※俳優のキャスティングは、テロップではなく声から割り出したものの為、誤りがある可能性があります。ご了承ください。尚、もし誤りに気づかれた方がおりましたら、ご指摘いただけると助かります。
【ストーリー紹介】
ヴァルナ星の略奪集団「ウルフアタッカー」の一員、「スターウルフ」こと新星拳=ケンは、ある日、誤って恋人・リージャの兄、スサンダーを殺してしまい、仲間から追われる身となった。重傷を負い、宇宙をさまよっていたところを地球の宇宙船「バッカスV世号」に助けられたケンは、自分が「スターウルフ」である事を隠し、スペースコマンド隊の一員となった。
第14話「宇宙に浮ぶ黒い竜」
放送日:1978/07/02
脚本:長坂秀佳
監督:深沢清澄
ゲスト:田中幸四郎(ドラゴン星国王・バズカル将軍)、斉藤浩子(白十字星人・ポーリヤ)、立花美英(その姉・ピリーナ)、中村良二(ドラゴン星人・ジェーゴ少佐)/※ペットロボット・ピャムの声(不明)
新たな仕事の依頼を受け、ドラゴン星へと向かったバッカスV世号。しかし、戦闘機の攻撃による歓迎と、捕虜を虐待するドラゴン星人・バズカル将軍の態度にケンは憤慨する。さらに、バズカル将軍は人の心を読むというロボット・ピャムによりケンらの心を読もうと企む。もし、ケンがスターウルフだとバレればケンの命は無い! しかし、ピャムを操る白十字星の捕虜・ピリーナが抵抗し、回避。怒ったバズカル将軍はピリーナを虐待する。そして、依頼を説明するバズカル将軍――それは、敵対関係にある白十字星にしかない鉱石・サイモナイトの入手。その鉱石を使って白十字星人だけを消滅させる兵器を開発した為だった。その証明として、ケン達の目前でピリーナを消滅させるバズカル将軍。バズカル将軍の非情な行いに反発するケンらは幽閉され、そして、ジョウとリュウは隔離されてしまう。ケンらは、バズカル将軍の企みを白十字星に知らせる為、同じく幽閉されていたピリーナの妹・ポーリヤと共に脱走、バッカスV世号へと走る。ケンらは、ジョウとリュウの無事を信じながら、白十字星へと向かうのであった。
本番組は、第1話〜第13話までは一つの大河ドラマとして連続のドラマを展開。原作第1巻『さすらいのスターウルフ』にある、ササール星の新兵器・スーパーウエポンの破壊を任務とする物語である。(ちなみに原作では、カラル人より、ササール人(原作ではヴォホル人)が持つ強力な新兵器の壊滅の依頼を受け、ヨローリンを脱獄させ協力させた後、任務を遂行するという基本プロットは同一。ただし、ヨローリンを脱獄させた後の展開は全くといっていい程別物である)しかし、視聴率低迷により数々のテコ入れを導入。その一つとして、この第14話より長坂氏が参入。最終話を含み、計7本執筆している。それに伴い、今までのような原作に(比較的)忠実な大河ドラマを廃止。連続したドラマは14話〜17話の4部作のみで、後はすべて1話完結となった。また、番組タイトルを『スターウルフ』から『宇宙の勇者 スターウルフ』に変更、マスコットロボット・コン8の登場、スペースコマンド隊のコスチュームを半袖に変更等々、数々の変更が取り入れられている。 長坂氏が手掛けた7作は、すべて原作には無いオリジナルの作品であるが、この第14話に登場する「人の心を読む」ピャムだけは原作にも登場する。登場するのは第1巻『さすらいのスターウルフ』P76より。ヨローリンの企みで、ピャムの力によってケイン(原作での主人公の名前)の心が読まれようとするが、ケインは逆に心の中で「これ以上おれの心を読んだら殺す」と考えピャムを脅迫、危機から脱している。 宇宙病の特効薬・サイモナイトを、バズカル将軍が殺力兵器として利用しようと語るシーンで、それが原子力と同じで、一方では平和利用、一方では恐るべき原水爆と同じだと揶揄している。長坂氏らしい「反戦」のテーマがここに現れている。 ポーリヤ役の斉藤浩子氏は、長坂作品では『人造人間キカイダー』(1972年〜1973年)第29話「カイメングリーンは三度甦える」、『キカイダー01』(1973年〜1974年)第14話「怪談 ギルの亡霊が地獄で呪う」、『快傑ズバット』(1977年)第21話「さらば瞼の母」、『ぼくら野球探偵団』(1980年)第10話「赤マントに消された美少女チーム」に出演している。 