「都会の森」全エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 検事・八橋宣明の息子・進介は、自分と同じ職についてほしいという父の希望に反し、弁護士となった。舟本法律事務所に勤めることになった進介は、初めて担当することになった事件の法廷の場で、誰もが有罪と見ていた事件に無罪発言をする。


第1話「いざ!初法廷」

放送日:1990/07/06
脚本:長坂秀佳
監督:山田高道
ゲスト:宗近晴見(裁判官)、二瓶鮫一(教官)、稲山 玄(秘書)/明石 良(初老の被告)、望月太郎(中年夫)、山口杏子(その妻)、東京児童劇団、エンゼンプロ

 司法研修所を卒業し、新米弁護士となった青年・八橋進介。進介の父であり東京地検の検事正を務める宣明は、先祖代々検察一家であるがゆえに進介にも検事になるよう強く望んでいた為、反して弁護士になった進介に対して「叩き潰す」と冷たく突き放す。そして進介は、14年前にとある裁判で宣明と戦った舟本守道の事務所に勤めることになった。守道の娘・美波子は、進介の学生時代のアコガレの君であり、凄腕美人弁護士と評判の人物。同日、その事務所に、もう一人の凄腕美人弁護士・片桐晶が所長代理として招かれた。美波子と晶は、研修所の同期生時代、宣明の部下であり東京地検検事・才賀伸也を巡り犬猿の仲の関係だった。早速、簡単な窃盗事件の弁護を任される進介。だが、極度の上がり性で決して秀才とはいえない進介は、醜態を晒し、無惨な初法廷となってしまった。

 長坂氏は、企画からこの番組に携わり、全話の脚本を手掛けた。世に多く存在する刑事ドラマや弁護士ドラマなどの「事件ドラマ」のような原則1話完結の構成ではなく、ひとつの事件を全話(正確には第2話から、ただし、伏線は第1話にもある)にまたがり描いている。
 進介、徹平、景子の三人が酔って『ウルトラマン』(1966年〜1967年)の主題歌「ウルトラマンの歌」を歌うシーン。これは意外にも台本に曲名の指定有り。「ウルトラマンの歌を声高に唄っている進介と景子。」とある。ちなみに、3人が唄っている歌詞だが、なぜか1番と2番のミックス。前半の「胸につけてる〜敵をうつ」は1番の歌詞、続けて1番2番共通である「光の国から」が入り、2番の歌詞である「正義のために」と続き、そして1番と2番共通である「来たぞわれらの」で締めている。本来1番の歌詞なら「ぼくらのために」であるところをわざわざ2番の「正義の為に」としてあるのは「正義の為」の弁護士を目指している進介ならではとのことなのかもしれない。また、台本には特に指定は無いが、映像では「胸につけてるマーク」というところで進介と景子が手にしたばかりの弁護士バッジを示している。ここまで考慮した選曲だったのか、撮影の際に加えられた描写なのか? 気になるところである。なお、『ウルトラマン』は本番組と同じくTBS系の番組である。ちなみに、進介は第7話にて酔っ払った状態で『鉄腕アトム』(1963年〜1966年)の主題歌「鉄腕アトム」の替え歌を歌っているが、そこで「ジェットの限り」の箇所を「正義の味方」と替えて歌っており、やはり「正義」を意識している。
 第1話ということもあり、台本では主要人物のキャラクター描写をその初登場シーンのト書きで表しているくだりがいくつか見られる。片桐晶は「知的な炎を秘めた美貌」。舟木美波子は「クールな美女。弁護士である前に女であることを主張するスタイル」。そして、進介の妹・明美は「…常に動き回りながら二つ以上のことを同時にいい、黒柳徹子のような早口で喋る」と語られている。また、明美が坂上二郎氏の物まね「飛びます、飛びます」を披露するくだりも台本に指定有り。第1話も含め本番組はアドリブや改変が(比較的)少なく、ほぼ台本通りに映像化されている。
 進介が才賀に対して、「四角ダルマ」と罵るシーン。これも台本通り。「四角ダルマ」といえば、『特捜最前線』(1977年〜1987年)の初期の頃に神代課長が呼ばれていたニックネームである。
 進介の名刺が画面に現れるシーン有り。それによると舟本法律事務所の住所は東京都千代田区神田神保町一丁目三九番地である。住所を見る限り場所的には神田の古本屋街あたりのようである。(撮影場所は不明)
 強引なこじつけをひとつ。弁護士バッチを手に入れた進介が、明美にそのデザインである「ひまわり」と「天秤」を説明、一瞬「ひまわり」と語るが、進介を演じている高嶋政伸氏がこの2年後に『ジュニア 愛の関係』(1992年)の主役・稲城平馬役でヒロイン・三沢ひまわり(演:松雪泰子氏)の名前を連呼することになろうとは……。


