「ジュニア 愛の関係」全エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 親の愛を受けて育った「太陽の男」稲城平馬、親の愛を知らずに育った「氷の男」田丸竜一。大物政治家を親に持つこの二人の青年は、二世議員として政界の舞台で戦い、やがてそれぞれの父親を敵に回すことになっていく。


第1話「Vol.1」

放送日:1992/04/16
脚本:長坂秀佳
監督:藤田明二
ゲスト:池田道枝(川西圭子)/宮寺康夫(記者・杉本)、伊藤昌一(記者・西田)/野村信次(記者A)、青柳文太郎(記者B)/川辺修詩(国会議員(おそらく))、稲川善一(国会議員(おそらく))、山田博行(国会議員(おそらく))/橋本菊子(老婆)、日高圭智、森 喜行(国会議員(おそらく))/金子智栄(女性アナウンサー(おそらく))、長岡美由起(看護婦(おそらく))/古賀プロ

 親の愛を受けて育った「太陽の男」稲城平馬、親の愛を知らずに育った「氷の男」田丸竜一。大物政治家を親に持つこの二人の青年は、長野の巨大利権の歯車として共に長野五区から出馬することになる。そのひとりである平馬は、スキャンダル防止の為に父の根回しによって恋人・ひまわりとの間に出来た子供を堕ろされる。ショックを受けたひまわりを平馬から奪い去り匿う竜一。ひまわりを失い、父の行為に衝撃を受けた平馬は父に対して疑問を抱く……。

 静かな小川のせせらぎをバックに、派手で重厚的な音楽とともに一人の青年が川の中から勢いよく飛び出していくところから物語がはじまる。何事かと思う視聴者の心をよそに、その青年が手にしていたのはなんと「入れ歯」。その青年は老婆が川に落とした入れ歯を探していたのだ。派手すぎる演出のあとに続く、その滑稽なやり取りが妙な面白さを醸し出している名シーンであり、視聴者の心を端掴みにする素晴らしい「出だし」となっている。
 番組開始冒頭のシーン。TVでは、田んぼで老婆の入れ歯を探す平馬のシーン(シーン9・前半)が入ったのち、国会議事堂内を颯爽と歩く竜一のシーン(シーン3)へと続くが、台本では、平馬が市役所窓口で元気に明るく働く姿が描かれたのち(シーン1)竜一のシーンへと続く。そして、この田んぼでの平馬のシーンは、台本では平馬とひまわりの出会いのシーン(シーン9・後半)の直前に位置している。
 ビリアードに興じている竜一の前に馮子が現れるシーン。馮子の台詞で、TVでは馮子の父が3年前に亡くなったとあるが、台本では7年前である。(シーン8)
 田丸魁が竜一に選挙へ立つよう命じるシーン。台本では、竜一がひまわりのことを知ったのは、亡くなる直前の婆やに聞いたということ、竜一が長野で13まで生まれ育ったと描かれているが、TVではカットされている。なお、13まで生まれ育ったくだりはノベルズ版にも存在する。(シーン31)
 平馬と竜一が戦う選挙区は、台本では長野三区だが、TVでは長野五区である。(シーン31ほか)
 割烹”FUJINOSE”で徳善が平馬に出馬を諭すシーンにて、平馬が出馬を断る後、台本では季衣から「祝・ご出陣」のカードが添えられたシャンパンが届けられるシーンがある。(シーン40)
 鰐口が竜一に電話で出馬のことを問い掛けるシーンにて、台本では平馬の出馬を共にキャッチしているくだりがある。これはノベルズ版にもある。(シーン41)
 藤ノ瀬から去る竜一に対して、季衣が肩についた糸くずを取ってみせるシーン、台本では、座敷のシーンにて季衣がさりげに拾っていた糸くずを今取ったふりで見せるくだりがある。(シーン57・58)
 ひまわりが子供を堕ろした産婦人科、TVでは「関口医院」とあるが、Vol.2にて竜一陣営がばら撒く怪文書にある「I院長」とイニシャルが一致していない。なお、台本ではVol.1での医院の名前の指定はないが、Vol.2でのイニシャルの指定はある。ちなみに、ノベルズ版では「岩城産院」となっており、このあたりの矛盾点が回避されている。(Vol.1・シーン63、Vol.2・シーン44)
 平馬がひまわりの子を勝手に堕ろさせた父・徳善に詰め寄るシーン。このシーンでは、逆上した平馬が徳善のことを「あんた」と呼んでいるが、台本では「お父さん」である。ちなみに、ノベルズ版も「お父さん」である。また、平馬の言葉遣いも、全体的に台本が言葉遣いが礼儀正しく、TV版では乱暴な感じである。
 国会議事堂内廊下での長谷部と鰐口の対面シーンにて、台本では、このシーンにて初登場の長谷部伸一郎の特徴を「右手をポケットに突っ込んで拇指だけ出し軽く肘を曲げた”長谷伸スタイル”で来る。」、「(”長谷伸スマイル”で)やあ」、「”長谷伸スタイル”で去る。」と表現している。また、ノベルズ版では同シーンにおいて長谷部のことを”気取り屋白鳥(スワン)”と表現している。(シーン16)
 割烹”FUJINOSE”で徳善が平馬に出馬を諭すシーンにて、両者が同じ格好で煙草を吸うくだりは「父子して、全く同じ格好なのがおかしい(平馬の父への傾倒ぶりがうかがえる)」とある。(シーン40)


