「藤沢周平の用心棒日月抄」全エピソード あらすじ・解説

【ストーリー紹介】

 藩主毒殺の陰謀を知った為、許嫁の目前でその父を斬り、国許を追われ脱藩した男、青江又八郎。江戸に身を寄せた又八郎は、国許からの刺客に追われながら用心棒稼業を続けていくが、江戸城内の松の廊下にて発生した刃傷沙汰を発端に始まった吉良と赤穂の抗争に巻き込まれていく。


第1話「愛を欲しがる女」

放送日:1997/07/10
脚本:長坂秀佳
監督:小田切正明
ゲスト:寺島しのぶ(おとよ)/神山 繁(田倉屋 徳兵衛)/宮本大誠(新吉)、石井トミコ(おしの)/福本清三、西村正樹、池田謙治、畑中伶一、安藤彰則/稲垣陽子、上鶴良子

 元禄十三年・師走。出羽国・庄内藩の武士・青江又八郎は、家老・大富丹後一派による藩主毒殺の陰謀を知り、従目付であり祝言を翌日に控えた婚約者・由亀の父・平沼喜左衛門に打ち明けるが、実はその一味であった喜左衛門に斬りつけられ、又八郎は反射的に喜左衛門を由亀の目前で斬ってしまう。その為、国許から謀反人として追われ江戸に身を寄せた又八郎は、職を探しに口入屋「相模屋」へ足を運ぶ。そこで引き受けた仕事は犬の用心棒!?。依頼主は雪駄問屋・田倉屋徳兵衛。徳兵衛の妾・おとよの飼っている犬の「まる」が、何者かに狙われているという。もし「まる」の身に何かあれば、「生類憐みの令」の影響で飼い主である徳兵衛の身に災いが起こる。その為、徳兵衛は商売敵である磐見屋の仕業とみているが、又八郎はどうもしっくり来ない。又八郎は、何かと又八郎に付きまとう謎の女・世津より、おとよの幼なじみ・新吉の存在を知る。お互い好きあっていた二人だったが、3年前、両親に先立たれ貧しかったおとよは幼い弟・妹の為に田倉屋に囲われ離れ離れに。今回のことは、おとよのことを諦めきれなかった新吉が、徳兵衛をお縄にと仕組んだことだった。又八郎は、骨の髄まで汚れてしまったと嘆くおとよを諭し、二人はやり直すことを決意するのだった。

 本番組の原作は藤沢周平氏著の「用心棒日月抄」。世にも有名な赤穂事件(忠臣蔵)を全編に絡ませた連作短編小説で、各短編ごとに1話ずつドラマ化。本番組全8話、すべて原作に存在するエピソードである。(未ドラマ化は「夜の老中」のみ)
 本番組では毎回「女」をテーマを綴っており、サブタイトルにも必ず「女」が入っている。ちなみに、『特捜最前線』(1977年〜1987年)のサブタイトルも「女」が入っていることが多い(特に初期)。
 原作は「犬を飼う女」。ストーリーはほぼ同じ。
 相模屋吉蔵の妹・おいねを演じているのは小林千晴氏。本番組の主人公・青江又八郎を演じている小林稔侍氏の娘である。ちなみに、おいねは原作では妹ではなく娘である。


第2話「恋人を斬らせた女」

放送日:1997/07/17
脚本:長坂秀佳
監督:小田切正明
ゲスト:遠山景織子(千加)/湯江健幸(石黒滋之丞)/五王四郎、細川純一、大矢敬典、柴田善行、上野秀年/名本 忍、相良瑠実子