ピリーナ役の立花美英氏は後に中村れい子に改名。長坂作品では単発ドラマ『闇からの叫び コンピュータに狙われた花嫁』(1986年)に出演している。 本作の台本の準備稿台本は第14話と第15話の合本。ただし、第18・19回と表記されている。路線変更直後とあってか、あらすじの大きな流れの変更は無いものの、準備稿と実際の映像とでは細かい変更点が数多くある。主な変更点は以下の通りである。 ・台本では、バッカスV世号がドラゴン星に向けて発進するまでのシーンは無し。また、コン8が新メンバーとして紹介されるシーンも無し。路線変更1作目として執筆されたのでは無いということだろうか?。 ・映像での「ドラゴン星」は、台本では「黒竜星」である。これは、映像ではヒメの「ほんとに黒い竜みたい」という台詞が残されている。白十字星の「白」に対しての「黒」であろうか。 ・映像での「バズカル将軍」は、台本では「バズガル将軍」である。 ・映像での「コン8」は、台本では「小ロボット」である。まだ、名前は決まっていなかったようだ。 ・ピリーナとポーリヤの初登場シーン、台本ではト書きにて「勝ち気な目をしたピリーナと、悲しい目の美少女ポーリヤ」という表現がされている。映像では、そこまではっきりした表現はされていなかったと思われる。 ・ジェーゴ少佐が脱走するシーン、映像では戦斗艇(おそらく)に乗って逃走するが、台本では、まず脱走したジェーゴ少佐がポーリヤと接触、「助けに来る!必ず……」と伝え、ロケットで逃げ討伐されている。なお、このシーンは第15話に回想シーンというカタチで使われている。(この回想シーンは、回想シーンとして第15話の台本にも存在する) ・バズカル将軍がサイモナイトの説明をするシーン、台本では、石を見分ける方法として「ポーリヤを白十字星に連れて行き、現地で実験台にして見分けろ」と伝えている。 ・スペースコマンドのメンバーがサイモナイトの説明を聞いた後、映像ではケン達はジョウとリュウと別れ、牢獄へ入れられるが、台本では、ジョウとリュウも一緒に牢獄に入れられ、その後、一緒に脱走している。その後、別行動をとったジョウとリュウが捕らえられ、バズカル将軍がジョウとリュウを人質に、「ポーリヤを案内に4人だけでサイモナイトを奪う」ようケン達に要求。そしてバッカスV世号が発進するという流れになっている。 (※ポーリヤの名前は、テロップでは「ヤ」が大きい時と小さい時があるが、ここでは台本(準備稿)の表記である大きい「ヤ」を採用。バズカル将軍、ピリーナ、ジェーゴ少佐、ピャムの表記はテロップ表記を参照。)
第15話「いん石群へ恐怖の突入」
放送日:1978/07/09
脚本:長坂秀佳
監督:深沢清澄
ゲスト:斉藤浩子(ポーリヤ)、田中幸四郎(バズカル将軍)、中村良二(ジェーゴ少佐)、田中忠義(ウルフアタッカー・メルビン隊長)
ドラゴン星からの脱出に成功するバッカスV世号。しかし、バズカル将軍から通信が入り、バズカル将軍はジョウとリュウの命と引き替えに10日以内にサイトナイトを入手するよう脅迫。要求をのんだケン達は白十字星へと旅立つ。安全航路ではとても間に合わない為、危険な空間を突き進むバッカスV世号。一方、白十字星へケンが向かったことを知ったウルフアタッカー指令・ハルカンは、メルビン隊長に後を追わせた。隕石群を突き進み航行するバッカスV世号は、追ってくるウルフアタッカーを巻く為、隕石の影に姿を隠す。そして、そこでポーリヤと恋仲であるドラゴン星軍人・ジェーゴ少佐を発見した。彼はバズカル将軍に反発し、ドラゴン星から脱出、漂流していたのだ。助けに行くと主張するケンだが、ダンとビリはここで動けば確実にウルフアタッカーに気付かれてしまうと反対。しかし、ケンはその危険を承知で小型艇・ステリューラーに乗り出撃。ジェーゴ少佐を救出し、追ってきたウルフアタッカーをバッカスV世号との連携プレーで撃退するのだった。
