。とりわけ、白には濃淡さえもない。それなのに、最も華やかで最も変化に富んでいたのは、白の間だった!白がイメージする清楚で厳かな雰囲気を示すように、教会風パイプオルガンの音色が響くなか、映像に登場する立体的にリボンをあしらったジャケット、ドレープを描くラブリーなドレス。黒の間ではモデルの顔まで黒に塗っているという徹底ぶりだった。ただ、展示作品に彼らのものがあまりなかったのが残念だし、映像をじっくり見られるように椅子を設置してほしかった(各部屋の色の椅子)。



ルシアン・デイ&ロバート・スチュアート展 戦後の英国モダンテキスタイルのパイオニア
11月19日-28日 AXISギャラリー

 
魚、人間の顔、テレビ(?)などが抽象化されていて、どことなくユーモラスな雰囲気が漂う作品が多い。かわいくて、人の心を和ませると同時に、「?」と立ち止まらせる不思議な魅力にあふれるテキスタイル。



深澤直人 ありそうでないもの展
2004年11月11日-2005年1月23日 ワタリウム美術館オン・サンデーズ 

 
鏡餅に見立ててみかんを載せた丸い白い加湿器、水盤に見立ててバラの花を生けた赤の加湿器、LEGOでできた携帯、バナナ風ブリックパック、食パン形のトースター、ビーン形の携帯など、ユニークで思わず笑ってしまう楽しい展示だった。



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