「引っ越せますか」全エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 部長の椅子を約束に、タイへの4年間の単身赴任に耐えた平凡なサラリーマン・五輔。昇進を機に家の立て替えを決意し、意気揚揚と帰還した彼を待っていたのは、リストラという厳しい現実だった。そんなとき、彼とその一家を謎の男、柏木理一郎が付け狙う。彼の口車に乗せられて、豪邸の購入に踏み切った池淵一家に、柏木が企んだ罠が……。


第1話「指名解雇」

放送日:1993/07/07
脚本:長坂秀佳
監督:祖父江信太郎
ゲスト:斉藤麻里、中川真弓/山本 淳/峰 三太、荒木和範、伊予博史、ヤマプロ/橋本由紀乃

 部長の椅子を約束に、タイへの4年間の単身赴任に耐え帰国した平凡なサラリーマン・池淵五輔。妻と母と三姉妹が住む築40年の窮屈な家を、昇進を機に立て替えようと上機嫌。しかし帰宅した彼は、彼が留守の間家族に親身に尽くしていたという銀行員・柏木理一郎の力添えにより家族が勝手に立て替えの話を進めていたことを知り不機嫌に。さらに、帰りの遅い次女・窓子の反抗的な態度にカッとなり思わず引っぱたく。叩かれた窓子は、渡しそびれた父への昇進祝いのプレゼントを手に、一人佇む。その後、会社に出向いた五輔は指名解雇を言い渡され呆然。そんな意気消沈の五輔を、柏木が妖しい目で見つめていた……。

 準備稿(おそらく)の台本では、柏木理一郎の役名は椣原(しではら)理一郎。決定稿(おそらく)の台本では映像と同じ柏木になっている。
 映像から、五輔の勤める会社は「オオヤド電機」、柏木は「いちご銀行恵比寿支店」(融資課で支店長代理)、窓子は「昭和美術大学」の学生、すず江は「三丁目のナチュラルフード」であることが分かる。これらは、台本と同一である。ただし、「山神不動産」は、台本では(第2話までは)「東京不動産」になっている。
 この物語の舞台は、本話で見られる柏木の名刺にある「恵比寿支店」、それに、本話で窓子が友人と待ち合わせる「恵比寿駅」、池淵邸の全景のシーンで見られる住所表記のプレート、第2話以降の回でも契約書の記述等のシーンから見ても「恵比寿」であることが分かる。ちなみに五輔邸の正式な住所は、第6話の契約書が表示されるシーンで、「東京都渋谷区恵比寿北2-35-9」であることが判明する。なお、第3話〜最終話の台本の巻末には、「渋.恵比寿3-3 池淵家 オープンセット LOC現場」と記された地図が掲載されており、池淵邸のセットも実際に恵比寿に建てられたようである。
 (※メイン・ゲストの漢字表記は全話エンディングテロップ及び台本を参照。)


第2話「おいしい話」

放送日:1993/07/14
脚本:長坂秀佳
監督:祖父江信太郎
ゲスト:比嘉ひとみ/大岡千夏/山本 淳/劇団ひまわり、劇団東俳、ヤマプロ

 五輔から指名解雇の話を聞いた家族は一同呆然。その空気にいたたまれず家を飛び出す五輔。沈んだ空気の中、ひとり、父を心配して姿を探す窓子。公園で一人佇む父を発見した窓子は、そんな父を遠くから見る柏木の姿を不審に思いながらも、不器用にプレゼントを差し出し、静かに父を励ます。程島産業の社長の子息・程島朝見と婚約した長女・翠子は、玉の輿である相手との格式の違いを心配し、父のリストラが影響して婚約が破棄になることを恐れていた。五輔の妻・すず江は、それぞれの娘の幸せの為、頭を下げてでも会社に残るよう夫に懇願。家族の為にプライドを捨て本部長に頭を下げた五輔は、ヒラ社員同然として会社に残ることになった。そんな五輔に接触した柏木は、池淵邸の借地権と引き替えに、新築5LDKの住宅に加え5000万円が手に入るというおいしい話を持ちかける。

