「ウルトラマンA」長坂作品エピソード あらすじ・解説

第29話「ウルトラ6番目の弟」

放送日:1972/10/20
脚本:長坂秀佳
監督:山際永三
ゲスト:相原巨典

 「酔っぱらい運転で死んだ親父の息子」と罵られる少年、梅津ダンと出会った主人公・北斗星司は、この2年間、周囲で同様の事故が多発していることに疑問を抱く。 彼は、事故当時現場で娘の七五三を撮影していたいう人物に接触。 写真の背後に、超獣ギタギタンガの身体の一部が写り込んでいることを発見する。 超獣に襲われんとする少女の危機を、ダン少年の父親が自らの車を突っ込ませて救ったというのが事件の真相だったのだ──。

 本作品で印象的なのは、ダン少年が初めて登場するシーン。
彼が友人と「走る車の前を横切る」という賭をして、北斗の運転する車に飛び込んでくる。
北斗のブレーキで目的を果たせず「嘘つき」呼ばわりされたダンは、今度は竹竿を持ってひとり密かに幅4〜5メートルの川越えに挑む。
その姿を見た北斗が「彼は嘘つきになりたくない。あの川を飛び越えることで、さっき車の前に飛び出した自分の勇気をもう一度試そうとしているんだ」という台詞に、長坂作品特有の「男の世界」を感じます。


第34話「海の虹に超獣が踊る」

放送日:1972/11/24
脚本:長坂秀佳
監督:志村 広
ゲスト:山田圭子、佐藤賢司

 沈没したタンカー船の船長の娘・波子は、幼い弟のユウジに父の死を告げられず、「貝殻を千枚集めたら父が帰ってくる」と嘘をついてしまう。 海から不気味な暖かい風が吹く日、決まって岸に打ち上げられる大量の貝殻を必死になって集めるユウジ。 だがその貝殻こそ父のタンカーを沈めた仇、虹超獣カイテイガガンのウロコだったのだ。 事件の真相と父の死を悟ったユウジは姉に、そして北斗に向かって叫ぶ。「大人はみんなウソつきだ!」と──。

 ユウジが壁にかけてある父の船服をジッと見上げ、暮れなずむ部屋で一人涙するシーンが泣かせます。
悲しみ疲れて眠った夢の中で、彼は懐かしい父の髭の感触を思い出す‥‥‥。 クライマックスでユウジは暴れるカイテイガガンに単身挑み、海の中で溺れてしまうのですが、北斗の必死の人工呼吸によって死の淵から生還。
喜び泣きながら頬ずりする北斗に、彼が「あ‥‥‥北斗さんにも髭がある‥‥‥」と呟くラストシーンが私は好きです。


第36話「"この超獣10,000ホーン?"」

放送日:1972/12/08
脚本:長坂秀佳
監督:筧 正典
ゲスト:小沢直平、神 有介/福山象三、島田和心、佐伯美奈子、劇団いろは

 騒音をエネルギーにする超獣サウンドギラーが出現。 それを追う北斗は、違法改造のマフラーで爆音を上げ、暴走を繰り返す俊平、孝介、マチ子ら不良高校生の一団と出会う。 世をすね悪態をつく俊平たちだったが、超獣に襲われる幼稚園児を偶然助けた時から、彼らの中で何かが変わり始めていく。 子供たちを守るために、自らが囮になって超獣を別方向へ誘導する俊平たち。そこには、もはや暴走族ではない真のライダーたちの姿が有った──。

 俊平たちが暴走行為をエスカレートさせる展開と平行して、徐々に強大化し「出現時間もだんだん長くなっていく」という超獣の姿が描かれます。
つまり「サウンドギラー」というキャラクターは、暴走行為を通じて俊平たちが吐き出す、心のマイナス面の「象徴」になっているわけですね。
長坂先生の作品にしては、珍しく抽象的な構図のドラマです。
超獣と戦うウルトラマンエースを見て「ウルトラマンエース‥‥‥本当にいたのか!?」と呟く俊平の台詞が妙に可笑しいです。





執筆(ALL):T.Yoshikiさん