 又八郎は同業である浪人の細谷と共に、相模屋から旗本・梶川与惣兵衛の姪・千加の用心棒の依頼を受ける。梶川与惣兵衛といえば、つい先日、江戸城内の松の廊下にて吉良上野介に斬りかかった浅野内匠頭を羽交い締めにして止めたとして、江戸中で噂になっている男である。大旗本への祝言を控え妬む者がいるという千加を警護する又八郎は、その最中、不審者を見かける。世津の調査により、5年前に千加の許婚だった石黒滋之丞がお家取りつぶしの為に破談になったことを知った又八郎は、そのことと不審者との関係を千加に指摘。しかし、千加は赤穂浪士の仕業だと否定する。千加のことが忘れられず、執拗に千加に付きまとう滋之丞は、赤穂浪士の一味をそそのかして与惣兵衛の籠を襲撃。又八郎は、「大事の前に小事」と赤穂浪士を説得し、退散させた。思惑が失敗し、千加に斬りかかろうとする滋之丞の前で、思わず「その男を斬って」と叫ぶ千加。同時に滋之丞を仕留めた又八郎は、死体に取り縋ろうとする千加に、「堪えて、幸せなれ」と諭すのだった。

 原作は「梶川の姪」。台本のタイトルは決定稿が「幸せを欲しがる女」(仮題)で、改訂稿が「幸せを追う女」(仮題)である。なお、決定稿の段階では番組タイトルは「藤沢周平の用心棒」であった。
 第1話同様、幻の存在として登場する由亀(第1話は夢の中で)。オープニングテロップでは全話出演となっているが、これは毎話オープニング前に挿入される回想シーンでの出演を指していると思われ、実際に新撮で出演しているのは第1・2・最終話のみである。ちなみに、同じく回想シーンに出演している由亀の父・喜左衛門も全話クレジットされているが、新撮の登場は第1話のみである。ちなみに、榎木孝明氏演じる堀部安兵衛は第7話の回想シーンに登場しているが、第7話ではクレジットはされていない。


第3話「吉良邸に売られた女」

放送日:1997/07/24
脚本:長坂秀佳
監督:和泉聖治
ゲスト:小田 茜(およう)/潮 哲也(嘉右衛門)、和泉ちぬ(つる)、角田英介(蔦屋芳太郎)/深江卓次(喜八)、友金敏雄(霧島雨全)

 又八郎が受けた仕事は、神田駿河町の油問屋・清水屋嘉右衛門と妻・つるの娘・おようの護衛。おようの稽古事の送り迎えを務める又八郎は、清水屋が大得意である吉良上野介へ女中奉公としておようを出せねばならないという事情を知る。娘を不憫に想う親と、その親の為、吉良邸への奉公の意味を知りながらも従うしかないと決意する娘。奉公を翌日に控えた日――、最後の送り迎えをする又八郎に、国許からの刺客・霧島雨全が襲いかかる。片手を負傷しつつも追い払う又八郎であったが、その最中、おようが姿を消した。おようの姿を探す又八郎は、稽古事の小唄の師匠・蔦屋芳太郎を疑うが、彼の言葉から同じ稽古事に通う三味線職人の喜八とおようとの仲を知る。喜八の住み処に乗り込んだ又八郎は、心中寸前の彼らを止め、「好きになることは生きること」だと諭す。又八郎は、清水屋におようが身籠もっていると伝え、生娘好きの吉良に対しての危惧を語る。父が奉公の話を断ったと嬉々として又八郎に伝えるおようは、又八郎が父についた嘘を知り感謝するのだった。

 原作は「娘が消えた」。基本的には原作通りだが、後半のストーリー展開がやや異なり、おようが姿を消し、又八郎が喜八の存在を知った後、原作ではおようと喜八は心中せず、人殺しを目撃した為にその下手人におようと喜八が捕らえられ、それを又八郎が救っている。また、ちょっとしたスパイスにも長坂氏は手を加えており、ラストで静かな感動を呼ぶ「嘘」の部分が原作とは異なる。原作ではその「嘘」は蔦屋芳太郎が又八郎に、「身籠もっているかも知れない」と語り、最後、「人はいいが、言うことはあまりあたっていなかった」と、軽いジョークで締めているのに対し、長坂氏は同じ素材を使って「感動」する展開へと組み替えている。
 本話のヒロイン・おようを演じた小田茜氏は、本番組と同じく『用心棒日月抄』を原作としてドラマ化した『腕におぼえあり』(1992〜1993年)にて吉蔵の娘・おいね役でレギュラー出演(出演は第1シリーズ及び第2シリーズ。第3シリーズでは、存在は語られているものの出演は無い)。さらに、1999年1月2日に放送された『赤穂浪士』(12時間超ワイドドラマ)では穂積幸役として、吉良邸にスパイとして奉公に行く役を演じており、何かと縁がある。
 本話にて、今まで謎の女として頻繁に又八郎の前に姿を現していた世津が、国許から手の者だと明確になる。なお、この世津は原作には登場しないオリジナルキャラクターである。