第2話「Vol.2」

放送日:1992/04/23
脚本:長坂秀佳
監督:藤田明二
ゲスト:宮寺康夫(記者・杉本)、伊藤昌一(記者・西田)/伊予博史(男B)、丹治安順(男A)/浅野香織、古賀プロ

 平馬はマスコミの前で「政治」よりも「愛」をとると語り、立候補取り消しを決意。しかし、平馬の意思とは別に平馬周辺の選挙運動は続いていた。日々新聞記者・佐伯馮子は妹・新子とともに、平馬の竜一に対する憎悪を増大させるよう仕組み、平馬は再び選挙運動へと身を投じる。稲城、田丸両陣営は怪文書工作や金による票の買い取りなどを展開し、戦いは泥沼化。そして選挙当日を迎えた――。

 Vol.2より登場する馮子の愛車。この愛車=三菱の逆輸入車・Eclipse(エクリプス)は、『ゴリラ 警視庁捜査第8班』(1989〜1990年)にて、『ジュニア』で馮子を演じた田中美奈子氏(役名も同じ田中美奈子)の愛車としても登場している。色も同じ赤。(ただし、『ゴリラ』のエクリプスは、世界に12台しか存在しないといわれるガルウイングドア仕様。)『ゴリラ』の放送終了後、石原プロからこのエクリプスがお中元として田中氏に送られ、実際の愛車になったとか。(実際に撮影に使われたガルウイングドア仕様が送られたのか、通常ドア仕様の同車が送られたのかは不明)
通常ドア仕様の同車が田中氏に送られたのであれば彼女の愛車が『ジュニア』の撮影に使われた可能性もあるが、でなければ、わざわざ、田中氏の愛車の同車種、同色の車を用意したことになる。数ある三菱車の中で、この赤いエクリプスが馮子の愛車として抜擢されたのは、何か意図的なものがあるのではと思われるのである。
 前半あたり、台本とTVではシーンの順番が異なるところが多々ある。
 <TV>:冒頭、平馬の記者会見(シーン1)→ひまわりを匿う竜一(シーン2)→自転車を追う平馬(シーン7)→オープニング→怪文書を指示する徳善(シーン5)→平馬を挑発する馮子(シーン13、14)→ひまわりを乗せて車を走らせる理加(シーン4)→魁に宣戦布告する馮子(シーン6)→ひまわりを預かる季衣(シーン10)→ひまわりを覗き見する鰐口と小秋(シーン12)→着物に着替えたひまわりの前に現れる竜一(シーン16)
 <台本>:冒頭、平馬の記者会見(シーン1)→ひまわりを匿う竜一(シーン2)→オープニング→【カット】好意的な新聞記事を読む稲城事務所の面々(シーン3)→ひまわりを乗せて車を走らせる理加(シーン4)→怪文書を指示する徳善(シーン5)→魁に宣戦布告する馮子(シーン6)→自転車を追う平馬(シーン7)→【カット】ひまわりと理加を案内するよし(シーン8)→【シーン25の後に移行】居合いの竜一(20代で政務次官、30代で…)(シーン9)→ひまわりを預かる季衣(シーン10)→【カット】車の中の理加(シーン11)→ひまわりを覗き見する鰐口と小秋(シーン12)→平馬を挑発する馮子(シーン13、14)→平馬を乗せて車を飛ばす馮子(シーン15)→着物に着替えたひまわりの前に現れる竜一(シーン16)
 オープニング直前の自転車を追う平馬のシーンは、TVでは橋の上で自転車に乗る女性と人違いをしているが、台本ではプールで人違いをしている。(シーン7)
 子供と釣りをする平馬のシーン、台本では、屋内プールで子供たちに水泳を教えている。(シーン13)
 馮子が魁に宣戦布告をするシーン、TVでは「航空機汚職事件」だが、台本では「ロックキルド事件」である。これは、見ての通り「ロッキード事件」のもじりであろう。(シーン6)
 長谷部が季衣の部屋でくつろぐシーン、台本では「次は、私が総理総裁だ」とあるが、台本では「三ヶ月後、私は総理総裁だ」とある。これは、ドラマも実際の時間と同じ時間経過で想定して製作されており、放送終了の約3ヶ月後を総理総裁戦=クライマックスとしていた為ではないだろうか。(シーン30)
 街頭演説の平馬の前に現れるひまわりのシーン、TVではマイクを持ったひまわりが言葉につまり何も喋れないでいるが、台本では、「自分の意思と判断で選挙の邪魔にならないように中絶した」と喋っている。(シーン50)
 ひまわりを季衣に預けた理加が季衣に金を渡すシーン、金を理加に返す季衣の「これからも、よろしくね」の台詞の直後に、台本ではト書きで「この一言で上下関係が決定づけられる」とある。これは、場所は若干異なるがノベルズ版にもある。(シーン10)


