「仮面ライダーX」長坂作品エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 悪の組織・GOD秘密機関に父親を殺された神敬介は、瀕死の父によってカイゾーク「Xライダー」に改造された。XライダーはGOD秘密機関に立ち向かうのだ。


第1話「X.X.Xライダー誕生!!」

放送日:1974/02/16
脚本:長坂秀佳
監督:折田 至
ゲスト:柳沢?男(?は糸に巳 )、長谷川 誉/山下啓介(「沢 りつお」の誤記)(ネプチューンの声)/田崎 潤

 沖縄の水産大学より帰郷した成年・神敬介は、日本全滅を狙う秘密組織・GOD機関の怪人・ネプチューンに襲われた。命からがら脱出した敬介は、恋人の水木涼子と父・啓太郎と再会。しかし、啓太郎の隠れ家をネプチューンが急襲、敬介も謎の人影に襲われる。その人影の正体は涼子!? 驚く敬介は急いで父の元へ駆け付けるも、GODの銃弾に倒れる。啓太郎は最後の力を振り絞り、瀕死の敬介にサイボーグ手術を施し、絶命。敬介は父の残した基地・神ステーションで父の棺に別れを告げ、父の遺言を受けて、改造人間「仮面ライダーX」へと変身する。生まれ変わった敬介は、ネプチューンと対決し、Xキックでとどめをさす。そして、ネプチューンを倒した敬介の前に現れる謎の女――涼子と瓜二つの顔を持つ霧子。神敬介の闘いは今、始まった。

 『仮面ライダー』『仮面ライダーV3』に続く『仮面ライダー』シリーズ第3弾。長坂氏は初期である第1・2・7・8話の4本を担当。偶然か、監督は全作、折田至監督である。
 番組の第1話ということで普通は作品設定の紹介編的になりがちであるが、本作は紹介編としてだけではなく、長坂氏恒例の「父と子」のドラマを丁寧に描いている。お互いに不器用な親子の交流を描いているが、このパターンは『都会の森』(1990年)等、多々存在する。


第2話「走れクルーザー!Xライダー!!」

放送日:1974/02/23
脚本:長坂秀佳
監督:折田 至
ゲスト:佐藤京一、小松陽太郎、建部道子/伴藤 武、松尾悦子、朝倉 一/沢 りつお(「山下啓介」の誤記)(パニックの声)/田崎 潤

 笛の音による催眠術で集団殺人鬼と化す団地の住民ら。それは、GODの刺客・パニックによる、日本中の人間を殺し屋にする「一億総殺人鬼計画」によるものだった。団地の住民らは、父の形見の笛を吹く少年・ススムが犯人だと思いススムを糾弾する。そんなススムを助ける敬介だが、ススムは刃物をねじ曲げる敬介を見て「ロボットのくせに人間のふりなんかするな」と責め立てる。敬介は自分が人間の体では無くなったことにショックを受け、神ステーションに戻ってコンピュータに人格を移した父に語りかける。しかし、神ステーションの存在が息子を弱い男にする恐れがあると判断し、「誰にも頼らず、強い男になれ」と残して神ステーションは自爆。父に別れを告げた敬介は、団地の住民にリンチを受けるススムを救い、そして、パニックを倒した。折れ曲がったススムの笛を素手で元に戻し、「人間じゃないってこともいいもんさ」と語りかける敬介に、ススムは「ありがとう」の言葉を返すのだった。

 第2話にして、主人公の成長を見事に描ききっているのが本作。第1話に続いてさらに「父と子」のドラマを展開させ、主人公の成長のドラマに絡めている。
 Xライダーとパニックの闘いのバックで流れるBGMは長坂氏が作詞を担当した「神敬介の歌」のインストルメンタル。本作ではボーカルは流れていないが、本作で描かれた「父への想い」を表している歌詞である。歌詞を片手にこのシーンを見てみるのも、一つの見方ではないだろうか?
(※ススム少年の漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第7話「恐怖の天才人間計画!」

放送日:1974/03/30
脚本:長坂秀佳
監督:折田 至
ゲスト:小笠原 弘、手塚しげお/遠藤 薫、北川陽一郎、蓮見里美、南原 晋/青柳鉄也、金井尚史、津田順子、白井ゆかり/市川 治(鳥人イカルスの声)