第2話「有罪・無罪」

放送日:1990/07/13
脚本:長坂秀佳
監督:山田高道
ゲスト:増田英治(酒屋の店員)/ドン貫太郎(地裁係官)、小野寺文彦(カメラマン)、緑山塾、エンゼルプロ

 初法廷に加え、提出書類の不備などの失敗続きで落ち込む進介。そんな時、舟本法律事務所に進介の友人である司法記者・伊波徹平が晶と美波子を取材。二人の昔の関係を記事にすると思い込み慌てる進介は、進介や徹平の友人である新人女弁護士の川口景子に真相究明を依頼。裁判長、検事、被告人、被告人の弁護士、すべてが女性という日本の法廷史上初の「女の法廷」が実現しそうだと判明する。徹平に情報を流して派手に事務所をアピールしようとする晶と、地味でコツコツと事務所の信用を重ねていくという美波子は真っ向から対立。さらに旧事務所から今までのお得意を引き抜くと豪語する晶だが、すべて先手を打たれ失敗した晶は「まだまだひよっこだった」と美波子に弱音を吐く。裁判当日――弁護士側にマスコミが肩入れしたことに対抗した宣明は、「女の法廷」を崩す為に急遽検事を才賀に変更。その為、晶と美波子は昔に才賀と関係があった二人では不利と判断し主任弁護人を進介に変更する。情状酌量で刑を軽くするという事務所の方針に反し「被告人は無罪」と発言した進介の言葉に法定内は騒然とする。

 進介が初給料で父の為にウイスキーを買うシーン、台本では「「トビマス! トビマス!」と走る。」とあるが映像ではカット。第1話では台本、映像共々存在したが、今回はカットされている。
 晶の記者会見を美波子が責めるシーン。映像では記者会見の模様を見たと台詞のみで語っているが、台本では「ワイドショー『三時に会いましょう!』で晶のインタビュー風景がうつっている」と番組名まで指定して美波子が番組を見る描写がある。なお、『都会の森』と同様にTBS系で放送されていた番組名は正確には『3時に会いましょう』。1973年7月〜1992年10月まで放送された長寿番組であった。


第3話「俺は見た!」

放送日:1990/07/20
脚本:長坂秀佳
監督:桜井秀雄
ゲスト:美里まり(女看守)、劇団東俳、劇団いろは、テアトルアカデミー、セントラル子供タレント、エンゼルプロ

 俗に言う「不倫女教師・夫殺し事件」――教え子の父親と不倫関係を持った女教師が、不倫がバレた為に口論になり夫を殺したとされる事件で、被告である女教師が自白をしている為に誰も目にも有罪に見えたこの事件に、進介は法廷で「無罪」を唱えた。進介は、犯行時刻に被告を見たと言い、自らがアリバイの証人だと訴える。真相究明を目指す進介は被告人・野中弥生に接見。続けて、弥生の教え子達、弥生の愛人・中原司郎とその妻・きよ子、息子・草太に聞き込み。物証を探す進介は、犯行時刻に現場で行きつけのバーのバーテン・日下を目撃したことを思い出すが、現在バーを辞め行方不明の為、難航。だが、犯行時刻に進介が弥生の乗った車に接触した瞬間の目撃者を発見、さらに弥生の乗る車に進介の指紋が残っていたことも証明される。一方、才賀は進介らの切り札を懸命に追っていた。第二回公判の日――才賀は緊急に証人の変更を申請。その証人として指名されたのは進介だった!

