「だから大好き!」長坂作品エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 南太平洋にあるパール王国のサラバヤ王の娘・サヤカ王女は、隣国であるダイヤ王国の王・ブザマ国王との政略結婚を避けるため、今は亡き母の国である日本へ向かった。日本への上陸直後にダイヤ王国秘密警察のゴーモン長官によって囚われの身になるさやかだったが、その窮地を偶然一人の青年・伊集院隼人が救った。サラバヤ王とダイヤ王国の先王との約束でさやかの婚約者と決められていた隼人=ダイヤ王国のハヤト王子は、自分が助けた女性がサヤカ王女であることを知り、自らの正体を隠しながら彼女を守っていくと誓うのだった。


第3話「お金ないんだもン」

放送日:1972/04/15
脚本:長坂秀佳
監督:丹野雄二
ゲスト:木田三千雄/長田伸二、大村千吉/羽沢かんじ、金子富士雄、鹿島邦義、劇団いろは

 行くあても金も無く腹を空かしていたさやか。「蟻んこ学園」という名の孤児院の少年・ジロウと出会ったさやかは、彼に気に入られ保母として住み込みで働くことに。しかし、孤児院の経営は圧迫しており園長・柳生平右衛門は借金取りから追われていた。一方、ダイヤ王国秘密警察のゴーモン長官は国王にとって邪魔な存在であるハヤト王子の抹殺を目論み、ハヤトがさやかの前に現れると睨み秘密警察サソリ隊の女スパイ・二条エミ子にさやかの監視を命じた。滞納した家賃の為に立ち退きを迫られていた孤児院の現状を知ったさやかは、賞金目当てにスターのオーディションに向かうが、隼人はそれがチヤホヤされる為の行動だと勘違いし、さやかに対し失望して絶交を宣言。ジロウから真相を聞いた隼人は、オーディションに落選して落ち込むさやかに詫びた。さやかの行動力に感銘を受けた園長は、借金から逃げていた自分を恥じ書道教室を開いて金を稼ごうと決意するのだった。

 本番組では長坂氏は4本を執筆。
 パール王国とはもちろん架空の国。作品中では第1話にて世界で最も小さい独立国だと語られている。
 毎回、岡崎友紀氏が演じる主人公のさやかが歌を歌うシーン、もしくは歌が流れるシーンがあった。本話では、岡崎氏主演の大ヒットドラマ『おくさまは18歳』(1970年〜1971年) の挿入歌「小さなお城」が使われた。
 ダイヤ王国秘密警察サソリ隊の二条エミ子が初登場。第11話〜第13話の南紀勝浦・南紀白浜ロケ以外に出演した。
 なお、クレジットはされていないが、TVにてスターのオーディション募集を告知している女性は、声を聞く限り声優の池田昌子氏であろうか。
(※柳生平右衛門の漢字表記は立て看板のシーンを参照。ジロウの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第7話「ゴーゴー大混線!!」

放送日:1972/05/13
脚本:長坂秀佳
監督:江崎実生
ゲスト:東 三千/西條マリ、吹田麗子、佐藤久美子/辻しげる、佐伯美奈子、石山克己/本郷 淳、柳瀬志郎

 日輪高校の「あすなろ寮」の管理人を勤めて初めての給料を貰ったさやか達。そんな時、寮に合宿中の茶道部のあき子ら3名が夜中に抜け出していることを知る。ウスラとサブは不良ではないかと疑うが、さやかは3人を信じた。娘の夜遊びに激怒した父親から逃げるあき子らは「どうしても行かなければならないところがある」と自らの身代わりをさやかに懇願。女装させたウスラとサブを従えたさやかはあき子らに扮して茶会に出席するが、結局バレてしまい茶会は大混乱に。その間、ゴーゴー喫茶で踊るあき子ら。それは、養老院に寄附するお金を工面する為のアルバイトだったのだ。お淑やかで素直な大和撫子を理想とする父親は、着物姿の他の茶道部の面々を見習えと迫るが、逆にあき子らの行動を見習いたいと思っていた茶道部員はその思いをぶつけるように踊り出し、父親は愕然となる。考えを改めた父親は寄附に協力、すべて丸く収まるのだった。

 第2話は花屋、第3・4話は孤児院「蟻んこ学園」の保母と職を変えてきたさやかは、第5話から日輪高校の専属寮である「あすなろ寮」の管理人として働くことになった。(ただし、名義上ではウスラとサブが管理人でさやかがお手伝いである)
 台本では、3人の女生徒の明記はあき子、A子(ひろみ)、B子。あき子の父親は吹原でヒロミの父親は紳士となっている。
 今回使用された歌は「天使はこうして生まれるの」である。
(※あき子の漢字表記は台本を参照。)