 小・中学生による飛び降り自殺事件が多発。その中には天才人間を作り出す研究をしている大門寺博士の娘・あや子もいた。大門寺博士のところへ訪れた敬介は、自殺者がすべて博士の研究の被験者だと知る。自分の作った薬の副作用が自殺の原因ではないかと悩む博士。GODの計画とは、博士を陥れ、GODに引き入れることだったのだ。被験者で唯一の生存者である、あや子の妹・冬子。その冬子を守る敬介だが、博士の助手・瀬山に化けたイカルスに連れ去られてしまう。催眠術をかけられ自殺を図る冬子だったが、間一髪のところで霧子が救う。敬介はイカルスに闘いを挑み、Xライダーに変身し見事撃破。博士は「人間は自然にしておくべきだ」と、天才人間計画の中止を誓うのだった。

 敬介が博士の元に訪れ、冬子を死なせないと誓うシーンの後、台本では、イカルスが博士の元に現れGODに協力を要請するシーンがあり、博士が断った後、あや子の埋葬のシーンへと繋がっている。
 霊園で冬子がイカルスにさらわれるシーン。冬子が消えたことに気付き、直後、冬子の悲鳴が聞こえた後、台本では敬介が涼子にピストルで狙われるシーンがある。
 瀬山に化けたイカルスが、大黒の置物からGOD総司令の指令を受けるシーンの後、台本では敬介が下校中の冬子の護衛をしようとするが断られるシーンがある。逆に、本編に存在する、オートバイに乗った敬介が飛行するイカルスに爆撃を受けるシーンは台本には無い。
 この回にて霧子の口より、霧子が涼子の双子の妹だということが語られる。おそらく、長坂氏の降板がこの時点で決定していた為、涼子・霧子の物語の終幕に対して伏線を本作で張ったのではないだろうか?
 ラストシーン、天才人間計画の中止を誓う博士に対しての敬介の一言「改造人間はおれを最後にしたいものだ」は、いかにも長坂氏らしいイキなラストである。
 なお、長坂氏執筆の本番組では初出演である、『仮面ライダー』シリーズではお馴染みの立花藤兵衛(演:小林昭二氏)は第5話より出演している。
(※大門寺あや子、冬子の漢字表記は、本編中の被験者リストのシーンを参照している。)


第8話「怪!?小地球・中地球・大地球」

放送日:1974/04/06
脚本:長坂秀佳
監督:折田 至
ゲスト:北原義郎、清水幹生、岩本幸雄/打越正八、池上明治、冷水良信/沢 りつお(鉄腕アトラスの声)

 エネルギー資源地を狙うGODの怪人・鉄腕アトラス。調査団と共に現地へ向かう立花藤兵衛と霧子、そしてGODから彼らを救う敬介。しかし、アトラスの放った矢から敬介を庇い、霧子は絶命。怒りに身を任せた敬介はXライダーに変身しアトラスに闘いを挑むが、アトラスの必殺技・地球投げの前に傷つき倒れる。再度、出発した調査団を襲うアトラス。アトラスとXライダーとの闘いの最中、アトラスの矢が調査団の少年・ケンゴを狙う。しかし、その矢から身を挺して少年を救ったのは涼子! 涼子はGODに潜入する為に国際秘密警察から派遣された調査官だったのだ。敬介にアトラスの弱点を告げた涼子は体に仕組まれた自爆装置で爆死。アトラスを倒すことを誓う敬介はXライダーに変身、涼子から教わった弱点を攻め、アトラスを倒すのであった。

 長坂氏執筆の本番組最終作。本作で、第1話より続いた涼子・霧子の物語にピリオドが打たれた。
 本作では、前半、中盤、ラストと計3度に亘り、それぞれ一瞬ではあるが、次回である第9話より活躍するGOD秘密警察第一室長・アポロガイストが登場する。『仮面ライダーX』DVD第1巻に封入されている解説書内の長坂氏のインタビューによると、「デザイン的、色彩的にも一番だった」とあるが、長坂氏の手によるアポロガイストの活躍を見ることができなかったのは非常に悔やまれるところである。
(※ケンゴ少年の漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


 ――涼子・霧子が命を絶った後、GOD秘密警察第一室長・アポロガイスト、そして、悪人軍団を率いる巨人キングダークが現れ、Xライダーとの壮絶な闘いが繰り広げられるのだった。