 本話及び第4話の最後にて、主題歌「壊れかけのRADIO」のシングルCDプレゼントの告知がなされた。なお、告知は日下清彦役かつ主題歌を歌う徳永英明氏が担当した。
 本話にて、才賀が晶及び徹平によって「カミソリ検事」と呼ばれている。第1話で進介から「四角ダルマ」と呼ばれ、その後そのニックネームが定着した才賀だが、この「カミソリ」も「四角ダルマ」と同様に『特捜最前線』(1977年〜1987年)で神代課長が付けられていたニックネームである。
 草太が初登場。彼がパソコン通信を趣味とするパソコン少年ということから、本話よりパソコンが多々登場することになる。そのことからか、本話よりオープニングテロップで撮影協力:NEC 日本電気グループ、パソコン指導:(株)システムカルチャーの名前が出るようになる。ちなみに、判別できる範囲の機種一覧は以下。
・進介のパソコン 第5話にて確認可能 NEC PC-9801 RA/RX/RS系
・草太のパソコン 第5話にて確認可能 NEC PC-9801UV11
・事務所内美波子の席横のパソコン 第3話にて確認可能 NEC PC-9801 RA/RX/RS系
・野中家のパソコン 第3話にて確認可能 NEC PC-9801 RA/RX/RS系
・晶のパソコン 第10話のみ登場 ノートのように見えるが、不明。
・裁判所のパソコン 第11話のみ登場 NEC PC-9801UV11
また、進介が使用しているソフトウェアであるが、通信ソフトは画面下段に「SYSTEM CULTURE Co.Ltd 新世代通信ソフト フラニー」とあり(第6話他で確認可能)、パソコン指導である(株)システムカルチャー製のソフトのようである。第4話で進介が使っているワープロソフトも「ハイパーワープロ」と画面上に表示されているが、名の知られたソフトでは無い為、こちらもシステムカルチャー製かもしれない。もしくは共に見た目のみ作られたソフトかもしれないが真相は不明。


第4話「進介、証言台に立つ!」

放送日:1990/07/27
脚本:長坂秀佳
監督:松本 健
ゲスト:劇団東俳、劇団いろは、テアトルアカデミー、セントラル子供タレント、エンゼルプロ、稲川素子事務所/五月晴子(川崎よね)、鈴木昭生(老人)、森田育代(中年女)、神田正夫(老管理人)

 証言台に立った進介。才賀は、犯行時刻に弥生の乗った車に接触したという進介の言い分に対し、犯行日の前日にも同じ場所で別人の乗る車と接触していることを引き合いに出し、進介が弥生を目撃した日が犯行日である確証が無いと畳み掛ける。進介の記憶の不確かさなエピソードを持ち出した才賀に対し反論出来ない進介は敗北。切り札であったアリバイが使用不能となった。進介は、久々に戻ってきた守道から「自分が目撃証人であるという主観で弁護にあたろうとしている」と諭され弁護人を降りるべきと告げられる。進介は悩みながらも、弁護士としての主観に徹して事件の真実を解明すると訴える。再び関係者への聞き込みと目撃者探しに奔走する進介。第三回公判の前日の夕方――別件で古ビルに訪れた進介は、エレベーターの中に閉じ込められ身動きがとれない状態に。翌日、主任弁護士である進介が不在の為に法定は騒然としたまま延期になった。

