「刑事くん(第3シリーズ)」長坂作品エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 半年間の入院生活から復帰した城南署の三神鉄男が、数々の事件を解決していく。


第9話「栄光を君のものに」

放送日:1975/01/06
脚本:長坂秀佳
監督:佐伯孚治
ゲスト:せんだみつお/千波丈太郎、山下勝也、岡野耕作/山本 緑、白取雅子、土山登士幸/城 春樹、幸 英二、溝口久夫、打越正八、大栗清史

 ヤマカゼ組のシマに潜伏していると見られる殺人犯・フクダキヨマサを追う城南署。ヤマカゼ組のシマの一部が隣の城西署の管轄であることから、城西署から島崎の甥である新米警官・キグチイッペイタが応援として派遣された。時村は鉄男とキグチにコンビを組むよう命令するが、おっちょこちょいでミスばかりのキグチは、警視総監賞を何度も取った亡き父のような立派な警官になる為に手柄を立てたいと、鉄男の元を離れ一人で捜査に向かう。しかし、キグチは何者かに殴られ気を失い、そのショックで視神経症により突発性な一時的失明状態に陥ってしまう。病状を知った鉄男はキグチに入院を勧めるが、キグチは立派な父だという話が嘘であることを告白、能無し警官と噂され辛い思いをしてきた母の為、総監賞を取りたいと語る。鉄男はキグチと共に、キグチが殴られた時に側に居た少年・マサルの証言を求め、紙芝居を使って子供達を集め、マサルの行方を捜す。だが、その動きを察知したヤマカゼ組が鉄男達を襲う。乱闘になり窮地に陥る鉄男、そしてキグチも失明状態になり戦うどころではない。しかし、キグチは鉄男の指示により目が見えない中フクダを逮捕。見事警視総監賞を得るのだった。

 ゲストはせんだみつお氏。予告にて「次回刑事くんはせんだみつお君の登場です」と紹介された。珍しくなぜか「君」付けの紹介であるが、もっと珍しいことにあらすじの紹介でも「何者かに襲われたせんだ君は……」や「……刑事を志願するせんだ君は……」など役名ではなく役者名で紹介されている。ちなみに、せんだ氏が演じた警官といえば、1977年に公開された『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主役・両津勘吉役が有名である。
 次郎が見ているテレビに流れているのは『ウルトラマンレオ』(1974年〜1975年)。何の前触れもなく全画面で数秒間表示された為、驚いた視聴者もいたのではなかろうか? なお、この時に流れたのは双子怪獣のレッドギラスとブラックギラスと戦っているシーンであるが、実際の『ウルトラマンレオ』は3日前に第39話「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」を放送したところであった。
(※キグチイッペイタ、フクダキヨマサ、マサル、ヤマカゼ組の漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第16話「つとむ君、強く明日へ!」

放送日:1975/02/24
脚本:長坂秀佳
監督:村山新治
ゲスト:荒川 努/浜田 晃、西 恵子/田辺進三、亀山達也/中屋敷鉄也、浅川かがり、田口和政

 兄貴分を殺しセイリュウ組の金を奪って逃走するヤクザ・オオニシを追う鉄男と風間。だが、子供を盾にされた為鉄男は拳銃を奪われ、そしてその拳銃で風間は撃たれオオニシは逃亡を果たした。鉄男はスケート場に毎日現れるオオニシの恋人・サワカオリをマークするが、オオニシはカオリが警察に監視されていることを承知でカオリに電話をかけ指示。カオリはその指示に従い自分に近づいてきた少年・カガワつとむに、コインロッカーに預けた鞄の運搬を依頼する。それが囮だと察知した鉄男は、カオリからつとむの行き先を聞き出し、セイリュウ組に襲われるつとむを救う。だが、その間にカオリはオオニシと接触し、預かっていた金を渡す。一緒に逃げようと言うオオニシの言葉を拒否するカオリの前に現れるつとむ。つとむを庇う為に鞄を奪ったカオリだが、鞄は直後爆発、カオリは爆発に巻き込まれる。そして、駆け付けた鉄男はオオニシを逮捕するのだった。

