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Exhibition 2005



サブタイトル20世紀デザインの異才 ジャン・プルーヴェ
 「ものづくり」から建築家=エンジニアへ
神奈川県立近代美術館  2004年10月30日-2005年1月16日


 ジャン・プルーヴェの家具は、誰の家具にも似ていない。独特で一目でわかる。その特徴は、彼がもともと金属加工を専門としていたことにある。自由自在に金属をあやつる天才がつくり出す家具や建築に、デザイナーや建築家は目を見張った。金属といっても、流行のスチールパイプではない。私は作品をみながら、「過去から学ぶ、盗用しない、最新の技法を用いる」という父親の教えが深く刻まれているのを感じた。
 小学校時代の机とイスを思わせる「子供用テーブル」。よく見ると穴が開いている。何のための穴だろうか? 展示されている写真を見ると、金属パイプがはまっていてキャップも付いているようだ。消しゴムの粉を落とすため? 鉛筆を立てるため? ナゾ多き作品。おなじみの「本棚」は写真でよく見るものより、段が少ない。思ったよりきゃしゃだ。本の重みに耐えられるだろうか? でも大丈夫。脚部分にちゃんと鋼板が使用されていた。「照明」は初めて見たが、重い鋼板でできていてお得意の[●●●●]デザイン。工業美が光る。「ミラノ・トリエンナーレのためのテーブル」にはあっと驚いた。目の覚めるような赤だったからではない。なんと、木と鋼板が逆転していたのだ! つまり天板部分が鋼板で、脚が木でできていた。「ナンシーの家」が再現されていたが、なんともかわいらしかった。暖炉はディック・ブルーナ風の絵、イサム・ノグチのあかり、セルジュ・ムイユのランプ…。プルーヴェの作品が金属製なのに、男っぽくガサツにならないわけがわかるような気がした。あいにくの大雨にもかかわらず、プルーヴェ・ワールドに浸った至福の一日だった。
 子ども用テーブルのナゾ、どなたかFill me in !






Qui Italia イタリア・フェスティバル コンパッソ・ドーロ賞
東京ドーム   2005年1月9日-22日





ロス・ラヴグローヴ展 超流動性
ギャラリー ル・ベイン  2005年1月11日‐28日

  
 デザイン業界で有名なロス・ラヴグローヴがアート業界に進出。有機的な物体が会場内にひとつ。コメントは……。



京菓子司 末富のデザイン展
松屋銀座 1953デザインギャラリー 2004年12月27日‐2005年1月24日

 
会場デザインは深澤直人。現代的な感覚で和菓子を紹介。地の赤色がなぜ和菓子にしっくり来るのか。そうだ、この赤色は毛氈の色だからだ。



30s Graphics アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン
国際デザインセンター・デザインミュージアム 2005年3月18日‐4月17日


 1930年代のポスターだけでなく、化粧品パッケージ、香水瓶が並ぶ。メイベリンマスカラは今のものと違ってとても小さい。ブラシ付きが開発されるのはまだ先のことらしい。シカゴ万博、ニューヨーク万博など万博ポスターは、色鮮やかながら、どこか柔らかでマットなイメージだ。おみやげグッズには、ティーポットや塔のミニチュアなどがあった。シカゴ博のポスターのテーマは"A Century of Progress"。それを象徴するかような高層タワーのポスターだ。そうか、この時代には人類はまだ月へ行っていない。やがて雲を突き抜けて、月に達する未来を予感させる。



OSAMU GOODS STYLE展 イラストレーション&デザイン原田治
スペースプリズム デザイナーズギャラリー 2005年4月8日‐17日


 ミスドの景品などでおなじみの原田治のデザイン。高校時代からステーショナリーなどを愛用している。今でも手元にレターセットやフタ付きおどんぶりなどがある。なんと、かわいい引越し屋さんができた! 段ボール、ガムテーム、布団袋、従業員の制服まで、すべてがOSAMUデザイン。会社名も、○○引越社などではなくさりげない。次に引越するときはここに決まりだ。