 久々に戻ってきた守道が事務所でざるそばを食べているシーン。壁の時計は10時20分頃を指しており、遅刻した進介が「10分くらい遅刻のうちに入りませんよ」と鮎子に言われていることからみて、この事務所の始業時間は10時10分、もしくは10時というところか。なお、この時間帯に出前のそばらしきものを食べているのが一見不自然に見えるが、これは台本にはフォローがある。「こんな時間に」と不思議がる進介に対して鮎子が、そば屋の主人が先生のファンの為に開店前だろうがお休みの日だろうがいつでもOKと答えている。
 エレベーターに閉じ込められた進介が様々な歌を歌うシーン、「ウルトラマンの歌」は第1話と同様に台本に指定有り。その他、シャネルズ(ラッツ&スター)の「ランナウェイ」他数曲は、台本では「ひらき直った進介、思いつく歌を片っぱしから歌っている。」と指定されている。もしかすると選曲は高嶋氏のアドリブなのかもしれない。


第5話「アリバイが消えた!」

放送日:1990/08/03
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:セントラル子供タレント、エンゼルプロ、稲川素子事務所/平泉 成(小畑社長)

 エレベーターが再始動し、慌てて裁判所に駆け付けた進介だったが、既に閉廷されたことを知り愕然。周囲の態度に進介は落ち込む。進介は登校拒否が続き情緒不安定な草太の心を開いて証言を得るため、彼の趣味であるパソコン通信で会話をしようと試みる。挽回すべく必死に行動を続ける進介だったが、自分の腕時計の合わせ間違いにより、犯行当日に弥生と接触したと思っていた時間がズレていた可能性があることに気付き蒼白。進介が乗ったタクシーが判明し、時間がズレていたことが証明された。しかし、アリバイは消えたものの弥生の心証から進介はシロだと確信。晶と美波子も弥生の心証からシロだと判断し、引き続き方針を変えず続行すると決意した。一方、小さな弁護士事務所としての収入源として企業の顧問弁護士をこなさなければならず、企業社長からのセクハラじみた扱いに耐える晶と美波子。そして第四回公判当日――景子の得た情報により、検察側の証人として草太が呼ばれ、弥生が夫を殺したのを見たと証言すると知らされた進介らに衝撃が走った。

 草太が利用するパソコン通信のホストコンピューターはSC-NET。同名のホストは実在していたが、同一かどうかは不明。ちなみに小説版ではPC-MIX(P195)。こちらは全くの架空のようである。ちなみに、進介のパスワードはSO-SIのようだが、台詞では「SO'SI」と説明。「-」(ハイフン)のことを「'」(ダッシュ)と語っている。初心者ならではの勘違いという解釈がBESTか……。


第6話「証言・先生が殺した!」

放送日:1990/08/10
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:エンゼルプロ

 検察側の証人として証言台に立った草太は、犯行時間に現場にいたと証言。犯行時間直前にパソコン通信で弥生と会話していた草太は、弥生が夫の暴力により危険に晒されていると知り自転車で弥生邸へ急行。夫が弥生の首を絞めている現場を目撃した途端に草太はショックで意識を失い、正気に戻った時、弥生が凶器であるブロンズ像の指紋を拭いていたという。美波子と晶は、才賀に草太を証言台に立たせた手口を聞き出そうと詰め寄るが、体よくかわされる。一方、必死に調査を続ける進介は、「自転車の謎」に気が付き草太を問いただす。犯行時、自転車で駆け付けた草太だが、帰りは弥生が自宅近くの神社まで車で送っている為、草太が乗って来た自転車を中原邸まで運んだ誰かがいるはずなのだ。その為、ありのままを話さないと父が疑われると脅されて才賀の言いなりになったという。一歩前進し喜ぶ進介だったが、弥生から弁護人を解任したいと連絡を受け愕然と……。