第3話「Vol.3」

放送日:1992/04/30
脚本:長坂秀佳
監督:河野圭太
ゲスト:松丸智子(朝野千鳥)、中平良夫(県警二課・小田中)、本田清澄(県警二課・川原)/細野哲弘、伊藤正博(平馬の後援者)、中村祐子、斉藤栄美子/池田 聡、柳原一彦、高井友佳子、山田佳代子

 選挙は、平馬落選、竜一当選という結果に終わった。選挙に負け、市役所のすぐやる課に戻る決意をした平馬の元にひまわりも戻り、二人の仲は元に戻った。しかし、政界への欲望が捨てられない平馬は、「政界のキップはまだある」という馮子の誘いに乗る。上位当選者・根津興五郎が危篤状態だといい、「一人の人間の死」を待って当選することに苦悩する平馬。結果、根津は死に、平馬は繰り上げ当選を果たす。一方、元の平馬に戻ると信じていたひまわりは、代議士となった平馬にショックを受け、竜一の元へと去った。

 当選に沸く竜一事務所のシーン(シーン8)の後、台本ではTVの選挙特番で竜一と平馬がそれぞれ選挙後の心境を語るシーンがある。これはノベルズ版にもある。(シーン9、10)
 「初当選を祝う田丸竜一後援会婦人部の集い」でボーリングをプレイする竜一のシーン、TVではガーターで頭をかいているが、台本では見事にラスト二投連続ストライクを決め「プリンスドラゴン」「若先生ステキ」と黄色い声が飛んでいる。この変更の意図は何だろうか? なお、ノベルズ版でもストライクである。(シーン15)
 平馬がディスコで根津の死を待つシーン、TVでは根津の生死を馮子が握っていると平馬に思い込ませているが、台本ではただ生死の連絡が入るのみである。これはノベルズ版も台本と同じである。(シーン18、22)


第4話「Vol.4」

放送日:1992/05/07
脚本:長坂秀佳
監督:藤田明二
ゲスト:日埜洋人(現・日野陽仁)(津村明人)/中江真司(ナレーション)

 無事、政界への第一歩を踏み出した平馬。父・徳善の派閥・長谷部のスキャンダル記事のもみ消しを命じられた平馬は、金の力で知人である雑誌副編集長の説得を試みるが失敗。結局、平馬の秘書となった馮子が、妹・新子と、敵派閥・鰐口とのスキャンダル記事を武器にもみ消し、その結果、長谷部が幹事長に就任となる。スキャンダル記事にショックを受けた新子は、長谷部の幹事長就任パーティーの会場で姉に詰め寄る。そして、失意の上に酔っ払いプールで溺れかかる新子を、偶然、平馬が救った。