 ゲストでカガワつとむを演じたのはアイドル・荒川努氏。役名は同じ名前である「つとむ」。本作では彼の曲が3曲使用された。(初日のスケート場(曲名不明)、二日目のスケート場(「はじめての純情」)、ラストシーン(曲名不明))
 ゲストでサワカオリを演じたのは西恵子氏。西氏といえば、長坂氏も脚本を担当した『ウルトラマンA』(1972年〜1973年)の美川のり子隊員役が有名である。
 本作のサブタイトルは「強く明日へ」だが、予告では「明日に」と語られている。
(※つとむの表記はサブタイトルを参照。カガワ、サワカオリ、オオニシ、セイリュウ組の漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第18話「片隅のふたり」

放送日:1975/03/10
脚本:長坂秀佳
監督:加島 昭
ゲスト:麻生よう子/佐々木 功/谷口佳子、石原清美、馬場光子、吉田 守、水多優雄

 若い女性を狙う絞殺事件が連続して発生。被害者はいずれも黄色いスカーフで絞殺されていた。16名の容疑者の中の一人、佐久間セイイチを追う鉄男は佐久間の自宅を訪ねるが、佐久間は不在。代わりに佐久間の恋人を名乗るアサコという女性がいた。佐久間を疑っていると知ったアサコは激怒して鉄男を追い返し、そして名誉毀損で訴えると息巻く。そんな時、風間が別の容疑者・タニガワを逮捕。安心するアサコだったが、再び絞殺事件が発生。タニガワは単なる愉快犯で嘘の供述をしていたと判明する。現場に残された眼鏡の指紋から犯人は佐久間と断定。佐久間が全国指名手配されたニュースを見たアサコは、電話をかけて来た佐久間に自首を勧めるが、そんなアサコに佐久間は憎悪を抱く。そして、自首するという佐久間に呼び出されたアサコは佐久間に会いに行く。それを知った鉄男はアサコを追い現場に急行、襲われるアサコを救い、佐久間を逮捕するのだった。

 ゲストでアサコを演じたのは麻生よう子氏。予告では「麻生よう子さんをメインゲストに迎えて送るヤングアイドルシリーズ第3弾」「麻生よう子の歌に乗せて送る」と紹介された。なお、劇中で使用された歌はサブタイトルと同名である「片隅のふたり」(1975年)である。
 ゲストで佐久間セイイチを演じたのは佐々木功氏。役名の「佐」の字が共通なのは偶然だろうか? 佐々木氏は黄色いスカーフを使って絞殺する犯人を演じているが、ちょうどこの時、佐々木氏が歌った歌「真赤なスカーフ」がエンディングとして使われていたアニメーション『宇宙戦艦ヤマト』が放送中。本話の前日に第23話「遂に来た!!マゼラン星雲波高し!!」が放送されていた。色の違いがあるものの佐々木氏とスカーフという組み合わせは単なる偶然なのだろうか?
(※佐久間の漢字表記は表札のシーンを参照。セイイチ、アサコ、タニガワの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第20話「大人への階段」

放送日:1975/03/24
脚本:長坂秀佳
監督:富田義治
ゲスト:城 みちる/山口智子、斉藤一之/松尾文人、河合絃司/川路夏子、坂井すみ江、堀内 香

 とある会社の常務・城所が自宅で殺害された。その一人息子・勇司は涙一つ見せず悲しむそぶりを見せない。通夜の日ですら喫茶店のバイトで歌う彼の姿に、自分も同じように父を殺された過去がある鉄男は彼の振る舞いに疑問を抱き彼を調査。勇司の友人・ミカの告白から犯行時間のホンの一瞬自宅にいたことが判明。鉄男は自宅で犯人を目撃したと推測する。そして、鉄男は勇司が本心を隠し、父の仇を討とうとしていると確信する。空手を操る勇司を止める鉄男。だが、勇司は犯人の車を偶然発見、鉄男が目を離した隙に単独で追跡する。そしてその後を追う鉄男。一方、風間の調査で真相が判明。城所が、同じ社のユハラ課長が手を染めた不動産詐欺を調査、そして証拠書類を盗む為にユハラが城所を殺害したと分かる。鉄男はユハラに返り討ちにあう勇司を救い、空手を扱うユハラを苦戦しながらも倒すのだった。

