「学校があぶない」全エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 朝倉早紀子は、二学期に入ってから娘の真美が沈みがちになったことに気づいた。我が娘に学校での話を聞いてみると、担任の一ノ瀬清彦先生がクラスで子供達にハイハイをさせるという……!?。早紀子は事の真相を明らかにしようと奔走する。


第1話「先生やめて!」

放送日:1992/08/04
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:エンゼルプロ、劇団東俳、若プロダクション、テアトルアカデミー、東京児童劇団、劇団若草、セントラル子供タレント、劇団あの、ペガサス、F.Cすすき野スポーツ少年団、古賀プロ

 朝倉早紀子は、最近小学3年生になる娘の真美が沈みがちになったことに気付いた。真美に学校での話を聞いてみると、担任の一ノ瀬清彦先生がクラスで子供達にハイハイをさせるという……!? 心配になった早紀子は母親たちを集めるが、事勿れ主義の母親たちの協力を得られない。そんな時学校で、刃物でずたずたにされたサッカーボールが発見された……。

 長坂氏にとっては『若い!先生』(1974年)以来の久々の学園ドラマ。しかし、「教師が、様々な問題を抱える子供達と共に問題に立ち向かっていく」という今までの学園ドラマの基本前提を根底から覆し、逆に教師=学校側に対して不信感を抱く母親側からの視点という斬新な趣でドラマが展開する。
 真美の実の母親が5年前の春にガン死亡、その直後に早紀子が先生をしていた幼稚園に真美が入学、その縁で2年前の冬に航平が早紀子にプロポーズをして結婚、と語られる。この「実の母娘では無い」という設定がドラマを非常に盛り上げる要素の一つであり、全話を通して母娘の心の動き・葛藤が物語に感動を与えている。
 全話を通して、朝倉家以外の児童の家庭は母親だけの登場で、父親はどの家庭も全く登場しない。さりげない描写ではあるが、奥が深い描写である。第1話で早紀子が航平を指して「関心ないのよねぇー」という台詞に集約されているといえるだろう。しかし、その後の航平が出張に出かけるシーンでは、航平の洞察力の鋭さと父親の優しさを描き「父親の愛情」も描いている。全く隙のない構成である。その後の勘助の洞察力の鋭さが表れるシーンにても同様の静かな感動を呼び起こすことに成功している。非常に密度の高い、そして完成度の高い「第1話」である。
 舞台となる学校「夢ケ丘小学校」は、台本では第1話は「東多摩小学校」、第2話は「東多摩市立夢ケ丘小学校」、第3話以降では「夢ケ丘小学校」となっている。ちなみに学校の門の表札は「東多摩市立夢ケ丘小学校」となっている。
 朝倉家で飼っているペットの名前は犬が「ゴロー」、チャボが「チャー」と「クロ」である。
 母親達が話し合いの場所に利用する喫茶店の店名は、台本では「オアシスの森」。その喫茶店内にて第1話でBGMとして流れた曲は小林靖宏氏(のちにcobaに改名)のアルバム『シチリアの月の下で』(1991年11月発売)に収録されている「SARA」「水に映える都」の2曲。
 第1話の台本にて、回想シーンにて出演している「三才の真美」の欄に「井上真央」とある。井上真央氏といえば、『キッズ・ウォー』シリーズの茜役でブレイクした役者。作品上のテロップにて表記されていないため確証はないが、1992年の作品に3才の役であるということから見ても、1987年生まれである井上氏と同一人物である可能性は高い。もちろん、台本製本時は井上氏の予定であったが急遽変更になったという可能性もあるため、真相は不明……。


第2話「先生が変だ!」

放送日:1992/08/11
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:クリスティーナ(日本エコロジー研究所ニューヨーク支局 局員(声のみ))/劇団東俳、劇団あの、エンゼルプロ、F.Cすすき野スポーツ少年団、古賀プロ

 挙動不審な担任・一ノ瀬の行動を心配した早紀子は、一ノ瀬の様子をうかがうため、「お楽しみ会」を企画。母親達と子供たち、そして一ノ瀬を囲んでの「お楽しみ会」の最中、サッカーボールが石田菜保の頭に直撃。異常な反応を見せた一ノ瀬は笛を取りにその場を離れるがなかなか戻ってこない。そんなとき、ウサギのピー子が殺されるというショッキングな出来事が……。