 Vol.4のみ、冒頭にナレーションが入る。このナレーションは、中江真司氏が担当。
長坂作品では『特捜最前線』(1977年〜1987年)、『仮面ライダーX』(1974年)、『小さなスーパーマン ガンバロン』(1977年)のナレーションを担当。また、『特捜最前線』の最終話ではゲスト出演を果たしている。
 徳善に初当選の挨拶をする平馬のシーン、平馬が徳善に頭を下げるくだりで、台本ではここに、頭を下げる父の姿がたまらず抱き起こそうとする平馬に馮子が冷静になれとサインを送り、それを受け取った平馬が冷静に見直し、父の態度が急に白々しく映る描写がある。これはノベルズ版にもある。(シーン15)


第5話「Vol.5」

放送日:1992/05/14
脚本:長坂秀佳
監督:河野圭太
ゲスト:野村昇史(東京地検・検事)/尾上弥生(藤ノ瀬の芸者ら(おそらく))/五十嵐五十鈴(長谷部夫人)、エンゼルプロ、古賀プロ/大竹まこと(吉田 勇)

 田丸派は、鰐口のスキャンダル記事を無効にする為、馮子と新子が姉妹という事実を利用し、マスコミを使って稲城陣営に反撃。新子のマスコミへの告白や平馬の元秘書・佐藤の証言により、平馬は窮地に立たされる。確定していた建設と環境の常任委員を取り消され、議員辞職直前に追い込まれた平馬は、娘・ひまわりの願いを聞き入れた田丸魁の助言により、父・徳善が決めた縁談に反し、新子と式を挙げるのだった。

 鰐口のスキャンダル記事を前にする魁らのシーン(シーン1)のあと、台本では入院した新子を見舞う馮子のシーンがある。このシーンでは新子が「でもカッコいいな。平馬さんてステキ」と平馬に惚れている描写があり、また、見舞いに季衣が現れ、馮子がいるのを訝る描写がある。この描写が、その後の竜一に新子と馮子が姉妹であると伝えるシーンに繋がっている。これはノベルズ版にもある。(シーン2)
 議事堂内の廊下で小船と吉田に揉まれる平馬のシーンで、台本では平馬が吉田に揉まれたあと、ひまわりが現れ小秋とつき合っていたのかを平馬に問い、その後そこに現れた馮子に対し一歩も退かず言い争うくだりがある。これはノベルズ版にもある。(シーン8)
 政治献金の申告洩れの疑いで記者に囲まれる鰐口のシーン、台本では、記者に対して「秘書まかせだから」と答えた後、「あんたたちだって、大根やニンジンの値段はかみさんでなきゃ知んないでしょ?」とある。これはノベルズ版にもある。(シーン32)
 徳善が平馬に結婚を強要するシーン、TVでは平馬が徳善に対し「一人の老人の死を望んで政治家になった」とあるが、台本では「一人の老人の死を待って政治家になった」とある。これは、Vol.3の解説でも記しているがVol.3の台本のディスコで平馬が根津の死を待つシーンにて、ただ生死の連絡が入るのを待っているだけの為である。(シーン35)
 ひまわりに惹かれ苦しむ竜一を抱いてやる理加のシーン、台本ではここを「理加、竜一のその素直さが、憐れで、哀しい。」「……(母のように抱いてやる)」と描写している。(シーン14)
 結婚に悩む平馬のシーンにて、台本では迎えに来た馮子に平馬が車を回せと言った後、馮子が「変貌しつつある平馬に気付く」とある。(シーン16)


第6話「Vol.6」

放送日:1992/05/21
脚本:長坂秀佳
監督:藤田明二
ゲスト:芦沢孝子(鰐口かつら)/澤井伽名子(若い母(平馬の母))、安斎 遼、大沼篤史(5才の竜一(おそらく))/林 良太、田村 聡、古賀プロ

 平馬は新子と結婚。稲城姓を捨て、佐伯平馬を名乗った。竜一は、平馬の結婚式に自派の人間を送り込んだのが父・魁だと知り父に詰め寄るが、平馬に負けていると突き放されショックを受ける。そして失意の竜一の元からひまわりも去っていく。一方、平馬は結婚を機に力をつけ、徐々に頭角を現していく。平馬と同じく父に政略結婚を勧められた竜一だが、父の意に反して秘書・理加と式を挙げるのだった。