 ゲストはデビュー曲「イルカにのった少年」(1973年)で人気を博した城みちる氏。役名の「城」の字が共通なのは偶然だろうか? 劇中で使用された歌はサブタイトルと同じ「大人への階段」で、劇中でも自室や喫茶店で歌うシーンがある。
 当時はブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』(1973年)などの影響により空手ブームの真っ直中。ゲストの城氏や犯人が空手、ヌンチャクを扱い鉄男と激しい戦いを見せる。
 第18・19話は予告にてヤングアイドルシリーズと紹介されているが、本話は第16・17話と同様特に予告ではヤングアイドルシリーズとは紹介されていない。しかし、作風から見て第16話から第20話がヤングアイドルシリーズだったのではなかろうか? なおメンバーは荒川努氏、浅野ゆう子氏、麻生よう子氏、林寛子氏、城みちる氏と続いた。
(※城所の漢字表記は表札及び黒板のシーンを参照。勇司の漢字表記は当時の広報用資料を参照。ユハラ、ミカの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第25話「おじさん刑事の涙」

放送日:1975/04/28
脚本:長坂秀佳
監督:加島 昭
ゲスト:大野しげひさ/佐藤京一/鈴木康博、朝倉 一

 宝石店強盗の現場検証の中、現場に現れた場違いな子連れ男。それはダメ刑事と呼ばれる大鳥伸平だった。早速捜査を開始する鉄男だったが、子供を連れた大鳥が後からついて回る。そんな様子に風間は、鉄男が手の内をさらけ出していると非難、大鳥が事件に関係していると指摘する。手配中の犯人の車を発見した鉄男は追跡、犯人を追い詰めるが、大勢の子供達に囲まれた為に逃げられてしまう。鉄男は近くにいた大鳥が子供をけしかけて鉄男の邪魔をしたと推測、大島が犯人を庇っていると知り尋問するが、大島は口を開かない。その後、大鳥は犯人に自首を勧めるが、犯人に拳銃で撃たれ重傷を負った。鉄男は、大島が連れていた子供・オサムが大島の子供で無いことを知り、その父親が犯人だと知る。行方を突き止めた鉄男は犯人・佐藤常吉と格闘。鉄男は、大島が子供の為に佐藤を庇っていたことを説き、大島の心を知った佐藤は観念するのだった。

 ゲストは大野しげひさ氏。予告では「人気急上昇大野しげひさのゲスト出演を得てますます快調」と紹介された。なお、台本では大野しげひさ氏の名前が印刷されているので、大野氏を想定してホンが書かれたということであろうか?
 台本に書かれた制作bヘ6。放送と比べ20話程の差があるが、何か理由があって撮影、もしくは放送が後回しになったのであろうか?
 犯人の名前は劇中では佐藤常吉だが、台本では大場常吉である。
(※大鳥伸平、オサムの漢字表記は台本を参照。佐藤常吉の漢字表記は表札のシーンを参照。)


第26話「青春からのプレゼント」

放送日:1975/05/05
脚本:長坂秀佳
監督:佐伯孚治
ゲスト:黒部 進、宮本和男/伊東平山、一の倉和子/野上 正、内村不二人、高木修平

 連続ビル荒らしの三人組の一人・すっ飛びのゲンを追跡する鉄男らだったが、何も知らない妙子が鉄男に接触した為に尾行がバレ、ゲンは逃走。妙子は「女の子なんだから」と庇う鉄男の言葉に逆に反発、「自分の手で犯人を捕まえる」と息巻き刑事部屋を飛び出した。私服で聞き込みを続ける妙子だが、一日足を棒のようにしても何の成果は無かった。無理矢理連れ戻しに来た鉄男に、妙子は自分に縁談の話があることを告げ、普通の女性の枠にはまってしまうことを悩んでいると語る。そして、同じ犯人による事件が再び発生、偶然すっ飛びのゲンと接触する妙子だが、直後にすっ飛びのゲンは仲間に殺される。妙子にその現場を目撃されたと勘違いした犯人の二人は、電話で妙子を誘き出す。指定された場所に向かう妙子は犯人に襲われるが、駆け付けた鉄男によって犯人は逮捕されるのだった。