ハンガリーの建築タイル紀行展 ジョルナイ工房の輝き
INAXギャラリー名古屋  2005年6月2日‐8月19日  


 ジョルナイ工房の陶器は、花瓶くらいしか知らなかった。今回の展覧会では建築タイルを紹介。地味なものを想像していたが、予想に反して色鮮やかで立体的だ。六角形に並ぶ屋根瓦がつややかで美しい。装飾は華やかでかわいい。ジョルナイ工房の建物自体もおとぎの国のおうちみたいだ。郵便局、○○研究所など、日本では飾る必要がないと考えそうな建物が美しくタイルで装飾されている。名古屋の町にひとつだけあったら浮いてしまうだろうな。


「デザインの解剖」展 明治乳業・おいしい牛乳
LACHIC1Fラシックパサージュ 2005年7月26日‐8月11日 


 銀座松屋のデザインギャラリーの巡回展(にして遅い)。「おいしい牛乳」が誕生したプロセスを紹介。このパッケージが画期的なのは、牛乳そのものを描いていることだ。白い牛乳がグラスに注がれる様子はいかにもおいしそうだ。他社のパッケージを見てみると、「牛」や「北海道の地形」を描いたものが圧倒的に多い。候補には、昔なつかしい牛乳配達のおじさんが自転車に乗ったETのように描かれたものもあった。個人的にはレトロでかわいくて好きだけど、やはり時代に合わないのだろう。デザイナーの佐藤卓氏のセミナーも聞けた。クールミントガムの40年ぶりの刷新は、前作を活かしつつオリジナリティを出す難題をみごとにクリアしすると同時に、遊び心を加える余裕も見せている。


「Use it! 使ってください!毎日の生活にデンマークのデザインを!」
国際デザインセンター・デザインミュージアム+デザインギャラリー
2005年8月6日‐30日


 デンマークはデザイン先進国だ。入ってすぐにまず目を引くのは、子どもふたりを乗せられる「カンガルー自転車」。環境意識が高いデンマークならではのアイデアだ。試乗も可能で、私はなぜか子どもの場所に乗って記念撮影。おなじみのアルネ・ヤコブセンやハンス・ウェグナーの椅子もある。「糖尿病治療器具」は、パステルカラーで一見かわいいヨーヨー風の丸い形であり、病気の憂うつや注射への恐怖を和らげるデザインだ。小さくてさりげないけれど、本当はデザインをこういうところに活かすことが重要なのだと思う。担当者に「一番よかった作品は?」と聞かれ、「うーん、会場デザイン」と答えた。波打つオーガニックなパネルが会場を包み、赤い入口が各コーナーを結ぶ。福祉製品のコーナーでは赤外線のように赤いゴムが張り巡らせてある。これは障害者の体験をするためだという。アーティストはBosch&Fjord。


「ディーター・ラムス―Less but better―展」と講演会
建仁寺 2005年9月23日‐10月23日


 ブラウン製品でおなじみのディーター・ラムスの展覧会が、なんと古都京都の建仁寺で開催された! 直線的なふすま、障子、畳の日本建築のなかで、控え目で幾何学的なデザインがしっくりきて違和感がない。まさに西洋と東洋の出会いだ。「less but better」は、流行品や見かけだけの製品を減らし、長持ちする偽りのないデザインを重視するというラムスのデザイン哲学を表しているという。彼のデザインは一言でいえば質実剛健だ。畳の部屋での講演会では、法話を聞いているような気分だった。デザイン展を開催する寺とはいったいどんなところだろうと思っていたが、お手洗いに入った瞬間にわかった。改装されたきれいなトイレは機能は洋式&ハイテクなのに、木づくりで和のテイストを十分に取り入れている。3つのさりげなくおしゃれなシンクのひとつに染付けの青で金魚が描かれていて遊び心も忘れない。デザイン意識の高い開かれた寺だ。講演後、枯山水の庭を見つめるラムス氏の姿があった。本人も前世は日本人だったかもと言っていたが、おそらく日本人以上に侘び寂びを理解したドイツ人なのだろう。





