「快刀!夢一座七変化」長坂作品エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 花村夢十郎を座頭とする「花村一座」は、旅回りの先で、一座の出し物である「世直し天狗・白頭巾」の姿を借りて、悪人どもを退治していく。


第1話「その死刑、待った!」

放送日:1996/10/17
脚本:長坂秀佳
監督:上杉尚祺
ゲスト:岩本千春(おきぬ)/石丸謙二郎(赤垣源四郎)/小野武彦(越後屋徳兵衛)/松澤一之(伊助)/川合伸旺(平田出羽守)/五十嵐義弘、江原政一、東 孝、塩賀淳平、丹羽美奈子、岡田和範、加藤三彦

 世の中の悪を退治する「世直し天狗白頭巾」――それは、諸国を旅して回る旅一座「花村一座」が行う芝居である。その花村一座に、おきぬという女が夫を助けてほしいと懇願。無実の罪で処刑が決まったというのだ。今まで数度「世直し天狗白頭巾」として実際に悪党退治をして来た彼らは、おきぬとその息子・三太の想いに心を打たれ力になることを決意する。黒幕が代官・赤垣源四郎と絹問屋総元締・越前屋徳兵衛と知った彼らは、巡見使になりすまして一芝居。越前屋の声帯を薬で痺れさせ、口がきけない隙に声真似を使って代官と仲違いを図ろうとするが、手違いにより代官が薬入りの酒を飲んでしまい、万事休す。急遽、代官の口真似に変更、越前屋と仲違いをさせ、越前屋に真相を語らせることに成功する。そして、すべてを暴露した代官と越前屋を退治し、一輪のりんどうを置いていく。りんどう――それは、「倫」の「道」。花村一座の家紋花であった。

 本番組『快刀!夢一座七変化』では、長坂氏は本作の第1話、それに第4話、7話、最終話である第15話の計4作を担当。
 この第1話は、いかにも長坂氏らしいくだりが満載。言葉遊びである「りんどう」のくだり、薬の入れ替わりといういわゆるドタバタ、本物の巡見使とのやり取りの「イキなラスト」。レギュラーキャラクター一人一人に見せ場もあり、1時間という時間の中に連続ドラマの導入部として相応しいドラマを詰め込んだ作品に仕上がっている。
 第1話の台本では「快刀!夢一座七変化」ではなく、「七変化夢芝居(仮題)」となっている。
 番組冒頭、一芝居での白頭巾の数え歌。まず天狗面で「天から降ったか天狗面、ひとさし踊れば悪党退治」。天狗面の下から現れる白頭巾で「地から沸いた白頭巾、ふたさし舞ったら鬼退治」。有名な「桃太郎侍」(1976年〜1981年)の数え歌を考案した長坂氏らしい、いかにもな数え歌である。
 毎回、悪党退治の為に出陣するシーン(台本では「討ち入り」と表記)、台本上では一人一人、「色」を強調しており、花村夢之丞が着流し「白」マフラー、龍之介が「赤」鉢巻、揚羽が「紫」頭巾、小町が「緑」袴、申太郎が「黄」鉢巻、夢十郎が「朱」の頬かむりである。東映の戦隊ヒーローのイメージであろうか?ちなみに、この番組は東映製作である。
(※ゲストの役名の漢字表記は、エンディングテロップの表記を参照。(第4・7・15話も同様))


第4話「秀吉の埋蔵金の謎」

放送日:1996/11/07
脚本:長坂秀佳
監督:牧口雄二
ゲスト:若林しほ(お伊代)/遠藤征慈(鬼蔵)/山本昌平(伝兵衛)/徳田興人(惣右衛門)/石倉英彦、斎藤弘勝/柴田善行、遠山金次郎、小谷浩三、芳野史明/野々村 仁、岡田友孝、八神辰之介、久下美香子

 花村一座の龍之介に助けを求める女・お伊代。お伊代の父が偶然見つけた「秀吉の埋蔵金」を、藩法によりお上に献上しなければならないのだが、その埋蔵金を目明しの鬼蔵と大庄屋・熊田伝兵衛が偽物とすり替えたという。ここままだと、お伊代の父と、埋蔵金お鍵番を命じられた兄が死罪にされてしまう。お伊代に頼られて上機嫌の龍之介は、一座の反対を押し切って大庄屋の屋敷に乗り込むが、深手を負ってしまう。一座はお伊代、そして龍之介の為に大芝居を決意。埋蔵金献上の日、鬼蔵が持つ小判を偽物にすり替え、代わりに本物の小判を鬼蔵の屋敷の襖に隠す。屋敷から小判が出てきた為に鬼蔵は捕らえられ、逃げ出した大庄屋を一座が退治。血のつながりの無い兄と祝言を挙げるお伊代を、龍之介は温かく見守るのだった。

 台本のタイトルは「秀吉の埋蔵金、消えた?!(仮題)」
 ラストシーン、荷車に乗るてまり(一座の少女)が手にしているのは、埋蔵金が入った壺。彼らはちゃっかりと900両を着服したのであろうか? なお、台本上でも「ギッシリと小判が詰まっている」とある。