 劇中にて、本話の途中で妙子が誕生日を迎え21歳になったとされている。
 本番組では「青春」を強調する方向性が多いのか、単にサブタイトルの問題だけなのか、サブタイトル中に「青春」の文字が入ることが多々あり、本話の後も3度「青春」の文字がサブタイトルに使われている。なお、4度ともすべて脚本家が異なる。(第34話:阿井文瓶氏、第36話:田口成光氏、第39話:曽田博久氏)
(※すっ飛びのゲンの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第29話「行くぞ!警察犬」

放送日:1975/05/26
脚本:長坂秀佳
監督:小松範任
ゲスト:矢野間啓二/佐竹一男/八百原寿子、藤田敏美、大栗正史

 連続宝石窃盗事件が発生。いずれの事件も飼い犬が空気銃で殺害されていた。捜査が難航する中、城南署に警視総監賞を8回取ったという凄腕の応援が派遣されてきた。それは、ドイツ生まれの警察犬・フリードリッヒ・ヴィルヘルム・フォン・プーフェンドル三世、通称・ヴィルだ。ヴィルとコンビを組むことになった鉄男は訓練士の須永紀一と一日中捜査するが、手掛かりは得られなかった。夜になり、鉄男と別れてからも諦めずに捜査を続ける須永だったが、犯人・尾形栄司に襲われ命を落とす。さらに同じ手口による事件が発生。鉄男は現場に残された軍手の匂いをヴィルに嗅がせ犯人の足取りを追うが、たどり着いたのは須永の墓の前。尾形が捜査を混乱させる為に須永の軍手を利用したのだった。手掛かりがない中、鉄男は犯行の狙撃地点を推測、残されたタバコの匂いをヴィルに嗅がせ、尾形の住居にたどり着く。逃亡する尾形を追跡する鉄男は見事逮捕するのだった。

 本話より1か月、計4話続いた「警察犬シリーズ」の第1弾。予告にて「警察犬シリーズの第1弾」と紹介された。
 訓練士・須永紀一の墓標だが、墓標に書かれた日は昭和五十年六月二十一日。本話の約一か月後である。通常では物語と現実をほぼ同日にするケースが多く、本番組でいえば例えば刑事部屋の黒板に書かれた日付が放送日の数日前というケースも時折見られるが、本話のように未来の日というのは非常に珍しいケースである。
(※須永紀一の漢字表記は墓標のシーンを参照。尾形栄司の漢字表記は台本を参照。)


第31話「盗まれた警察犬」

放送日:1975/06/09
脚本:長坂秀佳
監督:竹本弘一
ゲスト:宇崎尚韶、長谷俊夫/藤森達夫、西沢武夫/堀 礼文、乾 大助、大家 博

 警察犬ヴィルの訓練に明け暮れる鉄男。しかし、そのヴィルが突然姿を消した。盗まれたと思い心配する鉄男だが、時村達は「愛想を尽かして逃げ出した」と、まじめに取り合わない。一人、必死にヴィルの行方を追う鉄男だが、一向に消息はつかめなかった。そんな時、警察犬を使った強盗事件が発生。ヴィルではないと信じたい鉄男だったが、被害者の証言からヴィルだと判明。そして鉄男はヴィルの元訓練士を疑い、そのうちの一人・児玉ヒロシを追う。児玉は、人を疑うことを知らない、どんな命令でも素直に受けるヴィルを利用、取り付けた無線機で指示を与え、強盗をさせていたのだ。児玉の居所を突き止めた鉄男だったが、児玉の命令に従ったヴィルに襲われる。必死にヴィルに訴える鉄男だが、ヴィルは付き合いが鉄男より遥かに長い児玉の指示に従う。だが、ヴィルは鉄男が落とした鉄男との想い出の人形に気が付き、そして鉄男を庇う。ヴィルに救われた鉄男は児玉と格闘、逮捕するのだった。