第4話「入れ墨を隠す女」

放送日:1997/08/07
脚本:長坂秀佳
監督:和泉聖治
ゲスト:藤吉久美子(おちせ)/田山涼成(塚原左内)、平野 稔(備前屋幸兵衛)、小林 健(赤ぶく堂幸助)/流 健二郎(吉田忠左衛門)、河田裕史(益蔵)/笹木俊志、藤沢徹夫、石井洋充、杉山幸晴/上田こずえ

 又八郎の次の仕事は日比谷町の呉服問屋・備前屋幸兵衛の内儀・おちせの警護。しかし、警護の相方・塚原左内は新人ということでいかにも頼りなさげ。仕事を引き受けた又八郎は、備前屋の振る舞いを不審に抱き、細谷に調査を依頼。おちせが昔に言い交わした男でヤクザの益蔵が、人を殺めて島送りになっていたが、近頃島抜けをしたらしいと知る。用事で大養寺へ出向いたおちせを警護する又八郎は、そこで赤穂浪士の一人・吉田忠左衛門との密談を目撃、備前屋が赤穂浪士に資金援助をしていたと知る。その帰り、刺客に襲われるおちせの籠を守り抜く又八郎。不審に抱いた又八郎は、塚原を調査、彼が正体を偽っていたことを知る。夜――備前屋夫婦を襲わんとする塚原と対峙する又八郎は彼を仕留めた。赤穂浪士の資金の目処がつき、備前屋の役目も終わりを迎えたその時、又八郎の目前でおちせを奪い去る益蔵。隙をみつけ益蔵を仕留めた又八郎は、益蔵とおちせの腕に、互いの名前を刻んだ入れ墨を見るのだった。

 本話のゲストの一人、赤ぶく堂幸助を演じたのは小林健氏。小林稔侍氏の長男である。全話レギュラー出演している娘の小林千晴氏との同シーンはなかったものの、親子三人共演を果たした。ちなみに、本話の撮影がいつかは分からないが、放送日の段階では小林健氏は26歳。原作『用心棒日月抄』の第1話で語られている青江又八郎の年齢と同じ26歳。原作ファンから見れば主人公の年齢に違和感を抱いてしまうかもしれない本番組であるが、まさに文字通り親子ほども離れた年齢差であった。
 原作は「内儀の腕」。決定稿台本のタイトルは「刺青の女」(仮題)である。なお、備前屋幸兵衛の名は、原作では幸兵衛ではなく徳兵衛である。


第5話「つけ狙われた女」

放送日:1997/08/21
脚本:長坂秀佳
監督:牧口雄二
ゲスト:大沢逸美(おさき)/立川三貴(門脇建部)、中丸新将(鳴海市之進)/松井紀美江(お杉)

 又八郎は、相模屋からの仕事を胡散臭く思い辞退。仕事を無くし、神田川河岸の柳原をぶらついていた又八郎は、そこで夜鷹に「助けてほしい」と呼びとめられる。その女は、最近、又八郎の住む長屋に引っ越してきたばかりのおさきという女だった。3日程前からつけ狙われているというが、おさきには心当たりが無い。その夜、長屋で何者かに襲われたおさきを救った又八郎は、毎晩の食事を手当てとして用心棒を買って出た。おさきを迎えに行く又八郎だったが、その最中に国許からの刺客・門脇建部に襲われ、仕留めている間に、おさきは何者かに襲われその命を落とした。酔いつぶれ荒れる又八郎に喝を入れる細谷。又八郎は、おさきの同業者・お杉の証言から、おさきが浪人者・鳴海市之進の立ち話を偶然聞いた為に殺されたのではと推測。鳴海が、先日、又八郎が断り、今は細谷が引き受けた仕事先におり、彼らが近々江戸に入るという噂のある大石内蔵助暗殺の企みに加わっていると知る。鳴海と対峙した又八郎は、夜鷹ではなく、己の女の為にと鳴海を斬り倒すのだった。

