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シャイン
監督:スコット・ヒックス
出演:ジェフリー・ラッシュ、ノア・テイラー、アーミン・ミューラー=スタール、リン・レッドグレイヴ、サー・ジョン・ギールグッド
有楽町スバル座他にて3月22日より上映予定。
クラシック音楽の真髄を描いてもいるし、父と息子の愛を深く見つめた映画でもある。久しぶり、味わいのある作品に会いました。
1948年のイギリス映画で、バレエ団を映画にした『赤い靴』いうのがあったの。バレエとはどんなものか、バレエにどんな力が要るのか――これは凄い傑作映画、芸術的な作品でしたけれども――バレエを見る人の、バレエの案内映画でもあったんです。
『シャイン』は、ちょうどそれと同じようなピアノの映画。でも昔のアメリカ映画の音楽家物語だったら、階段を上るように成功していって、という形に決まっていたでしょう。ところがこのピアニスト・ストーリーは細かく人間模様を描いて、なかなかの力作です。
オーストラリアの監督、スコット・ヒックス、これが初めての長編映画。43歳か44歳、監督としては若いほうだ。これだけの映画を作ったことは偉いと思いますよ。興行価値だけを狙っている作り方ではないの。
貧しいユダヤ人の家庭で、この男の子は育つの。お父さんが音楽のできる人で、自分の子供たちにピアノを教える。この男の子だけが天才的に上手で、コンクールで賞をもらったり、プロの音楽家先生から弟子にしたいと言われたり……で、ピアノが大好きな子なんです。
お母さんが台所で野菜を切っていたり、お父さんも料理をするし庭で塀を直したり。貧しいけど一所懸命な暮しをよく描いている。
このお父さん、家族の中でワンマンなの。それでこの男の子を宝みたいに思い、誇りと思って、分身だと思っている。子供に夢中になって、夢中になって、夢中になっているけれども、愛情が少しひん曲っているの。そこが怖い。オーストラリア映画はこういう作り方をするか、と僕は驚きました。
1カット、お父さんと息子が抱き合うところがあるの。キャメラは上のほうから撮っているの。息子への愛情、その愛情は普通の親子の愛情ではない、もう何とも知れん複雑な感情なんですね。それをじつに巧く出していて、偉い。
ピアノの名曲が沢山出てくるでしょう。ラフマニノフやショパンや、僕らの耳に残っている曲がどんどん出てきます。けど名曲集の楽しみと思ったら大間違いで、もっと深く、クラシック音楽というものの真髄を訴えているような気がします。
お父さん、あんまり可愛がっていて、外国に留学できる話を断ってしまうの。2度めに英国に行けることになって、そのときはお父さんの反対を押し切って、この子は強引に出かけて行く。お父さん、怒って、悲しんで、小さな頃からのスクラップ帳全部燃やして、親子の縁を切った気持になるの。
怖いですね。お父さんがあんまり可愛がるので、この子はだんだん気が変になって行く。けど、お父さんのせいだけで息子が歪められたのでもない。天才というものも怖い。息子自身、自分の才能に引きずり回されているの。そうして、だんだん精神に異常をきたしてくる。
このピアニスト、実在の人物。この映画のピアノの音の大半は当人が弾いているそうです。
一度は完全に病人になって、入院して。出てからも少ぅし妙なこともする、けど、回りに親切な人がいて、だんだん立ち直って、コンサートを開く。
この映画、父と息子の映画でもあるし、音楽映画の変わり種でもあるし、内容がいっぱい詰まっています。演出も役者もいいから、いろいろ賞をとっているでしょう。
92歳のジョン・ギールグッドやリン・レッドグレイヴ、それに『ナイト・オン・ザ・プラネット』やいろいろいい映画に出ているアーミン・ミューラー=スタール…脇役陣が立派です。主役も上手だったしね。この映画、僕は点数高くあげたい。
作品ノート
現在もピアニストとして活躍するデヴィッド・ヘルフゴットをモデルにした作品。監督のスコット・ヒックスはオーストラリア人で、これが初監督だが、多くの映画祭で話題を呼び、ゴールデングローブ賞、ニューヨーク批評家協会賞をはじめ数多くの賞を受けている。映画ではラフマニノフをはじめ、さまざまなクラシック曲が演奏されるが、ピアノ演奏の大半はデヴィッド・ヘルフゴット自身によるもの。
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