 進介が草太とのパソコン通信で彼の気を引きつける為にいくつかの話題を出しているが、映像と準備稿台本ではその話題が異なる。映像では「ビートルズ」「光GENJI」「宮沢りえ」、そして、「おれは、ウルトラマンが好きだ」と語っている。進介は何度もウルトラマンを持ち出しているが、やはり好きなようである。対して準備稿台本では、「ビートルズ」「ちびまる子」「宮沢りえ」「ドクター・スランプ」。「ちびまる子(ちゃん)」と「ドクタースランプ」が差し替えられたのは、共に、テレビアニメ版が放送されたのが他局(フジテレビ系)だった為だろうか? なお、決定稿台本は映像と同じである。
 美波子と才賀が二人っきりで飲んでいるシーン。準備稿台本では美波子が才賀の家に電話し、電話に出た娘と妻の声を聞かせるくだりがあるが映像ではカット。なお、決定稿ではこのくだりは無い。
 進介が自転車のくだりを草太から聞き出した後、準備稿台本では弥生の妹・朝子が古いアルバムから数人と共に映っている日下の写真を見つけるシーンがあるが映像ではカット。続いて、進介が弥生に接見するシーンで、進介がこの写真を弥生に問うが無反応である描写がある。なお、決定稿ではこのくだりは無い。
 ラストシーン、進介が宣明から与えられた書籍「検察官への道」を返し、解任を伝えられた後に差し戻されているが、準備稿台本では前日にプレゼントとして「舟本守道著『弁護士入門』」を送り、最後にそれを差し戻されている。なお、決定稿は映像とほぼ同じ展開である。
 進介の友人であり新米弁護士である川口景子。進介の為に尽力し何かと顔を出す彼女だが、本話冒頭の法廷シーンの後の「ひとつ民事を抱えてた」の台詞の通り、画面には出ないものの彼女も新米弁護士として頑張っているようである。蛇足ではあるが、川口景子を演じている財前直見氏は、1994年から2000年まで放送された『新・女弁護士朝吹里矢子シリーズ』(土曜ワイド劇場枠)で主役の朝吹里矢子を演じており、川口景子の数年後の弁護士姿を想像させる。ちなみに、この作品の第2作『新・女弁護士朝吹里矢子 ビワの木の復讐!有罪率99・8%の自白とは…』、第3作『新・女弁護士朝吹里矢子 逆転の法廷! 不倫愛の男女が狙った法律の抜け穴』は長坂氏による脚本である。
 小説版では、本話のキーワードのひとつでもある「自転車の謎」のくだりは無い。神社まで草太を送った弥生が神社で草太を待たせたまま一旦自転車を取りに自宅まで戻り、自転車に乗って神社まで戻っている。代わりに才賀が草太から証言を聞き出したカギは、弥生と愛人関係だった父が共犯者として捕まる可能性があるとして脅迫したことになっている。
 本話及び第7話の最後にて、小説本プレゼントの告知がなされた。告知は片桐晶役の田中美佐子氏と舟木美波子役の黒木瞳氏により小芝居調で行われた。なお、この小説版だが、基本的なあらすじは映像版と同じだが、映像版の細かいエピソードが多々省略。特に番組後半のエピソードがかなりボリュームダウンされた構成になっている。


第7話「弁護士失格!」

放送日:1990/08/17
脚本:長坂秀佳
監督:根本実樹
ゲスト:長江英和(警官)、遠井みちのり(看守)/火野玉男(原告)、柴田照子(被告)、エンゼルプロ

 被告人である弥生から弁護人を解任された進介ら。事件から手を引くしか無いと美波子や晶から諭される進介。諦めきれない進介は「どんな理由であれ無実の人に罪をかぶせるのは間違っている」と熱弁をふるうが、「罪をかぶりたがっているという被告人の希望に添うのも弁護士の使命」だと否定される。再び他の仕事に追われる3人だが、美波子と晶はむなしさを覚え、進介は屈辱にまみれた。やけ酒に溺れた進介は、晶に支持してほしいと懇願。晶からヒントを得た進介は、刑事訴訟法第三十条二項にある「被告人の兄弟姉妹は被告人とは別個に弁護人を選任できる」に気が付き、早速、弥生の妹・朝子に連絡。姉の気持ちに逆らうことになる為に悩む朝子だが、決意して進介らを選任。歓喜する進介だった。