本作より小型宇宙艇・ステリューラーが登場。ケンが搭乗し、活躍を見せる。また、バッカスV世号も今までに比べて圧倒的に強くなり、驚異的な命中率でウルフアタッカーを次々と撃破していく。これも路線変更の一つであろう。 本作の準備稿台本と映像との主な変更点は以下の通りである。 ・タイトルは「宇宙の漂流者」である。 ・冒頭、映像では白十字星へ向かうバッカスV世号にバズカル将軍から通信が入り、ジョウとリュウの命と引き替えサイモナイトの入手を要求という流れだが、台本では、第14話にて既に脅迫されている為このくだりは無い。ただし、バズカル将軍がジョウとリュウに対し、二人の命を脅迫の材料にし白十字星へ向かったと語っている。 ・ラスト、台本では白十字星が目前に広がっているところで終わっている。 (※メルビン隊長の表記はテロップ表記を参照。)
第16話「二つの顔のサイモナイト」
放送日:1978/07/16
脚本:長坂秀佳
監督:金谷 稔
ゲスト:高杉 玄(白十字星・プラーノ大臣)、池田駿介(白十字星・パルス副官)/斉藤浩子(ポーリヤ)、田中幸四郎(バズカル将軍)、中村良二(ジェーゴ少佐)、田中忠義(メルビン隊長)
白十字星に到着したバッカスV世号。ケンは、サイモナイトが病院の地下倉庫にあると知り、わざと大暴れし、麻酔銃で撃たれたケンは病院へと収容される。そして、ポーリヤの案内で地下倉庫へ侵入する。一方、ハルカンはケンを処刑する為、メルビン隊長を白十字星に派遣、白十字星に対し、スターウルフの引き渡しを要求した。裏切り者の引き渡しは宇宙憲法によって決められている為、白十字星の大臣・プラーノとしては引き渡す他は無い。しかし、ジェーゴ少佐が自分がスターウルフだと名乗り、ケンの身代わりに棺に入れられメルビン隊長に引き渡される。地下倉庫に侵入したケンは、サイモナイトの強奪に成功。しかし、白十字星人によって取り囲まれてしまった。状況を説明するケンらにプラーノ大臣は納得。改めて、スペースコマンドへの仕事としてドラゴン星のバズカル将軍を倒すよう依頼。その報酬としてサイモナイトを受け取ったケンらはドラゴン星へと急ぐのだった。
パルス副官役の池田駿介氏は、長坂作品の中では『キカイダー01』(1973年〜1974年)の主人公・イチロー役で有名。 第14話同様、使い方によっては薬にも兵器にもなるという鉱石・サイモナイトにスポットが当てられており、この4部作のテーマの一つが浮き彫りにされているといえる。タイトルの「二つの顔の」というフレーズが実に素晴らしい。これは長坂氏によるネーミングだろうか? 台本は第16・17話の合本。台本と映像の相違点は、シーンの順番が多少異なる程度で、大きい変更はあまり無い。 (※プラーノ大臣、パルス副官の表記はテロップ表記を参照。)
第17話「いざ!黒い星の決戦」
放送日:1978/07/30
脚本:長坂秀佳
監督:金谷 稔
ゲスト:斉藤浩子(ポーリヤ)、田中幸四郎(バズカル将軍)、中村良二(ジェーゴ少佐)、田中忠義(メルビン隊長)
ドラゴン星へと急ぐバッカスV世号。期限まで後5日、先を急ぐバッカスV世号の前にメルビン隊長率いるウルフアタッカーが立ち塞がる。しかし、小型艇・ステリューラーを操るケンの活躍によりウルフアタッカーは撤退。故障したバッカスV世号が修理に手間取っている隙に、メルビン隊長はドラゴン星へ到着、ハルカンに棺を差し出すが、その中身がジェーゴ少佐だと知ったハルカンは、任務に失敗したメルビン隊長を射殺する。そして、脱走したジョウとリュウの代わりにジェーゴ少佐を人質にし、引き続きケンらにサイモナイトの差し出しを要求する。警戒厳重の為にドラゴン星に侵入できないバッカスV世号だったが、ドラゴン星に落下する隕石に隠れ、ケンの乗るステリューラーが突入。ハルカンを急襲し、ジェーゴ少佐を救出。そして、ジョウとリュウと合流し、バッカスV世号に無事帰還する。追ってきたウルフアタッカーに立ち向かうケンらはバズカル将軍を葬ることに成功。義弟であるバズカル将軍がいなくなったドラゴン星に用がなくなったハルカンは、ドラゴン星から撤退。ジェーゴ少佐とポーリヤはドラゴン星の立て直しを誓うのだった。