 窓子が五輔にネクタイピンを贈るくだり。台本では、ネクタイピンと共に「がんばれ父さん」と書かれたメモが添えられている。
 柏木が五輔に紹介した5LDK新築一戸建ての場所は、映像では三浦半島の久里浜(神奈川県横須賀市久里浜)であるが、台本では金沢八景(神奈川県横浜市金沢区)になっている。


第3話「夢の庭つき5LDK」

放送日:1993/07/21
脚本:長坂秀佳
監督:金田和樹
ゲスト:及川謙二、ヤマプロ

 うますぎる話に半信半疑の中、5LDKの住宅を視察する五輔は、その話にすっかり乗り気。家族も、すっかり信用しきっていた柏木の持ってきた話ならと、その話への疑いを弱め心動かす。元々2億円の豪邸がバブルがはじけた影響で1億円に値下げしたという好条件に加え、借地権が1億5000万円で売れるという話にも信憑性があり、また、柏木の仲間・神野十徳が大手不動産を装いその話の正当性を説明。一家の不信感は徐々に消えていった。そして、好条件の取引相手を見つけるという神野の言葉に、五輔は不動産取引を神野に託す。それからのち、家族全員で豪邸の下見に行くことになった中、窓子だけは行かないと突っぱねる。当日、家族とは別行動で合流した窓子を加えて豪邸を視察する家族。その豪華な住宅にすっかり上機嫌に浮かれる一家を、ひとり冷めた目で見つめる窓子。その後、すず江らは五輔が家族に相談無しで家族の全財産である1000万円の預金を解約したことを知って騒然となる。

 台本のタイトルは「夢の6LDK」
 本話及び第6話で登場する新築豪邸のオーナー会社の山口専務役の加藤治氏は、長坂作品では、『アクマイザー3』(1975年〜1976年)第14話「なぜだ?!一平がふたり?」のキングラーの声、第28話「なぜだ?!恐怖のテングあやつり」のオニテングの声、『超神ビビューン』(1976年〜1977年)第22話「蛙が娘になる?ごめんね母さん」のガマガンマの声、『ジュニア 愛の関係』(1992年)第1・2・10話の山本三蔵役(おそらく国会議員役)で出演している。
 エンディング後、予告前のタイミングにて、主題歌「「月」に吠える朝」のシングルCDプレゼントの告知がなされた。なお、告知は歌を歌うGAO本人が、池淵邸の玄関の屋根の上に座った状態で行われた。


第4話「1千万円返して!」

放送日:1993/07/28
脚本:長坂秀佳
監督:金田和樹
ゲスト:ヤマプロ

 五輔は、豪邸購入にライバルが現れた為に早々に手付け金1000万円を支払ったと家族に説明。すず江、翠子、五輔の母・伊知の3人は相談も無しに決断した五輔を非難するが、窓子は父と一緒になって浮かれ父をノせた皆を非難する。借地権が売れていない現状で、残金を1か月以内に支払わなければならないという規約に不安なすず江らは柏木に説明を求め、柏木は神野と共に巧みな話術で皆を黙らせる。それから十日、二十日と過ぎても神野から借地権の買い手が見つかったという連絡が無く、不安に、そして激情する五輔。帰りの遅くなった三女・琴子を怒鳴り散らす五輔を、借地権が売れなくて八つ当たりをしていると非難する窓子。家族の空気が重くなっていく中、五輔は借地権が高値で売れたと連絡を受け驚喜。だがその一週間後、神野から国土法の関係で高値で売れなくなったという連絡を受け、一家は騒然となる。

 第1話にて、台詞の中でのみ語られたすず江の勤務地「3丁目のナチュラルフード」が登場。以降、何度も登場することになる。
 柏木とすず江がデートした場所のロケ地は、横浜・八景島シーパラダイス(横浜市金沢区八景島)である。