 本作は「警察犬シリーズ第3弾」
 盗まれた警察犬が犯人のいいなりになるというシチュエーションといえば、『特捜最前線』第501話「殺人警察犬MAX」を彷彿とさせる。この作品は、長坂氏のシナリオ集「さらば斗いの日々、そして 長坂秀佳シナリオ傑作集 」(1985年)の解説も手掛けた脚本家・会川昇氏の「ドラマ」第3回プロット募集入選作品を長坂氏がシナリオ化したものである。
(※児玉の漢字表記は表札のシーンを参照。ヒロシの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第33話「若き血潮燃えて」

放送日:1975/06/23
脚本:長坂秀佳
監督:富田義治
ゲスト:坂東八十助/井上博一、富田博之/高橋一俊、岩井松二郎、林 美果、尾形とも子

 銀行強盗殺人犯のイワタを追跡する鉄男らだが、鉄男の追跡を一人の若者が妨害。それは、城南署に明日から配属される予定だった新米刑事の星川アキラで、イワタを追う鉄男を犯人と勘違いしたのだ。城南署の面々は逮捕したイワタを尋問するがイワタは口を割らない。時村から星川の教育係を命じられる鉄男だが、星川は鉄男に反抗的な態度をとり続ける。4年前のハイジャック事件の時、人質になった自分を救って一人の刑事が殺されたことから、悪い奴らを許さない刑事になると決心した星川は、血気盛ん過ぎな点が災いして失態を演じた。さらに突進する星川は、単独で主犯のクロセヒデユキを追う。クロセとの接触に成功する星川だったが、クロセは星川の拳銃を奪い逃亡、売店に立てこもった。人質がいる為に下手に手が出せない鉄男だが、星川は「人質の気持ちが分かるのか」と反抗、「自分は殺されてもいいから一刻も早く犯人を逮捕してくれ」というのが人質の気持ちだと訴える。鉄男を殴り倒し拳銃を奪った星川はトラックを操り売店ごとぶっ飛ばそうとするが、そんな星川を止める為に鉄男は丸腰のまま犯人の気をそらす。そして、逃走するクロセを鉄男と星川が逮捕するのだった。

 本話の前週・第32話「負けるな警察犬に」にて、「新しい訓練士が出来て行っちゃった」という台詞のみで警察犬シリーズは終了。本話及び次週の第34話は城南署にまたもや新たなメンバーが参入。坂東八十助氏演じる19歳の新米刑事・ホシカワアキラが、鉄男に負けない程の無鉄砲な熱血漢という役柄で登場する。
 刑事ドラマ定番といわれる、「取調室で容疑者に出されるカツ丼」というシチュエーション。長坂氏が執筆する『刑事くん』シリーズでは本話のみこのシチュエーションが登場する。(ただし、本シリーズの第40話にて「ライライ軒のカツ丼おごっちゃう」という風間の台詞がある。またこのライライ軒だが、第33話では島崎の台詞で「ライライ軒でも行くか」、第49話ではラーメンが入った「来々軒」の岡持ちが登場。すべてが同じ店かどうかは不明であるが、偶然とも考えにくい)この「取調室のカツ丼」のシチュエーションだが、書籍「なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?」(中町綾子著・メディアファクトリー発行)によると、この元祖は1955年の映画『警察日記』といわれているとのこと。また、このくだりの説明にて、長坂氏の作品でもある『刑事一代』(2009年)にも触れられている。
(※星川アキラの漢字表記は当時の広報用資料を参照。イワタ、クロセヒデユキの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第38話「ラジコンと友情」

