「騎馬奉行」エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 黛内蔵助は巡察使として諸国を回り、飢饉により苦しむ平民の姿を幕府に訴えようとするが、保守派の罠にはまり、謹慎、厄介払いをさせられてしまう。しかし、そんな内蔵助に老中・水野越前守は火盗改めの頭の役を命じた。内蔵助は火盗改めとして世の中の悪と戦っていく。


第11話「怪盗白羽矢組・女体の罠」

放送日:1979/12/11
脚本:長坂秀佳
監督:吉川一義
ゲスト:佳那晃子/高杉 玄、河合絃司/菊地 太、津奈美里ん、五十嵐美恵子/小甲登枝恵、尾崎ますみ、香山秀美/早川雄三、三谷 昇/剣持伴紀

 江戸の街で、凶器に白羽の矢を使う夜盗「白羽矢組」が出没していた。調査に乗り出す火盗改めは油問屋ばかりが襲われていることを知る。新たに矢が射たれた油問屋・越前屋に出向いた火盗改めの手塚は、越前屋の囲われ女の顔を見て愕然。それは、手塚が昔愛した女・鶴。手塚の幼なじみの大月兵庫と結ばれ、今は江戸に居ないはずの女であった。しかし、今や兵庫は浪人として落ちぶれいた。そんな中、城中の仕入屋を仕切る賄役が殺され、その下手人として兵庫が捕らえられた。兵庫の無実を信じる手塚は兵庫を逃がすが、兵庫は新たな賄役までをも殺害する。兵庫は、鶴が兵庫の薬代の為に越前屋に利用されていたことを知り、そしてその復讐をしていたのだ。先に襲われた油問屋を襲ったのは仕入れの独占を企んだ越前屋で、越前屋及び賄役の二人を襲ったのが兵庫だった。越前屋は兵庫が狙っているのを逆用し、返り討ちにあった兵庫は絶命する。兵庫の亡骸に別れを告げた手塚は、越前屋を討ち取るのであった。

 本作『騎馬奉行』では長坂氏は1作のみを担当。この作品が、1970年代で放送された最後の長坂作品である。
 決定稿(決定稿という表記は無いが、おそらく決定稿)の台本は制作No.10表記、サブタイトルの表記は無い。物語の展開も大筋は映像と同じである。一方、準備稿は6話(マルに6と表記)でサブタイトルの表記は無し、こちらは決定稿や映像とは基本的なあらすじは同じであるものの、シーンの順番や細かい点、それに中盤からラストにかけての展開が大きく異なる。物語の中盤、映像では越前屋が兵庫を罠にかけ殺めているが、準備稿では、越前屋を斬りに向かおうとする兵庫を手塚が制止。越前屋の処分を手塚に任せ自らを斬れと手塚に懇願する兵庫。斬れずにいる手塚の後ろから現れた内蔵助が兵庫を斬りつけ、兵庫は絶命。内蔵助は手塚に「お前に斬らせたくなかった……許してくれ」と言い残す。そして、手塚らは越前屋を成敗し、手塚が一本松で待つ鶴に、兵庫が別の道を進んだと言い、別れを告げ物語を締めている。なお、物語の序盤、越前屋に突き立てられた白羽の矢のくだりも映像とは異なり、鶴が、兵庫が自分の為に殺人を犯そうとしているのを知り、それを止めさせる為に、火盗改めに手塚がいるのを知った上で手塚なら止められるだろうと考え、自ら越前屋に白羽の矢を突き立てたことになっている。
(※鶴と大月兵庫の漢字表記は台本を参照。)