第5話「悪夢の引っ越し」

放送日:1993/08/04
脚本:長坂秀佳
監督:祖父江信太郎
ゲスト:澤田英俊、斉藤哲平、神谷友介、酒井理華、ヤマプロ、劇団ひまわり

 借地権が高値で売れないと分かり騒然となる家族だったが、冷静に計算すると5000万円のプラスが無くなるもののギリギリで豪邸が購入できると分かり安堵する。しかし、豪邸購入支払期限をあと3日に控えた日、神妙な顔で池渕邸を訪れた柏木と神野は、国土法の査定が低すぎることに警戒した飼い主が購入をキャンセルしたと説明。さらに柏木はすず江と五輔個別に、その後借地権は売れたが支払いは少々先になること、その為に繋ぎとして借金で豪邸を購入することを提案。その案を進めようとする五輔とすず江だが、翠子は婚約者の程島から全額無利子で借りられると口添え。五輔は柏木に借金は不要と連絡する。予想外の展開に苛立つ柏木は、程島からの援助を阻止する為、翠子との会談を程島に見せつけ嫉妬させ、怒った程島は援助を中止。五輔は、柏木の仲間・沢伊しほ里を窓口としたゼネラルファイナンスからの借金に踏み切って豪邸を購入した。豪邸への引っ越し当日――だが、窓子は家族に反対し家に残るのだった。

 台本のタイトルは「悪夢の旅立ち」
 五輔の上司である都崎が五輔に皮肉をいうくだり、台本では都崎が自分の引っ越し自慢をしており、映像のような嫌みなキャラクター描写ではない。ただし、第8・9話は台本も映像と同じく嫌みなキャラクター描写となっている。
 窓子の友人の美由紀であるが、映像では窓子は「ミユキ」と呼んでいるが、台本では「ミュー」と呼んでいる。
 柏木とすず江の密会を窓子が目撃するシーン、台本では窓子と琴子が二人で目撃している。
 ゼネラルファイナンスは、台本ではセントラル・ファイナンスである。ただし、第6話以降はゼネラルファイナンスになっている。


第6話「甘い生活の罠」

放送日:1993/08/11
脚本:長坂秀佳
監督:祖父江信太郎
ゲスト:樋浦 勉/小野 了/高木 剛/ヤマプロ、劇団ひまわり

 ついに豪邸に引っ越した池渕家。東京まで往復5時間の通勤時間がかかる生活が始まった。一方、一人残った窓子は初めての一人暮らし生活を満悦していた。新居に上機嫌の五輔は、今までの池渕邸の地主であり、昔から家族同然の付き合いをしてきた大場かめに新居自慢するが、旧居より持ち込んだ家具が豪邸に合わないと指摘され憤慨。借地権の契約を済ませて手付金1000万円を入手した五輔は、そのまま勢いに乗って456万円分の豪華な家具を購入。旧池渕邸の窓子は、友人らを呼んで宴会、はしゃぐが皆から子供扱いされ激怒、皆を追い返す。悪酔いして外に飛び出しずぶ濡れになった窓子を、柏木が介抱。酔った窓子は父親に対しての思いの愚痴を、相手が柏木だと知らずにこぼす。そんな時、借地権の買い手・小佐田警備保障の社長・小佐田茂が、銀行から融資が下りなかった為に契約解除を通達。1000万円の手付金の返済に加え、一週間以内に借金8000万円の支払いをしなければならず、五輔は呆然となる。

 本話をもってメインライターであった長坂氏が降板、次回以降からは原作、及び原案表記となった。
 新しい池渕邸の最寄りのバス停は「久比里坂」(神奈川県横須賀市久比里)。「久里浜駅行き」のバスに乗り「久里浜駅」から東京まで電車で移動した。
 翠子の勤務先が「太平洋商事第二営業課」であると判明、また、窓子が22才で大学3年ということが判明する。


第7話「さびしい裏切」

放送日:1993/08/18
脚本:[原作] 長坂秀佳 [脚本] 山田千詠、平岡恵子
監督:金田和樹
ゲスト:石川裕司、ヤマプロ/石田太郎(桜井)