放送日:1975/07/28
脚本:長坂秀佳
監督:富田義治
ゲスト:塩屋 翼/藤江喜幸/北川陽一郎、永谷悟一/佐藤賢司、川島ゆかり

 サンドバギーのラジコンを使った強盗事件が発生。ダイナマイトを乗せ「財布をバギーに乗せないと爆発させる」と脅迫する手口だった。鉄男はラジコンに「JR」のイニシャルが書かれていたという目撃情報からラジコン模型店の店長代理・リュウザキジュンヤを尋問。しかし、仕事中の彼にはアリバイがあった。リュウザキは貯金してようやく手に入れたラジコンのヘリを操るが、今度はラジコンヘリを使った犯罪が発生。ラジコンが通勤途上の友里を襲った。鉄男は、ラジコンを使ってリュウザキに突っかかる高校生・カシワギシュウジを疑い、親に反抗的な態度をとるシュウジを「自分自身に負けている意気地なし」だと非難する。そして鉄男は、シュウジがリュウザキと同じバギーやヘリを購入、イニシャルを書きこんで犯行に及んだと指摘、自首を勧める。しかし、シュウジは逃走、ビルに逃げ込むが階段が崩れ落ち転落の危機に。ロープを手に、彼を救いに階段を駆け上がる鉄男だったが、鉄男もまた崩れた階段の為身動きが取れなくなり、ロープを落としてしまう。万事休すの鉄男だったが、側にあったラジコンのプロポでヘリを操縦。ラジコンを使ってロープを拾い、そしてロープを駆使してシュウジを救い出した。命懸けで自分を救った鉄男に、シュウジは「もう自分には負けない」と誓うのだった。

 ゲストのリュウザキジュンヤを演じているのは桜木健一氏とは『柔道一直線』(1969年〜1971年)で共演していた伍代参平氏(当時は藤江喜幸名義)。『柔道一直線』では高原ミキ(演:吉沢京子氏)の弟・高原三平役で出演していた。
 カシワギシュウジ役は、『海のトリトン』(1972年)の主人公・トリトン役や『科学忍者隊ガッチャマン』のつばくろの甚平役など声優として有名な塩屋翼氏。当時は子役としても活躍していた。
(※カシワギシュウジ、リュウザキジュンヤの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第40話「明日へ駈ける君」

放送日:1975/08/11
脚本:長坂秀佳
監督:佐伯孚治
ゲスト:志穂美悦子/幸田宗丸、三上左京/富士乃幸夫、田川勝雄、ユセフ・オスマン/高橋利道、高橋健二、栗原 敏

 麻薬担当の本庁刑事・ナカハラが麻薬中毒患者として発見された。時村と鉄男の父と共に「城南署の三羽鴉」と呼ばれ、鉄男にとっては幼い頃遊んでもらった想い出のある男だった。廃人同様の姿に復讐に燃える鉄男は、容疑者である横浜の暴力団スワ組のシラツカセンゾウを追う。そのスワ組を、女記者のユカが執拗に追い回していた。チンピラに扮しスワ組に単身潜入する鉄男。しかし、ユカも正体を隠しスワ組に潜入する。手を引くよう訴える鉄男だが、ユカは拒否。恩人であるナカハラの為、そして昔、「正義は貫き通せ」と教えてくれた父の言葉の通り生きると告げる。その後鉄男は、シラツカの部屋に隠してあった写真からユカがシラツカの娘であると知る。麻薬取引の最中、鉄男とユカは両組織と激闘。だが、鉄男はシラツカに銃口を向けられ窮地に。そんな父に銃口を向けるユカ。自首してと訴える娘の言葉にうなだれるシラツカは組織と共に逮捕されるのだった。

 前週の第39話より「アクションスターシリーズ」が開始。(予告によって「アクションスターシリーズ」や「アクションシリーズ」と呼ばれている。)計4回、谷隼人氏、志穂美悦子氏、牧れい氏、倉田保昭氏と続いた。
 本話は予告にて「志穂美悦子をメインゲストに迎えて送るアクションスターシリーズの第2弾」と紹介された。なお、予告では「明日に駈ける君」と語られていた。
(※ユカ、ナカハラ、シラツカセンゾウ、スワ組の漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第45話「舌出し天使」

放送日:1975/09/15
脚本:長坂秀佳
監督:佐伯孚治
ゲスト:黒木真由美/山崎 猛/大前田 武、唐沢英二

 宝石強盗のカワナミをホームレスに扮して張り込む鉄男を見て、本物のホームレスと勘違いした少女・伊吹アリサは、鉄男が腹を空かしてると思いリンゴを差し出した。その可憐な少女に舞い上がる鉄男の前に、偶然、先程の場所で拾った財布を届けにアリサが城南署を訪れた。そこで偶然見かけた風間に一目惚れしたアリサは鉄男をダシに風間を呼び出してデートを申し込むが、捜査中の風間はデートを拒否。風間に振られ落ち込むアリサを鉄男は励ます。アリサの父・伸郎は鉄男が風間だと誤解し、二日後に親子ともにアフリカへ永住する為、美しい想い出を作ってやってほしいと鉄男に頼む。しかし、風間は再びアタックするアリサを丁重に断る。そんな彼女を心配しアリサの元へ向かう鉄男。だがそこに、カワナミの共犯・西田清彦が、ロッカーの鍵が入った財布をアリサが拾ったと知りアリサを狙う。その動きに気が付いた風間は鉄男らと共に西田とカワナミを逮捕。アリサは笑顔を見せ、何も言わずにそっと立ち去るのだった。