 稲城姓を捨てた平馬を徳善が責めるシーン、徳善の「薬だ、急いでくれ」の台詞のすぐ直後でCMに入るが、この最初のCMが田中邦衛氏出演の大正漢方胃腸薬(大正製薬)のCM。「薬だ」の直後に薬を持った田中氏が登場するという、なんとも滑稽(?)な画であった。(本放送時、愛知県放送分にて確認)(シーン33)
 番組最後に主題歌CDのプレゼント(抽選100名・1992年5月28日締め切り)告知有り。


第7話「Vol.7」

放送日:1992/05/28
脚本:長坂秀佳
監督:河野圭太
ゲスト:伊藤康二(アクション関係(おそらく))/安藤壮洋/古賀プロ

 理加と鰐口の間に生まれた子を引き取った竜一。信州大自然保護公園を推す平馬と、それに対をなす、長野新国際空港を推す竜一は、共にそれぞれの実現に向け、オモテ、ウラ問わず精力的に活動。結果、信州大自然保護公園実現に決定した。しかし、その採決の裏は、公園設立による利権獲得の為に、二人の親である徳善と魁が裏で手を回していた結果であった。この敗北に、平馬の前からは新子と馮子が去り、竜一はスポンサーを失った。

 公園法が可決しすべてのスポンサーを失う竜一のシーン、このシーンにて竜一のスポンサー4社の名前が判明。ニッポン物商、鴻山建設グループ、赤西開発、信州財団商事の4社。このうち、ニッポン物商は馮子と新子の父がいた会社。鴻山建設グループは平馬と竜一に縁談のあった大手建設グループの会社。共にこの回以前に登場している会社で、今までの設定が何気に反映されている。(シーン55)
 新子がボランティア・グループ”太陽と緑の会”の存在を鰐口からの電話でヒントをもらったと語るくだり(シーン30)、台本ではこのシーンの少し前で、長谷部が鰐口に「お前さんのさがしものは見付けたぜ」と言って、ひまわりの連絡先入りのスナップを渡すくだりがある。(シーン28)
 赤ちゃんを堕ろした時の真相を知ったひまわりが平馬に詫びるシーン、TVではその情報をひまわりがどこで入手したか説明されていないが、台本では「ここ(「太陽と緑の会」)のボランティアの中にあのときの看護婦がいる」とひまわりの口から語られている。これはノベルズ版にもある。(シーン31)
 新子と馮子に去られた平馬のシーン、台本ではこの直後、木田と鈴木までもが「市民の会のころは、楽しかったよね」と残し去っていく。しかし、Vol.8の台本では何の説明もなく自然に登場しているので、Vol.7とVol.8の執筆の時点で何かしらの変更があったと思われる。ノベルズ版でも似たように鈴木と木田が「ついて行けない」と電話で語るくだりがあるが、ここでは平馬が「やめないでくれ」と懇願している。(シーン51)
 公園法案の可決の後、竜一が魁のところに乗り込むシーン、TVでは竜一が長野巨大構想のからくりを見つけ出すと宣言しているが、台本では魁が竜一に長野巨大利権の正体を説明している。ただし、Vol.10の台本ではTVと同様に長野巨大構想のからくりを竜一、平馬がはじめて突き止めており、このVol.7の台本のくだりは無視され、変更に沿った内容になっている。(シーン54)


第8話「Vol.8」

放送日:1992/06/04
脚本:長坂秀佳
監督:藤田明二
ゲスト:麻 ミナ(あやめ)/布施木昌之(有田助教授(おそらく))、山瀬秀雄

 自らの親に手ひどくやられた平馬と竜一は共に自派を辞め、平馬は田丸派へ、竜一は総裁派へと、共に自らの父を敵とする。そんな中、急な病に倒れる長谷部。長谷部の病状を敵派閥やマスコミに気取られまいとする稲城陣営に対し、平馬と馮子が長谷部の病状を暴露しようと暗躍。決定的証拠を掴む馮子だったが、竜一により阻止される。そして、馮子は長谷部の秘書となるのだった。