 原作は「夜鷹斬り」。本話の原作をはじめ、第6話の原作「代稽古」や「夜の老中」等では、吉蔵が親切、根はいい等の表現がなされている。対してドラマ版ではどちらかといえばあこぎな描写が強調されており、そのキャラクター描写が異なってみえる。
 おさきの同業者・お杉役はオープニングテロップでは松井紀美江氏だが、番組放送当時公開されていた東映の公式サイトでは東啓子氏となっている。直前でキャストが変更になったのであろうか? ちなみに、東啓子氏といえば、『特捜最前線』(1977年〜1987年)第317話「掌紋300202!」にて城所徳永の事務所の女子事務員・一ノ河君子を演じた役者。第317話といえば、『特捜最前線』で最もエンディングテロップでのゲスト表記が少なかった回。そのたった3名のキャストのうちの一人である。
 本話にて、世津の目的が、又八郎の動静を探り、刺客に伝え手引きすることだということが明確になる。


第6話「誘惑!となりの女」

放送日:1997/09/04
脚本:長坂秀佳
監督:長岡鉦司
ゲスト:荻野目慶子(おりん)/金内喜久夫(墨田一風斎)/石倉英彦/床尾賢一、福中勢至郎、浜田隆広、林 哲夫/荒木雅子/榎木孝明(長江長左衛門)

 又八郎の次の仕事は町道場の師範代。又八郎は、道場の隣に住むおりんという女性の影に不審な男の姿を見かける。そんな時、細谷からそのおりんの護衛の仕事を持ちかけられ、引き受ける又八郎。昼は道場、夜はおりんの用心棒を務める又八郎は、道場に赤穂の浪士達が頼母子講を隠れ蓑にして集うのを目撃。そこで、長江は仮の名で本当の名が堀部安兵衛であること、そして、吉良殺害を企てていることを知る。そして又八郎は、おりんをつけ狙う男の目的がおりんではなく、道場であると推測。その男・吉良探索方の闇吉は、おりんを使って赤穂の巣窟と思われる道場を探索させていたのだ。育ての親である闇吉から、事情を知りすぎた又八郎殺害を命じられ苦悩するおりんだったが、事情を把握した又八郎は闇吉の殺害を約束し、おりんを逃す。闇吉を仕留めんとする又八郎だったが、その前に探索に感づいた堀部らにより闇吉は命を落とした。又八郎が道場を去る日――刺客として現れた世津の叔父である墨田一風斎を返り討ちにする又八郎。世津はお役目を捨てて江戸を発つと又八郎に告げるのだった。

 原作は「代稽古」。大筋は原作とドラマ版は同じなのだが、おりんの絡みで改変が多い。ドラマでは、町道場の事情を知る為に、細谷が又八郎の親友だと知った上でおりんが細谷に接触しているが、原作では又八郎と細谷が呑んでいるところにさりげなく接触。その後、又八郎は再び飲み屋で会ったおりんから道場の事情を聞かれるも、その時点でおりんが密偵だと見抜いている。おりんが道場の隣に引っ越してきたことや又八郎らに用心棒を頼むくだり等の展開はドラマオリジナルである。又八郎がおりんの用心棒に就いたのは、あくまでも「用心棒」としてのくだりを作品に加える為だったのであろうか? ちなみに、第7話の原作「内蔵助の宿」でもおりんは登場している。
 ゲストのおりんを演じた荻野目慶子氏は、『腕におぼえあり』第4話ではおさきを演じていた。


