【ストーリー紹介】魔法の国に住むチャッピーと弟のジュンは、古臭い魔法の国のしきたりに嫌気が差し、人間界へやって来た。その二人を追って、チャッピーのパパとママ、レッサーパンダのドンちゃんまでが人間界へ……。この魔法使いの一家が人間たちを相手に様々な騒動を巻き起こしていく。
第28話「独立!ガラクタ公園」
放送日:1972/10/09 チャッピーら子供達の遊び場「ガラクタ公園」。それは、一人暮らしの老人の土地だった。そこに訪れた見慣れぬ独りぼっちの少女・マリと友達になろうと接するチャッピーだが、マリは憮然とした態度で口もきかない。そんな時、子供達の為の遊園地を作りたいというクロガネが訪れ、老人は契約書にサイン。しかし、それは遊園地では無く、金儲けの為のレジャー会館だった。抗議する老人だが、クロガネは「遊園地」という名のレジャー会館だと反論。騙されたと知り、落ち込む老人。老人はその昔、一人娘・チズの遊び場だった空き地を壊してスーパーを建築し、その為に道路で遊ぶようになった娘が、母親と共に車に轢かれて命を落としていたのだ。話を聞いたチャッピーは徹底抗戦を決意。魔法の力で建築を妨害し、作業員を追い出すが、クロガネは子供たちの寝ている深夜の作業を指示し、急ピッチでレジャー会館は完成。それでも諦めないチャッピーは、魔法の力でセメントの中にダイヤを仕込ませ、欲が眩んだ大人達は完成したばかりの建物の壁にダイヤがあると思って壁を残らず破壊しつくした。そして大人達は、ただの石ころに戻ったダイヤに呆然。うなだれるクロガネだが、空き地となった場所で遊ぶ娘・マリの笑顔を見て自らの罪に気付き反省。父娘は和解し、そして、子供達の遊び場は元に戻り、子供達は元気に遊ぶのだった。
本番組では長坂氏は計4作を執筆。書籍「魔女っ子大全集 東映動画篇」に掲載されている長坂氏のインタビューによると、平山亨プロデューサーから本番組の宮崎慎一プロデューサーを紹介されたのがきっかけとのこと。ちなみにこのインタビューでは「家を壊そうが、怪獣を出そうが、予算を一切気にしないで書けるという点では結構面白かった」とも語っている。 第30話「待っていてオッタマゲター!」
放送日:1972/10/23 自然に囲まれた玉下駄村に大きな工場が建設、その完成式の最中に怪獣が出現した。その村に住む、チャッピーの友達・熊沢虎男のいとこであるスミレとダイキチ。チャッピーは、スミレとダイキチの身を案じ、玉下駄村へ出発。そこは、怪獣見物目当ての観光客がたむろし、客目当てに村人はタイアップのせんべいなどを売りさばき、工場主は護身用にと銃を売りさばいていた。そして、チャッピーらの目前でオッタマゲターと呼ばれるその怪獣が出現。オッタマゲターを攻撃しようとする大人達だが、スミレは人間に害を及ぼさないその怪獣を身を挺して庇った。深い山中に住んでいたオッタマゲターは、その昔、村の人達には平和のシンボルであった程、心優しい怪獣だったのだ。だが、工場が吐き出す煙の為にいぶし出されたのだ。スミレの説得で一度は銃を捨てた大人達だったが、銃でひと儲けを企んでいた工場主は、オッタマゲターの仕業に仕向けて民家を破壊。その為、大人達はオッタマゲターに対して敵意をむき出しにする。工場主の企みを知ったチャッピーは、破壊活動を続ける工場主らの目前で魔法を使ってオッタマゲターに変身。工場主らを懲らしめた。チャッピーはオッタマゲターにもっと山奥で暮らすように進言。いつの日かきっと人間と仲良く出来る日が来ると信じるチャッピーは、その為に自分たち子供が頑張らねばと誓うのであった。