 多大な借金を返すあてがない為、伊知はかめを頼りに頼みに行くが言い出せない。五輔は、1000万円の手付金の返済の為に、家具で出費した分としてさらにゼネラルファイナンスから追加で500万円を借用。一方、すず江は翠子に程島からお金を借りるようにと頭を下げるが、翠子は拒否。その為にすず江は、直接程島に援助を依頼、それを知った翠子は激怒する。五輔は会社などを駆けずり回るが返せるあては無い。そんな時、かめから伊知が倒れたと連絡を受けた五輔は急いで伊知の元に駆け付けた。池渕家の現状に心配したかめは何かと口を挟むが、苛立つ五輔は他人のくせに口を出すなと拒絶する。母に対して怒りを抱いた翠子は柏木と一晩を共に、冷え切った家族の空気に耐えられなくなった琴子も、恋人の滝本の元へ行き、初めての夜を迎えた。早朝、窓子の元に転がり込む琴子と翠子だが、再び伊知が倒れたという連絡を受け3人で病院に駆け付ける。伊知は五輔にかめも家族の一員だと諭し、五輔はかめに対し地主であるかめが借地権を買ってくれないかと頭を下げるが、かめは既に底地権をゼネラルファイナンスに売った後だった。

 台本のタイトルは「危険な地主」
 かめと伊知がジャワティーを飲むシーン。これは、スポンサーがジャワティーの販売元である大塚製薬(大塚ビバレジ)であること、また、放送内にジャワティーのCMが流れていることが影響していると思われる。なお、この頃のCMは田中律子氏が出演していた。ちなみに、第8話でも窓子と琴子がジャワティーを飲むシーンがあるが、台本ではジュースとなっている。


第8話「暴かれた打算愛」

放送日:1993/08/25
脚本:[原案] 長坂秀佳 [脚本] 深沢正樹
監督:金田和樹
ゲスト:田村元治/ヤマプロ

 借金返済のあてもなく沈み込む五輔。その父の小さくなった背中を見た窓子は、金銭調達の為に行動を開始。借地権の買い手を探す為不動産に出向くが、鍵型であるその土地は高額では売れないという事実を知る。さらに周囲一帯が買い占められているという噂を聞き、その買い手である山神不動産のメンバーが神野、柏木、沢伊であることを突き止めた。柏木を尾行した窓子は、柏木がすず江、そして翠子と密会している様を目撃、衝撃を受けた。一方、柏木は五輔とすず江に借地権が4000万円でなら買い手があるという話を持ちかけた。あまりもの低額に憤慨する五輔だが、借金を少しでも減らすにはこの手しかないと、4000万円で手放すことを決意する。その連絡を受けた柏木は、五輔の借地権を安く手に入れ、周囲の土地をまとめて20億円で売りさばくという目的が達成出来たことを知りほくそ笑んだ。伊知の退院祝いと称して、退院した伊知や家出していた翠子らが帰宅し、久々に一同が揃った池淵家。五輔から4000万円で借地権を手放すと聞いた窓子は柏木の悪事を暴露。家族に衝撃と怒りが走った。

 落ち込む五輔に対してかけてやる言葉が見つからず憎まれ口を叩く窓子のシーンの後、窓子が部屋で考え込むシーン。台本では「窓子の中で大きく何かが変わって行く。」と表記されている。(シーン16)
 山神不動産の住所が「東京都渋谷区恵比寿東1丁目4番11号」であることが判明する。


第9話「炎の池渕家」

放送日:1993/09/01
脚本:[原案] 長坂秀佳 [脚本] 江頭美智留
監督:祖父江信太郎
ゲスト:森山米次、白岩久尚/高橋 寛、堀 哲郎、ヤマプロ

 五輔は、柏木らの計画を阻止する為、購入したばかりの豪邸を売却、そして足りない分を他のノンバンクから借り、ゼネラルファイナンスからの借金を全額返済した。柏木への想いが本物だと感じた翠子は家を出て柏木の元へ。計画の狂った柏木は、借地権を売るよう翠子を盾にすず江を脅迫。一方、五輔は会社からの待遇が我慢出来ず上司を殴って会社をクビになった。夜、漏電が原因で池淵家は全焼。一家は全員無事に逃げ出したもののすべて焼失した。家族はかめの家の世話になる一方、五輔は焼け跡に掘っ立て小屋を建て始める。掘っ立て小屋でも借地権が発生する為、苛立つ柏木。決意したすず江は、家族に無断で借地権を売りに神野の元に向かうが、一帯20億円で売るという神野の計画も売り手に逃げられ失敗に終わっていた。そんな時、五輔が突然姿を消した……。