 平馬と馮子が長谷部の病状の情報交換をしているシーン、竜一に惚れた馮子が感情をむき出しにしたあとの平馬の「なにを興奮している?」の台詞。同じ長坂氏の脚本作品である『特捜最前線』(1977年〜1987年)第317話「掌紋300202!」に同じ台詞が存在するが、この台詞は台本でも同じ表現がされており、『ジュニア』では、平馬「……(静かに)なにを興奮している?」、『特捜最前線』では、城所「―――(静かに)なにを興奮している?」、と、同じように「(静かに)」の表現がなされている。なお、この台詞を発している人物は共に代議士であるという共通点がある。
 Vol.8及びVol.9に登場する長谷部の公用車。長谷部の公用車をはじめ、平馬、徳善、鰐口、竜一と、すべて番組のスポンサーである三菱自動車のデボネアが使用されているが(ただし、竜一だけはディアマンテやベンツが使用される時もある)、平馬、徳善、鰐口、竜一はすべて車の色は黒っぽいが長谷部だけ白のデボネアである。
おすまし『白鳥』と呼ばれる長谷部らしさがちゃんと表現されているのが芸が細かい。
 ラスト近くの国会議事堂全景のシーン、この回以前の台本ではただ「国会議事堂全景」と表現されているが、ここでは「ドーンと、暗雲を背景に、国会議事堂全景。」と表現されている。これは、実際に国会議事堂全景のシーンで「ドーン」という効果音が多用されることから、長坂氏が台本にも反映させたのではないだろうか? なお、Vol.3では「その威容―――!」と描写されており、こちらもTVのイメージに近い。
 番組最後に主題歌CDのプレゼント(抽選100名・1992年6月11日締め切り)告知有り。


第9話「Vol.9」

放送日:1992/06/11
脚本:長坂秀佳
監督:河野圭太
ゲスト:村上幹夫(筒井 滋)、此知屋昭人(刑事A(おそらく))/藤波智栄、千葉佳代子/上田忠好(横井川大造)/森下哲夫(鬼島検事)

 鰐口夫人・かつらが急死。鰐口を快く思っていなかったかつらは、「佐伯日記」の存在を遺書に記していた。「佐伯日記」――それは、馮子と新子の父が3年前の航空機疑惑に関する証拠を記した日記。政界の各大物が目の色を変えて探していたものであった。平馬は父・徳善に罠を仕掛けて癒着の決定的証拠を押さえ、それを元に100億円を要求。100億の用立てをするために動いた竜一は、平馬の罠にはまり恐喝容疑で逮捕されてしまう。一方、日記を入手する馮子だったが、竜一を愛してしまったゆえ、日記を竜一に渡す。日記を読んだ竜一は、自分の政治生命が絶たれるのを覚悟の上でそれを検事に渡した。しかし、魁の手にかかっていた検事の手により日記は灰となった。

 鴻山建設グループの名称だが、台本ではVol.7までは鴻池だが、Vol.9にてTVと同じ鴻山になった。また、ノベルズ版では鴻ノ山である。
 台本では、平馬が魁に、金策に走る竜一の妨害をするよう頼み込むシーンがあり、そこで魁が老秘書・榊原に対して「あいつはできる。ついこの間までの芋虫が、見違えるような蝶だ。だが、毒を持ちすぎている。伜の竜一でなくて良かった」と語っている。TVでは魁の竜一に対する感情を描いたシーンが少なかったが、台本ではこのように存在していた。これはノベルズ版にもある。(シーン15)
 台本では、徳善がひまわりに謝るシーンがある。これはノベルズ版にもある。(シーン31)
 徳善・長谷部らが平馬の100億要求に対して話し合うシーン、ノベルズ版では、長谷部の「徳善先生、ぬかりましたな」のあとに、「長谷部のその言葉はこれまでの徳善との力関係の逆転を意味していた」とある。(シーン14)


第10話「Vol.10」

放送日:1992/06/18
脚本:長坂秀佳
監督:藤田明二
ゲスト:入江正徳(福地原清十郎)/真山章志(刑事A)/古賀プロ

 仮釈放された竜一は、魁らを倒すために佐伯日記の復元を図り、その裏付けに奔走する。田丸派本部・経済政友会ビルに忍び込んだ竜一、そしてそれを追った平馬は長野巨大構想の秘密を発見する。それをネタに父と対決する竜一と平馬。徳善はそのショックで倒れ、全身マヒで二度と立ち上がれない体となった。