 第1話同様にハイレベル、ハイセンスな台詞が炸裂。早紀子と航平の電話での会話「信じて誉めてやる」「一ノ瀬先生のいいとこを探してみる」「優等生の母親になろうとするな」のくだり、隙も無駄も全く無い。
 真美の父・航平の勤め先は日本エコロジー研究所。出張先はニューヨーク支局(台本ではサンフランシスコ支局)。航平の役職は開発課長である。
 喫茶店のBGMのうちの最初に使われた方の曲は第1話と同じ小林靖宏氏のアルバム『シチリアの月の下で』から「君に涙とほほえみを」。後半に使われた方はグレン・ミラーの名曲「ムーンライト・セレナーデ」のアレンジバージョン。(アレンジャーは不明)


第3話「先生がこわい!」

放送日:1992/08/18
脚本:長坂秀佳
監督:根本実樹
ゲスト:劇団東俳、エンゼルプロ、古賀プロ

 授業放棄をした一ノ瀬。その間、雨の中ウサギの墓の前で何時間もじっとしていたのだという。ある日、インディージョーンズの格好で授業に現れた一ノ瀬。生徒に鞭を振るい、そして他教師に取り押さえらてしまう。そんな時、一ノ瀬が怖くなった野沢るりが行方不明に……。

 今回の喫茶店でのBGMはカーペンターズの曲。


第4話「職員室のイジメ」

放送日:1992/08/25
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:堀尾雅彦(宅配便配達員)/劇団東俳、エンゼルプロ、古賀プロ

 早紀子は一ノ瀬のことで学校に抗議に行く。しかし、学校側は逃げの体勢で要領を得ない。そんな中、詩津の息子が一ノ瀬によって怪我を受ける。一方、早紀子は教師・田中より職員室の中にイジメがあるということを聞かされる……。

 航平からの宅配便と電話のシーンは、台本では急な短期帰国となっている。
 今回の第4話より最終話まで毎回、渋谷先生と明石先生が小料理「ひさご」が語り合うシーンが入る。
 中盤の早紀子と真美のシーンでの真美の台詞「パパなら助けてくれるのに、パパなら助けてくれたのに」では、早紀子と真美が実の母娘ではないという設定が最大限に活かされる。長坂作品の定番である「精神的に追い詰められとことん苦悩する主人公」の図の究極のパターンがここにある。なお、このシーンにて、真美の見ていた「航平と真美の二人だけの写っている写真」と、そのすぐあとの早紀子が一人で泣くシーンにて「早紀子、航平、真美の3人が写っている写真」をオーバーラップさせているが、台本では前者の2人だけの写真の描写しかない。これは演出の段階で加えられたと思われるが、これは演出の勝利であろう。


第5話「先生追放!」

放送日:1992/09/01
脚本:長坂秀佳
監督:根本実樹
ゲスト:劇団東俳、東京児童劇団、エンゼルプロ、古賀プロ

 るりがとうとう登校拒否になってしまった。一方、詩津は学校に対し一ノ瀬の解任を要求する。教室では、また一ノ瀬によって怪我をする子供が。そんな中、早紀子は一ノ瀬の家に行くのだが……。

 台本にはあるが本編にてカットされたシーンで、早紀子達が学校側に乗り込む直前「歴代校長の写真とかトロフィーが飾ってある校長室は権威主義」、「逆に子供中心に考える学校の校長室は校長の写真はなく、先生方全員の写真がある。それに子供たちのトロフィーや賞状も子供たちの目に触れやすいとろこに飾ってある。」というクダリの台詞がある。夢ケ丘小学校の校長室が後者であることを表現するシーンが台本上では第1話及び上記台詞の直後のシーンにあるのだが、映像としては実際には使われなかった。この台本上にはあったこのシーンの伏線が最終話にあり、校長が校長室の歴代校長の写真を教師全体の写真に掛け替えさせるシーンがそれである。この最終話のシーンのみが映像として使われてしまったため、脚本家の頭の中にあったイメージが表現しきれなかった。


第6話「職員室のゴキブリ」

放送日:1992/09/08
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:劇団東俳、東京児童劇団、エンゼルプロ、古賀プロ

 母親達は、学校側に対し一ノ瀬の授業の監視を要求。一方、早紀子は若手教師の尾崎と夏世から職員室内のイジメの実態を聞く。とうとう学校側が折れ、母親達による教室監視が始まる。追い詰められまともな授業どころではない一ノ瀬……。