ジャン・プルーヴェ 機械仕掛けのモダン・デザイン
D−秋葉原テンポラリー 2005年9月6日‐10月23日


 プルーヴェはいくつか学校家具をデザインしている。今回の展覧会会場は廃校になった中学校。ぴったりな雰囲気だ。鎌倉でのナゾも解けた。机の天板にあいた穴は、インクつぼを差し込むためのものだという。小さい子用と大きい子用の机と椅子があるのも驚きだ。同じ教室の前方に小さい子用、後方に大きい子用の家具が並ぶ当時の写真も展示されていた。
 それにしても、「プルーヴェ@学校」や「ラムス@禅寺」など、展覧会のあり方も変わってきたなあ。
 なんと、次はプルーヴェ名古屋初上陸!


谷口吉生のミュージアム
豊田市美術館 2005年10月22日‐12月25日


 谷口吉生の建物の魅力は、その幾何学と透明感だ。豊田市美術館は、谷口建築を象徴するような美しい建物であり、ファサードがない建築と言われているように、エントランスはごく控え目だ。内部は、装飾をなくしたシンプルな壁や階段が展示品を引き立てる。建物の反対側から見ると、水盤が建物全体と空を映し出している。その姿は雄大と呼ぶにふさわしい。東京国立博物館法隆寺宝物館も私が好きな建物のひとつだが、ここも水盤が建物を演出している。貴重な宝物を保護するため、展示室内部には光が入らないが、それ以外のところにはふんだんに光が採り入れられている。MOMAにはまだ行っていないが、展示で見ると、周囲の建物が外壁に映る心憎い演出がされている。講演会では、五十嵐太郎氏が、谷口建築と最近話題の金沢21世紀美術館を比較した。谷口氏の凛とした姿は、自身の建物そのものだった。


チャールズ&レイ・イームズ―創造の遺産
目黒区美術館 2005年10月8日‐12月11日


 全国を巡回していた(名古屋飛ばし!)イームズ展がまた東京で開催された。2001年東京都美術館のイームズ展と比べると来館者は少ない。今回、目新しかったのはふたりが愛用していた棚の展示。全部の引き出しを自由に開けて見ることができる。彼らの創造の源だ。人形がいっぱい詰まった引き出しもある。彼らが制作した映像にそれらしき人形が登場する。日本グッズの引き出しには、「おそば」という文字が入ったマッチ箱や有名な和菓子「二人静」の丸い入れ物がある。カラフルな糸が入った引き出しは、ゴッホを思い出させる。この糸で色の組み合わせを考えたのだろう。別の展示室では、ワイヤチェアが天井から吊るされて、壁に影を落とし、シルエットがかすかにゆらめく。また、椅子の耐久性を実験するための回転ドラムもあり、ボタンを踏むとドラムが何秒か回り、椅子がガタガタと転がった。なんて気の毒な椅子。チャールズがデザインについてのインタビューで、デザインには制約(constraint)があると思うけれど妥協(compromise)はないと答えていたのが印象的だった。





「フランク・ロイド・ライトと日本」講演会 ローレンス・M・ドライデン
名古屋YWCA 2005年12月3日


 F・L・ライトと言えば、日本では帝国ホテルや自由学園明日館がおなじみだが、1905年の日本旅行では名古屋も訪れている。旅行中、ライトが撮影した写真のなかには東本願寺もあり、この寺の二重屋根は後のロビー邸にそっくりだ。また、清水寺の舞台は、後のスタージェス邸との類似が見られる。それでもなお、日本建築から影響を受けたことはないと言い続けたらしい。以前に、『エクスナレッジHOME』誌で、ライトのスピーチを翻訳した。そのなかで、ライトは「アメリカには文化がない」と言い、大量生産社会を嘆いていた。この巨匠が、浮世絵に見られるような古き良き日本に憧れを抱いていたのは間違いない。だが、ライトが見た日本はもう存在しないのだ。




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