 長野巨大構想の秘密を見つけた平馬が謎の車に襲われるシーン(シーン36)、この車は偶然か竜一及びその秘書が乗っているディアマンテと同車種。
また、最終回にて竜一のマンションに向かう謎のグループの車(シーン30)は、平馬が選挙の時に使用していたパジェロと同車種。
最終回にて竜一メモを入手した馮子を追う車(シーン34・35)は、平馬がウラの行動時によく使用しているデリカ・スターワゴンと同車種。
果たして偶然なのか、それとも意図的なのか、ちょっと意味深かもしれない車のセレクトである。なお、この3台は、3台ともドラマ上で他の人物が使っているシーンは無い。同じ車を違う人物が使っているケースはデボネアのみである。
 番組最後にノベルズ版上下セットのプレゼント(抽選100名・1992年6月25日締め切り)告知有り。


第11話「最終回」

放送日:1992/06/25
脚本:長坂秀佳
監督:藤田明二
ゲスト:渡辺康子(有村はる)/中川真由美/千葉 茂(記者B)、森尾なおあき/佐野和敏、船戸健行、高尾抽美(宝石店女店員)/瀬尾竜二、古賀プロ/山本 學(友情出演)(有村信重検事正)

 平馬、長谷部、馮子らは、それぞれの思惑を胸に、佐伯日記の復元=田丸竜一メモの入手を企む。一方、竜一はメモを渡す為良識派の有村検事正に近づこうとするが、ガードが堅く近寄れず、果てに命を落としてしまう。しかし、メモは竜一の機転により有村検事正の元に届いていた。一方、ウラで勢力的な活動を続ける平馬は副官房長官に任命される。そして、所信演説の平馬はふと思う。「おれはどこへ行くのだろう」――と。

 この最終回のみに出演している有村信重検事正役の山本學氏。オープニングのテロップにて「友情出演」とあるが、誰の「友情」なのだろうか。
 平馬が鰐口に命じられ青木静山に電話を入れるシーン、TVでは、平馬が「何ですって」と言ってCMに入り、その後直接的にどんな会話がなされたかの描写がないが、台本では「竜一の件で尻に火がついた、ことを急いでくれ」という台詞がその場所に入っている。ノベルズ版も同様。(シーン21)
 また、平馬と竜一が最後に向かい合うシーン、TVでは平馬が最後に「死ぬなよ」と言っているが、台本ではこのくだりはない。ノベルズ版も同様。(シーン37)
 この二つのシーンから、台本とTVでは大分平馬のキャラクターが異なっていることが分かる。
シナリオとノベルズ版では、少しずつ平馬が悪くなっていくよう描かれているが、TVではシナリオやノベルズ版と比べると徐々に悪くなっていく図式が多少壊れている。例えば、Vol.1にて既に徳善に対して「あんた」等、言葉遣いが荒くなっていたり、Vol.3にて根津の死を待つのではなく望んでいたり、かと思えば、最終回では竜一に対して「死ぬなよ」など友情らしいところを見せたり等、初期の段階で「悪」を見せつつ、ラストで「善」を見せていたりする。このあたり、シナリオやノベルズ版では徹底して、「徐々に悪になっていく図式」で描かれている。
 理加が竜一にメモを子供の産着の中に入れて運ぼうかと提案するシーン、台本では「おれのジュニアだ。死なせるわけにはいかない」の後に、理加が「あなたのジュニアならもう一人います」と言って、竜一との子が自分の中にいることを伝えるくだりがある。これはノベルズ版にもある。(シーン29)
 台本では平馬と神山が竜一を追うための作戦会議をするシーンがある。(シーン33)
 馮子が竜一から入手したメモを謎の団体に奪われてしまうシーン、台本では無事に長谷部の元に届けるが中味が真っ白で二人が愕然となり、後で馮子が「愛まで裏切ってしまった」と思うシーンがある。これはノベルズ版にもある。(シーン35、36、38、39、43)
 物語の一番最後の平馬の台詞「おれは、どこへ行くのだろう……?」だが、台本ではこの最終回の中にこの箇所を含め計5箇所にこのような平馬の内心の声のくだりがある。(「(内心の眩き)おれのめざした政治は、こんなものだったのだろうか……」、「おれは、何をしているのだろう……?」、「……おれは、どこへ行くのだろう?」、「おれはどこへ行くのだろう?」、(最後はTVと同じ)」)ノベルズ版でもほぼ同様に「おれは、どこへ行くのだろう?」が繰り返されている。