第8話「飛んで火に入る恋の虫」

放送日:1972/05/20
脚本:長坂秀佳
監督:井上芳夫
ゲスト:津村秀裕/泉 アキ/桂 高丸、桂 菊丸

 さやかがまだ見ぬハヤト王子を想い書いたラブレター。そのラブレターをさやかに恋心を抱いているパン職人の甚田次郎兵衛が偶然入手。次郎兵衛はハヤト王子になりすましてあすなろ寮を訪れた。自分の描いていたイメージとの違いにショックを受けるさやか。そんな時、急に寮に50人の合宿の予約が入り食事の支度に困るさやからだったが、次郎兵衛が手際良くパイを作り始める。そこへ、次郎兵衛が本物のハヤト王子だと信じたエミ子が仕向けた殺し屋が乱入。いつの間にかパイ投げ合戦がはじまり、やってきた50人の生徒も巻き込み大騒動。さやかと次郎兵衛は車で逃げ出すが殺し屋も車で追跡。壮絶なカーチェイスの末、殺し屋を振り切ったさやかだったが、この騒ぎで付けぼくろがとれてしまった次郎兵衛はニセ者だとバレてしまう。嘘をつかずありのままの自分で勝負するのが男だというさやかの言葉を受けた次郎兵衛は、恥ずかしくない男になって帰ってくると告げ立ち去るのだった。

 ゲストで殺し屋を演じたのはタレントの泉アキ氏、そしてその夫の桂菊丸氏とその兄の桂高丸氏。ちなみに、泉アキ氏と桂菊丸氏はこの放送の同年に結婚式を挙げている。
 偽ハヤトの名前は台本では甚田次郎兵衛。放送版では咄嗟に「ハヤカワ次郎兵衛」と名乗っているが苗字が分かる描写は無い。
 本話で使用された歌「青春の日に」は本番組の主題歌「ファースト・ラブ」のB面曲である。
 本話より第10話までの3回分だけ、なぜかオープニング前のナレーションが中村正氏ではなく岡崎友紀氏に変わっている。
 本作は台本とごく大筋は同じものの細かい点での相違点が多い。
 ・冒頭、さやかがラブレターを書くものの紙ヒコーキにして飛ばすシーンがあるが放送ではカット。
 ・エミ子がゴーモンに叱咤されるシーンの前、台本では車で隼人に送ってもらいウットリ見送るエミ子を見たゴーモンが「秘密警察官に恋愛は禁じられている筈だ」と言い、エミ子がうろたえるくだりがある。
 ・次郎兵衛があすなろ寮を訪れるシーン。次郎兵衛はさやかのラブレターに書かれていた「まッ白いすてきなスポーツカー」に倣って白いスポーツカーで現れている。
 ・サブが隼人来訪をさやかに伝えるシーンの前、台本では美容室にいるさやかを探す為サブがおかまを一つ一つ覗いていき、横入りだと思った美容師にサブがチリチリ頭にされるくだりがある。
 ・次郎兵衛が「上手に女を口説く法」という本の内容に従ってさやかを口説こうとするくだりがある。
 ・エミ子が次郎兵衛のほくろを確認する為にプールに連れ出すシーンがある。
 ・50人の合宿の予約は台本には無し。パイ合戦のシーンでは、殺し屋がハヤトを狙撃しやすいよう、エミ子が次郎兵衛に語りかけて場所を誘導するくだり等がある。
(※甚田次郎兵衛の名前・漢字表記は台本を参照。)


第11話「私もあなたも逃亡者?」

放送日:1972/06/10
脚本:長坂秀佳
監督:江崎実生
ゲスト:田坂 都/[人形劇] 伊東万里子、加藤 浩/うえずみのる

 マスコミから逃れる為にあすなろ寮を後にしたさやかは、南紀勝浦のホテルでメイドとして働き始めていた。そこへ宿泊に来た隼人が船上で知り合った女性・ハルミ。彼女の寂しげな姿に対し、さやかは元前の明るさで元気づけようと尽力する。実はハルミはスター歌手・ミカゼハルミであり、その後を週刊誌のトップ屋・山田が付け回していた。そのことを知ったウスラとサブは、ハルミの部屋で遺書を見つけ大慌て。事情を知ったさやかはハルミと共に山田から逃げ回るが、山田はさやかの正体がパール王国の王女だと知り、標的をさやかに変更し追い回す。逃げ切ったさやかは飛び降り寸前のハルミを説得。今まで小児麻痺の弟を助ける為に歌ってきた、その唯一の希望であった弟を亡くし絶望したというハルミに、さやかは人形劇を使って語りかける。「弟は君の心の中に生きている、君が歌い続ける限り、君の歌は僕たち聴く者の心の中にいつまでも生きて行くんだ」と――。そして、明日からは楽しい歌を歌うと約束するハルミだった。

 第10話で「あすなろ寮」を後にしたさやかは第11話では紀州・勝浦のホテルのメイド、第12話では南紀・白浜のレジャー施設ハマブランカ(2005年閉園)の司会・踊り子、第13話では南紀・白浜で芸者と職を変え、最終話である第14話は和歌山市で活動している(職は無し)
 本話は和歌山県南紀勝浦ロケ作品。長坂作品では翌年の『キカイダー01』第26話「南紀の死斗!!ザダム超能力発揮」と第27話「秘境の激戦!!ザダムの地獄の罠」も南紀勝浦ロケ作品である。
 本話にて使用される歌は「フレンズ」である。
(※山田の漢字表記は推測。ミカゼハルミの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)