第14話より続いた、サイモナイトを廻る戦いの完結編。第1話〜第13話の計6時間半の物語には及ばないものの、4話分2時間の壮大な物語が幕を閉じた。 第16話と同様、台本と映像の相違点はほとんど無い。
第20話「純金ロボットGC301」
放送日:1978/08/20
脚本:長坂秀佳
監督:金谷 稔
ゲスト:佐野光洋(極楽星連邦保安庁長官・ハヤト)、琳 大興(ウルフアタッカー・ゲビタス少尉)、白石のり子(カレン星鑑賞用ロボット・カレン)
バッカスV世号の目前で、地球の観光艇が正体不明の小型宇宙艇に襲われた。出撃したケン、そしてバッカスV世号は宇宙艇を追って極楽星へと降り立った。連邦保安庁に訪れたジョウ達は犯人の正体を知る。地球人が金にまかせて作った純金ロボット・GC301――そのロボットは虐待された為に今は逃亡中の身で、金持ちへ憎悪を抱いている為金持ちの地球人ばかりを襲っているのではと推測された。そんな中、GC301を発見するケンとコン8だったが、ヴァルナ星人が乱入し逃げられてしまう。GC301と友達になったコン8は、その姿を求めて探し回った。人間の姿をしたカレン星の観賞用ロボットに匿われたGC301を発見したケンとコン8だったが、そこへヴァルナ星人・ゲビタス少尉が立ち塞がる。すべてはヴァルナ星人の仕組んだことで、体すべてが宝であるGC301が目的だった。同じように狙う者が後を絶たない為、殺人ロボットに仕立て上げて誰も近づかないように仕向けていたのだ。ゲビタス少尉を倒したケン達は、手配中であるその2体のロボットを通報することなく、見逃すのであった。
登場するゲストロボット・GC301。全身が金色というそのロボットは、やはり『スターウォーズ』(1977年・日本公開は1978年)に登場する全身が金色のロボット・C−3POの影響であろうか。ただし、そのキャラクター性に類似点は無い。なお、そのマスクは本番組と同じ円谷プロ作品『ファイヤーマン』(1973年)の主役・ファイヤーマンの改造。ちなみに、本番組に第14話から登場しているコン8は、同じく円谷プロ作品『恐竜戦隊コセイドン』第29話「コセイドン緊急出動 果しなき戦い」(1979年1月19日放送)に、全身緑色に塗られて出演。完全な小道具扱いであり、『スターウルフ』終了から半年も経たないうちに悲惨(?)な末路を迎えている。(登場シーンは、コロニー19にある科学研究所の扉向かって右にある棚に置かれている。) ゲストで保安庁長官・ハヤトを演じているのは佐野光洋氏。長坂作品では『ウルトラマンA』(1972年〜1973年)のレギュラー、TACの吉村隊員役として出演。 ゲストでゲビタス少尉を演じているのは琳大興氏。長坂作品では『忍者キャプター』(1976年〜1977年)のレギュラー、水忍キャプター2=四条左近役として出演。 ゲストでカレン星の観賞用ロボットを演じているのは白石のり子氏。長坂作品では『ぼくら野球探偵団』(1980年)の多奈加ほのか役として出演。『ぼくら野球探偵団』では、『スターウルフ』でジョウを演じた宍戸錠氏が出演、白石氏と競演しているが、本作である第20話では、残念ながら同じシーンには登場していない。 今作にてエンディングテロップで表記されているゲスト役者は、すべて偶然にも長坂作品のレギュラー出演経験者。面白い偶然である。 台本は第20・21話の合本。台本と映像の相違点はほとんど無し。ただし、印刷されている放送日の記述は実際よりも1週早い8月13日になっている。これは、16話と17話の間の7月23日にプロ野球(オールスター)が入った為である。 台本では、カレン星の観賞用ロボットの名前はカレン。××星の観賞用ロボットとなっており、名前がそのまま星の名前になったようだ。 連邦保安庁長官の名は、台本ではジン・ハヤトとある。ジン・ハヤトといえば、アニメ『ゲッターロボ』(1974年〜1975年)のゲッター2パイロット・神隼人と同姓同名であるが、ただの偶然だろうか? (※ハヤト、ゲビタス少尉の表記は台本を参照。)
第21話「悲劇の宇宙恐竜ニポポ」
放送日:1978/09/03
脚本:長坂秀佳
監督:金谷 稔