 中盤あたりからの展開が台本(おそらく決定稿)と映像では全くといっていい程異なっている。
 映像では、柏木がすず江に対して脅迫というカタチで借地権を入手しようと企んでいるのに対し、台本では、柏木が借地権入手の為にすず江に対して一緒にニュージーランドへ行こうと持ちかけ動揺させる。その後、映像では漏電で火災になったのに対し、台本では柏木のやり方に反発した神野が池淵邸を放火。その後台本では決意したすず江が、母として妻として嫁として自信がなくなったからと「実家に帰る」と残して五輔の元から去る。そして、柏木のマンションに向かった五輔は、柏木の腹部に包丁を突き刺し、惚けた笑みを浮かべその場を去る……。全く異なる衝撃的な展開であるが、翌第10話の台本(おそらく決定稿)は、この展開の続きからではなく、映像の第10話とほぼ同じ展開となっている。
 本話放送日に、フジテレビ系列の番組「笑っていいとも」のゲストとして本番組の主題歌を歌うGAO氏がテレホンショッキングのゲストとして出演。翌9/2(木)はGAO氏の紹介で滝本美則役の谷口宗一氏が出演した。『引っ越せますか』は放送局が違う為(日本テレビ系)、本番組の話題があったかどうかは不明である。真相を知っている方、情報募集中。
 本話を境に本番組のストーリー展開が大きく変更される。柏木の計画が潰れ終了したこと、そして五輔が会社を解雇されたことで、柏木、神野、沢伊、春日、都崎が本話を持って降板。程島も翌第10話を持って降板。五輔も第10話以降の出番が激減している。今までメインであった舞台のほとんどが消滅する為、第10話からは、琴子の妊娠騒動を軸に、翠子サイドの物語として松山一家、すず江サイドの物語として白石を投入。物語の基本ラインは継承しているものの、物語は大きく変わっていった。メインライターであった長坂氏の降板に加え、メインキャストの大幅な入れ替えが発生しており、何か大きなことがあったことがうかがえる。


第10話「父の蒸発」

放送日:1993/09/08
脚本:[原案] 長坂秀佳 [脚本] 平岡恵子
監督:祖父江信太郎
ゲスト:石井洋祐、安岡力也/大村眞利江、大念寺 誠/志村和彦、ヤマプロ

 「働きに出ます」と置き手紙を残して姿を消した五輔。翠子も「家のごたごたに巻き込まれたくない」と残して家を出て一人暮らしを始めた。一方、琴子は自分が妊娠したことを知り戸惑う。妊娠を知らされた滝本は、すず江らに琴子との結婚を懇願。激怒したすず江は滝本を追い返す。深夜、家を抜け出した琴子は滝本の元へ。沈むすず江に対して窓子は「こだわるのは家や土地ではなく家族」だと強く励ました。窓子は、借地権をいちご銀行に買ってもらうべく交渉に赴くが、既に父が銀行から借地権を担保に3000万円を借りて、ノンバンクの借金すべてを返済していたことを知る。すず江は、今までの昼間のパートに加え、住み込みで居酒屋で働き始め、窓子も同じ職場で働き始めた。非協力的だった翠子も、窓子の言葉に心動かされ、少額ならと家族への入金を約束する。そして、五輔もタクシーの運転手として働きはじめ、稼いだ金を家族に仕送り始めた。そんな時、滝本の家に住み込みはじめた琴子の元に重大な電話が……。

 本話より松山周作役で参入した渡辺いっけい氏は、長坂氏と同じ愛知県豊川市の出身。ただし豊川市といっても、厳密には現在は豊川市であるが、2006年2月1日に編入合併される前は愛知県宝飯郡一宮町だった場所である。
 すず江と窓子の務め先である「居酒屋やす吉」の住所は東京都目黒区中目黒8-20-5。この目黒区は、恵比寿(渋谷区)とは区は違うものの隣同士の為、距離的にはそれほど離れてはいない。
 映像ではカットされてしまったが、台本ではオープニングとエンディングで流れている一家4人(五輔、すず江、翠子、窓子)の海の日の想い出のことが語られている。それによると、琴子が産まれる前、五輔の会社の人の別荘を借り、シーズンオフで誰もいない伊豆の海でパラソルを立てて遊んでいた、そして窓子にとってうちの家族が一番家族らしかった時としてよく思い出すのだと語られている。(シーン21)
 本話より最終話まで、第9話で職を失った五輔はタクシーの運転手を務めている。大地氏は、1988年に公開されたオムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます』の第3話「運転する身になれ!」の主人公としてタクシーの運転手役を演じており、そのイメージが非常にダブって見える。


