かつて、汐川干潟では、トビハゼはごく普通に見ることのできる干潟の生き物の一つでした。しかし、近頃では生息数が減り、ほとんどその姿を見ることはできなくなってしまいました。絶滅してしまったのではないかとずっと心配していました。しかし、今年の夏、久しぶりにトビハゼの姿を見つけることができました。とても嬉しく思っています。
トビハゼは、魚のくせに水が嫌いです。潮が満ちてくると、水を避けて、岩の上などに上って、潮が引くのを待っています。潮が引き、干潟が現れると、干潟の上をピヨンピヨン飛び跳ねながら、エサとなる小動物をさがします。お互いに威嚇しあったり、求愛のダンスを踊ったりと、見ていてあきることのない楽しい魚です。冬は、巣穴の中で休止しているそうです。
昔、平凡社から出ていた「アニマ」と言う雑誌を覚えていますか?少し古い資料になりますが、1977年の8月号(No.53)には、特集で「ムツゴロウとトビハゼ」が取りあげられています。その頃、子供だった私は、650円のこの雑誌を毎号購入することはできませんでした。ようやく手に入れたNo.53を今でも大切にしています。
この中で、ムツゴロウやトビハゼの生活を知り、いつか実際に見たいと思っていました。汐川干潟で始めてトビハゼに出会った時、とっさにこの生き物がなんなのかよく分かりませんでした。じっと見つめてトビハゼとわかった時の感動を今でも忘れることはできません。
特徴は、腹びれが左右が合わさって吸盤状になっていて、岩に止まる?ことができること。水槽などで飼うと壁面にぶら下がるように止まります。泳ぎ回ったりせず、海底にへばりついて生活しています。待ち伏せタイプの捕食者で、獲物が近づくと大きな口をぱっくり開けて、素早く飲み込んでしまいます。その時は、とてもすばしっこくて、いつも海底でぼさっとしているのにとても驚かされます。
早春、雄のハゼが海底にトンネルのような穴を堀り、穴の奥に雌が卵を生むそうです。産卵後雄が卵を守れますが、やがて雄も雌も餌を食べなくなり死んでいきます。
一方孵化したハゼの稚魚は、秋には10センチぐらいに育ちます。ハゼ釣りで主に釣れるのはこれぐらいの大きさのものです。たまに、大きなサイズのハゼが釣れますが、それは、前の年に生育が悪くて繁殖せずに生き延びたものだそうです。
汐川干潟周辺では、ボラと言えば、何と言っても「ジャンプ」。秋になると川から下ってきたボラは、あちらこちらでバンバン飛び上がっています。どうしてこんな事をするのかは、未だにわかっていないそうです。何の意味があるのか、いつ見てもとっても不思議な行動です。
ボラは、泥を食べます。泥の有機物や小動物をから栄養を採っているのです。泥を食べるボラは、歯が発達していませんが、歯のないぶん胃が非常に強そうです。胃の幽門の壁が厚く、まるでそろばんの珠のようなので、ボラの「へそ」と言われています。
珍味として有名な「からすみ」は、ボラの卵から作ります。卵巣をよく血抜きして、塩をまぶし樽に積み重ね、塩が十分いきわたったら、今度は塩抜きして、3日ほど陰干してでき上がり。よく熟したボラの卵で作らなくてはならないのだそうです。私は食べたことがありませんが、お酒の肴には絶品とか。どんな味がするのでしょう?