 進介が酔って「鉄腕アトム」の歌を歌うシーン、この曲も台本の指示通り。「空を越えて…行くぞアトム」の次、本来は「ジェットの限り」だが「正義の味方」と歌っている。第1話の「ウルトラマンの歌」同様、「正義」を意識して歌っているのが進介らしい描写である。
 第6話より、食事中に宣明が納豆をかきまわし食す仕草がクローズアップされるようになるが、第7話の台本にて以下のような記述有り。「宣明、ある頑固な流儀をもって、納豆をかきまわす。」「「……(無心)」」「宣明、ある満足点に達すると、箸を垂直に立て、スッと引き抜いて、糸を切る。」「宣明、納豆を自分の流儀に従って、熱い飯へかけ、食べはじめる。」意外にも具体的に指示されており、細かいところではあるが、宣明のキャラクター付けがなされている。


第8話「意外!?真犯人は…」

放送日:1990/08/24
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:エンゼルプロ

 朝子に再任され、再び法廷の場に立つことになった進介。裁判の日――才賀は一気に結審へと持ち込むべく、事前に弥生と打ち合わせを済ませ弥生に殺害状況を詳細に証言させる。さらに凶器のブロンズ像を用い状況を再現してみせる弥生に動揺する進介。しかし、晶は咄嗟に、次回の法廷にて現場検証の場で被告人質問を行うと宣告、奇手を使い反攻に出た。現場検証の日――犯行を再現させる晶だが、凶器のブロンズ像が身長の低い弥生には取りにくい高さにあったことが判明、弥生は激しく狼狽する。実は手札など無くハッタリで挑んだ検証が怪我の功名から思わぬ収穫を得た晶。一方、弥生の為に懸命に記憶を思い出そうとする草太。そして、徹平の調査で自転車を野中邸に返しに来た人物が中原司郎だと判明。草太から聞き出した記憶の断片と中原が自転車を返した事実から、進介は真犯人の正体に気が付き蒼白になる。

 自転車を返した人物(=中原)の目撃者だが、映像ではマンションの住人であるが準備稿台本では日下となっている。第6話の準備稿台本にて日下が弥生と何か関係があるような描写があったのと合わせ、当初は日下に関してもっと別の展開が考えられていたのであろうか。
 本話及び第9話にて、美波子の口から本番組のタイトルである「都会の森」の意味が語られる。「都会の森」――コンクリートやアスファルトやビルの中の、森。都会のオアシス。場違いだけど緑。あれば心がなごむ。……ただし、書籍『長坂秀佳術』によると「都会の森」の「森」は森田プロデューサーの「森」だとか……。


第9話「哀しい真実」

放送日:1990/08/31
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:エンゼルプロ

 真犯人が草太であると確信した進介らは愕然。その哀しい真実に進介らはどうするか悩む。真実を隠し、被告人利益を守るべきか、あくまでも真実を追究するべきか。真実追究にこだわる進介に、美波子はそれは「弁護士の正義」ではなく、「情」より「法」を説く「検察官の正義」だと否定。常日頃から反論している父親と同じ「検察官の正義」だと指摘されショックを受けた進介は宣明に教えを請うが、宣明は冷たく突き放す。一方、進介の力になるべく奔走する徹平と景子はついにもう一つの秘密を解明。14年前に法廷で宣明と守道が争った花田医師事件――。大阪の産婦人科医が、闇に葬られる赤ちゃんを惜しみ、子を欲しがっている夫婦に斡旋した事件で、草太が弥生と中原の間に出来た子供だったことが判明した。事件の全貌を知った進介を除く全員は真相追及を断念、弥生の望む方向で進めるという考えで一致。それを聞いた進介は……。

