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Exhibition 2012





太田幸夫の絵文字デザイン展
2012年7月21日−9月2日 刈谷市美術館


ピクトグラムをテーマにした珍しい展覧会。
その第一人者である太田幸夫の名は知らなくても、「非常口」のサインは誰もが目にしたことがあるだろう。これは国際規格であり、各国のさまざまな案の中から選ばれた。他の応募案には、ドア付きのものもあった。
ピクトグラムは、見た瞬間に意味がわかり、国や世代を超えて通じなければならない。なおかつ、シンプルで親しみやすいことも重要だ。
ピクトグラムを作成する場合、複数案を一般の人々に見せ、調査結果に基づいて最終案が決定される。「津波」が「高潮」に見えるといった意見が反映されるわけだ。

ピクトグラムに関連して、『ピクトさんの本』(内海慶一著、BNN)という本がある。
転倒系、頭打ち系、落下系、かけこみ系、つまずき系、感電系、衝突系、はさまれ系、労働系、黒ピクトさんなどジャンル別に国内外のピクトグラムを紹介している。イギリス版転倒系ピクトさんはなんと傘を持っていて、天気の変わりやすいお国柄が表れている。愛情と尊敬を込めてピクトグラムをピクトさんと呼び、帯の文句「あなたも必ず見たことがある!あの可哀想な人。」をはじめ、全編ユーモアあふれる文章でピクトさんを温かく紹介している。




映画「ヴィダル・サスーン」
2012年6月30日 センチュリー・シネマ


ヴィダル・サスーンは、現代風に言えば、カリスマ美容師なのだろうか。いや、単なる美容師という狭い枠にとどまらない。女性のヘヤースタイルだけでなく、ライフスタイルまでも変えたのだから。ミッドセンチュリーの時代、女性のヘヤースタイルはセットの手間のかかるものが中心だった。女性の社会進出にともない、ヴィダル・サスーンはカットだけで手入れの要らない活動的なボブを開発した。当時としてはきわめて斬新だったが、今見ても決して古臭くなく、むしろスタイリッシュな感じだ。日本でもボブは流行を繰り返し、ここ数年も若者の間で60s風のボブが人気だ。ボブは国境や時代を超えて愛される普遍的なスタイルなのだ。
拙訳書『60sデザイン』にもヴィダル・サスーンの有名な「ファイブ・ポイント・カット」のイラストが登場する。モノクロの光と陰で幾何学的なデザインが一段と際立っている。
華やかな世界とは対照的な孤児院育ちという境遇、美容師の仕事を得るためにまず言葉を矯正したというエピソードなど、成功の裏には知られざる努力と苦労があった。





What's an Icon of Style?
時代を彩るファッション
―オードリー・ヘップバーン、ダイアナ妃、マドンナ―

2012年3月17日−5月27日 名古屋ボストン美術館

セレブたちのファッションをテーマにした華やかな展覧会フェザー、スパンコールが縫い付けられたり、豪華な刺繍が施されたり、手の込んだドレスが晴れの舞台でセレブたちの個性を引き立たせる。
ファッションは時代を映す鏡である。宇宙時代を象徴するかのように丸い地球をイメージした「global skirt」がデザインされた。それは時を経て、現代によみがえり、日本ではバルーン・スカートと名を変えた。
映像コーナーでは、日本をテーマにしたクリスチャン・ディオールのファッションショーを見た。白人モデルが日本髪を結い、着物や折り紙から発想を得たらしきドレスをまとう。まさにマダム・バタフライ、西洋人から見たジャポニズムの解釈だ。
ジャクリーン・ケネディのファッションも展示されていたが、今回のテーマとずれるせいか、彼女が愛用したmarimekkoのドレスはなかった。コットンドレスを好んだという庶民性が彼女の人気の秘密だったといういわれのあるドレスだ。次回は、庶民のファッション、または、ほとんど無視されていたメンズファッションにも光を当てるのもおもしろいかもしれない。
最後のコーナーでは若手デザイナーのコンテスト入賞作品を展示。柔軟な若者たちのアイデアはどれも創造性にあふれている。欲を言えば、全体的に抑えた色が多かったので、色で遊んだ作品ももっと見たかった。




アラビア フィンランド陶芸
―北欧モダンデザインの変遷―


2011年11月12日−2012年2月12日 岐阜県現代陶芸美術館ギャラリーU
 

フィンランドの陶磁器メーカー「アラビア」の製品を初期から現代まで時代を追って展示。
パリ万博に出展された《フェンニア》は、形もパターンも幾何学的であり、この時代にヨーロッパで流行ったアールヌーヴォーの特徴である、曲線、植物、巻きひげなどは見られない。テキスタイルメーカー「マリメッコ」とのコラボ《スペクトり》は大胆なパターンが切り取られている。
長年にわたってアラビアで活躍したカイ・フランクの《キルタ》は、スタッキング可能な機能的製品でありながら、形と色にどこか温かみが感じられる。彼は2度来日し、しょうゆさしや平型茶碗で有名な森正洋とも親交があった。なるほど、しょうゆさしと《キルタ》は、カラー・バリエーションが似ている。
ビルガー・カイピアイネンの《スンヌンタイ(日曜日)》は、明るい赤、黄、緑のデフォルメされた花模様であり、その名のとおり楽しい休日の食卓を彩るのにぴったりだ。現代の《24h》《KoKo》は時と場所を選ばないシンプルな形であり、スタイリッシュすぎないところがフィンランドデザインらしくて好ましい。
アラビアは常に、工芸の伝統を保ちつつ、新しい形や技術を採り入れてきた。また、デザイナーに独自の創造性を探る機会を与える社風だった。フィンランドデザインの原点にあるのは、「sisu」という概念だと言われている。フィンランド魂ともいうべき、逆境に負けない不屈の精神だ。フィンランドデザインは、時代が変わっても、シンプルさ、機能性、温かみは不変である。






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