干潟裁判終了

私たちが、汐川干潟を鳥獣保護区に指定して、ラムサール条約登録を願うとき、最も障碍になりそうなのは、干潟の中に裁判係争地があるということである。和出さんに聞いたところでは「別に問題はない。金銭的な問題である」と言われた。それでも私は直接原告の人たちから、裁判に勝ったとき、その土地をどうするつもりなのか聞いてみたいと思った。原告が負けて干潟が公有水面になれば、私たちの保護運動はしやすいと思うけれど、素人の率直な感じとしては、原告の言い分の方が筋が通っていると思える。だから、原告が勝って、その土地を国か県が買い上げて保護する方向に働きかけていくことになるかなあと思っていた。

田原町企画課
昨年7月23日、町長にあったとき、干潟裁判の様子を聞いてみた。すると「企画課で調べているから、聞けば分かるか知れない」ということだったので、企画課へ行って聞いてみた。すると、
@原告は豊橋の人(複数)で、田原の人はいない。 名前も分かっているが言うのは勘弁してくれ。
A対象区域は丸一新田跡である。
B名高裁で争われている。
C名高裁へ行けば分かるか知れない。
ということだった。

県の自然緑化課
翌7月24日、名古屋市役所へ藤前干潟アセスメント縦覧に行って、ついでに県の自然緑化課と名高裁へ行った。自然緑化課では課長も係りも不在だったので、庶務の人に伝言を頼んだ。

@特別鳥獣保護区になると、水路浚渫の時、環境庁又は県の許可が必要か。現在(銃猟禁止区)では水路浚渫は許可なしでやっているのか。
A県から町へラムサール登録を勧めて欲しい。(町長は今まで環境庁からも県からも何も話はないと言っている)
B干潟保護委員会を作って欲しい。

名高裁
名高裁では、初め気むずかしそうだったが話しているうちに分かって調べてくれた。

@原告は豊橋の人が多いが豊川の人、知立の人もいる。10人ぐらい。
Aここで名前を教えるのはまずいので、代理人(弁 護士)の名を教える。長屋誠氏と川崎浩二氏である。
Bこの人が差し支えないと思えば教えてくれるから 聞いて欲しい。連絡はしておいた。
C未だ判決になっていない。
D控訴は原告がした。

代理人長屋・川崎弁護士の話
長屋弁護士へ面会の申し込みの手紙を出したのは半年後の1月20日だったが、翌日すぐ電話で、「22日に、川崎弁護士の事務所で一緒に合おう」と言ってくれた。話の内容は次のようであった。

@田原地区の地権者(原告)に会っても話は分からない。実質的所有者はFさんである。
A原告は十六人。大崎の洲を所有していた原告は、三人である。
B一番大きな地主はFさん。戦後に買収した。利殖が目的だと思う。土地はおおぜいに細分してある。
C裁判の論点は、彼岸の満潮時に水没しないから土地であるということ。
D一審は敗訴していた。平成4年3月に控訴した。
E普通一審で敗訴して控訴すれば、二審はあまり調べないですぐ判決するが、今回は五年間も審議して、やっと今年の1月30日1時15分に判決する。高裁民事一部(十階百一号室)であるから、傍聴に来てはどうか。
F昭和24年には丸一新田の密漁者を処分したことがある。
G管理者の高瀬絹平さんの奥さんが大府に健在だったので証言を求めた。
H「原告勝訴の時、干潟をどうするつもりか」という事は、今の時点ではコメントできない。
I干潟保護運動へのアドバイスも、今の時点ではコメントしようがない。

名高裁傍聴
裁判は難しそうだけれど、一寸覗いてみようかなと思って、1月30日、名古屋で入院中の姉を見舞ったついでに、裁判所へ行ってみた。傍聴するには何の手続きもいらない。勝手に入って傍聴席に着いていればよい。十数人の傍聴人があったが、地権者だろうか。裁判官が三人入ってきて礼をして着席した。

「ナントカ控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実及び理由の朗読は省略する」と三回ほど言って退席してしまった。五分とかからない。ポカンとしている私のところへ長屋さんが来て、
「これで終わりです。私たちの負けです。これから別室でみんなで判決文を読んで研究します。和出さんも来ています」
という。廊下へ出てみたら、和出さんは誰かと話をしているので黙礼しただけ。判決文の研究や原告の人たちの考えなどを聞きたいなあと思ったが、裁判に負けた人たちの相談を高見の見物みたいに傍聴するのに気後れがして、帰ってきた。

長屋弁護士の話
その後、原告の人たちは上告しただろうかと気になっていたが、直接聞くのが気後れしてためらっていた。「汐川便り」を出そうという機運になってきたので、思い切って長屋さんに電話して聞いてみた。
O(小柳津)「上告しましたか」
N(長屋)「上告しません。裁判はけりが付きました」
O「何故上告しなかったのですか」
N「力つきたということです」
O「判決の理由はどういうことですか」
N「判決文をコピーして送ります。ラムサールを頑張って下さい」
と、地裁と高裁の判決文のコピーを送って下さった。
判決文
難しい法律語を我慢して一応読んでみたが、地裁の判決文は分からなかった。高裁のも難しかったが、伊藤又吉、高瀬絹平など私の知っている人が丸一新田の経営に苦労する話が、ノンフィクションを読むようで興味深かった。これはこれで一つの物語が出来そうだなと思った。「丸一新田は未完成で、土地としての登録はしてなかった。大崎の洲は砂利採取で水没してしまっていた」というのが判決の理由らしい。
とにかくこれでラムサール登録拒否の理由の一つが無くなって、大きく前進できることになる。(小柳津 弘)

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