第7話「又八郎危うし!刺しにきた女」

放送日:1997/09/11
脚本:長坂秀佳
監督:長岡鉦司
ゲスト:宇津井 健(垣見五郎兵衛)/沖 直未(お妙)/佐藤京一(真壁陣内)、岩尾正隆(弥七)/西園寺 章雄/矢部義章、中島俊一、北村明男、山内彩郁璃

 江戸に向かうというある武家の隠居・垣見五郎兵衛の警護の為、川崎・平間村へと向かうこととなった又八郎。川崎への道中の最中、同じく川崎・平間村まで浪人の妻・お妙の護衛をする細谷と出会った又八郎は旅を共にすることになった。実は国許からの刺客であったお妙は、道中で又八郎を狙うが、チャンスがなく川崎に到着。その様を偶然目撃した世津は、宿泊中の又八郎らを監視するお妙の上役を殺害した。翌日、隠居の館に到着した又八郎は、推薦した人物が長江長左衛門だと知り、五郎兵衛の正体が大石内蔵助であると察知。一方、お妙は世津の名を騙って又八郎を呼び出し命を狙うが、その前に世津によって手傷を負う。そして、又八郎に「世津がうらやましい」と残して絶命した。直後、襲撃を受ける五郎兵衛を無事に守り抜いた又八郎は、五郎兵衛に大願成就なされよと告げるのだった。

 原作は「内蔵助の宿」であるが、垣見五郎兵衛=大石内蔵助の護衛という大筋は同じものの国許からの刺客・お妙のくだりはテレビオリジナルである。


第8話「待っていた女」

放送日:1997/09/18
脚本:長坂秀佳
監督:小田切正明
ゲスト:宇津井 健(大石内蔵助)/早勢美里(お清)/倉田てつを(新見菊三郎)/草見潤平(黒木左門)、小林 健(赤ぶく堂幸助)、谷口高史(清水一学)/加藤正記/峰 蘭太郎、白井滋郎、鎌田めぐみ、山本晶子/榎木孝明(堀部安兵衛)/八木小織(佐絵)/橋本真也(富蔵)/野中マリ子(萩乃)、深江章喜(大富丹後)/木谷邦臣、名本 忍/中村嘉葎雄(間宮作左衛門)

 又八郎は、国許の物頭に襲われたことから国許の異変を察知。帰藩を決意した又八郎は路銀稼ぎの為、一度は義の為断った吉良邸の警固を、細谷と共に引き受けた。清水一学の指示の元、赤穂浪士の襲撃に備え訓練を続ける吉良邸の物々しい雰囲気に、危険を感じて脱走を図る細谷だったが、外出を固く禁じられ、脱出は不可能。そんな中、女中・お冴が自殺。邸内の誰かに陵辱されたという噂だ。そして、若侍・新見菊三郎と良い仲の女中・お清も襲われ、又八郎は浪人者・黒木左門を下手人と睨むが証拠が無い。世津から国許の藩主が毒殺されたことを知り、さらに堀部安兵衛より一両日中の吉良邸襲撃を聞いた又八郎は、早急に黒木との決着をつけるべく行方を追い、お清に再び襲いかからんとする黒木を発見、仕留めた。掟を破ったためとの理由で屋敷を退去させられた又八郎と細谷は、その夜、大石内蔵助が率いる赤穂浪士が吉良邸を襲撃し、見事悲願を達成した様を見守るのだった。  相模屋とその妹・おいねに見送られ、江戸を発った又八郎。途中、待ち構えていた細谷と別れを交わす又八郎であったが、そこを刺客・富蔵が急襲。又八郎を庇った細谷がその命を落とした。細谷の亡骸を弔い、旅を続ける又八郎は、その途中に女刺客・佐絵に襲われるも、怪我をした佐絵を救い、手当した。危険な道のりを指摘し「自分と共に逃げて」と懇願する世津の制止を振り切って2年ぶりに家に戻った又八郎は、そこで由亀と再会。由亀は又八郎の母・萩乃を守って共に暮らし、夫である又八郎を信じてずっと待っていたのだった。中老・間宮作左衛門より、藩主殺害の黒幕である家老・大富丹後殺害を依頼された又八郎。しかし又八郎は、父の仇として執拗に又八郎を狙う佐絵と、彼女に加勢する世津に襲われる。その非情な状況に、又八郎は戦意も無く刀を捨てうなだれる。そんな又八郎を斬ることが出来ない二人。世津は別れを告げその場を立ち去った。その後、上意としてではなく、浪人・青江又八郎として大富を斬る又八郎。すべてを終えた又八郎だったが、人の生死を見つめ直したいからと、「旅に出る」と手紙を残し旅に出るのだった……。