ゲスト:北川陽一郎(極楽星大統領・ナムルス)、浅野哲郎(大統領側近・ブランコ大臣)、穴原正義(ウルフアタッカー・ガダル伍長)、川井朝霧(大統領令嬢・チェリカ)
極楽星に滞在中のスペースコマンドは、大統領に招かれ晩餐会に出席。その直後、大統領の娘・チェリカが何者かにさらわれた。後を追うケンは身長2メートルほどの生物に襲われ、逃げられてしまう。痕跡からその生物がテラン星に棲息する草食動物・ニポポだと判明。ケンは、何者かがおとなしいはずのニポポを飼い慣らし人を襲うよう仕向けたと推測する。身代金要求の通信を受けたケンは通信の発信源である無人惑星へ飛びヴァルナ星人と遭遇。そしてニポポに襲われるが、利用されているだけのニポポをケンは撃つことができなかった。極楽星に戻り、ブランコ大臣を問い詰めるケン。今回の事件は、極楽星の大臣・ブランコが極楽星を乗っ取る為に仕組んだ計画で、その正体はヴァルナ星人だったのだ。正体がバレ逃走するブランコ。ブランコの命令で再びケンを襲うニポポだが、ケンの心を理解しおとなしくなる。そのケンをブランコの銃口が狙うが、それをニポポが身を挺して庇った。怒りに燃えるケンはブランコとウルフアタッカーを撃破。極楽星を後にするのだった。
タイトルにもある通り、主役は宇宙恐竜ニポポ。「宇宙恐竜」といえば、大抵の人は『ウルトラマン』に出てくる最強の敵・ゼットンか、まれに、箱根にある「箱根3D宇宙恐竜ワールド」を連想するであろうが、果たしてこの「ニポポ」を連想する人はいるだろうか……。ゼットンに負けるな、ニポポ! それにしても、恐竜というよりは快獣のような造形。コン8が声を当てたらきっとブースカのようになっていたことだろう。 映像では宇宙病にかかっていたジョウ。台本では宇宙病にはかかっておらず、冒頭の晩餐会にも出席。その後も、他の隊員と同様に出番があり、中盤、ケンがブランコ大臣の正体を暴くシーンでも、映像ではケンが1人で暴いているが、台本では大半がジョウの台詞である。今回、ジョウの出番がバッカスV世号のみであるが(ヒメも同様だが)、ジョウ役の宍戸錠氏のスケジュールがバッカスV世号内での撮影しか合わなかったために改変されたのでは無いだろうか? ケンがチェリカを救出した直後、映像では、出現したニポポにケンが襲われ、そして心を通い合わせるもケンを庇ってニポポは倒れ、ケンがブランコを追うという流れであるが、台本ではケンがニポポと心を通わせた後、もう一頭の宇宙動物・ゴンバが出現。見るからに凶暴そうでニポポの兄貴分らしいゴンバがケンたちを襲う。それをニポポがなだめ、おとなしくなるも、ブランコがゴンバを射殺。そして、ケンがブランコを追跡、倒している。その後、チェリコがニポポを飼うことになり物語を締めている。 チェリカを処刑しようとするブランコに、ケンが大ジャンプキックを浴びせるシーン。台本では「ウルフ・キーック!」と叫びながらのキックである。まるで変身ヒーローのようなこの振る舞い。本番組前半でスターウルフの正体を隠していたことが嘘のような代わり映えである。変身ヒーローのような作品にしようとする路線変更の現れであろうか。 ブランコの経歴で白十字星の名前がある。白十字星といえば長坂氏が執筆した第14話〜第17話の舞台にもなった惑星。何気に設定が活かされている。 娘をさらわれた大統領が「大統領である前に一人の父親なのだ」と語る台詞はいかにも長坂氏らしい、父親の心情を表現しているシーン。しかし、台本ではこの他に、身代金要求の通信の前に大統領の心情が語られるシーンがあり、そこで「考えて見れば、政務に追われて父親らしいことは何一つしてやれなかった。これは、私と娘のたった一つのメモリーフィルムなのです」と言って、明るくハネ回る父娘が見られるシーンがある。さらに長坂氏お得意の展開が用意されており、映像化されなかったのが残念である。 (※ナムルス、ブランコ大臣、ガダル伍長、チェリカの表記は台本を参照。)
第24話「大宇宙 宿命の対決!」
放送日:1978/09/24
脚本:長坂秀佳
監督:深沢清澄
ゲスト:富田浩太郎(ピリ・レス・ラバス博士)、植木悦子(その娘・レミレ助教授)、山本恵子(拳の母)/生沢雄史(ヴァルナ星人)、佐田豊二(ヴァルナ星人)、伊藤譲二(ヴァルナ星人)