 本話より「アイドルシリーズ」が開始。(予告によって「アイドルシリーズ」や「ヤングアイドルシリーズ」と呼ばれている。)計7回、黒木真由美氏、片平なぎさ氏、佐藤佑介氏、豊川誕氏、おりも政夫氏と北公次氏、江木俊夫氏、星正人氏と続いた。
 本話のゲストアイドルは黒木真由美氏。予告では「いよいよおまたせ アイドルシリーズ第1弾……」「……君達のアイドル 人気絶頂 黒木真由美を迎えて……」と紹介された。本話で流れた歌は「感情線」(1975年)。なお、黒木氏は長坂作品では『街』(1998年)に末永晶子役で出演している。
(※伊吹は名刺のシーンを参照。西田清彦は書類のシーンを参照。アリサ、カワナミの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第49話「二人の学生刑事」

放送日:1975/10/13
脚本:長坂秀佳
監督:佐伯孚治
ゲスト:おりも政夫/森川千恵子/赤羽根 明、影山みのる、大塚秀宣、永瀬 光/北 公次

 中野警察学校から城南署へ派遣されて来た二人の実務修習生、アシベケイジとミタトモヤ。連続窃盗ダイヤ密造事件を追う城南署は犯人グループの一人・通称ジェニーの足取りを追い、彼女が以前取引をした場所をマーク、張り込みに挑んだ。鉄男はアシベとミタの実地研修を兼ね、一番出現の可能性が低いとされる喫茶店の張り込みを命じられた。その張り込みの最中にアシベとミタが出会った女性ミネキョウコ。アシベの死んだ婚約者・アヤコに雰囲気が似ているキョウコに、アシベと、アヤコのことが好きだったミタも好意を寄せる。しかし、キョウコがジェニーではないかと疑う鉄男は、キョウコを尾行しアパートを捜索する。キョウコが犯人だとは思えないアシベとミタは捜査を拒否。しかし、正体を現した犯人グループと格闘、二人はキョウコを追い詰めるが、キョウコを逮捕しようとする鉄男を止める。「自首を勧める」という二人の態度に心を打たれたキョウコは泣きながら逮捕志願し、両手を差し出すのだった。

 本話のゲストアイドルはフォーリーブスのおりも政夫氏と北公次氏。予告では「ヤングアイドルシリーズ第5弾」「フォーリーブスのおりも政夫 北公次を迎えて送る……」と紹介された。本話で使われた歌は「ふたりの問題」(1975)。なお、フォーリーブスといえば長坂作品では『小さなスーパーマン ガンバロン』(1977年)第1話「出たぞ!オソロシゴリラ」にもゲスト出演している。
 本話や第33・34話、次週の第50話では鉄男が新人と組むという展開。新米刑事であった鉄男が失敗を繰り返しながら成長していくという基本的な構成であった本番組シリーズであるが、番組開始から既に4年以上、1話で1事件という計算をしたとしても150以上の事件に参加してきた彼は既に新人では無く、名実ともに立派に成長している。そんな状況の為なのか、鉄男が先輩刑事として後輩を指導するケースが現れ、それが最終回への展開に発展していく。(第33・34話は19歳の新米刑事、本話は警察学校の実務修習生、第50話は刑事養成講習所の実務修習生という設定。)おそらくこの時点で鉄男主役の本シリーズの終了が決定、その布石としての展開だったのではないかと推測される。
(※アシベケイジ、ミタトモヤ、ミネキョウコ、アヤコの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第51話「走れヤングライオン」