 各教師を水戸黄門に例える描写はあまりにもしっくりきている。キャスティングの時点でこのような指示があったのではと思わせるほどである。ちなみに黄門様=校長、助さん=教頭、格さん=明石、風車の弥七=渋谷、うっかり八兵衛=玉置、霞のお新=カヨ、と表現されている。
 ラストシーンである早紀子が真美の頬を叩くシーンにて、早紀子が真美を叩いた後に泣きじゃくる後、台本では真美が「まるでやさしい母親のように早紀子の頭を撫でてやる。」と表現されている。脚本家の「画」にした時のイメージがここにある。
 「ここにいない21名のお母さん方」という台詞から、その場にいた人数9名を足し、3年3組の児童数が30名ということが分かる。また、エンディングテロップでの3年3組の役者数は25名。それに別枠でのテロップ表記となっている安達祐実氏と翔太、麗、るり、菜保役の4名を足すと合計30名である。ちなみに第7話でも「出席者24名、80パーセントの出席者」という台詞から3年3組の児童数が30名前後ということが分かる。
 物語の冒頭に早紀子と明石先生が話し合う喫茶店と、後半に早紀子、梢、尾崎先生、夏世先生が話し合う喫茶店は同じ店である。台本上では「駅前喫茶”ろんどん”」、映像では窓に「LONDON」と書かれている。ちなみにこの店内で使用されているBGMはエンヤの曲。
 番組の最後に主題歌CDのプレゼントの告知があった。


第7話「ダメ教師はやめろ」

放送日:1992/09/15
脚本:長坂秀佳
監督:根本実樹
ゲスト:水木 薫(3年3組保護者)、千葉裕子(3年3組保護者)、恵 千比絽(3年3組保護者)、野呂瀬初美(3年3組保護者)/劇団東俳、東京児童劇団、エンゼルプロ、古賀プロ

 早紀子に励まされた一ノ瀬。次の日の一ノ瀬の授業は昨日とは見違えるほど素晴らしい内容で母親達の評判も良い。このままうまくいけばと思う早紀子だったが……。しかし、翌日から急遽母親たちの代わりに学校側の監視がつくようになり、再び授業どころではなくなってしまう一ノ瀬。とうとう自我崩壊してしまい、他教師に取り押さえられてしまった。急遽開かれることとなった緊急保護者懇談会にて母親達の支持を得ているか多数決をとることになり……。

 「真美が生きてきた中で一番面白かった」という「岩崎恭子」ネタや「ヤワラちゃんごっこ」等、放送直前頃に開催されていたバルセロナオリンピックネタが登場。


第8話「希望」

放送日:1992/09/22
脚本:長坂秀佳
監督:森田光則
ゲスト:片岡富枝((一ノ瀬家の)近所の農家の主婦)/劇団東俳、FCすすき野スポーツ少年団、エンゼルプロ、古賀プロ

 一ノ瀬は教師を辞めることを決意。「自分はよい先生ではありませんでした」と生徒、母親達の前で詫び、学校を去る。皆から学校を辞めるなと止められるが一ノ瀬の決意は変わらない。そして一ノ瀬が町を去る日が来た……。

 真美達の最寄り駅が「京王よみうりランド」だと判明。第1話にて一ノ瀬が作っていた生徒名簿でも「東多摩市山岡」という住所が見られる為、この辺りが舞台と考えるのが妥当であろう。もちろん「夢ケ丘小学校」という名前の学校は付近には存在しない。
 早紀子が真美を寝かしつけるときに、早紀子が「一ノ瀬先生が辞めるかも」と告げるシーンにて、真美の台詞「一ノ瀬先生いけないとこあったもん」のあとの早紀子の無言の「間」は、台本では「……(真美が自分を理解してくれようとしている!)」となっている。台詞にはなっていないが、早紀子の感情を台本ではこのように表現している。そしてこのシーンの最後、早紀子が真美に泣き崩れる直後は、真美「……(やさしい母のようにいたわってやる)」と表現されている。第6話の台本上でも「まるでやさしい母親のように早紀子の頭を撫でてやる。」という表現が使われているが、「脚本」というものには、台詞や人の動きや表面上の感情(「怒り」「悲しみ」「笑い」等)だけではなく、このような抽象的な感情表現等、脚本家のイメージしている画が詰まっている。