ラバス博士と娘・レミレ護衛の依頼を受け、惑星M67へ向かうバッカスV世号。そのラバス博士が反物質爆弾を完成させた為だ。護衛の任務に就くケンだが、ケンは死んだはずの母親の姿を発見、その後を追う。それは、ハルカンが仕組んだ罠――捕らわれた女性がハルカンに脅され、ケンの母親を演じていたのだ。その隙を狙って現れたヴァルナ軍団はラバス博士と娘、そして、ヒメを連れてヴァルナ星へと帰還する。自分のミスで博士らがさらわれたことに責任を感じたケンは、一人でヴァルナ星へ乗り込む決意をするが、心を合わせたスペースコマンドのメンバーも共に向かう。バッカスV世号がウルフアタッカーを引きつけている間に、ケンはヴァルナ星に突入。博士が捕らわれている宮殿へと忍び込む。ついに対峙するケンとハルカン。同時に、バッカスV世号は宮殿に胴体着陸、乗り込んだスペースコマンドは博士達の救出に成功する。ケンはステリューラーを操り、ハルカンの乗る戦闘艇を爆破、ついにハルカンを倒した。地球へ向かうバッカスV世号の中で、ケンは仲間に告げる、「自分はヴァルナに戻る」と。ハルカンの居なくなったヴァルナ星を生まれ変わらせるためだ。そして、ケンは旅立つ。広大な宇宙へ――。
最終話は長坂氏が脚本を担当。本作も連続ではなく1話完結のドラマであり、壮大だったドラマを30分で完結させなければならなかったのは残念である。第14話〜第17話のように4話分あればもっと壮大なクライマックスが見られたのではないだろうか。ちなみに、1話完結であるが、第23話にて、ハルカンがケンに対して「ヴァルナへ来い」と挑発しており、一応伏線は張っている。 ラスト、仲間に別れを告げるケンに対し、ダンが「よく喧嘩したな」と言っているが、ダンはそれほど喧嘩したシーンは無かった。喧嘩といえば前半のリュウは凄まじいほどの敵意を見せていたが、他のメンバーはそれほどでもない。ドラマとして描かれなかった裏で、喧嘩が絶えなかったということだろうか……。なお、この台詞は台本には存在しない。 本作の台本は映像といくつかの相違点があり、その為か、製本ではなくホチキス止めによる差し込み改訂台本が存在する。場面はシーン21からシーン33前半まで。差し込み台本は映像とほぼ同一。改訂前のあらすじは以下のようになっている。……バッカスV世号がヴァルナ星に接近したシーンの後、バッカスV世号によって人工衛星のレーダー網を爆破、ステリューラーでヴァルナに乗り込んだケンは宮殿の森に着陸、シシル(ケンの母に扮した女性)の案内で地下水道を進む。一方、バッカスV世号も宮殿へ胴体着陸。ジョウ、リュウ、ダン、ビリの4人がハルカンを追い詰めるも、逆に捕らわれ、ハルカンに反物質爆弾のデータが収められたフィルムを奪われる。そこへケンが現れジョウたちを救助するも、シシルがケンを庇い絶命。ケンがハルカンを追って空中戦を展開し、ハルカンを倒している。 また、他の相違点は以下。 ・映像での「ラバス博士」は、台本では「ブラバス博士」である。(ト書きではピリ・レス・ブラバス)ただし、差し込み改訂台本ではラバスになっている為、それまでの間に変更されたようである。 ・ラバス博士達3人がさらわれる前、台本ではケンとレミレが会話するシーンがあり、二人とも母を亡くしたと語り、そしてレミレが「平和のためだという戦争で死にました」「誰もが戦争のためだと云います。でも兵器は……結局人を殺すためだけに使われるのです」と語る。ここでも、長坂氏の反戦のテーマが流れているのだが、残念ながら映像ではカット。本当に残念である。 ・ダンの台詞「久しぶりに彼女に会えるぜ」の後、台本ではコン8が「アレ?彼女なンていたの?」と続けている。一つ台詞がカットされただけで意味合いが180度変わっている。長坂氏的にはダンには彼女は居ないが、演出側では彼女が居るという考えの違いだろうか? ・そして、台本ではこう締めくくっている 宇宙の彼方へ去っていくステリューラー。 宇宙へ。 ロマンと夢を秘めた広大な宇宙へ―― (※ピリ・レス・ラバス、レミレ、シシルの表記は台本を参照。)
|