 本放送時は2時間スペシャルとして放送されたが、地上波やCSでの再放送では2話分割で放送されている。2話分割版のサブタイトルは、前半部は「第八回 討入り前夜!吉良邸の女」、後半部は「最終回「待っていた女」。台本も分割して作成されており(前半部(再放送での第8話)撮影台本にて確認)、元々は2時間スペシャルとしててはなく分割された話として作られたのではないかと思われる。
 本放送ではラストの又八郎の手紙が読まれるシーンの後、断崖そばの道を進む又八郎の画を見せながら(途中、過去の話からのシーン挿入有)主題歌の「櫻守」をバックにエンディングクレジットが流れるが、再放送では手紙が読まれたところで終わっている。ちなみに、手紙が読まれるシーンのBGMが本放送と再放送では異なっている。
 本放送版の中間地点の区切り(提供テロップ表示時の、「引き続き……ご覧下さい」の箇所)は、再放送版の第8話のラストの箇所ではない。再放送版では悲願を達成した大石内蔵助らを見送る又八郎のカットで区切りをつけているが、本放送では吉良邸に突入する大石内蔵助らを又八郎が見守るカットでCMが入っている。
 本放送のオープニングクレジットは通常とは異なり、キャスト、原作、脚本、音楽、主題歌、監督、制作のみの表示。そして、エンディングにて改めてこれらを含むキャスト、スタッフのクレジットが流された。ただし、オープニングでは表示されている木谷邦臣氏、名本忍氏がエンディングでは無、それと、春風亭小朝氏と中村嘉葎雄氏の順番がオープニングとエンディングでは逆になっている。
なお、再放送でのクレジット(ゲストのみ抜粋)は以下になっている。
 「第八回 討入り前夜!吉良邸の女」ゲスト:宇津井 健(大石内蔵助)/早勢美里(お清)、倉田てつを(新見菊三郎)/草見潤平(黒木左門)、小林 健(赤ぶく堂幸助)/加藤正記、谷口高史、峰 蘭太郎、白井滋郎、鎌田めぐみ、山本晶子/榎木孝明(堀部安兵衛)
 「最終回「待っていた女」ゲスト:中村嘉葎雄(間宮作左衛門)/八木小織(佐絵)/橋本真也(富蔵)/野中マリ子(萩乃)、深江章喜(大富丹後)/木谷邦臣、名本 忍
 前半部は原作の「吉良邸の前日」、後半部は「最後の用心棒」。前半部の撮影台本のタイトルは「犯される女」(仮題)である。
 前半部に登場する新見菊三郎は、原作では新貝である。
 本話(前半部)では、第4話に出演した小林稔侍氏の長男・小林健氏が再び登場。再放送バージョンのオープニングでは妹である小林千晴氏と上下並んでクレジットされている。
 本話(後半部)のゲストである嗅足組の佐絵は、原作では佐知という名前。佐知は、原作ではすべての続編(『狐剣』『刺客』『凶刃』)にも登場する重要なキャラクターである。
 本話(後半部)の展開で原作と大きく異なるのは細谷の扱い。ドラマ版では又八郎を庇い命を落とすが、原作では最終作『凶刃』の最後まで存命であった。