第11話「私、産みたい!」

放送日:1993/09/15
脚本:[原案] 長坂秀佳 [脚本] 江頭美智留
監督:金田和樹
ゲスト:須永 慶、沼川 爆/田村憲司、大村眞利江、原 久美子、青井さやか、ヤマプロ

 工事現場で働き始めた滝本が、バランスを崩して足場から落ち重傷。命は取り留めたものの完治までには半年はかかるという。意識を取り戻した滝本に必ず赤ちゃんを産むと誓う琴子だが、すず江は中絶を強く勧める。一方、翠子に心を寄せる同僚の松山周作が翠子に急接近。翠子は、松山に別れた妻との間に出来た二人の子供がいたことに驚くが、松山ら家族の温かさを受け自分の中で何かが大きく変わって行くことを感じる。琴子を引き取ったかめは、情が移り子供を産ませるようすず江に懇願するが、すず江の決意は変わらなかった。翠子や窓子にも中絶反対を問われ悩むすず江。中絶手術当日、「さようなら」と書き置きを残して姿を消した琴子。川に身を投げようとした琴子を発見したすず江は、自分の命と共に赤ちゃんの命まで絶とうとした琴子を非難。母親とは全力で子供を守るものだと強く諭し、子供を産むことを認めるのだった。

 すず江の務め先である「スナック裕子」の住所は「東京都目黒区中目黒???」、かめのアパートである大場荘の住所は「東京都渋谷区恵比寿北 五ノ八ノ六 大場荘内管理人室」であることが判明する。
 予告の後、サウンドトラックCDプレゼントの告知がなされた。
 琴子が身を投げようとした川であるが、台本では多摩川沿いにある滝本のアパート近くの河原ということである。ちなみに、第3話で琴子と滝本が初デートする場所も台本では多摩川という記述あり。このシーンで語られる滝本のアパートの場所は、映像、台本ともに、狛江である。


第12話「最後の引っ越し」

放送日:1993/09/22
脚本:[原案] 長坂秀佳 [脚本] 江頭美智留、深沢正樹、平岡恵子、山田千詠
監督:祖父江信太郎、金田和樹
ゲスト:三浦賢二、円城寺あや/中田優子、平井奈津子、ヤマプロ

 翠子は、突然現れた松山の別れた妻が、子供よりも財産目的であることに憤慨し彼女を激しく罵る。そして、松山からの再三のプロポーズを断りながらも、子供たちと共に松山との付き合いを続けていた。一方、自分の将来に悩む窓子。窓子は、お腹の大きくなっていく琴子の絵を描き続けながら、徐々に自分のやりたいことが何か気付いていった。半年後――。すず江らはいちご銀行からの提案で借地権を6000万円で売却。これですべての借金を返すことが出来、手元に2000万円が残った。そして、琴子のお腹の子が家族皆が心配する中ついに誕生した。一方、偶然発見したという松山の証言から五輔の居所をつかんだ翠子。窓子とすず江は五輔の乗るタクシーを呼び出し、五輔に思いの丈を語った。そんな五輔の運転するタクシーが向かう場所――そこには池渕邸建設予定地があった。実際に引っ越せるのはまだまだ先になりそうであるが……。

 台本によると松山の妻の名前は淳子。台本では琴子の子・雄太は祐太になっている。
 翠子の勤め先である太平洋商事が新宿の西口にあることが判明。
 琴子の子供・雄太が誕生するシーン、映像では窓子も病院でずっと待っているが、台本では五輔を探して川崎を走り回っている。
 台本では脚本は江頭美智留氏のみになっている。