第7話「呪いの師走ナマズ」

放送日:1996/12/12
脚本:長坂秀佳
監督:長岡鉦司
ゲスト:上野めぐみ(梓)/江藤 漢(斯波四位太夫)/武野功雄(斯波蔵人)/水上保広(小田中日向守正成)、中井佳代(りく)/中嶋俊一(斯波舎人)、山本香織(お了)/矢部義章、西山清孝、北村明男、石井洋充、原田逸夫、高橋弘志

 花村一座が訪れた上州・村山藩。昔栄えていたはずが、今は見る影もないほど荒んでいた。「おナマズさまのお告げ」の名の下に、年貢の増加、そして、男たちはすべて駆り出され、逆らう者は処罰されていたのだ。そんな中、城から抜け出した城主・小田中日向守正成の娘・梓は、花村一座に救いの手を求める。梓によると、城主は幽閉され、家老・斯波四位太夫とその息子、蔵人と舎人の3人が実権を握り、悪事をはたらいているというのだ。藩を救うべく、一座の大芝居が始まった。まず、四位太夫の寝床に忍び込み、おナマズさまに扮して息子らに謀反・逆心があると思い込ませ、さらに息子ら二人には偽のナマズや銀山を使い、お互いが自分を出し抜こうとしていると思い込ませた。仲違いし、仲間割れする四位太夫親子。その前に現れた一座は彼らを一刀両断。助け出された城主は、荒れ果てた藩の立て直しを誓うのであった。

 「おナマズさま」という冗談のような題材であるが、昔は実際に奉られていた地方もあるという話も残っており、あながち冗談ではないようだ。
 本作のヒロイン・梓役の上野めぐみ氏は、80年代の東映ヒーロー番組では『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987年)の赤川矢須子、『仮面ライダーBlackRX』(1988年〜1989年)の的場響子で有名な女優。その『仮面ライダーBlackRX』ではアーチェリー(洋弓)の名手として活躍しているが、本作『快刀!夢一座七変化』第7話では弓の名手としてその腕前を披露している。単なる偶然であろうか?


第15話「討入炎上!顔のない殺人者!!」

放送日:1997/03/13
脚本:長坂秀佳
監督:長岡鉦司
ゲスト:山崎美貴(紗也香)/潮 哲也(多岐渉)/伊藤敏八(朝日堂悦軒)/西山辰夫(物部作左衛門)、井上倫宏(葛飾東斎)、伊藤えん魔(門番)/大木晤郎、細川純一、小谷浩三、丹羽美奈子、入江 毅、奥野公一、浅田祐二、平井優也

 武州・滝川藩の山中、旅姿の武家娘・紗也香と絵師・葛飾東斎が刺客に襲われた。辛うじて刺客を撃退する紗也香だったが、東斎は深手を負い瀕死の重傷。その場に居合わせた花村一座の面々は、紗也香から事のあらましを聞く。3年前、紗也香の父である代官・物部作左衛門と薬問屋の旭日堂草庵が謎の死を遂げた。役人は、作左衛門が草庵を手にかけた後に自害したと処理したが、紗也香によると現場から立ち去る下手人を東斎が目撃していたのだという。その証言の為に呼ばれた東斎は、その為に命を狙われたのだ。下手人の似顔絵を描こうとする東斎だったが、顔の輪郭だけ描き絶命。東斎に仇討ちを誓った一座の面々は行動を開始する。後任の代官・多岐渉か、新しい旭日堂の主人・悦軒のどちらかが黒幕だと睨み、東斎に化けた夢之丞が両者に乗り込み揺さぶりをかける。結果、口封じの為に命を狙われた男を問い詰め、代官と旭日堂の両名が黒幕だと突き止める。黒幕が分かれば、あとは仕上げの大芝居。東斎に化けた龍之介が代官に接触、旭日堂に抜け荷の疑いがあることを吹き込み、旭日堂に裏切られたと思い込んだ代官は旭日堂に乗り込む。そこにいたのは東斎に化けた夢之丞。二人の東斎を前にして疑心暗鬼になる代官と旭日堂は真相を暴露、そして、一座によって退治された。すべてが終わり、花村一座は次への旅先へと旅立っていく――。明日の希望へ向かって。

 本番組『快刀!夢一座七変化』最終話。通算15話という中途半端な放送回数ではあるが、特別番組による延期が続いた為で、放送期間はほぼ半年である(1996年10月〜1997年3月)
 台本のタイトルは「二人が一人、一人が二人?!(仮題)」。話自体は特に最終回らしい話ではなく、ラストシーンで最終回らしく仕上げているのみ。とってつけたような終わり方ではあるが、これは台本通りである。一応台本の段階で最終話であることは決まっていたようだ(ただし、執筆のどの段階で決まっていたかは不明)ラストの、一座のカメラ目線による挨拶も、「揃ってこちらへ頭を下げ」と、台本通りの指定である。最後まで芝居らしい演出でその幕を閉じた。