 進介が新聞に投書した記事によると、八橋家は東京都品川区。また、八橋家の近所であり進介が弥生の車と接触した交差点の場所も、第4話の才賀の台詞及び、現場にある電信柱の住所表記から上大崎3丁目であると分かる。ちなみに、撮影場所が上大崎3丁目であるかどうかは不明。
 第1話で語られた「花田医師事件」が、大いなる伏線であったことが判明。この事件は、実際にあった「菊田医師事件」がモチーフ。事件のあらましはほぼ同じである。


第10話「進介、崖ッぷち!」

放送日:1990/09/07
脚本:長坂秀佳
監督:松原信吾
ゲスト:エンゼルプロ

 すべての真相が明らかになった。真相を暴けば草太が誰の子で誰を殺したかが晒される。繊細な彼に耐えられる事実でないのは明白である。弥生の希望通り、起訴事実を全面的に認め、情状酌量で執行猶予を付ける方針にと才賀に持ちかける美波子と晶だが、才賀は拒否。一方、自分がどうするべきか悩み荒れる進介。そして、進介は、犯行時に弥生の夫が弥生に対して、信仰所で入手した草太が弥生の子である証明を記した報告書を突き付けていたことを知る。となると、現場にいた草太は自分の出生の秘密をその時に知ったことになる。そして、ついにすべてを思い出した草太。自分の出生の秘密と自分が犯した殺人を知り暴れる草太。そんな草太を、進介は体をはって諭す。そして、進介は宣明に対し、起訴事実の全面的否定=無罪主張の方針を変えないことを宣告。さらに証人として宣明を申請すると告げた。

 酔った進介が、徹平達に対してバルタン星人だと揶揄するシーン。鮎子に対してバルタン星人ジュニアと語るくだりも含め、台本にも存在する。『帰ってきたウルトラマン』(1971年〜1972年)にてバルタン星人ジュニアが登場する第41話「バルタン星人Jrの復讐」を手掛けた長坂氏ならではの記述であろうか。ちなみに、2年後に『ジュニア 愛の関係』(1992年)で競演することになる鮎子役の水野真紀氏に「ジュニア」だと揶揄するのは面白い偶然であろう。


第11話「父と子の法廷」

放送日:1990/09/14
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:エンゼルプロ、稲川素子事務所

 宣明を弁護側証人として、非公開法廷が開催されることになった。その前に駆け付けた守道は、宣明に対し息子の為にもバクダンを使わないよう懇願。バクダン――それは、憲法第八十二条第二項、非公開裁判は裁判官の全員一致をもって決しなければならないという規則に基づき、宣明の元腹心だった裁判官の一人に全員一致ではなかったとさせ、裁判が憲法違反だと主張するという手口だった。だが、何も語らずに守道を追い返す宣明。法廷の場で、進介は14年前の裁判にて宣明が親や子の名前まで裁判記録に残したことが発端となり今回の事件が発生したと弾劾。合わせて、中原、きよ子、弥生、そして草太に証言を求め、草太の犯行が正当防衛であったと主張。検察側の出方に緊張する進介らだったが、検察側はバクダンを使わず法廷は終了した。二週間後――無罪判決が下され進介らは狂喜。その夜、進介は宣明から「いい弁護士になれ」と言葉を貰い涙した。そして、新たなる法廷で進介の声が響いた。「被告人は無罪」と……。

 台本では、弥生の台詞にて、草太が小学六年の時に草太の小学校を知り、それが幼稚園から大学までのエスカレーター学校だった為に中学の先生になって待っていたとある。映像ではこのくだりの説明がない為、弥生が草太の担任であったことが偶然のように受け取れるが実は偶然ではなかったというフォローが台本にはあった。
 第5話で描かれた、宣明が漬けたらっきょうを進介が盗み食いするくだり。このくだりが、最終話の最後の重要な締めの前振りだったことが判明。まさかの展開であるが、実にうまく、見事に父と子のドラマの盛り上げに成功している。なお、小説版ではこのくだりはなく、代わりに第1、2、5話などで重要な役割を持った父のお下がりの腕時計が取り上げられており、こちらも非常にうまくドラマを盛り上げ締めくくっている。