本作は、公害、そして反戦をもテーマとして盛り込んでいる。公害は本番組の第1話でも軽く取り上げられていたが、この時代の作品ではよく取り上げられるテーマである。本作でも風刺の表現が絶妙で、公害、もしくは人間の行為がトリガーとなって怪獣が出現するというある意味定番の導入部に、その怪獣をダシに兵器で大儲けする大人。そして、その兵器がおもちゃに毛が生えた程度のものという描写もうまく、現地人が怪獣の見物客目当てに怪獣のタイアップの商品(せんべいやまんじゅうなど)を売りさばくという滑稽な描写も絶妙。ここまで風刺しつつ、最後は、「いつの日かきっと人間と仲良く出来る日がくる」と、実際に「人間と仲良く暮らすことを実現させている」チャッピーに語らせ、「その為に自分たち子供が頑張らねば」と、見事に作品を締めている。 第33話「リンゴ村リンゴりんご大作戦!」
放送日:1972/11/13 リンゴ村にハイキングにやってきたチャッピーら。リンゴ食べ放題300円という看板なのに、聞いてみると1個が300円。激怒するチャッピーらの前にリンゴ村のリンゴすべてを仕切っているリンゴセンターの社長・成金が現れ、お腹がペコペコなチャッピーらに食事を御馳走する。だが、後になって食事代を請求する成金はチャッピーらを働かせた。リンゴ番を任されたチャッピーは、リンゴを盗む少年・ショウイチを目撃。彼は、病気の父親の為に食べさせようとしていたのだ。彼の父親から事情を聞いたチャッピーの弟・ジュン。昔は村中がリンゴ畑を持っていたが、若者が都会に憧れて村を捨てた為に村には年寄りと子供だけが残り、そこに現れた成金にリンゴ畑を騙し取られ、さらに村中の水が成金の井戸以外汚染され飲めなくなった為に、村人らは成金の水を求め、子供たちを成金の元へただ働きさせるしかなくなったのだ。事情を知ったチャッピーは山の上にある湖の水源地で汚染の元を発見し、阻止。チャッピーは魔法の力を使い、捕らえられ縛られたショウイチを助け、さらにおばけを出現させ成金を懲らしめた。怒った村人に囲まれた成金は、お化けの出るリンゴ村はこりごりと言い残して退却。リンゴ村は元の平和な村に戻るのだった。
他の作品に比べると比較的テーマ性は薄いが、過疎化というテーマが根底に流れている。 第34話「出たよ出ましたチャンバラ時代」
放送日:1972/11/20 チャッピーらの住むニコニコ町で町内会々長選挙が行われた。しかし、チャッピーや虎男の両親を筆頭に、大人達は「誰がなっても大して変わらない」と無関心で、投票も欠席状態。そして当選した人野良造は、町内会での決定事項と称し、贈収賄や会費の値上げなど次々と悪政を実施。チャッピーや虎男の父親は良造に抗議をするが、良造は町民が民主的な選挙で自分を選んだと反論。正論に反論できず大人達は悔やんだ。ヤクザの親分だった良造は、ほとんどの町民が選挙に行かないことを利用して、昔の子分たちに投票させ、当選していたのだ。そのことを知ったチャッピーは一家総出で良造を懲らしめる手を一考。周囲を江戸時代に変え、良造一派を召し取り、名奉行・遠山のチャッピーに扮したチャッピーは、良造に張り付けを命じた。会長で無ければ人違いの為釈放と言い放つチャッピーの言葉に、良造は会長は辞めると宣言し逃げ出した。新しく決まった町会長・しけた良介により、ニコニコ町は悪政も終わり、公害の無い町へと生まれ変わろうとしていた。チャッピーは、大人になったらもっと立派な選挙をやってみせると誓うのだった。
有権者の「政治的無関心」や「贈収賄」など、とても子供向けの作品とは思えない重いテーマが展開。だが、子供向け作品だからこそ、このようなテーマを描き、子供に見せ、子供達にも考えさせるべきなのではないかと思ってしまう、そんな作品である。 |