放送日:1975/10/27
脚本:長坂秀佳
監督:竹本弘一
ゲスト:星 正人/八木 喬、松田 章/高杉鉄平、清水理恵、出原健一/大浦宏司、大島 剛、福原三男

 モデルガンを改造した改造拳銃を使った犯罪が横行。半年がかりの捜査でその改造工場を突き止めた城西署だったが、踏み込みの際に失敗。そして、第2の工場が城南署管轄内にあると判明し、城西署のマサキタケシ刑事が城南署に派遣された。「城西署の三神」と呼ばれる程の鉄砲玉刑事であるマサキは、時村の命令で鉄男とコンビを組むことになる。モデルガンショップに犯人が現れると推測し張り込む鉄男とマサキ。自分が予定より1時間早く踏み込んだ為犯人を取り逃がすという大失態をおかした為、その名誉挽回の為に執念で事件を追うマサキは、鉄男に事あるごとに反発する。そして城南署を敵扱いし、自分の手だけで犯人を逮捕すると息巻く。モデルガンショップに現れた犯人を発見、追跡する鉄男とマサキは工場を突き止め二人だけで踏み込む。ピンチになりながらも組織を一網打尽にする二人。「どちらが先に犯人を挙げるなんてもんじゃない」という鉄男の言葉に理解を示したマサキは、激闘の末に気を失った鉄男の手に、主犯の手にかけた手錠の片側をかけるのだった。

 本話のゲストアイドルは星正人氏。予告では「ヤングアイドルシリーズ第7弾」「魅力のニューパワー 星正人を迎えて送る」と紹介されいる。星氏は本番組終了後、『それ行け!カッチン』を挟んで放送された『刑事くん』第4シリーズの主役を務めることになる。ただし、役名も異なる為別人という扱いであろう。ちなみに本話ではマサキの実父は城西署の署長・アオキという設定が語られており、苗字が違うのはマサキが養子に出されたからということである。
(※マサキタケシの漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)


第54話「かがやく明日へ!」

放送日:1975/11/17
脚本:長坂秀佳
監督:佐伯孚治
ゲスト:南雲佑介/小高まさる、早川勝也/小森谷嘉重

 警察大学が刑事のエキスパート養成の為に各署から特待生を募集、城南署からは数多い署員の中から鉄男が選抜された。ただし、一週間後の正式通達までの間失点が無ければという条件付きだった。鉄男は父の墓に「認めてもらえた」と涙して報告、はるも夫の遺影に泣きながら語りかける。しかし、どんな些細なミスも失点になるという条件に、城南署の仲間は鉄男には絶望だと悲観、失点をさせない為、鉄男に事件に関わらせないよう気を配る。そんな時、親子惨殺事件の犯人が鉄男がよく知るドウジマ組のバンドウミツルだと判明。鉄男は一同の心配をよそに飛び出して行く。鉄男はバンドウを追跡するが、子供を盾にとられ拳銃を奪われる。遊園地の観覧車に立てこもったバンドウを包囲する鉄男ら。しかし、バンドウは周囲の客を人質に鉄男らを脅迫する。応援到着までの10分を時間稼ぎすべきという風間の声に、自分の拳銃で人が撃たれることに我慢ができない鉄男はバンドウの死角から接近、バンドウの逮捕に成功する。しかし、拳銃を奪われ、客や風間まで撃たれるという状況に、鉄男は特待生を断念。だが、やむを得ない状況だったことが認められ、失点にはならず、鉄男の警察学校行きが正式に確定した。時村の最後の「ばかもん」が鉄男に温かく飛び、そして、鉄男は希望を胸に城南署を旅立って行くのだった。

 第3シリーズ最終話も長坂氏が脚本を担当。結果的には第1シリーズ以外はすべて長坂氏が担当している。鉄男の復帰も想定していたと思われる第2シリーズとは異なり、立派に成長した鉄男が城南署を巣立って行くという展開であり、第1シリーズでは「父の仇である犯人を自分の手で捕まえる」という目標を達成した鉄男が、本シリーズではもう一つの目標ともいえる「父のような立派な刑事になる」という目標を、皆から認められての栄転というカタチで達成させているといえよう。
(※バンドウミツル、ドウジマ組の漢字表記は不明の為、ここではカタカナ表記で表している。)